ドローン産業は空飛ぶクルマの研究、開発、運用をはじめとした活用の議論が熱を帯び、より広い産業、多くの層から注目されています。そこでドローン研究の第一人者で東京大学名誉教授・未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二氏、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発に携わった航空機開発に詳しいPwCコンサルティング合同会社 顧問(Aerospace&Defense 担当)の宮川淳一氏が最新動向や産業利用拡大に向けた課題などについて対談しました。モデレーターはドローンや空飛ぶクルマ関連の業務・技術支援に携わるPwCコンサルティング合同会社ディレクターの岩花修平氏が務めました。今回は、今後のドローンの未来を切り開くのは、航空機業界以外の分野から参入したスタートアップ企業などの次世代リーダーである可能性を示し、従来の航空機産業を築き上げてきた先人たちとどう協力関係を築くべきかといった方向性について話し合った前半の様子をお届けします。(文中敬称略)
岩花氏 2015年4月の「首相官邸無人機落下事件」をきっかけとして、社会的な観点も踏まえて無人航空機の法規制に関してもさまざまな検討があると聞いています。
鈴木氏 首相官邸無人機落下事件が起こった2015年は、国内のドローンを取り巻く環境が大きく変化した年でした。同年に航空法が改正され、規制が強化されるなど制度化が進みました。一方で、ルールの制定により、正式に利用する際の根拠ができることになるため、事業者はむしろ歓迎しました。この改正は、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、会員とともに安全ガイドラインを国土交通省、経済産業省のアドバイスを得ながら自主的に策定していたことが基礎になったという自負があります。3年後の2018年には、安倍晋三首相がドローンで物流ができるようにすると宣言し、産業化へ向けた動きが加速しました。
岩花氏 2022年に「目視外及び第三者上空等での飛行(レベル4)」に関する規制緩和が見込まれていますが、この動きによって大きく活用の拡大が見込めそうですか。
鈴木氏 第三者上空の目視外飛行というと、2022年に市街地を大型ドローンが飛び交うことを思い描かれる方がいらっしゃるかもしれませんが、現在の技術や安全レベルでは難しいと感じます。リスクを低く抑えられる状況から、段階的に進めていく必要があります。日本では、人口集中地区(DID)では許可なく飛行することが全面的に禁止されていますが、都市部の中でも相対的にリスクの少ない飛行はかなりあります。例えば川に沿った飛行や建物の点検のための飛行、空撮のための小さなドローンの飛行などです。安全が確保されれば、都市部でドローン飛行を許可するように規制を緩和する必要があります。そうしたところから、レベル4が始まると考えています。ただし、現実には、地方でのドローン飛行を重ねて、ステップを踏みながら次第に安全の確保が検証され、空域が広がっていくことになるのではないかと考えています。
岩花氏 小型無人機に関する関係府省庁連絡会議(官民協議会)では、「目視外及び第三者上空飛行」の実現に向けた検討が進められています。今後の論点や方向性、スケジュール感などについて教えてください。
宮川氏 小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発で、2007年にプロジェクトマネージャーとなり、2008年には全日本空輸(ANA)にローンチカスタマーとなっていただき、開発がスタートしました。当時から型式証明(TC)の取得は極めて困難な作業だという認識で、今でも苦労していると聞きます。日本の航空業界では、航空法は「きっちり学んで、守るもの」という意識が強いように感じます。これに対し、ボーイングやエアバスなど海外の航空機メーカーの関係者と話していると、「航空法というのは参加してつくるもの」という発想が主流です。
岩花氏 「守る」だけでなく、つくることに参加する発想ですね。
宮川氏 米連邦航空局(FAA)の使命を謳ったミッションディスクリプションの中は、「米国の国土の空の安全を守る」としたうえで、「航空産業の育成に資する」というものもあると聞きます。ドローンの登場でパラダイムシフトが起こっているときに、どのようなレギュレーションを作っていくかを考えることは、日本にとっては絶好のチャンスです。スペースジェットが参入障壁で苦しんでいるように、従来の有人航空機に関わる航空法制は欧米主導で定められており、日本は学習・追従するしかありませんが、無人機について、人口密集地と過疎地を抱える日本が主導して、もしくは積極的に参加して国際協働で法制制定に関わっていくべきです。
