独自の創意工夫で移住、定住を推進し、成果をあげている境町(茨城県)は4月5日、フードデリバリー大手の株式会社出前館(東京)、ドローン技術開発の株式会社エアロネクスト(東京)と連携協定を締結した。この日は出前館のサイト上に、境町の商店が扱う食品、日用品などの商品を集約できるバーチャルショップ「SkyHub Delivery境町店」が開店し、配達エリアにいる利用者がアプリや電話で注文すると、ドローンやトラックを使い分けて効率よく注文の品物が届けられるサービスを受けられるようになった。この日は協定式と出発式が行われ境町の橋本正裕町長が最初の注文を実演し、出前館のロゴがついたエアロネクストの物流ドローン、AirTruckが地元で焼かれたピザを乗せて離陸した。境町にとっては町民生活の利便性向上を期待する取り組みで、境町は地元の商工会と連携して商店に加盟や商品登録を呼び掛けるほか、クーポンの活用など利用促進を図る方針だ。ITツールやドローンに不慣れな利用者が注文をしぶる“注文ハードル”の引き下げへの効果にも期待が寄せられている。
協定式と出発式が行われた境町は、鉄道の駅がないことによる利便性の不足を、子育て補助、英語教育支援、自動運転バス運航など独自の創意工夫で補う意欲的な政策を打ち出していることで全国的に知られる。買い物に不便を感じる買い物弱者の増加を抑えるため、ドローンを使った配送の導入にも早くから前向きで、この日の協定で、その具体化の第一歩に踏み切った。
デジタルツールには初心者や高齢者が敬遠しがちと言われがちなことから、いわゆる「注文ハードル」を乗り越える期待も寄せられる。その中で今回の協定式と出発式は関係者が多く出席するなどにぎわいが演出され、初めての利用者が興味をひくとみられる。
境町役場内で行われた協定式では境町の橋本正裕町長、出前館の藤井英雄代表取締役社長、エアロネクストCEOで同社の物流子会社、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)代表取締役を兼ねる田路圭輔氏が協定書に署名した。この様子を、境町幹部職員、町議会、境町商工会、昨年(2022年)10月3日に境町、エアロネクストとともに「ドローン、自動運転バスを含む次世代高度技術の活用に関する協定」に署名したセイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)の河合秀治執行役員、BOLDLY株式会社(東京)の星野達哉氏、株式会社セネック(東京)の和歌良幸副社長も見守るなど、会場には関係者が集結した。
協定式後の出発式は、境町役場から約2キロの道のりの旧ゲートボール場で行われ、協定式参加者に加え、来賓、地域関係者を含め100人を超える参加者が新サービスの門出を祝った。会場には式典用のテント、ランディングパット、神事用の八本足などの神具も設営された。式典では橋本町長をはじめ関係者のあいさつのほか、永岡桂子文部科学相、若宮健嗣前万博相の祝電が披露され彩を添えた。ドローンの安全祈願の神事が地元香取神社の神職も執り行われ、参加者の期待を高めた。
橋本町長は式典の最中、促されて着席のままタブレット操作して出前館での注文を実演すると、これを合図に地元のピザ店で焼かれたピザがトラックで運ばれ、容器ごとドローンに積まれた。離陸準備が整ったところで、協定式に調印した橋本町長、出前館の藤井代表、エアロネクストの田路CEOがボタンを押すセレモニーを行い、出前館のロゴの入ったドローン、AirTruskが離陸した。
境町の橋本町長は式典で「協定は、ドローンを使った配送サービスを取り入れることで、日々の生活に困らないようにするためです。かつて栄えていた場所で人口が減り、高齢化が進み、不便だから移ると言って他の自治体へ引っ越してしまう状況も出ています。今回の協定で、さまざまな物が届くようになります。課題を少しずつ解決し、住み続けたい町づくりを目指していきます」と述べた。子育て、給食費補助、英語教育、自動運転バス、効果的なふるさと納税など独創的な政策を次々と牛出してきた橋本町長の発言で、この事業は「住み続けたい町」の一端を担うことになった。
