DroneTribuneの編集長、村山繁が4月9日(土)、神戸市中央区の文化交流施設「KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)で開催されるトークイベント『神戸、大人の小学校。』(合同会社アーベント主催)に参加し、お話をさせて頂くことになりました。「ドローン社会の現在と未来」の題と、15時10分からの約1時間を頂いております。関心があり、ご都合のあう方は、会場までお運び頂けますようお願いします。
イベント『神戸、大人の小学校。』は、企業の広報支援を手掛ける合同会社アーベントの吉川公二代表が、広い交流範囲から選んだ講師5人の話を、授業形式で提供する企画です。5人はそれぞれ得意分野、専門分野を持っていて、国語、社会などの「科目」が割り当てられています。DroneTribuneの村山は「技術」の科目として「ドローン社会の現在と未来」について話をする要請を受けております。
はたして、与えられたテーマ通りの話になるかどうか、本人も興味津々です。
「神戸、大人の小学校。」の概要は以下の通りです。
■日時:2022年4月9日(土)10~18時
■会場:KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)303教室
■アクセス:神戸市中央区小野浜町1-4(JR三宮駅など各三宮駅から徒歩15分)
■参加費 :1コマ=500円、3コマ=1,000円、5コマ=1,500円(当日いただきます)
<時間割>
・1時間目(10時10分~)図工(久木田 啓)「まちをつなげるアートとは」
・2時間目(11時20分~)国語(石田 香織)「ものがたりはどこにある」
・3時間目(14時~) 社会(大西 淳浩)「日本ほど面白い国はない」
・4時間目(15時10分~)技術(村山 繁)「ドローン社会の現在と未来は」
・5時間目(16時20分~)道徳(紫亭京太郎)「落語から人の道は学べるか」
申し込み方法:電話・メールにて申し込み(要予約)
※ただし当日参加も受け付けると聞いています
電話:090-8932-2817(平日10時~17時)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開しているドローンを解説するCGアニメーション『ドローンが活躍するミライ』が関係者の間で「分かりやすい」と話題だ。大人向け、子供向けの2本(大人向けの標題は「未来」と漢字で表記)があり、特に子供向は説明の言葉が易しくかみくだかれている。登場するドローンはマルチコプターで、プロペラの回転の向きなど、言葉で説明されていない部分にも目配りが行き届くなどこだわりが凝縮されている。
子供向けアニメーションでは、主人公の「ミライちゃん」が、ドローンの飛ぶ仕組み、ドローンが活躍するシーン、開発すべき技術などを説明している。ミライちゃんが説明する言葉がわかりやすく、アニメーションそのものにも工夫が凝らされていることが特徴だ。
たとえばミライちゃんがドローンの飛び方を説明する場面で、ミライちゃんは「プロペラの回るスピードをかえることで、上へいったり下へいったり、前、後ろ、左右と自由に動けるんだよ」と説明する。これにあわせてアニメーションの中で動くドローンは、対角線上にあるプロペラが同じ方向に回転し、隣り合ったプロペラ同士は逆回転となるなど、実物の動きを再現している。プロペラ回転の方向はアニメーション上では矢印で示されていて、飛ぶ仕組みの理解につながる。
ドローンが前進する場面では、機体を前傾させている。このとき、回転速度が高まる後ろ側2つのプロペラの矢印が太く表示されるなど、回転速度が変化したことを視覚的につかむことができる。いずれも、言葉では説明されておらず、動画の中で工夫されている。
ドローンの活動場面については、輸送物流、災害調査、インフラ点検、農薬散布、警備が例示されている。たとえば輸送では、「都市と都市の間を大型のドローンが結んで、たくさんの荷物を運び、都市の中では小さなドローンが個別に荷物を届けます」など、長距離大量、短距離少量(あるいは拠点間輸送、ラストマイル配送など)などの役割を織り込んでいる。アニメーションでは、ビル屋上に降りた大型機が、小型機に荷物を小分けする様子が描かれている。離発着場、ディストリビューションセンターなどの考察にもつながる。
さらにNEDOが取り組んでいる研究課題も取り上げている。アニメーションでは衝突回避の運航管理システム、ヘリコプターなど有人機の探知、機体識別などを取り上げた。
NEDOでアニメーションを担当した専門調査員の大熊正文さんは、「小学生低学年に分かる動画にするために工夫を重ねました。説明の言葉は、正確でさえあればいいというものでもなく、子供に受け入れられる言葉を、広報の担当者にも参加してもらって練り上げました。主人公のミライちゃんは女の子という人も、男の子という人もいます。そこは見る人の自由です。ミライちゃんの視線の動きでドローンを感じてもらえればいいと思います。アニメーションでもプロペラの回転の向きなど、子供の観察にきちんと耐えられるものにしました。用途ごとにいろいろな回転翼機が出てくるのですが、製作したクリエイターが気を利かせてくれたことも大きかったです」と話す。
