超狭小空間点検ドローンの開発を手掛ける株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)は7月29日、東京証券取引市場グロース市場に上場した。東京・日本橋兜町の東京証券取引所内にある情報提供スペース、東証Arrows(アローズ)で新規上場を祝うセレモニーが行われ、閔弘圭(みん・ほんきゅ)代表取締役が上場通知書を受け取ったほか、役員も加わり上場祝いの鐘を鳴らした。上場初日は公開価格の310円より144円(46.4%)高い454円で初値をつけ、401円で取引を終えた。ドローン開発を本業の上場で精密機械に分類される企業はLiberaware初めてで、閔代表取締役は「我々がつくる小型のドローンはまさに精密。日本(経済)の強みである精密でしっかり実績を作っていきたい」と抱負を述べた。
Liberaware株はこの日、午前9時の取引開始直後は買い気配のまま値が付かずに推移し、午前10時26分に454円の初値が付いた。10時42分には一時、この日の最高値である465円を付けるなど終日、公開価格の310円を上回る水準で取引が続き、午後3時に公開価格より91円高い401円で取引を終えた。
取引時間中の午前11時にはセレモニーが行われた。東証Arrowsのマーケットの状況を映し出すパネルは赤を基調にした背景に白抜きで「日本取引所グループ 祝上場 株式会社Liberaware 2024年7月29日 東京証券取引所」とメッセージが投影され、株式会社東京証券取引所の青克美常務執行役員がLiberawareの閔代表に上場通知書を手渡し、社員らがその様子を見守った。このあとパネルわきに用意された鐘を打ち鳴らす「打鐘」が行われた。打鐘は社名の入った木槌で、「五穀豊穣」にちなんで5度、鳴らすことが慣例で、閔代表ら集まった社員の中から幹部が2人一組で5組が一回ずつ鳴らした。儀式が終了したあとは、Liberawareを投資などで応援してきた関係者らも加わって記念撮影などが行われた。
Liberawareは高性能小型ドローンIBIS(アイビス)シリーズの開発と機体を活用した事業で知名度を広げ、ゼネコン、電力などエネルギー、インフラなどでの産業で導入が広がっている。廃炉作業が進む東京電力福島第一原発の格納容器内の点検作業では、東京電力が作業で活用したデバイスがLiberaware製であることを2024年2月の記者会見で認め認知が広がった。2021年にはJR東日本スタートアップ株式会社、JR東日本コンサルタンツ株式会社と点群データ取得や鉄道・インフラ業界のデジタル化事業を展開する合弁会社、CalTa株式会社(東京)を設立し、現在、デジタル化ソフトウェアTRANCITYを提供していることでも知られる。
2024年元日に発生した能登半島地震では一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の呼びかけに応じて輪島市などでの災害支援対策に対応して現地に出向き、倒壊家屋内の点検に同社の技術を活用した。
上場初日を迎えた閔代表は「実感はまだありません。これまでしっかりとものづくりをしてきました。ドローン事業の盛り上がりを証明したい。(精密機械に分類されているのは)われわれがつくる小型のドローンはまさに精密。精密っというこの分野が日本としての強みだと思いますし、だからこそここでしっかり実績を作っていきたい」などと抱負を述べた。同社は今後も豊富な屋内狭小空間の点検実績を土台に事業拡大を図ることになる。
ドローン関連事業を本業の柱に位置付ける企業の上場は、株式会社ACSL(東京、2018年12月21日、分類:機会)、ブルーイノベーション株式会社(東京、2023年12月12日、分類:情報・通信)以来となる。
屋内設備点検用の小型ドローンIBIS(アイビス)を開発する株式会社Liberaware(=リベラウェア、千葉市、閔弘圭CEO)がサービス拡充を加速させている。10月28日、現行の定額IBISレンタルサービスに、撮影した動画の「画像処理し放題サービス」と、機体とコントローラやモニタとの通信を安定させる「エクステンションアンテナのレンタル」を追加すると発表した。サービス拡充に伴う料金変更はない。同社は今月、ソニーの高感度CMOSイメージセンサー「STARVIS」を採用して開発した超高感度カメラを搭載した新型IBISのリリースを発表したばかりで、この新型機も現行サービスの中で使えるようになる。
