埼玉県は10月14日、「第2回ロボティクスセミナー~ドローンの研究開発と活用の潮流~」を開催した。埼玉県が2026年度の開所を目指すロボット開発支援施設「SAITAMAロボティクスセンター(仮称)」への興味や期待を喚起することが目的で、福島県南相馬市にあるロボットの開発支援拠点、福島ロボットテストフィールドの所長で一般社団法人日本UAS産業振興協議会の理事長を務める鈴木真二氏ら、ドローン事業で名の知れた関係者が登壇した。鈴木氏は、「埼玉と連携したい」と話し、SAITAMAロボティクスセンターへの期待を表明した。
登壇したのは鈴木氏のほか、ドローン物流の実現に向けた動きを加速させている秩父市産業支援課の笠井知洋氏、秩父市の実験でドローンの運用を担い、物流へのドローン活用に取り組む楽天グループ株式会社(東京)ドローン事業課の谷真斗氏、埼玉県内に本社を構え地元にフライトスペースを構え、農業、空撮などの地元貢献にも力を入れる株式会社NTTe-Drone Technologyの山崎顕代表取締役、ドローンやロボットなどの人手を自動化するデバイスを制御するプラットフォーム関連技術を手がけるブルーイノベーション株式会社(東京)の熊田貴之代表取締役らで、それぞれが近況や埼玉との関係などについて述べた。
鈴木氏は、「レベル4実現に向けたドローンの新制度と今後の展望」の演題、ドローンの歴史、用途、市場の成長、理事長をつとめるJUIDAの事業や、会員の推移、所長を務める福島ロボットテストフィールドの役割などを説明し、「埼玉県もSAITAMAロボティクスセンターをつくるということなので、今後連携をとらせて頂きたいと思っています」と期待を表明した。また、JUIDAの理事長として毎年、年頭に公表しているスローガンを振り返り「来年のスローガンをどうするか、みなさんと考えたいと思っております」とアイディアを募った。
秩父市の笠井氏は、秩父市が埼玉県で最も広い市であることや、年間の観光客数ガパリのエッフェル塔に匹敵するなどのエピソードで関心を引き、ドローンでは、物流、遠隔医療、MaaSなどに取り組んでいることを説明した。関わり方については「行政として使命感をもって取り組んでいる」と明言した。市内で行われた物流の様子については動画を披露し「未来技術で住み続けたいまちを目指します」とメッセージを寄せた。
秩父市での物流事業にも参加した楽天グループの谷氏は、ドローン配送に取り組む背景を、宅配の増加と担い手の減少がもたらす将来不安の解消をあげ、「不便解消のひとつの手段がドローン」と説明した。三重県志摩市の離島物流や、長野県白馬村での山小屋への荷物配送などの事例を紹介し、「過疎地物流が地域に根付けば地域の外からその仕事に関わるために人材が流入する可能性があります。ポジティブなスパイラルを生み出す起爆剤になると思っています」と述べた。
ブルーイノベーションの熊田氏は、ひとつの作業で複数の業務をこなす制御技術、Blue Earth Platform(BEP)技術を紹介し、用途別にプラント点検、送電線点検など用途ごとにカスタマイズしたソリューションを用意していることやスイスFlyability社製の球体ドローンELIOSシリーズを使った点検など事業概要を説明。送電線点検では、送電線のドローン点検の悩みの種である送電線のたわみに追随した撮影を可能にするため、たわみにそってドローンが飛行するためにセンサーを組み合わせたモジュールを開発した実例を紹介した。送電線点検は「東京電力グループの中で22の支社が検討を進めているか、すでに実用化しているかしています」と拡大している現状を報告した。またドローンなどの離着陸に用いるポートについて、固定式、可搬式のそれぞれの開発に取り組んでいるほか、国際標準を定めるための会議でリーダーシップをとっていることなども紹介した。熊田氏は「今後のものづくりは自律分散がテーマになっています。そこに貢献するプラットフォーマーを目指します」と決意を表明したあと、「最初にお伝えしようと思ったのですが、私は埼玉県和光市の出身です」と埼玉県とのつながりを伝え、会場をなごませた。
埼玉県朝霞市に本社を構えるNTT e-Drone Technologyの山﨑氏は、主力事業である農業、点検のほかに、NTTグループの光ファイバーをひくために特殊なドローンを使ってる事例などを紹介した。山﨑氏は事業として機体を扱うことの意義について「機体を理解しないとエコシステムの運営はできない」と解説した。また、埼玉県川島町、埼玉県坂戸市でコメづくりの手伝いをしていたことや、朝霞市の茅葺の農家建築で、平成13年に国の重要文化財に指定された「旧高橋家住宅」をドローンで撮影して「文化財デジタルアーカイブ」として保存しているなど、地元密着の取り組みを進めていることも明らかにした。さらに「すぐにではないですが」と前置きをして「将来的にローカル5Gを介し、ドローンとクラウドが常時接続するコネクテッドドローンを展望しています」と今後を見据えていることを明らかにした。
講演にあたり埼玉県の村井秀成次世代産業幹が「埼玉県はロボティクスに取り組んでいて、“ロボットといえば埼玉県”と言われるように取り組んでいきたい」と強調。次世代産業拠点整備担当の新井賢一主査はSAITAMAロボティクスセンターの概要や整備状況について「インターチェンジ直結のテストフィールド」と特徴を強調し、「詳細を検討中で、模擬住宅をどうするかなど、ご意見があれば伺いたい」などアイディアも募った。
当日の様子は、10月21日からオンデマンド配信(11月4日まで)を予定している。配信の申し込みフォームはこちらから。
