ドローンの事業環境の整備、技術開発対応について官民の専門家、関係者が協議する「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」(ドローン官民協議会)は8月3日、東京都内のホールで会合を開き、空の産業革命に向けた政府の取り組みをまとめたロードマップの改訂版、「空の産業革命に向けたロードマップ2022」を公表した。ドローンが効果的に社会に貢献することを目指し、運航管理システム(UTMS)を2023年度以降3段階で整備することなどを盛り込んだ。協議会では、レベル4飛行解禁に伴う国家資格制度を含めた制度整備、技術開発、社会実装の取組などについても現状を整理し、参加者が意見を披露した。
協議会は内閣官房小型無人機対策推進室(ドローン室)の仕切りで開催され、都内のホールを会場に非公開で行われた。
公表された「ロードマップ2022」は、レベル4が2022年度中に実現することをふまえ、それ以降、ドローンが効果的に社会に貢献するための高度な運航が可能となる環境整備や、技術開発、災害や物流での実装の加速を盛り込んだ。
環境整備では、運航頻度が高まる中でも衝突を避けられるテクノロジーとして、同一空域内の飛行計画、飛行状況、気象情報などを集約、共有するUTMを重視。段階的な導入を提唱している。2023年度からの第一段階(STEP1)では、UTMの利用を推奨し、UTM制度の整備方針を策定する。この間、同一空域内では単一の運航者による空域の混雑度が低いとみなされる飛行でのUTM活用を進める。
2024年度からは第二段階(STEP2)として、2025年度ごろの実現を視野に、運航管理事業を担うUTMプロバイダの要件整備を進め、空域の混雑度が低いとみられる範囲で、複数の運航者による高リスク飛行でUTM導入を進める。運航事業者が異なるUTMプロバイダを活用することが想定されることから、それぞれのプロバイダ間の接続に関わる技術仕様や官民の役割分担も進める。
その後さらに、指定された空域内で、すべてのドローンやエアモビリティが航空局の認めたUTMプロバイダを活用することで、空域の混雑度が高くなる高密度の飛行を可能にする第三段階(STEP3)に入るが、時期はドローンの管理の要否などを見極めるなど引き続き検討することにしている。
ロードマップ2022ではこのほか、技術開発促進のためスタートアップの研究開発を促進し社会実装をするため、補助金制度と契約制度を組み合わせたSBIR制度の活用を2023年度以降の取組に盛り込んだほか、物流サービス支援のため、河川利用ルールのマニュアル策定にも言及した
官民協議会では、レベル4解禁に向けた制度整備の一環として6月20日導入された100g以上のドローンに対する登録義務に関連し、7月末までに28万7059機の登録があったことが報告された。機体の登録は2021年末に始まっており、義務化直前の6月19日までに21万2980機が登録された。とくに5月末から6月19日までは、6万4296機と登録が殺到した。
国家資格となる操縦ライセンス制度に関連し、7月25日に公表された「マルチローターの実地試験要領案」や7月29日に公表された試験問題サンプルを報告したほか、講習を担う「講習機関」の登録開始日を9月5日、レベル4解禁を定めた改正航空法の施行日を12月5日と定めた政令についても報告した。これにより新制度移行が12月5日と正式に決まり、この日から第一種機体検査が始まり、検査を通過した機体が第一種型式認証の交付を受けることになる。
なお、更新講習機関の登録要件は引き続き検討する。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は4月25日、「ドローン官民協議会(=小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)」がとりまとめた国家資格化に伴う制度変更の方針について、加盟する認定スクール向けに説明会を開いた。協議会の資料や、JUIDAが独自に整理した資料を示しながら、国家資格である「技能証明」を取得するメリットや、取得方法、JUIDA資格保持者の取り扱い、JUIDAのカリキュラムで捕捉が必要な部分などを説明した。国家資格の講習を提供する登録講習機関に転じるスクールの動きが加速しそうだ。
説明会ではJUIDAの鈴木真二理事長は4月20日のドローン官民協議会で制度変更の方針が示されたことや、引き続き検討すべき点が残っていることなどを説明し「みなさまにも引き続きご協力をお願いします」と参加したスクール関係者に呼びかけた。