エアロネクストの田路CEOは、「今回の取り組みのコンセプトは“町まるごと出前館”で、このような取り組みは今回が日本で初めてです。これまで出前館の配送サービスは大都市中心でしたが、これからは校外の社会課題解決のサービスにもなります。今回の取り組みで地域の課題解決に役に立つとともに、出前館のサービス空白地域の解消に進んで参ります。境町が運航している自動運転バスとの連携も検討しています。ドローンの飛行も現在のレベル3ですが、レベル4への準備も進めています」と述べた。
出前館の藤井社長は「市街地以外もカバーすることで、高齢者や買い物難民に生活必需品を届けていきたいと考えています」と述べた。藤井社長は、機体価格が下がれば、郊外型ビジネスでも採算性が展墓できる可能性があると見込む。一方で、初心者や高齢者がIT機器を敬遠することなどが理由で利用をしぶる「注文ハードル」を課題にあげ、今後、引き下げへの対応を模索する考えだ。一問一答は以下の通り。
Q 今回は校外での事業となるが、境町での事業の意義は
藤井社長 「コストの中では機体金額が占める比率が大きいので、電気自動車が出たころのリチウム電池に似ている状況かと思います。当初は高かったものが下がってきました。機体の金額も下がれば運航コストが下がります。そこはエアロネウストさんが試算しています。現状では配送は人海戦術です。自転車やバイクで運んで頂き、お1人あたる500円とか600円とかをお支払いしているのが現状ですが、ドローンだと機体の金額を含めても100円とか200円とかになることが見込めます。時代が進めばコスト効率は良くなると思います。それ以外に規制緩和も含めて、われわれとして取り組まないといけないことは多くあります。市街地では自動配送ロボットの利用などが検討要素になるかと考えています」
Q 幅広い選択肢から選ぶ基準は
藤井社長 「まずは安全性。あとは考えられるハードルが低いものをテストして決めて行くことになると思います」
Q 定着には利用者が実際に注文するかどうかが重要と聞きます
藤井社長 「これも今回を含めてテストしてみていくことになります。今回、配送時間帯を一日に2回に設定している理由には、そういった意味もあります。今後クーポンを使って利用者が使いやすくなるかどうかも見ていきたい。スマートフォンに慣れていない地域もあって、最初の注文ハードルさえ下げていけば、その後も注文して頂けるのではないかということは、いままでの実験で実証できている部分があります」
Q 境町の取り組みの印象は
藤井社長 「橋本町長のリーダーシップで、商工会も含め幅広い団体の方にご参加頂けました。加盟店リストにある地元の名店は、自治体が入っていなければなかったでしょう。私たちの営業だけでは難しかったと思います。つながりの強い地域では特に自治体と連携する強みを感じます。今回も橋本町長がきっかけを作ってくれたと聞いています。境町での取り組みは、ここでスタートさせたことをある程度パッケージ化して、他の地域にも展開していければよいかなと考えております。他地域に導入するさいのスピードもあがると思います」
Q 出前館のサービスとしてラインナップに入る可能性もある?
藤井社長 「そうですね。私たちがこれまでサービスエリアにできなかったところをエリアにできる、ということが、ビジネスの観点ではあります。コロナをこえて一過性のサービスではダメだです。わたしたちのサービスが継続的に拡大できるようにするには、ユーザー、自治体、事業者のみなさまに、選ばれて愛されるサービスでないといけないと本質的には思っています。その中で社会課題解決にわれわれのサービスが寄与することはすごく重要だと思います。とくに自治体さまとは、その地域の課題解決になるソリューションの一部として、われわれのパッケージをお届けできたらいいなと考えています」
株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、山口県山口市で重ねてきたリハーサル飛行を収めた動画を公開した。
リハーサル飛行は、山口県山口市の「山口きらら博記念公園」内に設けた飛行試験場で春から行われていて、動画には大阪・関西万博のデモフライトに使われるSD-05が離陸し、移動し、向きを変えて飛行するなどの様子が納められている。
大阪・関西万博では7月31日から8月24日まで、火、水曜以外の原則週5日の予定で、来場者の前で飛行する様子を公開する。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら