fly株式会社(東京)、JAL、JTBは2月26日、QRコードをスマホで読み込めばドローンが自動で飛んで撮影し、映像をAIで編集して利用者に届けるサービス「SKYPIX」を開発したと発表した。3月1日に瀬戸内海国立公園の寒霞渓(かんかけい<香川県小豆島町>)で実証を始める。実証中の利用料は1組2000円だ。説明会でflyの船津宏樹社長は「ドローンに触ったことがなくても、飛ばし方を知らなくても、許可の取り方を知らなくても、ドローンでの空撮や自撮りができます。ドローンを使ったことのない方にこそ楽しんで頂けると思います」と話した。flyなどは5月6日まで実証し、8月1日の正式な運用開始を目指す。説明会にはアイドルグループCANDY TUNEの7人も応援にかけつけ会場を盛り上げた。
発表会は2月26日に都内で行われた。flyの船津社長のほか、株式会社JTB(東京)の森口宏紀常務執行役員、日本航空株式会社(JAL、東京)の宮脇久美子常務執行役員が登壇してサービスの目標や経緯を説明した。またJTBの大津耕平氏がサービス内容を説明した。
さらに会場に隣接する庭園で模擬飛行の実演が行われ、応援に駆け付けたCANDY TUNEがファーストシングル『キス・ミー・パティシエ』にあわせてパフォーマンスし、ドローンに向かって笑顔を振りまいた。
SKYPIXの実証は利用者が寒霞渓の山頂第二展望台に設置されている案内板のQRコードをスマホで読み取ると利用できる。メールアドレス登録と決済が完了すると、設置されているドック(DJIのDock2)から格納されているドローン(DJIのMatrice3D)が飛び立ち、予めプログラムされたルートを約2分間飛行して撮影する。利用者は決められた場所からドローンに向かってポーズをとったり手を振ったりすると、寒霞渓の絶景を背景にして自撮り撮影ができる。撮影された映像はAIで自動編集され、現地の風景などをはさみながらオリジナルの動画として、登録したアドレスに送られる。動画が届くまでは30分ほどの時間を見込むが、それより早いこともあるという。
このサービスの特徴は手軽さと利便性にある。スマホさえあればQRコードを読み込めばよくアプリをダウンロードする必要がない。またドローンの飛行に必要な許可申請はサービスの提供側が済ませていて、利用者が行う必要はない。さらに撮影者がドローンの飛行は自動制御されているため操縦者を用立てる必要もない。グループで出掛けた場合に、一人だけがカメラマンとして写真から抜け落ちる事態も回避できる。英語、中国語など複数言語に対応していてインバウンド対応も想定している。
事業運営は寒霞渓ロープウェイを運航し関連事業も運営する小豆島総合開発株式会社(小豆島町<香川県>)が担う。SKYPIXは無人サービスだが、利用者の不安やトラブルに備え必要に応じて現地で対応する。寒霞渓ロープウェイは「空、海、渓谷を一度に眺望できることで観光客に知られ、小豆島観光を支えている。小豆島総合開発はDroneTribuneに対し新サービスSKYPIXについて「このサービスを目ざして寒霞渓を訪れる方が増えてくれればうれしいと思っています」と期待を寄せている。
flyなどが配備するドローンとドックは、現時点では1セットを想定している。ただし利用が増え。待ち時間が長くなるようなことがあれば設置数を増やすなどの対応も検討する方針だ。
実証は原則、3月1日から5月6日までの金、土、日と祝日の午前9時~午後5時を想定している。実証期間後に反応や改善点などを整理し、必要な検証をしたうえで8月1日に正式に運用を始める計画だ。正式運用の料金は今後検討するが、現時点では2500円から3000円程度と見込んでいる。
説明会では、ドローンでの撮影に臨んだCANDY TUNEの7人も登壇し、ドローンが撮影した映像をAIが編集した動画が披露されると「かわいい!」「MVみたい!」と歓声を上げた。どこで使いたいか問われると「コンサート会場の周辺でファンの方が使えるといいと思いました」などと期待を寄せた。fly、JTB、JALは説明会で「地域の魅力を引き出して収益化し持続可能な観光にするサービスを目指します」と述べ、SKYPIXをビジネスモデル特許に申請していることも明かした。
3社のリリースは以下(画像のあと)の通り。JTBのプレスリリースのリンクはこちら。
~持続可能な観光地づくりに向け、絶景を手のひらへ。~
株式会社JTB(本社:品川区 代表取締役 社長執行役員:山北栄二郎、以下「JTB」)、fly株式会社(本社:目黒区 代表取締役社長 船津宏樹、以下「fly」)、日本航空株式会社(本社:品川区 代表取締役社長 鳥取三津子、以下「JAL」)は、観光地の魅力を創出にするため、日本初(※)のドローンを活用した自動無人空撮および、AIによる動画自動編集サービス「SKYPIX」(以下、本サービス)を開始します。3月1日(土)から5月6日(火)の間、香川県小豆島寒霞渓にてサービス実証を行い、8月1日(金)より正式サービスの開始を予定しています。 ※fly株式会社調べ
●HP
本サービスは、通常では見ることはできない空からの視点で、誰でも気軽に動画撮影や視聴を楽しむことができる日本初のサービスとなります。設置されたQRコードをお客様のスマートフォンで読み込み、決済を行うとドローンが飛び立ち、空からの美しい景観とお客様を、事前にプログラミングされた最適なルートで自動撮影します。ドローンが撮影した映像はAIによって自動で編集され、高画質でインパクトのある映像がお客様のお手元に届きます。アプリをダウンロードする必要はなく、英語や中国語等の複数言語に対応しているため、海外のお客様も簡単にご利用いただけます。