また国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の梅澤大輔課長が登壇し、制度の概要を説明した。国家資格は「技能証明」と呼び、レベル4飛行に必用となる「一等」と、それ以外の「二等」とがあり、取得には認定を受けた試験機関で学科試験、実地試験を受けて合格することが必要であること、ただし登録を受けた講習機関の講習を受ければ試験機関で実地試験が免除されることなどが説明された。
梅澤課長は「より多くの講習団体が登録講習機関となって質の高い講習を提供頂き、よい操縦士を輩出して頂きたいと思っています」と期待した。
このほか、機体認証、ライセンス、運航管理について説明。機体認証ではレベル4飛行の機体は機体認証を受ける必要があることや、量産機で型式認証を受ければ設計、製造の検査を省略できることなどが説明された。
JUIDAの田口直樹経営企画室長は、JUIDAのスクールに関わる横目について説明した。「技能証明」の取得が、試験機関での受験と、講習機関を通じて実地試験が免除された状態で受験する方法と2通りあることを紹介し、受講希望者に対する説明に誤りがないよう注意を促した。また技能証明を取得するメリットについて、一等は所持しないとレベル4飛行が認められない、二等は、レベル4飛行は認められないものの、特定飛行のうち上空150m以上の飛行やイベント上空などリスクが高い飛行を除き、DID上空、夜間飛行などの飛行の場合には、許可・承認の取得が不要になることなどを説明した。
既存のJUIDAのカリキュラムは、二等の試験に必用なCRMや地上基地などがカバーできていないため、今後対応を検討することが説明されたほか、スクールが講習機関になる場合に備えるべき要件には設備、講師の両面で整える要件があることも説明された。そのうち設備では空域、機体、建物、教則本などの書籍が該当し、講師にも一定の要件を満たすことが求められるなどの説明が行われた。
このほか、具体的な取り組みや今後の方針なども示された。JUIDAによるスクールへの説明会は4月27日にも開催される。
ドローンの「レベル4」飛行の解禁に向けた制度整備や利活用推進策について、官民の有識者が協議する「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は4月20日、東京・霞が関で第17回の会合を開き、これまでの協議をとりまとめ、資料を公表した。操縦の知識、能力を身に着けていることを証明する「技能証明」として「一等操縦ライセンス」、「二等操縦ライセンス」の創設を改めて明記した。学科試験は「一等」、「二等」とも三肢択一式で問題数は一等が70問、二等が50問となる。一等試験の「2023年早期」に実施することを目指し、今年(2022年)7月までに講習を実施する登録講習機関などを策定し、9月に登録申請を始めることを目指す。このほか各地での取組事例が示され、利活用促進として全国でドローンサミットを開催する方針や、国のドローン施策、自治体のドローン活用例をまとめた情報共有プラットフォームの構築を示した。
協議会は東京・霞が関の中央合同庁舎4号館で午前10時から非公開で行われた。
レベル4実現に向けた制度整備のうち、操縦ライセンス制度については「技能証明」とすることを改めて明記。試験は国が指定する「指定試験機関」が行い、国の登録を受けた講習機関の講習を終了した場合、試験のうちの実地試験が免除される。
講習機関については、第三者上空で補助者無しの目視外飛行ができる一等操縦ライセンスの講習ができる機関、二等のみの講習ができる機関、更新講習の期間の3タイプが存在することになると位置付け、それぞれの登録に必用な要件については7月までに策定する。要件は実習空域、実習機、設備、教材、講師が対象になる。登録の申請は9月開始を目指す。各ドローンスクールは各校が要件の満たし具合などから登録する機関を選択する。
また講習機関が適切に運営されているかどうかを監査するために、一定の基準を満たす管理団体の枠組みを活用する。管理団体にはそのほか、教材作成、研修などの提供が期待される。
既存のドローンスクールが発行した技能認証を取得したオペレーターなどの経験者に向けた講習要件も策定し、初学者とは異なる基準で二等操縦ライセンスの取得を促す方針だ。