鈴木氏 全くその通りです。有人航空機の世界では、欧米がはるか彼方を飛んでいます。一方で、無人航空機、特に小型のドローンは世界中で同時に始まったわけですから、日本もルール作りにコミットできるはずです。国際標準化機構(ISO)ではドローンの委員会が設置され、最近になって日本から多くの専門家が参加しています。また、ワーキングの「コンビナー」と呼ばれる座長も日本から出すなど、国際的な業界標準化にむけて日本も活躍しています。特に日本がリードしている分野はオペレーションやトレーニング、ドローン運航管理システム(UTM)です。ただ、機体製造に関しては中国が大きな力を持っています。
岩花氏 ISOの国際会議に日本から積極的に出席しているのは良い流れだと思います。その延長で、今後は法規制の整備なども国際協調の中で、日本が主導的な立場をとることが期待されます。
鈴木氏 標準化で主導的な立場を取ることは、産業化を考えると極めて重要です。例えば、電気自動車のバッテリーの充電システムは日本勢が標準化に後れを取り、そのうちに欧州市場などに参入障壁ができてしまったと聞いています。国内では、新しい分野ですので、官民合わせて制度作りや研究開発テーマの設定を協議する環境が2015年度からスタートし、毎年ロードマップを改定しています。これも一つの標準化です。縦割りの組織で、しかも会社間の競争の厳しい日本では、こうした例は珍しいと思います。他の分野でも、ドローンのモデルにならった官民協議会が作られています。例えば、「空の移動革命」を目指した官民協議会が2019年に設置されました。
岩花氏 政策として、ドローンの機体や操縦者の情報登録や「車検」のような許認可制度など、管理制度の導入によるメリットとしてどのようなことが考えられますか。
鈴木氏 欧米の場合は、ドローンがテロに使われることに対する恐怖心が強く、誰が何を所有しているかを把握しておくことは重要です。一方、日本は比較的に安全と考えられ、危機意識は高くありませんでした。しかし、最近、訪日外国人旅行者などが、日本の航空法をしっかり理解せずにドローンを飛ばす事態が起こっています。関西国際空港の滑走路付近でパイロットがドローンのようなものを目撃し、安全確認のため全ての航空機の離着陸を停止する事態になりました。しっかり管理しないと、自由な飛行にブレーキがかかってしまうので、管理された状態をつくることは必要であると思います。
岩花氏 管理された状態をつくるためにどのような取り組みがされているでしょうか。
鈴木氏 レベル4の実現に向けた官民の検討会において議論を開始し、先ごろ中間報告を出しました。リスクが高くなった場合、そのリスクに応じた機体の安全性や検査制度、操縦者の資格や、管理方法が求められるというのは各国共通の認識です。「リスクベースアプローチ」と呼ばれています。登録者制度は事故時に所有者を特定するというものですが、どちらかというと所有者の意識を高め、管理を容易にするとともに、不正利用を防止する(特にルールを知らない外国人旅行者)意味が大きいと考え、米国でも2015年に導入されています。
岩花氏 リモートIDの導入でリアルタイムに機体の飛行を管理することや、無登録のドローンを排除することも検討されています。
鈴木氏 ドローンへの対処に関しては、特にテロの危険性が高い諸国で早期に検討が始まりました。日本ではその認識も薄かったのですが、先ほど述べた通り、関西国際空港で不審なドローンらしきものが見つかり、1時間ほど航空機の飛行が停止された事案もありました。また、2020年は東京オリンピック・パラリンピック競技大会も開催されますので、他人事ではなくなっています。警察や自衛隊、国土交通省もそのための予算を計上し、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)もリモートIDの研究に着手しました。リモートIDはドローンが自らのIDと位置情報などを周囲に発信しながら飛行するもので、米国では2020年早々に法案が、欧州では2020年からその装着を義務づけようとしています。登録しても番号を機体につけるだけですので、遠くからは全く見えません。そのために、WifiやBluetooth、LTEなどの方式で電波を周囲に発信しながら飛ばそうというものです。運航管理の在り方を検討する日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)では福島ロボットテストフィールド(福島RTF)を使ったリモートIDの実証実験を行ったところです。これらは本当にドローンなのか、正規に登録されて飛行するドローンなのか、不正なドローンなのかを判定するためにUTMと連携して使用することが想定されています。テロ行為を行おうとするドローンへの対処は警察や自衛隊の課題ですが、さまざまな方式が提案されています。