今後の展開
本サービスは日本国内、および海外に向け事業展開をする予定です。2027年を目途に国内47か所(各都道府県に1基以上)の設置を目指しています。本サービスが普及し、記念撮影を新たな”体験コンテンツ”に変えていきます。
〇株式会社JTB
JTBは、「交流創造事業」を事業ドメインとし、地域・社会課題に対して、人×場所×交流をデザインすることでその解決に取り組んでいます。地域資源を活用した観光コンテンツの開発により交流人口の拡大につなげるとともに、持続可能な地域づくりに貢献してまいります。 ※「交流創造事業」は(株)JTBの登録商標です
〇fly株式会社
flyは、ドローンをはじめとしたテクノロジーで「心×躍る×未来」を共育し、プロダクション・エデュケーション・コンサルティング事業を通してチャレンジし続ける集団です。ドローンの可能性を最大限に活かし、新たな分野での活用を進めることで人の心が動く体験を提供し、より豊かな社会の創造に貢献していきます。
〇日本航空株式会社
JALは、最上位戦略に掲げているESG戦略を今後も全社一丸となって推進し、「移動」を通じた「関係・つながり」の創造によって、持続的に社会的・経済的価値を創出することで、世界で一番お客様に選ばれ、愛されるエアライングループを目指してまいります。
ドローンによる自動無人空撮を用いることで、日本全国、四季折々の豊かな観光地の魅力を発信が可能となります。また、観光地における事業者負担も少なく、世界へ向けて情報発信ができると考えています。
■本サービスの概要
ドローンの運航・運用は fly・JTBが行います。各社の役割については以下のとおりです。
〇株式会社JTB
・観光地におけるコンテンツ開発の知見を活かしたSKYPIX事業の企画・設計
・事業計画および収支計画の作成、事業体制の構築、運営手法の確立
・全国展開に向けた、導入地域の開拓および横展開フローの整備
〇fly株式会社
・クリエイティブ・産業分野でのドローン運航管理の知見を活用したSKYPIX基幹システムの開発・運用・保守
・ドローンの運航管理体制(法規制対応含む)の構築並びに現地運航管理者に対する指導・サポート
〇日本航空株式会社
・お客様操作性向上のため、JALが提供するアプリの知見や客室乗務員によるお客様目線を活かしたアドバイス
・JALWebサイト等を活用した観光地の魅力発信と誘客プロモーションの実施
■実証運用概要
期間:2025年3月1日(土)-5月6日(火)
営業時間:金・土・日曜日、および祝日の9時~17時 ※寒霞渓ロープウェイの休業日を除く
場所:香川県小豆島 国立公園 寒霞渓 山頂第二展望台
料金:1回あたり2,000円(税込)
※寒霞渓のSKYPIXは、寒霞渓ロープウェイの運行や物産店の運営を行っている小豆島総合開発株式会社が事業運営を行います。
Fly.inc, JAL, and JTB announced on February 26 that they have developed “SKYPIX,” Japan’s first service that allows smartphone users to have a prepared drone fly automatically and take selfies as long as they read a QR code printed on the information board. fly and others will launch the service on March 1. The service will be demonstrated in Kankakei, a Seto Inland Sea National Park (Shodoshima Town, Kagawa Prefecture) on March 1. The fee for the demonstration period is 2,000 yen per group. At the briefing session held on the same day, Hiroki Funatsu, president of fly, Inc. said, “Even people who have never touched a drone, do not know how to fly a drone, or do not know how to obtain a permit can enjoy taking aerial photos and selfies using a drone. In this sense, SKYPIX will be a service that will provide an opportunity for those who have never used a drone to become familiar with and enjoy it. fly and others will conduct a demonstration until May 6, with the aim of starting official operations on August 1. The seven-member idol group CANDY TUNE came to the briefing to celebrate the SKYPIX announcement.