NEDOとロボット関連人材育成などに関する協力協定を提携している福島県南相馬市からNEDOに出向していた南相馬市経済部商工労政課課長の寺島政博さんは「南相馬市はロボット産業に力を入れています。福島ロボットテストフィールドもあり、小学校ではドローンに触れ合う機会をもっています。高学年の児童はほとんど、ドローンに触れているのではないかと思います。動画は、そんなドローンを未来にいかす人材育成の一環として役立つと期待しています」と話す。
実際に動画の製作を請け負ったクリエイターにもこだわりがある。雅工房(埼玉県草加市)の代表で、デジタルクリエーターの樋口雅克さんは、「こだわった点は、まずはキャラクターです。最終的に親しみを感じてもらえるキャラクターになったのではないかと思います。表現方法も、3DCGをなるべく感じさせない柔らかいテイストにしました。技術的なこだわりもあって、子供向けの動画は実は編集に継ぎ目が全くない『全編ワンカット動画』として制作しました。キャラクターやオブジェクトや背景の位置、プロペラの回転の角度などは、緻密な計算により全編ズレが全くありません。企画段階から、そのようなこだわりを持って作られています。このワンカット処理により注意力が削がれることなく、ドローンの原理や役割や課題などを楽しく見ていただけるのではないかと思います」と説明する。
アニメーションは7月末に公開され、関係者の間で話題になっている。NEDOの主任、森理人さんは「ドローンに関心を持ってもらい、その必要性、活用法などを考えるきっかけにして頂ければうれしいです。子供たちには夏休みの自由研究に役立てる方法もあると思います。また、大人が見ても、学びがある良いアニメーションに仕上がりましたので、多くの方にご覧頂き、活用頂けるものと期待しています。合わせて、大人向けのアニメーションもありますので参考にして頂ければ幸いです」と話している。
◆「ドローンが活躍するミライ」を製作した雅工房のサイトはこちら
反響の大きかった対談の後編をお届けします。対談者は、東京大学名誉教授・未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二氏、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発に携わった航空機開発に詳しいPwCコンサルティング合同会社顧問(Aerospace&Defense担当)の宮川淳一氏で、モデレーターとしてドローンや空飛ぶクルマ関連の業務・技術支援に携わるPwCコンサルティング合同会社ディレクターの岩花修平氏が参加して進行をリードしました。前回お届けした前編では、航空機業界以外の分野から参入したスタートアップ企業などがドローンの未来を切り開く次世代リーダーとなる可能性などの意見が話題になりました。今回の後編では過疎地などでの新しいモビリティとしてドローンや空飛ぶクルマを活用する「スマートビレッジ」の登場を展望し議論を深めます。(対談は外出自粛要請の前に行われました。本文中敬称略。写真・文:小島清利・村山繁)
岩花氏:鈴木先生はドローンの世界では欠かすことができない特別な存在となっていますが、無人航空機の研究を始めた経緯について教えてください。また、ドローンの活用拡大へ向けて、どのような使命感を抱いていますか。
鈴木氏:私のライフワークは墜落しない飛行機の研究で、それは飛行中の事故や故障でも墜落しないような飛行制御則を構築することです。その飛行試験は危険が伴うため、コンピュータ制御が可能な模型飛行機で飛行試験をしていたことがきっかけです。そうした体験から、無人航空機を設計、製作して飛行させることは学生の教育にはベストという思いを持ち、2006年から全日本学生室内飛行ロボットコンテストというものを毎年開催しています。今のドローンと呼ばれているマルチコプターが実用化してからは、産業利用を促進するための民間団体が必要ということで、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)という非営利団体を2014年に設立し、そこから、ドローンに本格的にかかわるようになりました。使命感と言う意味では、どうしても、ドローンというのは墜落リスクを避けて通れないので、私としては研究者の視点で、ドローンの安全性を高める取り組みで、貢献していきたいと考えています。
岩花氏:宮川顧問の専門は有人航空機ですが、そのころから、無人機であるドローンについても関わりがありましたか。