このほか機体認証制度や運航管理要件なども整理。今後は機体認証制度、操縦ライセンス制度、運航管理要件のそれぞれでワーキンググループを開催するなどして制度の具体化を進める。
協議会ではこのほか、ドローンの利活用促進に向けた技術開発や取組がまとめられた。
国土交通省が力を入れている行政ニーズに対応する仕様の規定化に向けた取り組みや、慶應義塾大学が小田原のみかん農園で行った配送実験、株式会社エアロネクストが山梨県など各地で実施しているスマート物流の実験なども整理された。
ドローンの利活用促進で重要な役割を果たす自治体と連携し、講演や事例紹介のための「ドローンサミット」を9月以降、地域持ち回りで開催する方針も表明した。第1回は9月に神戸市で開催し、内閣官房小型無人機等対策推進室と兵庫県が主催する。
各省庁で分かれているドローン施策や各自治体の取り組みを集約した情報共有プラットフォームを、内閣官房のサイトの上で構築する。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、JUIDAに加盟する認定スク-ル向けに、操縦ライセンスの国家資格化に伴う制度変更の説明会を開く。協議を重ねている「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が4月20日、協議内容の最終的なとりまとめを公表する予定で、JUIDAはそれを受けてとりまとめの内容や経緯を説明する。説明会は4月25日に2回、27日にオンラインで開催される。JUIDAが説明会を開催することで。レベル4解禁後に向けた動きがスクールでも活発化することになりそうだ。
JUIDAが説明するのは、4月20日に開催される「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」で公表される見込みの国家資格化に伴い制度変更が中心となる。制度概要についてはすでに公表されているものの、既存資格保有者の取り扱いなど、昨年6月の公表時に継続案件となっていたポイントが最大の焦点で、今後とりまとめられる政省令の土台となる。
ドローン操縦ライセンスの国家資格化は、難易度の高い「レベル4」と呼ばれる飛行が解禁されるのに伴って導入される制度変更のひとつだ。国家資格は「1等」、「2等」の2種類が設けられる予定で、資格取得者は取得した等級に応じて、該当する飛行が認められたり、事前の航空局への申請が不要になったりする。
国家資格を取得するには、決められた講習を受け、試験に合格する必要がある。国家資格の講習は、「登録講習機関」と呼ばれるドローンスクールで受けられる。
ドローンスクールが国家資格に対応した講習を提供する場合に「登録講習機関」になる必要がある。ドローンスクールは、国家資格に対応する「登録講習機関」になるかどうかの選択が迫られる。ドローンスクールが判断するには、登録講習機関に求められる要件、国家資格に対応した講習に必要なカリキュラムなど、国家資格化に伴う制度変更に関わる情報が必要だ。一方で、ドローンスクールが現在発行している既存の技能認証の取り扱いや、技能認証取得者の新制度移行後の取り扱いについても正式な見解が示されておらず、ドローンスクールは受講希望者から寄せられる問い合わせに、踏み込んだ回答がしにくい状況だ。
国家資格化に伴う制度変更について協議を重ねてきた「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は4月20日に開催する協議会で、こうした点も含めたとりまとめを公表する予定で、JUIDAはそれを踏まえ、変更内容の説明とJUIDAの対応を説明する。
とりまとめの内容はホームページなどでも公表される見込みだ。また、ドローンスクールを管理する「管理団体」に対しては、国交省が制度の概要について説明会を開く方針だ。一方で、個別のドローンスクールが、不明点、疑問点を確認する機会は現時点ではなく、公表された資料を読み解くか、個別に問い合わせるなどの対応をすることになる。このためJUIDAは加盟するドローンスクールに対する説明を開き、とりまとめの概要や経緯、JUIDAの解釈や対応を説明し、スクールが抱える疑問に回答したり、不明点を吸い上げたりする。
今後、スクールや民間企業のレベル4対応がさらに活発化しそうだ。
