屋内設備点検用の小型ドローンIBIS(アイビス)を開発する株式会社Liberaware(=リベラウェア、千葉市、閔弘圭CEO)がサービス拡充を加速させている。10月28日、現行の定額IBISレンタルサービスに、撮影した動画の「画像処理し放題サービス」と、機体とコントローラやモニタとの通信を安定させる「エクステンションアンテナのレンタル」を追加すると発表した。サービス拡充に伴う料金変更はない。同社は今月、ソニーの高感度CMOSイメージセンサー「STARVIS」を採用して開発した超高感度カメラを搭載した新型IBISのリリースを発表したばかりで、この新型機も現行サービスの中で使えるようになる。
リベラウェアは機体、ソフトウエェアなどを自社開発している。開発した機体などのプロダクトを導入したい事業者向けに、機体のレンタルサービスを展開しており、故障などが生じたさいに回数を問わず修理に応じるサービスや、リベラウェアが開催する操縦講習に何度でも参加できるサービス、動画のアップロード管理・閲覧・編集が可能なクラウド動画管理サービス「LAPIS for Drones」の利用サービスがついている。
今回はこのサービスをさらに拡充し、「画像処理し放題サービス」と「エクステンションアンテナ」を追加する。
「画像処理し放題サービス」は「LAPIS for Drones」の機能拡充で対応する。IBISで撮影した動画データを「LAPIS for Drones」上で申請すれば、3Dモデル、 点群データ、オルソモザイク画像に画像処理ができる。これにより、レンタル機を利用する事業者は、動画加工用の高性能サーバや、専用ソフトウェア、画像処理エンジニアなどを準備する必要がなくなる。動画データを画像処理することで、報告書への貼り付けや、比較検討作業が可能になる。。
また「エクステンションアンテナ」は、操縦コントローラと映像モニタのアンテナを10メートル延ばせる装備。IBISが点検する施設内に設置しておけば、電波の送受信が途切れがちな場所でも、操縦コントローラや映像モニタを施設内に持ち込まずに済むようになり、操縦者の安全性確保や作業効率向上に寄与する。
10月1日には、ソニーが開発した高感度CMOSイメージセンサー技術「STARVIS」を採用した超高感度カメラ搭載の「新型IBIS」について、リリースを発表しており、定額レンタルサービスのユーザーの利用機も、順次新型機に入れ替えていく。
一連のサービス拡充に伴う料金の変更はなく、閔CEOは「設備保全業務のデジタルトランスフォーメーション推進に貢献したいというのがわれわれの思いです。ソフトウェアもハードウェアも自社開発しており、プロダクトは日々、進化しています。定額サービスをご利用頂いているみなさまには、進化したプロダクトを随時提供して参ります」と話している。
株式会社Liberaware(千葉市)は、東京ビッグサイトで開催中のロボット技術の展示会「第4回ロボデックス」で、屋内点検用小型ドローンIBISの自動飛行のデモフライトを初公開した。縦横20センチに満たない手のひらサイズドローンが、点検する個所を指示すると、ドローンが目的地に自動で向かい、搭載したカメラがとらえた画像をモニターに映し出した。デモフライトのさいにはケージのまわりにブースをはみだすほど大勢の来場者が足を止めた。
自動化対応のIBISは190ミリ×180ミリで、同社が得意とする狭隘部監視、点検に対応する。デモではケージ内に設置された3つの点検ポイントを、IBISが自動で監視していく様子を披露した。デモ中に説明員が「設備の点検など定期的に巡回する業務を人の代わりに実施することができます。現在離発着地を自動充電にするための開発も進めています」と話すと、ケージのまわりに集まった多くの来場者がケージ内をのぞきこんだり、モニターを確認したりした。
IBISは狭隘部をフライトさせるために開発されたドローンで、需要家にニーズの変化に応じるように定期的にアップデートを繰り返している。自動化サービスも提供しているが、公開の場でのデモンストレーションは今回が初めてとなった。
同社の閔弘圭代表は「一辺20センチ以内と、自動運転に対応するドローンとしては最も小さいところが特徴です。人の手が届かないところを、人手をかけずに点検できるので、多くの課題にソリューションを提供できると考えています」と話している。
