国家資格であるドローン操縦ライセンスの教習所「登録講習機関」になるための申請手続きをめぐる現状について、申請者側の事情にも当局側の事情にも精通している黒沢怜央氏(株式会社ジーテック代表取締役・行政書士)に聞く最新情報第3弾。登録番号が発番されたあとの講師研修や修了審査員研修の方法について掘り下げた。修了審査員の研修はすべてeラーニングで行われる見通しだ。(文中敬称略)
ーー登録番号の発番が始まったようですが、登録講習機関の講習開始に向けての手順を改めてお聞かせください。
黒沢 はい、私どもがサポートさせていただいているスクール各社にも登録免許税納付通知が出てきております。登録免許税の納付後に4桁の登録講習機関コードとTから始まる8桁の事務所コードが発番され、その後、登録証が郵送されることになります。発番後にやらなければならないことが多いので、流れをまとめてみます。次のようになります。(表1参照)
ーー登録講習機関コードが発番されたあと、講師研修を行う前に講習事務規定等の届出をする必要があるのですね?
黒沢 はい、講習事務規定に別添資料として作成して添付しなければならない文書が20種類以上あるのですが、その中に「登録講習機関管理者及び講師(修了審査員を含む。)に対する研修指導要領」がありまして、こちらを作成して届出をしたあとでなければ講師や管理者の研修を行うことができません。
ーー20種類以上ですか。こちらはまた別の機会に取材させてください。各スクールは講師研修を行うためには、研修指導要領を届け出てからでなければならないのですね。研修で行わなければならない内容等は決まっているのでしょうか?
黒沢 はい、告示第2条第2項及び別表第5に研修内容が具体的に記載されていますので、こちらに紹介します。現在のパブリックコメントを募集していますが、こちらが最新のものです。この内容でおそらく確定します。
ーーこの6番目の修了審査要領(実地)の部分が、指定試験機関(一般財団法人日本海事協会)が実施するということですか?
黒沢 はい、そのとおりです。まずは1~5の研修を各登録講習機関で行い、その後、修了審査員になられる方は6の研修を受けていただくことになります。
ーー修了審査員の研修はいつ、どこで実施されるのでしょうか?
黒沢 日本海事協会様にも確認をさせていただきましたが、こちら全てeラーニングでの実施ということです。登録番号が発番されましたら、申し込みをして、専用のeラーニングアカウントをもらい、ログインいただいて研修受講料を納付後、各講師に受講いただくことになります。
ーーすべてeラーニングなのですか? 自宅でも受講できるのでしょうか?
黒沢 はい、やはり全国に登録講習機関が設立される見込みですので、現地での実施は現実的に難しいとの判断かと思います。各講師の方は自宅で受講いただくことも事実上できます。ただ当然しっかりと視聴する必要がありますので、登録講習機関としてどう管理をするかが重要になると思います。
ーー視聴した記録のみで修了審査員になれるということでしょうか?
黒沢 いいえ、視聴後に確認テストがあるようです。こちらの確認テストは2回まで受けることができます。それに合格しない場合、再度、研修の申し込みをして、受講料も支払わなければいけません。また、eラーニングの受講時間ですが、2等は3時間半、1等は4時間半の受講時間であると聞いております。
ーー実際に講習を開始するためには登録講習機関として運営体制を固めて、各講師の方たちの研修をしっかり行っていく必要がありそうですね
黒沢 はい、特に法施行までのこの時期、情報が錯そうして混乱してしまうスクールが多いかと思います。正しい情報を得ながら、登録講習機関として継続できるように一つ一つ丁寧に準備していきましょう。
黒沢 怜央 Kurosawa Reo 株式会社ジーテック 代表取締役 Academic works 行政書士事務所 代表行政書士 ドローンやシェアリングエコノミー、FinTech、スマートシティといった先端領域の法規制を専門とする。2018年1月、行政領域におけるITソリューションを軸とした(株)ジーテックを設立、代表取締役に就任。民泊許可・届出手続のクラウドサービス「MIRANOVA(ミラノバ)」やドローンの飛行許可・承認手続のクラウドサービス「DIPSコネクト」等を展開。現在、行政手続のデジタル化に向けて、デジタル庁、デジタル臨時行政調査会への提言や地方公共団体におけるDX推進アドバイザー等も行う。
政府は3月9日、ドローンの操縦ライセンス制度や、機体の安全性を保障する認証制度の創設などを柱にした航空法改正案を閣議決定した。2022年に第三者上空での補助者無し目視外飛行のいわゆる「レベル4」などのリスクが高いと言われる飛行を解禁し、ドローンの活用を広げることが目的。政府は改正案を今国会に提出し成立を目指す。
ドローンの「レベル4」飛行解禁に向けた航空法改正の柱は、国が操縦者の技能の認証する操縦ライセンスの創設と、機体の安全性を保障する機体認証制度の創設だ。このうち操縦ライセンスは、第三者上空の上空を飛ばせる高度な技能を認証する「一等」と、それ以外の「二等」に分類する。操縦ライセンスを取得するには国が指定した試験機関で学科と実技の試験を受けて合格する必要がある。ただし、国に登録した講習機関の講習を受けてカリキュラムを修了すれば、試験の一部、または全部が免除される仕組みも創設する。取得できるのは16歳以上で、3年ごとに更新する必要がある。
「レベル4」などリスクの高い飛行は現在、許可されていないが、新制度が創設されると、一等操縦ライセンス取得者が、認証された機体を、許可・承認を受けた場合に、飛ばすことができる。
操縦ライセンスの要件や取得するための試験内容、講習内容は今後検討する。指定試験機関や登録講習機関は民間を活用する方針で、その要件も今後定める。機体認証の要件も今後具体化する。
