建築業界でのドローン利用促進を図る一般社団法人日本建築ドローン協会(JADA東京都千代田区)と一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA、東京都文京区)は6月9日、高層ビルを含む建築物の外壁点検・調査にドローンを運用できる技能者を育てるため、新たに民間資格として「ドローン建築物調査安全飛行技能者」を創設すると発表した。両者はこの事業の推進に取り組むためこの日、東京都奈のJUIDAのオフィスで覚書に署名した。建築基準法は2022年4月に一定の条件を満たせば赤外線搭載ドローンを点検に活用できることを明記した。JUIDAとJADAはこの条件を満たす技能者の育成を目指す。JUIDAにとっては「プラント点検」、「森林測量」に続く“応用教育事業”の第三弾となる。今後、カリキュラムや講習の提供体制を整備し、2022年中の体制整備を目指す。
新しいビル外壁点検資格「ドローン建築物調査安全飛行技能者」は、JADAとJUIDAが連携して新設する専用の講習「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」で、基本的なドローンの知識、技能の保有者が、建築基準法や航空法の内容や現場で必要となる技量などを座学、実技で学んだうえ考査を受けて合格することで取得できる。コースの実技ではドローンをロープなどに係留した飛行、等間隔での撮影、飛行計画書の作成など、外壁点検の実務で必要な技能を身に着ける。受講できるのはJUIDAの「無人航空機操縦技能証明証」「無人航空機安全運航管理者証明証」を取得し、JADAの「建築ドローン安全教育講習」を修了していることが条件。コースは3日間を想定している。
この事業を推進するため、JADA、JUIDAは6月9日、都内で覚書に署名した。この席でJADAの本橋健司会長は「今回の告示改正に無人航空機員搭載された赤外線装置の明記や、係留ドローンの許可・申請の不要にする規制緩和は業界にとっての追い風で、建築分野でのドローンの活用は本格化することになります」と活用の拡大に期待を寄せた。またJUIDAの鈴木真二理事長も「会員が2万人を超えたのも多方面でドローンが利用されているからだと考えています。JUDAの2022年のスローガンは人口集中地区での目視外飛行が可能となるレベル4の解禁を見据えて『ドローン社会実装元年』としております。今回の覚書も大きな柱になると思っています」と述べた。
新資格を創設した背景には、建築分野でのドローン操縦者の幾瀬が急務になっていることと、ドローンの活用を建築基準法に基づく告知に明記された事情がある。
国土交通省は2021年9月、ドローンを係留するなど一定の条件を満たした場合、人口集中地域で飛行させる場合に必要となる国交省航空局への許可・承認を不要とすることを、航空法施行規則の一部改正で盛り込んだ。
また2022年4月には国交省は、建築基準法第12条第1項の定期報告制度の告示改正を施行し、赤外線装置を搭載したドローンによる外壁調査を認めた。定期報告が義務化されている建築調査のうち、タイル、石貼り、モルタルなどの劣化や損傷については、調査方法が「打診等」と指定されている。これについて従来は「打診等」の「等」の中に、赤外線カメラの調査が含まれると解釈してきた。今回の告示改正ではここが「テストハンマーによる打診等(無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものを含む)」となり、「テストハンマーによる打診と同等以上の精度」の条件がつくものの、ドローンの活用が明記された。
「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」では、「テストハンマーによる打診と同等以上の精度」を身に着けることで、告示の条件を満たすことを目指す。
なおコースの終了で取得できる「ドローン建築物調査安全飛行技能者」は、この資格を持たなければ業務ができない業務独占の資格ではなく、あくまでも民間として技能を備える講習を修了したことをさす資格だ。
告示改正をうけて、一部のドローンスクールや民間事業者が独自に条件を満たすカリキュラムを組み講習を実施するなど、今後見込まれる外壁点検の需要拡大に対応している。JADA、JUIDAは講習開始に向けて週明け以降、ドローンスクールへの概要説明、募集などの作業を進めることになる。早ければこの冬にも開講する「ドローン建築物調査安全飛行技能者」が具体的に動き出せば、赤外線ドローンによる外壁点検の取組がさらに加速することになりそうだ。