岩花氏 日本ではJUIDAを代表とした操縦者、運航管理者向けの資格が既に存在し、一定の知名度と資格者を輩出していますが、今後、運航管理システムや目視外飛行、自律航行が進むと新たな操縦者、運航管理者要件が出てくると想定されますが、資格制度にどのような変化が見られそうでしょうか。
鈴木氏 レベル3においては、資格があれば飛行申請の許可が簡単におりそうです。レベル4および明確な規定のなかった25キログラム以上の大型ドローンに関しては、より高いレベルの資格が要求されるというのも国際的な共通認識です。JUIDAでは個人向けに「無人航空機安全運航管理者」という資格を出していますが、UTMが普及するとそのための管制官に相当する資格も必要になり、運航事業者に対する承認制度も必要になると思います。
岩花氏 「目視外及び第三者上空飛行」の実現に向けて空域の管理や飛行機体の管理のためにUTMが必須の仕組みになると想定していますが、今後の普及に向けたスケジュールや関連する法規制、海外との連携、カウンタードローンとの連携の可能性などについてご意見をいただけますでしょうか。
鈴木氏 UTMに関しては、小規模なものは商品化され既に利用されていますが、広域においてそれぞれのUTMを統括するスパーバイザーとしてのUTMをどう設計し、どのように運用し、だれが管理するのかという大きな課題があり、国際的にも未踏の分野です。現在では、長距離を飛行するドローンもなく、高密度の利用もないわけですから、将来に向けた投資にもなりますが、個人的には、高度なセキュリティーが要求される空港や原発、大使館などの周囲では、UTMが今すぐにでも必要と感じています。ただ、まだUTMの基本方針も明らかになっていませんので、スケジュールも明確ではありません。将来、長距離飛行のドローンや、高密度運航にも対応できるアーキテクチャーを早期に固める必要があります。ISOの標準化作業も始まったばかりです。
岩花氏 PwCコンサルティングにおいてもドローンを利用したビジネスを海外でも展開したいというクライアントの声が多く聞かれるため、規格などの標準化の取り組みも重要だと考えています。海外における無人航空機の標準化や法規制、知財、利活用の動向なども調査していますが、グローバル展開する企業にとって海外の技術開発動向、法規制と足並みを合わせることが重要と感じています。海外の技術開発、法規制と歩調を合わせるために、日本として何か取り組んでいることなどはありますか。
宮川氏 無人機に関わる標準化は、モビリティ専門家を会員とする米国の非営利団体であるSAE(Society of Automotive Engineers)などがすでに委員会を構成して議論を進めており、日本は出遅れ感が強いと言えます。標準化も従来は学習・追従と捉えてきた日本の産業界に、少なくとも参加を促すことが必要になります。
鈴木氏 大型ドローンや電動航空機に関してはそうですが、小型ドローンに関しては、特に電波法や法規制が国によって異なるという課題があります。機体はドローン最大手のDJIがほとんどですので、国によって異なる制度が現時点での大きな課題です。ISOの国際標準化が進めば機体や運用などに関しては世界で共有化が進むと思います。各国で電源のコンセントが違ったり、昔の話ですが携帯電話の方式に違いがあったりしたこともあり、その際は本当に苦労しました。
岩花氏 人が乗ることも想定する空飛ぶクルマの実現に向けた検討も進めていると思います。これは無人航空機の延長としてとらえるのか、それとも技術的にも法規制面でも全く別のものと定義されるのか、どちらになるでしょうか。
鈴木氏 技術はドローンをベースに電動のマルチコプターで進むと思いますが、法制度などは有人機の超小型版と位置付けられるので、小型航空機のルールを参考にして決められていきそうです。そうなると日本にとっては不利となりますので、早急な整備が求められます。
