VAIO株式会社のドローン子会社、VFR株式会社(東京)は5月11日、株式会社自律制御システム研究所(ACSL)と国内市場向けの用途別産業用ドローンの機体開発で5月に協業を開始したと発表した。両者の強みを持ち寄り、ACSLの主力機体「PF-2」、「MINI」のアップデートと、用途別に最適化した新機体の共同開発を行う。2021年以降の導入を目指す。
両社は機体開発のほか、高度な産業用ソリューション開発も視野に入れ、共同調査を始めるという。またVFRはその他のパートナーシップの構築も随時検討する。協業について「VFRとACSL は共に、国内における産業用ドローンの本格的な普及には、用途別に性能・機能が最適化された社会実装可能な量産機体及びソリューションの開発が急務であるという課題意識を持っています。両社の知見や技術的な強みを掛け合わせることでその解決により大きく貢献していきたいという考えが一致したことから、今回の協業が実現いたしました」とコメントを寄せている。
今回の協業ではVFRがVAIOで磨いたコンピューティング技術、ロボティクス技術などを持ち寄り、ACSLの機体開発技術、自律制御技術等と融合することを目指す。開発する用途は今後検討することとしているが、橋梁、送電線、鉄塔の点検、運送などが有力だ。
両者は関連する規制や経済動向などの環境変化や推移を注視しながら役割分担などを具体化させる方針だ。
PC製造やEMS事業を手掛けるVAIO株式会社(長野県安曇野市)は4月9日、ドローン機体開発の子会社、VFR株式会社(東京)の営業を開始したと発表した。VAIOが培ってきたコンピューティングの技術や、2018年以降、国内外のドローン事業者との協業で蓄積してきたドローンの設計、生産などのノウハウを「空飛ぶコンピューターともいわれるドローンの開発」に生かす。当面はテレワークで業務を進め、問い合わせや協業の相談は相談窓口( info@vfr.co.jp )で応じる。
VFRは国内外のパートナーとの共創をベースに、用途に最適化された機体、コンポーネント、ソリューションを提供する。ドローン事業者などからの、設計、製造、修理を請け負うほか、自社製ドローンの企画、設計、製造、販売、修理、保守、点検、輸出入も視野に入る。VAIOのチーフイノベーションオフィサー(CINO)留目真伸氏が代表取締役社長として経営を率いる。「VAIOが作り上げてきたコンピューティングの世界を地上だけでなく空や海などにも拡大」する。
事業はドローン事業者向け、サービサー向け、エンドユーザー向け、全ドローン産業関係者向けの4領域で展開する。ドローン事業者向けには、ドローンの設計・開発・製造を提供する。サービサー向けにはドローンの機体提供、ソフトウェア開発、ソリューション共創を展開し、エンドユーザー向けにドローンを活用したソリューションの提供を進める。さらに全ドローン産業関係者向けに、エコシステム共創を手がける方針だ。
母体のVAIOは2018年からドローン市場で事業を進めている。これまでに、株式会社ナイルワークスの農業用大型ドローン「Nile-T19」の量産、株式会社エアロエクストの重心制御技術4D Gravityの原理試作支援、中国の産業用ドローン大手MMCとの事業検討などを進めてきた。ドローン事業への本格参入し、成長加速のためVFRを設立した経緯がある。
PC製造やEMS事業を手掛けるVAIO株式会社(長野県安曇野市、吉田秀俊社長)は11月28日、中国・深圳に本社を置く産業用ドローン大手の(深圳科比特航空科技有限公司(MMC)と日本国内の産業用ドローン市場創造に向けて共同で事業検討を始めたと発表した。VAIOはドローン事業を強化しており、MMCとは、ともに重心制御技術4D Gravityで知られる株式会社エアロネクスト(東京)取引があるという共通点がある。
VAIO、MMCは今後、協業内容の具体化に入る。日本国内でのMMCの既存機体をベースとした事業創造の可能性や、日本市場向けの機体などの商品企画、開発を模索する。VAIOの主力事業のひとつであるEMS(受託生産)をいかしてMMC機の製造を引き受けることや、日本での事業拡大を展望するMMCの販路確保などビジネスのサポートをすることも視野に入るという。「具体的な内容は決定次第発表する」としている。
VAIOは株式会社ナイルワークス(東京、柳下洋社長)の農薬散布ドローン「Nile-T19」の量産を引き受け、今年5月24日に初出荷したほか、エアロネクストの4D Gravity搭載機のプロトタイプも製造するなどドローンの事業が活発化している。9月には組織改正をし、ドローン事業に力をいれる体制をさらに強化。今後「多様な関係者と産業用ドローン市場を中心に社会起点で事業創造を行い、イノベーションの社会実装に取り組む」方針で、MMCとの協業もその一環と位置付けることになりそうだ。