ドローンの運航サービス、人材育成などを手掛ける株式会社ダイヤサービス(千葉市)が、応急手当講習の普及を目指し協賛パートナー制度を導入した。現在、協賛パートナーの募集を進めている。同社はドローン運航中にけがをしたりさせたりしたさいに、医療機関にかかるまでの間にすべき応急手当の方法を身に付ける講座を6年前から提供している。協賛制度を通じて講習や応急手当の必要性の普及を加速させ、講習の受講料抑制につなげることを目指す。
ダイヤサービスが協賛制度を通じて普及を目指す「ドローン応急⼿当講習」は、ドローンを使っているときにけがをしたりさせたりした場合の応急手当のノウハウを学ぶ講習で、安全を重視するダイヤサービスが、看護師、救急救命士、民間航空機の客室乗務員経験者らとともに開発に着手、2019年3月にカリキュラム化した。「一次救命措置」と呼ばれる措置の手順やそれぞれの方法から具体的な方法、CPRと呼ばれる措置の方法、AEDの使い方、バイタルサイン、PRICES 処置、止血対応などをテキスト、実技を通して体系的に学ぶ。止血方法が含まれるのは珍しい。
受講者には学んだことを証明する認定証「ドローン応急⼿当資格認定者」を発⾏する。「ドローン応急⼿当資格認定者」が在籍する法人は、「ドローン応急⼿当資格取得者在籍事業者」を名乗ることが認められる。また学んだスキルを維持するための3年毎の更新講習もある。
受講者は、ドローンを使う現場が都心部でないことが多いことから、緊急通報をしてもすぐにかけつけてもらえる場所でないことが多いことに伴う不安の解消を求める人が多く、「体系的に効率的に学べる講座として有益」と評価が高い。
同社がカリキュラム化したあとの2021年に成立し、2022年12⽉に施行された改正航空法では、ドローン運用中に事故でけが人が出た場合、操縦者には負傷者の救護義務が課されることが明記された。具体的には航空法第132条90第1項に「無⼈航空機の⾶⾏により⼈が負傷した場合、操縦者は直ちに負傷者の救護等、危険を防⽌するために必要な措置を講じなければならない」とあり、義務を怠った場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰⾦が科される可能性があることが盛り込まれた。
また2022年11月に制定された報告要領(無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領)には、救護義務についてさらに詳しく記されている。まず、「法第132条の90第1項に規定する事故が発生した場合に、『負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置』として、操縦者が直ちに無人航空機の飛行を中止し、講じる必要のある措置をいい、具体的には次の事項をいう。なお、事故に該当する場合に限らず、必要と認められる場合には、所要の救護活動を行うべきである」と「次の事項」を必要な措置と定めている。
具体的には「a)負傷者を救護すること 事故が起きたときは、操縦者及びその関係者は次のような措置を講じなければならない。ア)負傷者がいる場合は、医師、救急車等が到着するまでの間のガーゼや清潔なハンカチ等での止血等、可能な応急救護処置を行う。この場合、むやみに負傷者を動かさない(特に頭部に傷を受けているときは動かさない)ようにする。ただし、二次的な事故等のおそれがある場合は、速やかに負傷者を安全な場所に移動させる。(以下略)」などと記され、「止血」が含まれている。ダイヤサービスの「応急⼿当講習」にはこの止血の方法が含まれる。
一方、義務となった救護の方法を身に付ける方法が限られていたり、学習者には身に付ける場を探すことが難しかったりと、応急⼿当の方法を学ぶ場は依然、増えていない。
このためダイヤサービスは協賛パートナーとともに、応急手当の啓蒙、講習の普及拡大、講習内容の随時更新、受講料金の抑制につなげたい考えだ。ダイヤサービスは社団法人を設立したのちに、協賛パートナーを含めた普及・啓蒙活動の主体を社団法人に移管する方針だ。
ダイヤサービスの戸出智祐代表取締役社長は「万が一の事故時に現場で応急対応できる人材は、いまもほとんど育っていません。われわれは6年前から応急手当講習を地道に展開して参りましたが、協賛パートナー制度で万が一の備えを業界の常識にすることに挑戦したいと思っています」と話している。
株式会社ダイヤサービス:https://daiyaservice.com/