宮川氏 空飛ぶクルマは従来の航空製造事業「上」から降りてきた人たちと、ホビー用を代表とする新規の航空デバイス製造業「下」から昇ってきた人たちに分かれます。昔は、ドローンは鳥や凧と同じ扱いでしたが、今や、下から上がってくる「ディファレントスピーシーズ(異なる人種)」が出てきて、どのように折り合いをつけるべきか戸惑っている段階だと思います。これは私見ですが、この世界を発展させる人たちは、下から上がっている新しい人種ではないでしょうか。最近はロケットをつくっているスタートアップ企業が多いですが、こうした新しい人種が、新しい技術を引っ張っていくという気がします。私も含め、上からの人たちは極めて保守的な考え方が多い。飛行機の場合は、落ちることが許されません。もし、不具合が見つかれば臨時対策、恒久対策と完璧を期す必要があります。
鈴木氏 確かにドローンを進めてきた人たちは航空機とは別の世界の人たちです。違う人種の人たちが進めてきたから、うまく進んできた側面もあります。しかし、空飛ぶクルマが人を乗せて飛ぶとなると、確実に安全を担保しなければなりません。これは上の世界の人たちの領域です。今後は、上の人たちと下の人たちをどうつないでいくのか、まさに今、大激論が交わされています。
宮川氏 私が三菱重工時代に有人機でやってきたのはシステムインテグレーションです。無人機を安全に飛ばすには、機体のシステムだけを見ていては不十分です。すぐに思いつくだけでも、無人機を最終的に確保するには、地上装置や通信インフラ、管制インフラ、法制、社会的受容性をどう調整するか、物理的な攻撃とサイバーの面でのセキュリティー、パイロット育成などの運用支援など、数々あります。もっと広い視野で、システムで支えていく必要があるのではないでしょうか。極論すると、機体が落下することを予め想定して、どのように安全安心をつくり、価値を享受していくのかという発想が重要になってきます。
鈴木氏 米国FAAでは小型航空機の型式証明の方式が最近大きく変化しました。コックピットの液晶パネルのような新しい技術を積極的に利用したいという理由からです。そこではパフォーマンスベースのルールが採用され、その性能の認証に、業界団体のコンセンサスで提案されたものが採用されるという劇的な変化が起きています。空飛ぶクルマの認証を従来の方法で行っていては非常に時間とコストがかかってしまいますので朗報とはいえますが、日本にそのノウハウがほとんど入ってないのが問題です。(後編に続く。PwCはドローンによる課題解決に力をいれていて「ドローン・パワード・ソリューション」のWEBページで情報を提供しています。ページ内でも本対談を御覧頂けます)
テクノロジーの大規模展示会「CEATEC2024」は10月18日に閉幕し、4日間に112,014人(前年比25.8%増)の来場者が足を運んだ。最終日の18日には閉会の午後5時直前まで多くの来場者でにぎわった。ドローン関連でもブルーイノベーション株式会社の熊田貴之代表、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の嶋本学参与が登壇し、ドローンジャーナルの河野大助編集長が進行役を務めた災害対策のパネルディスカッションに立ち見も含め多くの見学者を集めた。
CEATECを主催する一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA、津賀一宏代表理事/会長=パナソニックホールディングス株式会社取締役会長)が閉幕を発表した。808社/団体による展示、203の講演などが催された。開催は25回目で、今回は一般社団法人日本自動車工業会が主催する「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」との併催となり、10月15日~18日の4日間に登録来場者数を112,014人(前年比25.8%増)集めた。
最終日も終日入場者の流れが多く、会場は閉幕まで賑わいが続いた。ブルーイノベーションの熊田代表、JUIDAの嶋本参与も最終日に開催されたパネルディスカッション「災害時のドローン活用最前線」に登壇した。能登地震、能登豪雨の被災地に現場で活動した両氏にドローンジャーナルの河野編集長が、ドローンの有用性や災害対応での課題などのテーマを投げかけ、両氏が回答すると、メモにペンを走らせる来場者の姿が見られた。140席ある座席はほぼうまり、立ち見も出るほどの盛況だった。