Liberawareの自動運転のデモフライトは、ロボデックスに設置したブースで14日まで実施している。午前11:30、13:30、15:30の3回開催を予定しているが、状況次第では「個別にデモフライトの様子を撮影させてほしい」などの相談にも応じられるという。
株式会社Liberaware(リベラウェア)は2月4日、千葉市から受託した事業として、同市花見川区で直径約1メートルの下水管を、同社の狭隘部点検専門の小型ドローン「IBIS」を使って点検した。道路の下をくぐる約40メートルの区間をIBISが往復し、リアルタイムで管内の映像を地上のモニターに伝送。映像は千葉市建設局の専門家が立ち合い「ひびがよく見えますね」「粉塵でみえなくなることもないですね」などと状況を確認した。
点検は千葉市による地元企業の産業支援事業の一環。千葉市に本社を置くLiberawareが、点検専用に開発し、その後もアップデートを重ねているIBISが、点検の有用性を確認する目的で実施した。
点検対象の配管は、JR新検見川駅から北に約3キロの住宅街に設置された、通常は水が流れていない下水管。道路わきでは天井部がふさがっておらずのぞきこめるが、道路をくぐるところは地中に潜っている。この道路をくぐる約40メートルの区間が今回の点検対象だ。
千葉市建設局下水道管理部の西川勝課長は「配管の中でドローンを飛ばすと粉塵がまきあがって画像がみえなくなったり、気流が安定せずドローンの飛行が不安定になったり、電波が途切れたりすることがあります。今回は狭いところを点検するための特殊なドローンの事業者なので、その有用性を確認することができるための試験的にこの場所にしました」と選定理由を説明した。
点検に使われるIBISはLiberawareが開発した19センチ×18センチ、重さはバッテリーを含めて170グラムの小型機。壁や天井に吸いつくことがないよう、狭隘部点検のための制御を搭載している。無線周波数は操縦で2.4GHz、映像伝送で5.7GHz。点検では、配管内でも安定することができるよう延長アンテナを採用した。LEDライトを搭載し暗い場所を照らすことができる。
実験では、Liberaware技術開発部の野平幸佑シニアマネージャーが操縦を担当。モニターをのぞきこみながらフライトをさせると、地上に設置されたモニターにIBISに搭載されたカメラからの映像が送られてきた。その様子は西川課長ほか、点検に立ち会った千葉市建設局の担当者がのぞきこんだ。西川さんが「左を見れますか」というとIBISの画面が配管の左壁のひびらしい筋を映し出した。千葉市の西川課長は「ひびがはっきり、よく見えますね。粉塵がまってしまうこともないし、見えなくなることもないですね」と感心しながら話した。
西川さんによると、千葉市内には雨水、汚水などの下水管が3700キロあり、そのほかにも排水管などがある。下水管は内部からの点検は必要で、直径25センチから80センチの配管の場合は自走カメラを活用するなどして確認する。それ以上の中口径、大口径は人が入るのが基本だが、直径5メートルほどのものもあり、大きくなると、足場を設置する手間、転落のリスク、有毒ガス発生のリスクがある。効率化の要求の大きくなり、テクノロジーの活用に解決を見出そうとしている。ドローンの活用はその中で大きな期待を担う。
Liberawareの閔弘圭代表は「われわれが求められていることは、点検すべき個所があるかどうかを発見することであって、ドローンを飛ばすことではありません。最近われわれは、点群化など三次元化に力をいれています。重ね合わせて形状変更やひびの増減が分かるからです。キツい、きたない、狭い、暗い空間をデータ化するデジタルトランスフォーメーションで課題を解決していきます。今回の点検の意義も解決に有用かどうかを示すことあります」と意義を説明。
また「IBISは販売ではなくレンタルなので、改善要望は次のバージョンアップに生かせます。実際、常にバージョンアップしていて、7月には次のバージョンアップをします。天井裏の点検には主に特定天井の問題、リニューアルの問題、ゼネコン関連の問題と3種類の課題があり、それを解決したい」と課題解決への意欲を述べた。。
点検に立ち会った千葉市の西川課長は、「ドローンの点検は平成29年度の水路点検、30年度の点検に次いで3年目。下水道点検の課題である調査困難箇所の点検を克服できればいいと思っています」と話した。