宮川氏:2007年に三菱リージョナルジェット(MRJ)へ異動するまで、三菱重工で防衛航空機の技術部門に在籍していました。当時から防衛航空と無人機は関連性があったので、大変関心を持っていました。2000年代初頭から、無人の戦闘機の出現を視野に、既に様々な議論がされていました。
岩花氏:有人航空機の業界にとって、無人航空機は脅威になりうると想定されますが、航空機メーカー、操縦士、関連サービス業などのそれぞれの立場として、無人航空機に対するスタンスはどのようなものが見られそうですか。
鈴木氏:脅威ではなく飛行領域を拡大するということが欧米の航空機会社の共通認識です。エアバスや、ボーイングはスタートアップ企業を取り込みその市場の制覇を狙っています。空港から空港まではこれまでの飛行機で良いのですが、空港からその周囲への空の移動手段と捉えています。一方、ヘリコプター会社は従来のガスタービンヘリよりも運用性、整備性、コスト、騒音について、劇的に改善することを狙っています。私も空飛ぶクルマは車でいうと、上級車ではなく、軽自動車にあたるものと思っています。軽自動車の使い方を見ればわかりますが、空飛ぶタクシーになるのは少し先かと思います。軽自動車や軽トラックは地方での移動手段として欠かせないものとなっていますので、そうした利用を最初は狙うべきだと思います。
岩花氏:有人航空機と無人航空機の棲み分けは進んでいくのか、協調しつつ進化していくのか、もしもお考えがあればご意見をいただけますでしょうか。
鈴木氏:そうですね。航空需要はますます増加することが確実視される中、カーゴ便を無人化することで、パイロット不足を解消しようとする流れはあると思います。お客を乗せたパイロットレスの大型機は現状では夢に近い存在です。おさるの電車に乗りますが、おさるの飛行機には乗る人はいないのです。レールの上を走る電車と空中を飛行する飛行機では求められる安全性に違いはないのですが、求められる機能に大きな違いがあるからです。
岩花氏:有人航空機の業界にとって無人航空機だけでなく、電動化や自律飛行が進んでいくという流れがありますが、ビジネスとしてどのようになっていくと想定されるでしょうか。
鈴木氏:これまでの機体製造だけではなく、新たな人材を必要とし、新たな業界との連携が求められます。自動車会社がIT企業とコラボするようなことが航空機業界にも求められ、業界の動きに大きな変化が訪れます。ただし、B737MAXで経験したように複雑化するシステムの設計開発時の安全設計、安全確認の仕組みを築いていくという大きな課題がありますので、単なる協業では済まないというのも事実です。
岩花氏:技術の発展に向けたハードルとして電動の場合のバッテリーなどが代表として挙げられるかと思いますが、その他大きなハードルとしてどのようなものが挙げられそうでしょうか。
鈴木氏:欧州でハイブリッド航空機の研究を推進するリーダーであるエアバスは、電気推進やハイブリッド推進に対する安全認証がない中で、国際的なルール作りをグローバルな産学官の連携で推進することを提案していました。要素技術とともに、認証技術を築き上げることを同時並行的に行わなければならないのです。
岩花氏:法規制の検討において例えば有人航空機との棲み分けや双方の識別をどうするかなど色々な課題が考えられますが、現状の法規制の検討上ハードルなどについてご意見をいただけますでしょうか。
鈴木氏:日本の場合、低高度を飛行するヘリなどの有人機の位置情報が、地上では把握できないという大きな課題があります。欧米ではADS-Bという発信機を小型機に装着することが進んでいますが、日本ではあまりその認識が進んでいません。小型軽量のADS-Bを開発して世界に提供できれば大きなビジネスにもなりますが、航空機の装備品産業は日本ではまだ限られた分野しか成熟していません。
岩花氏:今後の活用を広げていくためには、墜落や悪用、プライバシーなど想定されるリスクとその対処についてきちんと把握して適切な措置や対策をとることが、市場の発展のためには重要とPwCコンサルティングは考えています。ところで、リスク低減のために事故調査による事故原因の究明とそれによる改善といった取り組みも重要と考えておりますが、そこに向けた動きは見られるでしょうか。
鈴木氏:事故の原因を究明し、安全対策として活かしていくという方法は重要ですが、無人機の場合は未着手です。ボランティアベースでの検討は始まっていますが、制度化し、公的な機関が実施しなければ混乱をまねくばかりです。福島のロボットテストフィールドがその役割を担えればと思います。航空安全の向上は、厳密な事故調査とそれによる改善で築かれてきました。ドローンでもそれをどのように構築するかが課題です。
岩花氏:技術や法規制などの課題を乗り越えた先に利活用の大きな広がりが想定されますが、無人航空機が活躍する社会はどのように実現されるだろうと想定していますか。