リベラウェアは機体、ソフトウエェアなどを自社開発している。開発した機体などのプロダクトを導入したい事業者向けに、機体のレンタルサービスを展開しており、故障などが生じたさいに回数を問わず修理に応じるサービスや、リベラウェアが開催する操縦講習に何度でも参加できるサービス、動画のアップロード管理・閲覧・編集が可能なクラウド動画管理サービス「LAPIS for Drones」の利用サービスがついている。
今回はこのサービスをさらに拡充し、「画像処理し放題サービス」と「エクステンションアンテナ」を追加する。
「画像処理し放題サービス」は「LAPIS for Drones」の機能拡充で対応する。IBISで撮影した動画データを「LAPIS for Drones」上で申請すれば、3Dモデル、 点群データ、オルソモザイク画像に画像処理ができる。これにより、レンタル機を利用する事業者は、動画加工用の高性能サーバや、専用ソフトウェア、画像処理エンジニアなどを準備する必要がなくなる。動画データを画像処理することで、報告書への貼り付けや、比較検討作業が可能になる。。
また「エクステンションアンテナ」は、操縦コントローラと映像モニタのアンテナを10メートル延ばせる装備。IBISが点検する施設内に設置しておけば、電波の送受信が途切れがちな場所でも、操縦コントローラや映像モニタを施設内に持ち込まずに済むようになり、操縦者の安全性確保や作業効率向上に寄与する。
10月1日には、ソニーが開発した高感度CMOSイメージセンサー技術「STARVIS」を採用した超高感度カメラ搭載の「新型IBIS」について、リリースを発表しており、定額レンタルサービスのユーザーの利用機も、順次新型機に入れ替えていく。
一連のサービス拡充に伴う料金の変更はなく、閔CEOは「設備保全業務のデジタルトランスフォーメーション推進に貢献したいというのがわれわれの思いです。ソフトウェアもハードウェアも自社開発しており、プロダクトは日々、進化しています。定額サービスをご利用頂いているみなさまには、進化したプロダクトを随時提供して参ります」と話している。
株式会社Liberaware(千葉市)は、東京ビッグサイトで開催中のロボット技術の展示会「第4回ロボデックス」で、屋内点検用小型ドローンIBISの自動飛行のデモフライトを初公開した。縦横20センチに満たない手のひらサイズドローンが、点検する個所を指示すると、ドローンが目的地に自動で向かい、搭載したカメラがとらえた画像をモニターに映し出した。デモフライトのさいにはケージのまわりにブースをはみだすほど大勢の来場者が足を止めた。
自動化対応のIBISは190ミリ×180ミリで、同社が得意とする狭隘部監視、点検に対応する。デモではケージ内に設置された3つの点検ポイントを、IBISが自動で監視していく様子を披露した。デモ中に説明員が「設備の点検など定期的に巡回する業務を人の代わりに実施することができます。現在離発着地を自動充電にするための開発も進めています」と話すと、ケージのまわりに集まった多くの来場者がケージ内をのぞきこんだり、モニターを確認したりした。
IBISは狭隘部をフライトさせるために開発されたドローンで、需要家にニーズの変化に応じるように定期的にアップデートを繰り返している。自動化サービスも提供しているが、公開の場でのデモンストレーションは今回が初めてとなった。
同社の閔弘圭代表は「一辺20センチ以内と、自動運転に対応するドローンとしては最も小さいところが特徴です。人の手が届かないところを、人手をかけずに点検できるので、多くの課題にソリューションを提供できると考えています」と話している。
Liberawareの自動運転のデモフライトは、ロボデックスに設置したブースで14日まで実施している。午前11:30、13:30、15:30の3回開催を予定しているが、状況次第では「個別にデモフライトの様子を撮影させてほしい」などの相談にも応じられるという。