協賛パートナー説明と問い合わせ:https://daiyaservice.com/sponsorship/
狭小空間点検用小型ドローンIBIS2Assistを使ったレース、「JR東日本グループドローンDX CHAMPIONSHIP」が6月7日、JR高輪ゲートウェイシティ駅と一体化した一帯に構える大型複合ビルで開幕した。初日の7日はJR東日本の設備点検、工事設計業務などでドローンを活用する部署4チームがIBIS2でタイムを競い合う「JR 東日本グループ Challenge Cup」が行われた。駅そっくりで観客からドローンが見えるよう工夫されたコース、選手の表情が分かるステージ、手に汗握る実況、ドローンの操縦席にのっているような迫力ある映像など、本格的なレース仕様の演出が特徴で、白熱したレースと各チームの熱のこもった応援で来場者も大きな拍手を送った。8日には企業対抗戦が行われる。
ドローンDX CHAMPIONSHIPはJR東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本、東京)、デジタルツインのCaLta株式会社(東京)、Liberawareが開催した。レース演出はプロチームの運営、イベント企画を手がけ、国際レースへの出場や優勝の経験も豊富なDRONE SPORTS株式会社(東京)が担った。
会場はJR高輪ゲートウェイシティ駅改札からすぐのTAKANAWA GATEWAY CITY THE LINKPILLAR 1の地下2階にあるTAKANAWA GATEWAY Convention Center LINKPILLAR Hallだ。
ホール内にJR高輪ゲートウェイシティ駅そっくりのミニチュアコースが設置された。駅の天井をくぐるコース、ホーム床下の配管をもぐるコースのほか、二次元コードを読み取る仕掛けや、SUICA改札にタッチする仕掛けなどJR東日本らしさを取り込んだ。飛行コースは観客の目の高さが中心で、観客が間近でドローンの動きをみられる工夫も凝らされている。
選手は会場内に設置されたステージの上の所定のシートに座り、ゴーグルを装着して、コントローラーを操作してドローンを動かす。ステージの背景の大型スクリーンには、選手の表情や飛行中のドローンの操縦席に座っているかのような映像が映し出される。
レースは2チームの対戦で、勝ちあがる形式で行われた。各チームは3選手で構成され、3つの対戦の総合ポイントで勝者を決め、勝ち上がる。レースがスタートするとスクリーンに経過時間や、ミッションをクリアするたびに加算されるポイントなどが表示される。ドローンが上手にコースを抜けると、チームの応援団から大きな拍手があがるなど白熱した展開が続き、わかりやすいルールに一般公開された身に来た観客も拍手を送っていた。
この日は決勝で最速タイムをたたき出したチーム「E-Wings」(電気ネットワーク部門)が優勝した。2位が「Z3C」( エネルギー企画部)、3位が「Kenchiku Smart Maintenance」( 設備部門=東京建築建設技術センター)、4位が「チームKENKOU」(建設工事部)だった。
2日目の6月8日には、IBIS2を活用する8つの企業チームによる「JR 東日本グループ presents『IBIS2 Master Cup』」が開催される。ソフトバンク株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、新潟工科大学フィールドロボティクス研究室/株式会社アグリノーム研究所/九電ドローンサービス株式会社合同チーム、KDDI スマートドローン株式会社、セントラル警備保障株式会社、株式会社えきまちエナジークリエイト、JR東日本コンサルタンツ株式会社、JR東日本ビルテック株式会社がレースに挑み、「通信キャリア対決や、電力大手対決が楽しみ」などの声があがっている。
7日のレース後に取材に応じたJR東日本マーケティング本部まちづくり部門品川ユニット(次世代まちづくり創造)の出川智之マネージャーは、「TAKANAWA GATEWAY CITY は『100年先の心豊かなくらしのための実験場』として新たなビジネス・文化が生まれ続けるまちづくりに取り組んでいますので、ドローン、ロボットの取り組みをお示しすることでその一端をお示しできたと考えています。初日は保守点検、設計など各部署でドローンを使っていることをお客様にも知って頂く機会にしたいとの思いを込めて、社内の取り組みを一般公開することにしました。レースというエンタメ要素を取り込みつつ、これらを通じて安全性や生産性を高めようとしている姿勢を伝えられたのではないかと感じています。また会場内に掲示してあるJR東日本グループのドローンの取り組み、たとえば山間部での使い方や災害時の使い方などを読んでくださっている姿を目にし、JR東日本グループのDXの取り組みを広く知って頂く機会になったと感じています」と述べた。