パネルディスカッションではブルーイノベーションの熊田氏は、「能登では初動支援、詳細点検、二次災害監視などの対応をした。そばに人がいなくても自動でドローンを離陸させられるドローンポートを設置して災害監視をさせたが、災害のリスクのある場所であれば人を危険にさらすことがなく安全性が高いことを確認できた」などと述べた。
ポートについてJUIDAの嶋本参与は「実はコストの課題も克服できる。ヘリ、飛行機などで現地を確認する費用と比べ格段に安い。これは高頻度で監視できることにもつながる」と有用性を強調した。
課題について、熊田氏は「被災地は(国交省による緊急用務空域に指定されることで)ドローンを飛ばすには地域の要請が必要。今回はJUIDAが指揮を執ったので飛ばせた。ほかに通信、電源も課題だ」などと指摘した。嶋本氏は「災害の場所は危険だらけ。完全無人化をすすめることが重要」と述べた。
次回の「CEATEC 2025」は、2025年10月14日(火)~17日(金)の開催を予定している。
航空宇宙産業の展示会「2024国際航空宇宙展」(主催:一般社団法人日本航空宇宙工業会、株式会社東京ビッグサイト)が10月16日、都内の展示会場東京ビッグサイトで開幕した。UAV、AAMに関連する技術も多く出品されている。初日は防衛関係者の姿も多くみられた。また千葉、覚張メッセでは前日の10月15日にテクノロジーの展示会「CEATEC 2024(シーテック 2024)」(主催:一般社団法人電子情報技術産業協会=JEITA)と、併催企画モビリティ技術のビジネス展「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」(主催:一般社団法人日本自動車工業会=JAMA)も開幕し、関連技術、周辺技術が来場者の関心を集めている。国際航空宇宙展は19日まで開催され、18日までがトレードデー、19日は一般にも公開するパブリックデーにもなる。CEATEC、JAPAN MOBILITY SHOWは18日まで。
国際航空宇宙展ではヨーロッパの航空宇宙産業大手エアバス、米航空産業大手ボーイング、米ロッキード・マーチン、米RTX、韓国KAI、英BAEシステムズなど海外勢が多く出展している。日本からも新明和工業株式会社(宝塚市<兵庫県>)、川崎重工業株式会社(東京)、IHI(東京)などが参加し、23カ国・地域から600を超える関連企業・団体の技術が会場に並ぶ。
会場ではエアバスの大型VTOL、新明和のKブログラム(経済安全保障重要技術育成プログラム)に採択され開発中の成層圏用HAPS、KAIのコンバットUAVやAAMなどが客足を止めていた。AI制御で2人の運航者が多数の群制御が可能なことで知られ国内にも配備されている米Shield AI(シールドAI)社のテールシッター型VTOL UAS、V-BATも展示されている。
ヘリコプターのポート関連技術を扱うエアロファシリティー株式会社(東京)はビル屋上などAAMが使いやすくするための素材を提案している。ビル屋上の鉄筋コンクリートは磁界を発生させていて、これがAAMのコンパスの機能に障害を与えるおそれがあることを問題視、展示会では非磁性PC床板などを提案し、採用実績とともに展示している。
CEATECとJAPAN MOBILITY SHOWでは、一般社団法人日本水中ドローン協会(東京)などが海洋DXパビリオンで水中ドローンのデモを実施。株式会社レスター(東京)はスイスFlyability社の球体ドローンELIOS3を展示、デモ飛行などを実施している。また徳島大学は山中建二助教ら5人の共同研究として、陸上走行用の2人乗りのクルマが4つの車輪がそのまま回転翼になるほか、車体床下にも回転翼を備え、少しだけ飛ぶ「空も飛べるクルマ」の模型を展示している。
インフラ事業者向けデジタル化サービスを展開し、Liberawareなどとの共同事業で知られるCalTa株式会社(東京)なども出展。高い織物技術からドローンの機体素材として期待されている炭素繊維の成形などに強みを持つサカイ産業株式会社(島田市<静岡県>)はアラミド繊維の厚板成形品などを展示している。自動車の内外装部品を得意とするしげる工業株式会社(太田市<群馬県>)は成型後の端材を使ったキャンプ用品などを提案。加工技術をアピールし、マッチングを呼び掛けている。