鈴木氏:空飛ぶクルマは交通渋滞を解消するアーバンエアモビリティが想定されています。スタートアップ企業が取り組んでいる空飛ぶクルマは従来のドローンとあまり変わりません。空飛ぶタクシーが高級車であると位置づけると、空飛ぶクルマは軽自動車です。しかし、地方に行くと軽自動車は存在価値があり、重要な移動手段なのです。空飛ぶクルマは実は都市部で活用できるという以上に、過疎地で移動手段として重要な意味を持ってくると思っています。過疎地が暮らしやすいようにしないと、日本の人口減少に歯止めがかかりません。
この秋、福島ロボットテストフィールドに向かうため、仙台から福島・南相馬へ電車で移動していたら、大型の台風で電車が止まってしまいました。台風が過ぎ去った後に、電車運営会社はタクシーを呼んでくれたのですが、そこからが地獄でした。国道などの幹線道路は冠水してしまって進めません。しかし仙台から来たタクシーの運転手は道路事情に詳しくありません。立ち往生しそうになると、同乗された地元の人たちが親切に道の情報を教えて、何とかホテルにたどり着けたのです。もし、こうしたケースで、空飛ぶクルマがあれば、幹線道路の冠水も怖くありませんし、本当に便利だろうなと想像しました。スマートシティという言葉がありますが過疎地の交通を高度化する「スマートビレッジ」にこそ、空飛ぶクルマが求められているのではないかと思ったのです。
岩花氏:PwCコンサルティングでは、MaaSの取り組みも進めています。ドローンや空飛ぶクルマは決して万能ではなく、ケースバイケースで最適な交通機関があるはずです。自動運転の鉄道、バス、自動車などがある中で、ドローンや空飛ぶクルマが生きてくるはずです。全体最適で考えることが重要だと思います。
鈴木氏:島根県美郷町は過疎化が進み、赤字路線が廃線になりました。ドローンの活用に積極的な町なので、廃線になった線路を使って、自動走行車を走らせたり、ドローンを飛ばしたりすれば、新しいモビリティの可能性が広がるのではないかと感じました。モビリティは、飛行機や船、列車、バスなどそれぞれが単体で発展し、専門化しており、セクショナリズムになりがちです。しかし、それぞれの移動手段を単体で考えるのではなく、全体最適を目指したモビリティ同士の連携を考えていくべき時代になったと言えます。都心部よりもむしろ、過疎地でこそ有効な概念だと思います。まさに、スマートビレッジの考え方です。
宮川氏:無人機や空飛ぶクルマの社会実装には多くのステークホルダー(利害関係者)が関わる必要があると思います。インテグレータ、機体、地上操縦装置、通信ネットワーク、航空管制、法制度、社会受容促進など。経済価値の大きな特区を設定して、これらを実現し業界を主導するところにコンサルティングの活躍の場があるのではないでしょうか。
鈴木氏:中国でドローンが発展している背景には、ドローンの飛行を許容する特区の存在があります。もともと、中国では軍が空を支配しているので、そもそも、勝手に飛ばすことはできないのですが、特区を設け、そこだけは自由度を広げています。一方で、日本の問題としては、機体の開発環境が設備としても制度としても未成熟という現状があります。
最近、機体が行方不明になる事件が相次ぎましたが、例えば、福島ロボットテストフィールドでは“大きな鳥かご”と呼んでいる、網で覆われた試験設備があります。そうしたところで迅速な開発が行える制度も整備してゆく必要を強調したいと思います。もちろん、安全性は担保されなければなりませんが、自由にドローンを作って、飛ばして、落として、改善してということができる飛行環境を特区などで整える必要があると思います。私は福島ロボットフィールドをアメリカのキティホーク(ライト兄弟が世界で初めて飛行機による有人動力飛行に成功した町)のようにしてはどうかと提案しています。そうした自由な実験場でこそ、本当の革新的技術が生まれるのだと思います。
岩花氏:PwCコンサルティングではドローンや空飛ぶクルマ、MaaSビジネスなど無人航空機を活用した市場の活性化に使命感を持ち、市場、法規制、技術動向などの調査、事業化に向けたビジネスモデルの検討、事業性評価、実現性評価、オペレーション設計、プロジェクト管理、リスク管理、3次元データ活用などのプロジェクトを国内外で既に多数実施しており、実績が積みあがってきています。世界中のPwCメンバーファームと協力して海外制度をグローバルに分析し日本に紹介するような支援体制も有しています。
今回の対談では、鈴木先生が仰った日本版「キティホーク」構想がとても印象的でした。世界中の誰もが実現不可能と思っていた有人飛行をライト兄弟は成功させました。そんなライト兄弟のように、私たちも航空機産業の歴史の転換点に今立っているのではないでしょうか。これからも業界の中で中立的な立場を保ちつつ、無人航空機を活用した市場全体としての最適化を今後も継続して目指していきます。
本日はどうもありがとうございました。(完)
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