またこの日、選手としても出場したJR東日本建設工事部基盤戦略ユニット(技術戦略・DX)主務の石田将貴さんは「維持管理などの部署はなかなか表に出る機会が少ないので、このような機会にDXで生産性向上に励んでいる姿勢をお示しできたとも思います。働きやすい環境、職場を目指していることをお示しすることで企業の魅力向上にもつながればいい、とも思っています」などと捕捉した。
さらに大会の今後の開催について出川マネージャーは「お客様を含めて内外の反響などを確認したうえで検討することになります。ただ、JR東日本管内は青森、新潟にも職場がありますので、各地から気軽に参加できる機会はこれからもつくりたいと考えています。個人としては各地でで地方大会を開き、ここ(TGWC)で決勝ができたらおもしろいかな、とは思いますが、これはまだ私個人のアイディアです」と述べた。
ブルーイノベーション株式会社(東京)、VFR株式会社(ブイエフアール、名古屋市)など4社のコンソーシアムは6月4日、千葉・幕張メッセで開催中のドローンの大規模展示会Japan Drone 2025で、試作した国産ドローンポートを公開した。複数のメーカーによる使用が可能な汎用性や、日本主導で発行にこぎつけたドローンポートの国際標準規格ISO 5491に準拠し、外部システムとの連携を可能にしている。発表ではプロジェクトの責任者をつとめるVFRの戸國(とくに)英器取締役が「2027年の社会実装と量産化を目指しています」と展望を表明した。
開発にはブルーイノベーション、VFRとCube Earth株式会社(キューブアース、大阪市)、株式会社Prodrone(プロドローン、名古屋市)の4社がコンソーシアムを組み「4社の強みをいかして開発している」(VFRの戸國氏)という。
開発の背景については「ドローン運用の全自動化、長距離長時間化、インフラ点検活用拡大、緊急武士輸送ニーズ拡大などから対応するドローンポートの需要が高まっている一方、海外製が多く、国際情勢のうえでも、関連する経済安保の観点からも国産ポートが必要との声が高まっている」と説明した。
事業は経済産業省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」に採択されている。
事前に公開された発表内容は以下の通り
~VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションの4社コンソーシアムが 国産ドローンポートの社会実装に向けた試作機を初公開~
VFR株式会社(本社:愛知県名古屋市 代表取締役社長:蓬田 和平 以下 VFR)と、Cube Earth株式会社(本社:大阪府大阪市 代表取締役社長:武田 全史 以下 Cube Earth)、株式会社Prodrone(本社:愛知県名古屋市 代表取締役社長 : 戸谷 俊介 以下 Prodrone)、ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区 代表取締役社長 最高執行役員 : 熊田 貴之 以下 ブルーイノベーション)の4社は、2023年10月に採択された経済産業省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」において共同開発を進めている「国産ドローンポート」の試作機を、2025年6月4日より開催の『Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO 2025』にて初公開します。
■背景|ドローンの社会実装に必要な“空の拠点”
近年、災害対応やインフラ維持管理をはじめ、様々な分野でドローンの活用が広がっています。その中で、安全な離着陸、充電、保守を担う「ドローンポート」の整備は、今後の省人化を進める上で不可欠です。
しかし、現在開発されているドローンポートは海外製が多く、安全保障の観点からセキュリティ対策の必要性が高まっています。また、日本の災害環境やインフラ構造に最適化された、安全な国産ドローンポートの開発が急務となっています。