なお国交省航空局のHPに掲載されている「講習団体」や「管理団体」などのドローンスクールや、講習団体が発行している技能認証は、国交省は今後も維持する方針だ。しかし新制度導入後に、技能認証取得者の操縦ライセンスへの移行の可否や、講習団体が登録講習機関になるための要件など、現行の仕組みと新制度との接続部分については検討が進んでおらず、今後の検討に委ねられることになる。
このほか、事故発生時の国への報告の義務付けや、運輸安全委員会が調査対象とする航空事故にドローンに関する事故のうち重大なものを追加することも盛り込んだ。
今回閣議決定された航空法改正案はドローンの飛行に関わるものに加え、①航空ネットワーク確保のための交通運送事業基盤強化方針の策定②保安検査の受検義務付けなど航空保安対策の確実な実施ーが3本柱だ。
閣議決定を伝える国交省のサイト
補助者無し目視外での飛行など、いわゆる「レベル4」でのドローン飛行の実現に向けて整える制度を検討する政府の検討小委員会が3月8日、これまでの議論を整理した「中間とりまとめ」の成案と、それを図案化した「概要」を公表した。レベル4を含むリスクの高い飛行について、機体認証を受けた機体を、操縦ライセンスを持つ操縦者が、許可・承認を受けた場合に飛行ができるなど、これまでの議論を整理した。今後、これを土台にして詳細の検討に入る。
中間とりまとめと概要は、検討小委(「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会」)が2020年5月から続けてきた議論を中間的に整理したもの。レベル4での飛行の重要性と、レベル4の飛行を解禁するにあたり整備が必要な制度の方向が示されている。2021年1月19日には、事務局が示した「中間とりまとめ(案)」を土台に意見を交換し、委員が了承したことを受けて、3月8日に「(案)」をはずした成案を発表した。
レベル4の解禁に向けた制度を検討するにあたり、飛行リスクの大きさごとに3段階に区分けすることや、国が機体の安全性を認証する制度(機体認証)や、国が試験を実施し、操縦者の技能を認証する、いわゆる操縦ライセンスを創設することを盛り込んだ。
中間とりまとめによると、機体認証は「国の登録を受けた民間検査機関」が実施する。操縦ライセンスの試験も、「国の指定を受けた民間試験機関」が担う。また「国の登録を受けた民間講習機関」の講習を受けた場合には、試験の一部、または全部が免除になる。
また操縦ライセンスは「レベル4」を含むリスクの高い「カテゴリーⅢ」に分類された飛行ができる「一等ライセンス」と、カテゴリーⅡまでに対応した「二等ライセンス」とに分けられる。レベル4飛行には、認証を受けた機体を、一等ライセンスを取得した操縦者が、許可承認を受けた場合に認められることになる。
ライセンスには機体によって限定を付与することや、3年の有効期限があること、更新手続きが必要なことなどについても言及している。
今回の中間とりまとめの公表を受けて、今後は制度を運用するための詳細の検討に入る。機体認証では安全基準、国からの整備命令の方法、不具合情報の周知方法検討など、操縦ライセンスでは、ライセンスの区分ごとに求められる知識などの具体的な内容、試験内容、登録講習機関のカリキュラム、指定試験機関に求められる要件、運航管理での飛行の安全を担保するために必要な措置などが検討される見通しだ。
なお、今回の議論で、ドローンの飛行が国の許可・承認をベースに認められる点について変更を求める議論はない。新制度移行後も「操縦ライセンスがないTドローンを飛ばせない」ということではない。
一方で、中間とりまとめは、既存の民間スクールである「講習団体」や、それぞれの講習団体が提供してきた技能認証、「講習団体」を束ねてきた「管理団体」の新制度移行後の位置づけについては言及していない。国交省は管理団体に対し、「取り扱いは変わらない」と説明をしているが、ドローン行政の中での位置づけは激変することになり、今後議論が高まる可能性がある。
講習団体、管理団体、技能認証は、2017年に国交省航空局がHPで公表をはじめた。その理由を国交省は「無人航空機の操縦者への講習会の受講を促し操縦技能の底上げを図るため」と説明している。講習団体が発行する技能認証を取得した場合、許可・承認の手続きを簡素化することが認められており、現時点ではこの仕組みは今後も維持される見通しだ。この点から国交省は「変わりはない」と説明しているとみられる。
一方、新制度移行後には、新たに国の操縦ライセンスが発行され、「レベル4」での飛行許可を受けられる付加価値を「一等ライセンス」が誕生する。国の操縦ライセンス取得のための講習は「登録講習機関」が担う。既存の講習団体は、経営環境として、強力な競争相手に集客活動をする必要に迫られることになる。「レベル4」での飛行を希望する資格取得希望者には、講習団体は集客が難しくなる。
一部の講習団体からは、レベル4の飛行に関わらない「カテゴリーⅡ」部分に対応する操縦ライセンスの「二等ライセンス」は既存の講習団体が担えるようにできる要望が出ているが、調整は難しいとみられている。
中間とりまとめを土台にした今後の議論は、講習団体、管理団体の今後の経営方針を左右する可能性もある。
【中間とりまとめ】国土交通相の諮問機関、交通政策審議会の航空分科会技術安全部会が、レベル4実現環境を検討するために設けた「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会」が、2020年5月から続けられてきた5回の会合などの結果を中間的にとりまとめた15ページの文書。2021年1月19日の第5回会合で事務局が示した「中間とりまとめ(案)」について、委員の了承を取り付けたことで3月8日に「(案)」をはずした成案として公表した。