DJI JAPAN株式会社(東京都港区)は7月14日、中国電力株式会社(広島県広島市)の子会社で中堅建設コンサルタントの中電技術コンサルタント株式会社(広島県広島市)と鹿児島県の桜島を中心とする桜島活⽕⼭地域で、災害リスクから社会を守る活動の一環として、3次元マッピングなどの検証を実施したと発表した。DJIのMatrice 300 RTK、フルサイズセンサー搭載の航空測量⽤カメラDJI ZenmuseP1などを使った。
今回の共同検証は、桜島の⽴ち⼊り禁⽌区域を対象に、⽕⼭噴⽕や⼟⽯流の発⽣などによる⼟砂変動量を正確に把握するために行われた。行われた作業はドローンを活⽤した3次元マッピング。素材となる写真の撮影はMatrice300 RTKにDJI Zenmuse P1を搭載して行われた。画像処理にはマッピングソフトウェアのDJI Terraを活⽤した。
Matrice300 RTKはZenmuse P1を搭載して40分のフライトが可能なうえ、対地高度149メートルで1ピクセルあたり3センチの高い解像度の画像が撮影できる。検証のさいにパイロットを担った中電技術コンサル河川砂防部の大盛泰我さんは、「危険な環境な中でも安全面に配慮しながら詳細調査ができた」と話している。(動画参照)
検証を行った中電技術コンサルタントは、国土保全、災害リスク対応に力を入れ、土砂災害に対する技術サービスを提供する事業を展開している。
桜島は年間数⼗回以上の規模で⼟⽯流が繰り返し発⽣する活火山地域で、状況確認は環境保全、安全確保のうえで重要な地域のひとつだ。航空機やヘリなどを使った上空からの状況確認に定評がある。一方で、土石流など災害発生のたびに、航空機やヘリを出動させる調査は、危険と隣り合わせであるうえ、コスト高でもあり、撮影したデータも解像度のうえで改善の余地があった。
同社はドローンを2015年に初導入。Phantom3の導入を手始めに、その後Mavic2,Inspire、Phantom4 RTKと機種をそろえ、今回、Matrice300 RTKも導入し桜島検証に活用した。
同社執⾏役員先進技術センター⻑兼 BIM/CIM プロジェクト室⻑の荒⽊義則⽒は「桜島でのドローン計測に成功し、計測精度も⾼い結果が得られたことから、今後も同様の場所や類似の場所において、活⽤できることが確認できた。今後は、⽕⼭地域での防災調査(災害状況の把握、地形変動量の調査、⼟砂移動機構のメカニズム解明)や、社会インフラ(構造物)の維持管理点検・調査への活⽤、特に AI 機能を使って変状の検知や損傷の評価などに応⽤していきたい」と話している。
ドローン・ジャパン株式会社(東京都千代田区)は、7月21日、この秋以降に予定されているドローンへのSIM搭載解禁を視野にいれた、データマネージメントコンサルティングや共同実証などのサービス、「DMN PoCサービス」の提供を始めたと発表した。
提供する内容はSIM搭載解禁にあわせた解決を提案するデータマネージメント・コンサルティングサービス②ドローンからの取得画像データをクラウドに自動にアップロード・仕分けし、リアルタイムで確認する「イメージファイリングソリューション」(株式会社バーズ情報科学研究所開発)の提供③“共同実証実験”の提供。ただし実証実験は10月31日までは地面を走行するローバーを使い、空を飛ぶドローンを使った空中航行ではない形で実施する。
サービスはドローンに後付けのユニットを搭載して実施する。搭載するユニットは、ドローンと接続せずに位置情報を取得でき、専用のカメラで撮った写真に緯度経度をEXIF情報として挿入し、EXIF情報が入った写真を自動的に対象のWebストレージに送信する、といった機能を備えている。
SIMの上空利用については、ドローンなどでの活用を視野に今年秋以降の制限の緩和や、利用の本格化が見込まれている。利用が進めば、ドローンに搭載したカメラの画像・映像データやドローンの状態を示すテレメトリー・センサーデータをリアルタイムに取得できる。 取得データは、用途や目的にあわせたサービスとして付加価値につながるとみられている。
想定される用途は、石油化学プラント、工場、基地局、発電所などの点検業務、行政、電話、水道などインフラ関連事業、災害調査業務、警備などの監視管理業務、農地、山林などの広域調査業務など広範囲にわたり、規制緩和により用途が拡大すると見込まれている。
ドローン・ジャパンの春原久徳会長は、「SIM上空利用のメリット確認や課題抽出で実用化へのステップを進めることが可能」と話している。
■「DMN PoCサービス提供価格」 価格:通常1,100,000円(税別) >限定650,000円(税別) (2020年9月30日まで、初期限定5社までの特別提供価格)
「DMN PoCサービス」Zoomウェビナーの申し込みはこちら https://www.secure-cloud.jp/sf/business/1594868307QdAnrpZI