こうした社会的なニーズに応えるため、VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションの4社は連携し、国産ドローンポートの実用化に向けて共同開発を開始しました。この共同開発は、2023年より経済産業省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の支援を受けています。
■国産ドローンポートの社会実装に向けた本格展開
本コンソーシアムでは、ドローンポートの社会実装を加速するため、より高い「安全性」「汎用性」「拡張性」を備えた、国産ドローンポートの開発に取り組みます。
このドローンポートは、以下の設計要件に基づいています。
■各社の役割と開発体制
VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションは、それぞれの強みを活かし、ドローンポート本体の設計、機体連携、遠隔制御、統合管理システム、現場実装に至るまで、4社共同で開発に取り組んでおり、以下にそれぞれの役割を示します。
・安全性 : ドローンは離着陸時に最も事故が多く、確実かつ安全に離着陸できることを目指します。
・汎用性 : 現場の多様なニーズから複数のメーカーのドローンの離着陸を可能にします。
・拡張性 : 外部システムとの連携を可能にし、我が国が主導したISO 5491(ドローンポート国際標準)※2に準拠します。
■試作機の概要(Japan Drone 2025で初公開)
展示された国産ドローンポート試作機は、将来の社会インフラとしての「空の拠点」の実装に向けた第一歩となる設計です。
■今後の展開
本コンソーシアムは、今年度内に複数の地方自治体およびインフラ事業者との連携による実証実験を実施予定です。これを通じて実用化に向けた機能検証と運用設計を進め、2027年の社会実装および量産化を目指しています。
ドローンの大規模展示会「第10回Japan Drone 2025/第4回次世代エアモビリティEXPO」(主催:一般社団法人日本UAS産業振興協議会<JUIDA>、共催:株式会社コングレ)が6月4日、千葉・幕張メッセで開幕した。過去最大の285組が出展し、初日から新モデルの初公開、新サービスの発表が相次いだ。第10回を祝うようなにぎやかなブースが目立ち、ダンサーによるパフォーマンスで盛り上げを図るところもあるなど、はなやかな幕開けとなった。6月6日まで。
開幕を前に開会式が行われ、衆議院無人航空機普及利用促進議員連盟(ドローン議連)、総務省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、千葉市、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、株式会社コングレなどの代表が参加し、それぞれ祝辞、最近の取り組み、今後の展望などを述べた。主催者であるJUIDAの鈴木真二理事長は「JapanDroneは記念すべき第10回開催となりました。法改正、規制緩和、ドローンとエアモビリティについて深く議論する場を設けております。みなさまにとって、ビジネスチャンスの創出、知識の深化、ドローンと空のモビリティの未来をともに考える貴重な機会となることを願っています。そしてこの展示会が新たな社会の実現に向けた大きな一歩になると確信しています」などとあいさつした。
会場には仕掛けの凝った大掛かりなブースが目立つ。GMOインターネットグループ、ブルーイノベーション、JUIDA、テララボ、ロボデックス、ソフトバンク、DRONE STAR powered by ORSOトピアドローン技術研究所、Suzakなどが広く面積をとったブースを構えた。DRONE STAR powered by ORSOや、スペースワンと日本水中ドローン協会の共同ブースには大型のLEDモニターが設置され会場に華やかさを添えている。
海外勢も目立つ。台湾が大きなブースを設置するなど18の企業、団体が製品やサービスを紹介しているほか、米国、中国、フランス、デンマーク、韓国、スイス、ベトナムなどからの出展が国際色を豊かにしている。