一方、MMCは中国で警察や消防のほか、災害対応、測量などに向けたドローンの大手で、6月20日には、そのとき開催中だったドローンの展示会「Shenzhen International UAV Expo2019」でエアロネクストと業務提携を発表した。MMCの卢致辉(Zhihui Lu)董事長は、「技術力の強いエアロネクストと連携して一緒に海外市場に進出していきたい」と、海外市場を目指すことを宣言した。VAIOとの協業もMMCにとって海外展開と位置付けられる。
VAIO、MMCがともに取引を持つエアロネクストも含めた取引も視野に入りそうだ。
VAIOは、この協業に対する国内の反応や期待、市場性を見極める考えで、「業務効率の改善にドローンの活用を検討している事業者、ドローンサービスの参入を模索している事業者など、幅広い層と価値を高める意見交換を進めたい」と話している。同社ドローンビジネスGPが問い合わせ、相談を受け付けている。
農業用ドローンの株式会社ナイルワークス(東京、柳下洋社長)は5月24日、新型ドローン「Nile-T19」の出荷を開始した。機体を製造したPC企画、製造、開発、EMS事業などで知られるVAIO株式会社(長野県、吉田秀俊社長)で初出荷が行われた。ナイルワークスの柳下洋社長はあいさつの中で「この技術で世界の農家を変えたい」と意気込むと、生産拠点であるVAIOの吉田秀俊社長も「この日を迎えられて感無量」と応じた。
この日出荷された「Nile-T19」の機体はナイルワークスが「完全自動飛行型」を誇る自信作。圃場の形をタブレットに登録すると飛行経路を自動生成し、タブレット上の「開始」ボタンを押せば離陸から着陸までが自動だ。機体は作物の上空を30~50センチメートルの至近距離で飛行し、薬剤散布のさい飛散量を抑制する。8リットルの薬剤が積むことができ、1ヘクタールを15分で散布ができるなど、従来に比べ負担が大幅に軽くなる。
機体の大きさは幅1820ミリメートル、奥行き1410ミリメートル、高さ823ミリメートルで、重量はバッテリーを含めて18キログラムだ。アームを4本持つクアッドコプタータイプ。ただ、それぞれのアームには回転の向きが反対の2つずつ4組ついており、計8つのプロペラを備える。このプロペラが飛行と農薬や肥糧の散布を担う。プロペラ周囲は機体に固定されたプロペラガードが覆い安全性を高めている。
加速度3軸、角速度3軸、地時期3軸、気圧、ソナー、RTK-GNSSなど12種類のセンサーを搭載。独自に開発したナイルワークスフライトコントローラーが飛行を制御し、機体の実際の位置と目標地点との誤差を2センチメートル以内に細かく制御できる。薬剤の散布のON、OFFの切り替えのタイミングや散布吐出量は飛行速度と算出された薬剤の必要量に応じて自動調節できる。
生育状況を監視するカメラも搭載していて、至近距離から圃場データを収集。作物の生育状況を一株ずつ診断できる。角度の高い収量予測や精度の高い可変量施肥、除草剤や殺菌剤のピンポイント散布の実用に向けた準備も進めている。
基本セットは、Nile-T19本体(生育監視カメラ付きの機体)1機、バッテリー2個、充電器1台、基地局1セット、測量機1セット、基地局・測量機用バッテリー2個、基地局・測量機用バッテリー充電器1台、操縦者用タブレットだ。
この日の出荷式では、関係者が生産拠点であるVAIOの工場を見学し、製品が確実に組み上がる仕組みや、作業員による丁寧な作業ぶりを確認した。その後、出荷前に行われる飛行試験のデモンストレーションを見学した。デモンストレーションでは、関係者が見守る中、オペレーターがタブレットの「開始」ボタンを押すと、Nile T-19の機体が自動で高さ3メートルほどに浮上し、高度を維持したままあらかじめ生成されたルートをたどって着陸した。その後、初出荷の機体を収めたコンテナを積んだトラックが、引き渡し先にむけて出発した。
出荷式でナイルワークスの柳下社長は「“技術者魂”というものがあります。それは利用者に伝わるものです。私はかつて安曇野で生産されたNEWSといコンピューターを手にしたとき、開発者の利用者に対する思いをひしひしと感じました。ところで私はいつも『日本の農業を世界の最先端にする』と言っています。その思いに賛同して頂いたみなさんがNile-T19に関わって頂きました。これを手にする農家のみなさんに、その思いが伝わると信じています」とあいさつした。
また生産拠点となったVAIOの吉田社長も「昨年にこのお話をいただき、それから10か月で飛行する姿を見ることができました。この日を迎えられ感無量です」と応じた。
出荷式のあと、報道陣の取材に応じた柳下社長は、機体の生産計画について「2019年度が100台、2020年度が500台、2021年が2000台」と説明。2021年ごろには海外展開も視野に入ると展望を述べた。機体は現在、液剤の散布に対応しているが、粒剤への対応も進めている。また病気検出の即時性の向上、移動などの利便性のさらなる追求、小麦への転用などへの転用の実装にも取り組んでいて、「散布だけではなく、適時、適切に判断し、適切に自動で作業をすることこそドローンの仕事」と意気込みを語った。