防災、事業継続、セキュリティなど危機管理に関連する技術を紹介する「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2024」(株式会社東京ビッグサイト主催)、テロ対策技術を紹介する「テロ対策特殊装備展(SEECAT)’24」(東京都主催)、新技術、新製品を御披露目する「エヌプラス(N-Plus)2024」の「特別企画展フライングカーテクノロジー」(エヌプラス実行委員会 、 フライングカーテクノロジー実行委員会主催)が10月9日、東京ビッグサイトで始まった。ドローンやエアモビリティの関連技術、製品も展示され、セミナーなどステージ企画も多くの来場者を集めている。いずれも11月11日まで。SEECATへの入場は完全事前登録制だ。
RISCONは危機管理技術のトレードショーで、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA、東京)、株式会社JDRONE(東京)、株式会社Liberaware(千葉市)など多くの関連事業者が技術を持ち寄っている。ステージ企画でもドローンやエアモビリティ関係の第一人者が登壇し、初日の9日には、株式会社manisoniasの下田亮氏が能登半島地震で被災した沿岸部海底を調査した経緯やそのときに仕様した技術などを紹介した。
下田氏は空のドローン、水中ドローンを使い分けてデータを取得し、それらを組み合わせて地形図を作るなどして、地震による海底被害の調査に取り組んだ。下田氏は「調査した海底では、あるはずの海藻が根こそぎ引きはがされていた。魚などの産卵場所が少なくなっていることが考えられ、調査結果は漁業者が対策を相談するさいの資料になると思う」などと、調査の意義を報告した。また、光が乏しい水中の画像を鮮明化する技術を、同社の海上自衛隊OBが新たに「ivcs」として開発したことも紹介し、この技術を使う前後の画像を比較して示したりした。会場は多くの来場者が詰めかけ、講演を時間より早めに終えたあと会場からの質問も受け付けるなど盛況だった。
N-Plusの特別企画展フライングカーテクノロジーでも多くの展示、講演が企画され初日から多くの来場者が詰めかけた。
「空飛ぶクルマの現状と課題」を演題にした基調講演では、慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)顧問の中野冠フライングカーテクノロジー実行委員長がコーディネートし、株式会社SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEO、テトラ・アビエーション株式会社の中井佑代表取締役が登壇した。
中野氏は、通説を疑ってみることを提唱し、「空飛ぶクルマ」に関わる騒音、利便性、環境などいくつもの「疑わしい通説」を列挙し盲目的に信じ込むことに警鐘を鳴らした。SkyDriveの福澤氏は開発している機体を大阪・関西万博でフライトさせる目標に向けて活動を続ける中で、「万博では飛行場でもない場所で複数の機体、それも2種どころではない機体が飛ぶことが予定されていて、そうなれば世界で初めてです。商用運航ができないことがニュースで大きく取りあげられていますが、実は世界でも画期的なことをしようとしているのです」と万博での飛行の意義を強調した。テトラの中井氏は「移動時間を短くすることを目指し開発をしている。現在開発中の機体は今年度末に試作機が出来る予定」などと計画が進んでいることを説明した。
10日以降も多くの来場者が見込まれる。
東京都内に竣工した大規模物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」に、ドローンの実証実験が可能な施設「板橋ドローンフィールド(板橋DF)」が誕生し、10月2日にお披露目された。LOGIFRONT東京板橋は三井不動産株式会社、日鉄興和不動産株式会社が開発した地元と協議を重ねて竣工した「街づくり型物流施設」でドローンフィールドは物流施設に寄せられる新産業創出機能に対する期待を担う。ドローンフィールドは一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、ブルーイノベーション株式会社が監修した。飛行用ネットフィールドやドローンポートが備わり、稼働中の物流施設を使った実験も可能で、都心の実験場の開設で、高頻度の実験が可能になる。会員制コミュニティも運用し共創を加速させる。
LOGIFRONT東京板橋と板橋DFは9月30日に竣工し、10月2日に竣工式典と説明会が行われた。説明会では日鉄興和不動産の加藤由純執行役員、三井不動産の篠塚寛之執行役員、板橋区の坂本健区長が参加した。加藤氏、篠塚氏が施設を説明し、坂本区長があいさつをした。施設内では内覧会でドローンのデモフイライトが行われ、ここでは三井不動産ロジスティクス事業部の小菅健太郎氏が概要を説明、JUIDAの鈴木真二理事長があいさつをした。ブルーイノベーションの熊田貴之代表取締役社長も登壇した。