初公開、新規発表など相次いだ。JUIDAが東急コミュニティー、ハミングバードとともにマンション点検のドローン操縦者を育成する「ドローン点検スペシャリスト」資格の創設を会場で正式に発表した。株式会社ORSOは出展しているブースDRONE STAR powered by ORSOで、ブラウザからすぐに操縦できる無料シミュレーターゲーム「DRONE STAR PILOT(ドローンスター・パイロット)」を先行公開した。株式会社プロドローンは第一種型式認証の取得を目指し現在最終テスト段階の大型ドローン「PD6B-CAT3型」を初公開した。
にぎやかな装いで人目をひく演出もある。水素燃料電池ドローン開発の株式会社ロボデックスは、ブースにカートリッジに高圧で充填できる移動式充填トラックを持ちこみ、プレゼンテーションの冒頭には、ブース内を光、スモーク、ダンス音楽の中をダンサー4人がエネルギッシュなパフォーマンスを披露して客足を止めていた。
初日の4日は開場の午前中から多くの来場者がつめかけ、出展者に話を聞いたり、後援などステージ企画を訪れたりする姿が見られた。JapanDroneは6月6日まで開催。事前予約で入場は無料になる。
山梨県は6月3日、操縦者が搭乗せずに旅客運航するAAMの社会受容性を引き上げる活動を進めるため、日本航空株式会社(東京)を含む産官学で連携協定を締結した。山梨県内で地域住民に受け入れられるために必要な対応を分析する。住民へのヒアリングや、飛行試験なども想定し、2030年代の社会実装実現を目指す。
締結されたのは「山梨県での空飛ぶクルマの社会受容性向上に関する連携協定」で、山梨県、日本航空のほか、MS&ADインターリスク総研株式会社(東京)、山梨大学、九州大学の5者が署名した。
山梨県は2027年(令和9年)以降に開業を見込む山梨県内のリニア中央新幹線駅の効果を最大化する手段としてAAMに機体を寄せていて、とくにパイロット不足の解決、経済性の向上の面からパイロットが搭乗しない「無操縦者航空機」が有効と位置付けている。実現に向けて地域の受け入れ環境が重要になるため、パイロットレスAAMの社会受容性向上の協定を締結した。
社会受容性向上に関する調査、取り組みのほか、パイロットレスAAMの実証飛行、地域に適した活用方法の検討などを進める。
パイロットレスAAMの開発に取り組んでいる企業は限られており、事務局は「現時点で具体的な機体を想定して検討するということではない」と話している。一方、操縦者が搭乗するAAMと搭乗しないAAMでは、飛行エリアの住民の受け入れに差が生じる可能性があると想定し、パイロットレスAAMに関する住民の意識の調査をしたり分析をしたりすることにしている。対象をパイロットレスAAMに絞った社会受容性向上の取り組みは珍しく、「日本における社会受容のモデルを構築し世界をけん引」することを目指す。
遠隔ソリューション開発、運用の株式会社アイ・ロボティクス(東京)は6月2日、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)敦賀保線区と鉄道保守業務にドローンを有効に活用するための運用モデル構築と実証を行ったと発表した。鉄道保守業務特有の線路内の雑草対策や列車に衝突するなどの事故が課題となっている野生動物対策について、ドローンを使う場合の利便性、ドローンの使用に伴う課題、鉄道の制約などをふまえて検討し、省人化と安全性を両立する運用モデルを構築した。遠隔操作のために合同会社SORABOT(東京)のドローンポートも活用した。除草剤は実際に散布を実施し、散布具合などを確認した。
取り組みの中では「遠隔操作型ドローンポートの現場設置と運用」、「除草剤の空中散布に関する実地検証」、「動物忌避剤の活用可能性に関する環境調査と検討」などを実施しした。ドローンポートの現場設置については合同会社SORABOT(東京)のドローンポートを活用した。除草剤の空中散布では実際に散布し、飛行ルート、撒布の均一性、薬剤の飛散抑制などを確認した。今回は動物忌避剤の散布は行わなかったが、シカ・イノシシなどの獣害対策として有効性や運用実現性を環境、法的観点から整理し、薬剤の選定方法や適用条件の明確化に取り組み、実運用の課題を洗い出し、対応の方向性を可視化した。
今回の検証プロジェクトでアイ・ロボティクスは現場作業や実務を重視した。具体的には現場担当者の動線、作業計画の立て方、飛行申請の実務、薬剤の補充、保管管理などドローンだからこそ生じる課題と鉄道現場ならではの制約をすり合わせて、運用モデルの構築に取り組んだ。