株式会社Liberaware(リベラウェア)は2月4日、千葉市から受託した事業として、同市花見川区で直径約1メートルの下水管を、同社の狭隘部点検専門の小型ドローン「IBIS」を使って点検した。道路の下をくぐる約40メートルの区間をIBISが往復し、リアルタイムで管内の映像を地上のモニターに伝送。映像は千葉市建設局の専門家が立ち合い「ひびがよく見えますね」「粉塵でみえなくなることもないですね」などと状況を確認した。
点検は千葉市による地元企業の産業支援事業の一環。千葉市に本社を置くLiberawareが、点検専用に開発し、その後もアップデートを重ねているIBISが、点検の有用性を確認する目的で実施した。
点検対象の配管は、JR新検見川駅から北に約3キロの住宅街に設置された、通常は水が流れていない下水管。道路わきでは天井部がふさがっておらずのぞきこめるが、道路をくぐるところは地中に潜っている。この道路をくぐる約40メートルの区間が今回の点検対象だ。
千葉市建設局下水道管理部の西川勝課長は「配管の中でドローンを飛ばすと粉塵がまきあがって画像がみえなくなったり、気流が安定せずドローンの飛行が不安定になったり、電波が途切れたりすることがあります。今回は狭いところを点検するための特殊なドローンの事業者なので、その有用性を確認することができるための試験的にこの場所にしました」と選定理由を説明した。
点検に使われるIBISはLiberawareが開発した19センチ×18センチ、重さはバッテリーを含めて170グラムの小型機。壁や天井に吸いつくことがないよう、狭隘部点検のための制御を搭載している。無線周波数は操縦で2.4GHz、映像伝送で5.7GHz。点検では、配管内でも安定することができるよう延長アンテナを採用した。LEDライトを搭載し暗い場所を照らすことができる。
実験では、Liberaware技術開発部の野平幸佑シニアマネージャーが操縦を担当。モニターをのぞきこみながらフライトをさせると、地上に設置されたモニターにIBISに搭載されたカメラからの映像が送られてきた。その様子は西川課長ほか、点検に立ち会った千葉市建設局の担当者がのぞきこんだ。西川さんが「左を見れますか」というとIBISの画面が配管の左壁のひびらしい筋を映し出した。千葉市の西川課長は「ひびがはっきり、よく見えますね。粉塵がまってしまうこともないし、見えなくなることもないですね」と感心しながら話した。
西川さんによると、千葉市内には雨水、汚水などの下水管が3700キロあり、そのほかにも排水管などがある。下水管は内部からの点検は必要で、直径25センチから80センチの配管の場合は自走カメラを活用するなどして確認する。それ以上の中口径、大口径は人が入るのが基本だが、直径5メートルほどのものもあり、大きくなると、足場を設置する手間、転落のリスク、有毒ガス発生のリスクがある。効率化の要求の大きくなり、テクノロジーの活用に解決を見出そうとしている。ドローンの活用はその中で大きな期待を担う。
Liberawareの閔弘圭代表は「われわれが求められていることは、点検すべき個所があるかどうかを発見することであって、ドローンを飛ばすことではありません。最近われわれは、点群化など三次元化に力をいれています。重ね合わせて形状変更やひびの増減が分かるからです。キツい、きたない、狭い、暗い空間をデータ化するデジタルトランスフォーメーションで課題を解決していきます。今回の点検の意義も解決に有用かどうかを示すことあります」と意義を説明。
また「IBISは販売ではなくレンタルなので、改善要望は次のバージョンアップに生かせます。実際、常にバージョンアップしていて、7月には次のバージョンアップをします。天井裏の点検には主に特定天井の問題、リニューアルの問題、ゼネコン関連の問題と3種類の課題があり、それを解決したい」と課題解決への意欲を述べた。。
点検に立ち会った千葉市の西川課長は、「ドローンの点検は平成29年度の水路点検、30年度の点検に次いで3年目。下水道点検の課題である調査困難箇所の点検を克服できればいいと思っています」と話した。