板橋DFはドローン飛行用のネットフィールド、ドローン事業者用R&D区画、交流スペースを備える。物流施設に併設していることから、施設を実験会場として活用することも想定していて、施設の外壁を使った点検や配送などの垂直飛行、屋上にはりめぐらされた太陽光パネルの点検、接地されているドローンポートの活用、AGV(自動搬送車)との連携などが想定されている。ドローンオペレーター輩出で実績をもつドローンスクール、KDDIスマートドローンアカデミー(東京)が東京板橋校を構え、人材育成にあたることも発表された。
このうちネットフィールドは、敷地内の広場に整備された広さ約650㎡、高さ14mのネットに囲まれた設備で、この中では申請をせずにドローンを飛ばせる。KDDIスマートドローンアカデミー東京板橋校の講習会場にもなる。敷かれている芝はフットサルコート仕様で、時間帯によって地域住民の健康増進にも開放される。
ネットフィールドに近い入り口から建物に入るとすぐ、ネットフィールドをのぞむ位置にドローン事業者の交流を目指して設置された交流施設「ドローンラウンジ」がある。大型モニター付きのミーティングルームなどが備わり、ネットワーキングイベントにも使える。
この日はデモフライトも行われ、施設内では物流施設内で照明を落とし、光が届きにくい場所で球体ドローンELIOS3などの機体を飛行させる様子や、建物の外壁を点検するような飛行を公開した。
説明会では、東京大学と三井不動産の産学共創協定に基づく「三井不動産東大ラボ」が主体となる共同研究としてGPSに依存しないドローン位置特定技術、高層マンションなどでの垂直配送実現性検証や、ブルーイノベーションが主体となる長距離、長時間、自動航行に対応する高性能ドローンポートの開発などが含まれることが紹介された。
三井不動産の篠塚執行役員は「都心での高頻度な実験が進みにくい課題を解決することが可能となります。ドローン技術のイノベーションが起こることを期待しています。またここで検証された技術が配送、建物管理、災害時対応などの分野で課題解決につながることを期待しております」と述べた。
監修を担当したJUIDAの鈴木真二理事長は「ドローン産業の発展に少しでもお役にたてることを期待しております」とあいさつした。
板橋DFの入るLOGIFRONT東京板橋は、三井不動産、日鉄興和不動産が手掛ける大規模街づくり型物流施設で、物流拠点として高い機能と豊かなデザインを備えながら、地元の要望を取り入れた街に開かれた施設で、三井御不動産の篠塚執行役員は「街づくり型物流施設の集大成」と位置付けた。
板橋区との協議では、災害に強いまちづくり、地域に開かれた憩いの場の整備、新産業機能の要望を取り入れ、近くを流れる荒川、新河岸川の氾濫などの災害を想定し、住民の対比場所の確保、支援物資の補完場所の確保なども設けていることが特徴だ。あいさつした板橋区の坂本健区長は「防災力向上に多大な貢献を頂いております」と謝辞を述べた。
開発したのは日本製鉄の製鉄所があった場所で、フロアプレート約36000㎡、屋上に設置した太陽光パネルは4MV、敷地の河川敷として公開空地を設定して地域にも開放した。
ドローンフィールドとの相乗効果について、今回の説明会で物流用途や防災用途でのグ遺体的な実装計画には触れられなかったが、大型物流施設に併設されたフィールドであり、大型河川の流域に位置し、防災に高い問題意識を持つ板橋区にあることなどから、ドローンの実装にも高い期待がかかりそうだ。
第3回ドローンサミットが10月1日、札幌札幌コンベンションセンターで開幕した。会期は2日間。32の関連ブースが来場者を迎える。講演などのステージ催事も多く催される。初日の10月1日は北海道内外から多くのドローン関係者が訪れた。会期は2日まで。
第3回ドローンサミットは経済産業省、国土交通省、北海道が主催。地元北海道のデジタル技術見本市、「北海道ミライづくりフォーラム」と同時開催となる。ドローンサミットは2022年に神戸、2023年の長崎に続く開催。展示のほかデモフライト、識者や事業者による講演、セミナーなども開催される。