埼玉県は8月29日、さいたま市大宮区の総合コンベンション施設、大宮ソニックシティで「第1回ロボティクスセミナー」を開催した。埼玉県が2026年度の開所を目指して整備を進めているロボット開発支援施設「SAITAMAロボティクスセンター(仮称)」(埼玉県鶴ヶ島市)の概要や準備状況を紹介したほか、ロボット政策を担う経済産業省や、ロボット工学の永谷圭司東京大学大学院工学系研究科特任教授、ロボットやドローンの開発で知られる株式会社アトラックラボ(埼玉県)の伊豆智幸代表取締役らも登壇し、最新動向を報告したり、見解を披露したりした。
セミナーは埼玉県が、2026年度の開所を目指している「SAITAMAロボティクスセンター(仮称)」の周知や利用促進、機運醸成を目ざして開催した。ロボット開発、活用などに携わっている企業や、今後参入する予定の企業が対象で、会場はほぼ満席となった。
センターは、埼玉県が首都圏中央連絡自動車道の圏央鶴ヶ島インターチェンジ(埼玉県鶴ヶ島市三ツ木)の隣接地に整備する。移転した埼玉県農業大学校などの跡地r隣地で、12万平方メートルほどの敷地に、ネット付きドローン飛行場や、模擬市街地フィールド、レンタルラボ、コワーキングスペース、屋内実証フィールドを整備することが検討されている。農林水産、建設、物流、移動などサービスロボットの開発を中心に、対象分野の範囲に方向付けを行う見通しだ。
センターの場所は都心から直線で約45㎞圏と類似施設と比べアクセスが容易で、埼玉県はセンターに隣接する産業用地への企業誘致にも力を入れている。
セミナーでは埼玉県の村井秀成産業労働部次世代産業幹が「先端産業を誘致し、社会課題解決に資するロボット開発拠点として『SAITAMAロボティクスセンター』の整備を進めています。現状ではそうはなっておりませんが、『ロボットといえば埼玉』と言われるように取り組んで参ります」とセンターの担う役割の大きさを説明した。
また東大大学院の永谷圭司特任教授が、東日本大震災で爆発した原子力発電所の建屋内部を調査するロボットを開発したケースや、火山災害対応、プラント点検対応などの具体例を紹介しながら、ロボットを開発するうえでの、テストフィールドの重要性を解説した。
永谷氏は「ロボット開発の工程である、妄想、シミュレーション、模型、模擬環境、実環境のうち、テストフィールドは模擬環境部分を担います。『SAITAMAロボティクスセンター』には、研究所と現場の橋渡しを期待したい」と述べた。
アトラックラボの伊豆智幸代表取締役は、手掛けている技術をロボット制御、遠隔制御、ロケーションアナリティクスに分類し、デリバリー用搬送車、ハウス栽培のイチゴをカウントする園芸用ロボット、疾病者搬送車両、気象観測用高高度ドローンなど、それぞれの技術を活用して開発したロボットについて、動画を投影しながら紹介した。
伊豆氏はセミナーで、「技術は外注すれば手に入ります。まずは世の中の困りごとを探してください。それを解決することで、あすからでもサービスロボットの運用事業者になれます」と、課題解決の入り口をつかむことを提案した。
このほか経済産業省製造産業局産業機械課ロボット政策室の秦野耕一調査員がロボット運用に適したロボットフレンドリーな環境の実現をテーマに講演し、経産省商務・サービスグループ物流企画室の脇谷恭輔係長は、自動配送ロボットの社会実装に向けた取り組みを紹介した。
セミナーにはロボット、ITなどの関連産業の関係者を中心に約60人が来場した。セミナーの様子は、申込者を対象に9月14日までオンデマンド配信を提供する。これまでに約300人の視聴の申し込みがあるという。配信最終日の9月14日まで、こちらのサイトから申し込める。
一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)の独自技能認証「DPCA DRONEフライトオペレーター操縦技能証明証」の講習がこのほど、埼玉県嵐山町で開催された。経験あるインストラクターが知識、技能の基本を丁寧に教えていた様子を見学した。
講習が行われた会場は、埼玉県嵐山町にある広大な敷地を誇る国立女性教育会館。センター合宿、セミナー、トレーニングなど幅広い用途に対応する設備が整っていて、フライトオペレーター操縦技能講習は研修棟の教室で座学、体育館で実技が、2日間の日程で行われた。座学は上原陽一DPCA代表理事が直接担当。実技はDPCA認定インストラクターの森英昭さん、中島尚子さんが担当した。
講習を受けたのは男性3人。初日の座学でドローンが飛ぶ仕組みやルールなどの基本が伝えられたあと、同日午後3時過ぎに体育館に移動し、実機をつかって電源の入れ方、プロペラの取り付け方、確認の仕方、タブレットでGPS信号が十分に届いているかどうかの確認、などが基本作業についてを手際よく、丁寧に伝えられた。
ドローン事業を手掛けるアイエイチプランニング(東京)の代表として、空撮や橋梁点検、ソーラーパネル点検など数多くの実績がある森さんは講習の間に、「バッテリーは余裕をもっておくことが重要。100メートルの高さから着陸させるのに10%消費することも覚えておく必要がある。自分が運用するときには、バッテリー残量が40%を切ったら機体を地面に降ろすことにしている」などと、経験をふまえた実践的なアドバイスもしていて、参加者の興味をかきたてていたようだ。
受講生3人に対し、3人の講師がつきっきりで指導するぜいたくな態勢で、受講生は疑問がわいたらその場ですぐに質問ができる環境の中、カリキュラムをこなしていた。
DPCAは今後も各地で講習を実施。5月16、17日(残り僅か)、6月16、17日の京都、6月27、28日の大阪、6月24、25日の埼玉での講習について、現在受講生を募集している。