経済産業省は6月29日、「スマート保安官民協議会」の第1回会合を開き、プラントの監視、点検にドローンなどのテクノロジーを活用する「スマート保安」の具体的な検討に着手した。会合では発電、石油化学プラントなどの産業プラントを取り巻く環境の変化を受け、保安力向上、競争力強化のためにスマート保安の推進を図る重要性を出席者が共有。今後、民間は新技術の実証などを積極的に進め、国はスマート保安推進を阻害する規制、制度を年内をめどに洗い出す。必要に応じて法改正も視野に入る。また先進事例の発信、シンポジウムの開催、「インフラメンテナンス大賞(経済産業大臣賞)」の創設などに取り組み、スマート保安に対する理解を広め、推進を後押しする。
第1回会合は6月29日午前、東京・霞が関の経産省会議室で行われた。民間側からプラントを抱える電力、石油、鉄鋼など9つの業界団体や、2つの保安関連団体から代表者が出席した。梶山弘志経産相のあいさつのあと、「スマート保安推進のための基本方針」(案)が示され、出席者が同意した。基本方針には、産業インフラが高齢化、激甚災害増加、新技術登場などの構造変化や環境変化に見舞われる中、事業継続のための対応が必要であることを明記。官民それぞれが技術導入や規制見直しなどの創意工夫によるスマート保安推進で保安力向上、競争力強化を通じ、国民の安全・安心の向上を図ると盛り込んだ。出席者から基本方針案に賛同する発言が相次ぎ、異論は出なかった。
具体的な取り組みとして、スマート保安の技術導入を促進する規制、制度見直しのためのアクションプランを策定する。アクションプラン策定のため電力安全分野、高圧ガス保安分野など分野別の部会を設置する。
民間の取り組みは、新技術の開発、実証、導入や人材育成が中心となる。この中で「巡視におけるドローンの活用やIoT、AIによる常駐監視、異常検知など新技術の開発、実証、導入に向けた先進的な取り組みを進める」とドローンにも言及された。またスマート保安に精通した人材の育成に取り組むことが書き込まれた。
国はスマート保安促進の仕組みづくりや支援が取り組みの柱となる。規制、制度の見直しのほか、新技術の信頼性の担保のあり方、社会受容性を向上するための方策を検討するほか、民間の新技術導入開発、実証、導入や人材育成を支援する。先進事例を発信するほか、「スマート保安シンポジウム」(仮)を開催して国民の理解を深め、投資を呼び込む。イノベーションを促すため「インフラメンテナンス大賞(経済産業大臣賞)」での表彰に実施する。
梶山経産大臣が「スマート保安への期待が高いことが確認できた。今後いっそう進むことを期待したい」と述べた。
プラント点検へのドローンの活用について、経産省は今年3月、総務省消防庁、厚生労働省と3省合同で組織する「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」で、「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドラインver.2」、「プラントにおけるドローン活用事例集ver.2」、「プラント保安分野における目視検査の代替可能性に関する考察」をとりまとめて公開している。(関連サイトはこちら)
この中で、ドローン活用の有効な場所について、従来のプラントの屋外から、屋外、屋内の両方に拡大されている。また専門の点検員による目視点検を、ドローンが代替できる可能性にも言及している。
プラントは厳密な防爆措置などが必要であるため、点検にはプラントごとに作業に関わるきまりが、それぞれの法令に基づいて定められている。原油タンクの点検は消防法、ボイラーであれば労働安全衛生法、原油を異なる沸点をもつ留分ごとに分類するトッパー(常圧蒸留装置)は高圧ガス保安法などに基づいている。法令は、有資格者が実施することが定めていることもあり、ドローンやほかのIoTデバイス、AIなどで作業を代替する場合には妨げになる可能性があり、スマート保安推進の作業の中で、見直しが必要になる可能性がある。
経産省は、年内をめどに規制、制度の洗い出しを進める。必要に応じて法改正も視野に入る。また、官民協議会や部会の議論の中で、ドローン、IoT、AIなどの知見が必要となった場合には、航空法など、検討範囲外の法律がテーマとなった場合には、関係者の参加を求める場合もあるという。
プラントの点検を有資格者による目視から、データによるモニタリングに移行させる「スマート保安」の議論が本格的にはじまったことで、試行的に導入されているレベルにとどまるプラント点検分野でのドローン、IoT、AIの実装に、はずみがつく期待が高まっている。
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