初日にはSkyDriveや大阪府などが登壇する「空飛ぶクルマのミライ~大阪・関西万博とその後の社会実装の展望~」、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)による「能登半島地震における災害時支援報告と今後に向けて」などが行われた。2日目も全国新スマート物流推進協議会などによる「ドローン物流を組み込んだ新たな社会インフラの現在地と今後の展開」、DRONE FUNDや北海道大学、NEDOなどが登壇する「北海道の空の未来とは ~エアモビリティ前提社会に向けて~」などいくつものステージが会場を彩る。
(写真はいずれも田口直樹氏が撮影)
トレーニング用の小型ドローンとコントローラーがセットになった新・練習機セット「DRONE STAR TRAINING」を開発した株式会社ORSO(東京)が、開発中の「実地試験トレーニングマット」の試作品の使い勝手を試せる「特別試操会」を9月27日、東京・内神田で開いた。国家資格の実地試験対策を想定した試験コースを約3分の1サイズでプリントしたマットと、操縦技能修得を成否を分けると言われる「8の字」に特化したマットの2種類の試作品が用意され、スクール講師、事業者、愛好家らがDRONE STAR TRAININGを操縦しながらマットの使い勝手を試した。参加者からは「受講生向けの自宅練習にいい」「講習の空き時間にも使える」「科学教育でも導入できそう」などの感想や意見が相次いだ。ORSOは今回の意見や感想も参考にして製品化を進め、11月中の発売を目指す。
トレーニングマットはドローンを飛ばすコースがプリントされたマットで、新・練習機セット「DRONE STAR TRAINING」を使って、国家資格取得に必要な技能を効率的に習得することを主な目的としてORSOが開発している。6月に開催されたドローンの展示会JapanDroneでDRONE STAR TRAININGを公開したさいに会場に設置したところ、DRONE STAR TRAININGとともに「あのマットも欲しい」という声が相次いで寄せられ、市販化に向けて開発を進めることになった。
この日はAタイプとBタイプの2種類の試作品がお披露目された。Aタイプは国家資格の実地試験コースをイメージしたもので、約3分の1に縮小したコースがプリントされている。ふたつに分かれているマットをマジックテープでつなげて使う仕様で、広げると4.8m×2.5mになる。収納や運搬のさいには、ふたつに分けて丸めれば、折り目をつけずに1.3mの筒に収まる。素材はDRONE STAR TRAININGの機体を飛ばしたさいにダウンウォッシュで浮き上がることなく、それでいて、持ち運びのさいにかさばり過ぎないようなものを選んだ。
スクエア飛行、8の字飛行、異常事態における飛行などに対応し、パイロンが置かれる場所なども図示されている。数字がふられていて試験や練習で想定される「『3』から『4』に移動してください」などの指示に従う練習も可能だ。特別試操会を主催したORSOの高宮悠太郎DRONE STAR事業部長は「エレベーター、エルロンを同時に動かす練習などにいかしてもらうことを想定しました」と説明した。
またBタイプは、操縦技能の習得で難関とされる「8の字」部分を抜き出したコースがプリントされているマット。3m×1.5mとAタイプよりひとまわり小さく、計算上は江戸間の6畳におさまる。高宮部長は「さらに小さい場所に設置できるよう、難しいといわれる部分の練習に特化したタイプです」と説明した。長方形をたてに3分割されていて、すべてをつないでも、中央を抜いて左右をつないでも使える。左右をつなげることで円周上を飛ばす練習に使うことができる。また3つに分割したマットをまるめれば、1.1mの筒に収納できる。
いずれのマットも実地試験コースの3分の1サイズになっているのは、DRONE STAR TRAININGの機体サイズが、国家資格の試験に使われる機体のたて、よこともに3分の1程度であることなどを考えたためだという。
試操会では、約10人の参加者が次々とAタイプ、Bタイプのマットの上で飛行し使い勝手を試した。参加者からは「受講生に課題を与えるさいに使いやすい」「自宅練習用に貸し出すこともできそう」「講習の効果を高めやすい」などと、国家資格取得に向けた効果を期待する声が多く聞かれ、ORSOスタッフがメモをしたり掘り下げるための質問をしたりした。中には「プログラミングなどサイエンスの講習にも使えそう」など、使い勝手の向上や用途の拡大につながりそうな改善点や意見、感想もあった。
高宮部長は「今回みなさまから頂いた意見を参考に試作品を製品化し、11月の発売を目指します」と話した。