今後、アイ・ロボティクスとJR西日本敦賀保線区は、ドローンポートの常設運用に向けた耐候性・遠隔監視機能の強化、複数ドローンによる自動散布の連携制御、飛行ログや散布実績の自動記録と報告フォーマットの整備、夜間飛行や非GPS環境飛行への対応などにも取り組む方針だ。
発表は以下の通り
アイ・ロボティクスは、JR西日本 敦賀保線区と連携し、鉄道現場の実情に即したドローン運用を構築するとともに、省人化と安全性を両立する新たな保守モデルを実証しました。
株式会社アイ・ロボティクス(本社:東京都渋谷区、代表取締役:安藤 嘉康)は、西日本旅客鉄道株式会社 敦賀保線区と連携し、鉄道保守業務におけるドローン運用モデルの構築と実証を行いました。本取り組みでは、「遠隔操作型ドローンポートの現場設置と運用」、「除草剤の空中散布に関する実地検証」、および「動物忌避剤の活用可能性に関する環境調査と検討」等を実施し、現場に即したドローン活用の在り方を多面的に検証しました。
鉄道業界では現在、沿線保守業務における人手不足や作業の属人化、作業品質の平準化と安全性の両立といった、現場を支えるための持続的な仕組みづくりが求められています。従来、先端技術の導入が現場の運用や業務フローとの接続が不十分なまま進められるケースも少なくなく、またドローン活用がハードウェア中心の性能実証に偏りがちなプロジェクトが多数見られる中で、JR西日本 敦賀保線区とアイ・ロボティクスのチームは、単なる技術導入ではなく「現場と共に設計し、現場で共に試す」ことを軸に据えた共創型の取り組みを重視し、プロジェクトを実施しました。
そのため、スペック重視のデモンストレーションにとどまらず、現場の業務設計・制度対応・運用負荷といった「現場実務における本質的デジタルトランスフォーメーション」を重視。関係者が一体となり、現場担当者の知見と実運用上の要件を取り込みながら、計画段階から現地検証までを一体的に構築しました。
ドローン技術を「現場業務の流れに自然な形で取り込んでいく」という視点で進めることで、省人化と安全性向上を両立する、持続可能な鉄道保守のかたちを模索しています。
実証を通じて得られた主要な成果と検証ポイント
本プロジェクトでは、現場での実運用に近い条件での検証を通じて、単なる実証にとどまらない「導入後の実装像」を具体化しました。以下に、特に成果が顕著だったポイントをまとめます。
(技術協力:合同会社SORABOT)
■ 遠隔操作型ドローンポートによる省力化オペレーションの実現
実証現場にドローンポートを設置し、定時・定ルートでの自動離着陸と巡回飛行を実施しました。これにより、作業員が現場に常駐せずとも点検・散布などの飛行業務が遂行できる運用フローを構築。人的リソースの抑制と業務の標準化・平準化に寄与する効果を確認しました。
■ 線路沿線における除草剤空中散布の実地検証
雑草が繁茂する区間において、中型農業用ドローンを用いた除草剤の空中散布を実施。飛行ルートの安定性、撒布範囲の均一性、薬剤の飛散抑制など、運用上の安全性と精度のバランスを評価しました。作業対象の特性に応じた安全な空中散布手法の確立に向けた実践的な知見が得られました。
■ 動物忌避剤の空中散布に関する環境調査と導入検討
敦賀エリアにおけるシカ・イノシシなどの獣害対策として、忌避剤を用いた空中散布の有効性と運用実現性を調査。今回は散布そのものは行わなかったものの、現地環境や法的観点からの整理、薬剤選定と適用条件の明確化により、実運用に向けた課題と対応の方向性を可視化することができました。
■ 作業体制と人員負荷の最適化
ドローン活用によって、従来は5人以上を要した散布作業を2人で対応可能に。現場の状況変化や気象条件に柔軟に対応しつつも、飛行精度・作業再現性を維持できるオペレーションの確立を確認しました。これは、省人化だけでなく、人的負担の軽減にも大きく寄与する結果です。
■ 安全運用と制度適合の両立
本プロジェクトでは、航空法や農薬取締法など関連法令に基づいた運用設計と、事前申請・周知・現地管理を徹底。飛行区域の安全標識設置、近隣住民への説明対応、緊急停止プロトコルの整備など、制度と現場運用の両面から安全性を担保しました。実証期間中における事故・トラブルゼロという結果は、安全管理体制の有効性を裏付けるものです。
鉄道業界の持続的な発展に向けて
鉄道沿線の保守に関わる作業では、「安全確保」と「人手による確実な作業」が何よりも優先される一方で、慢性的な人材不足や作業の属人化、作業品質の平準化といった業界共通の課題が表面化しています。鉄道業界が今後も持続的に安全と信頼を提供し続けるためには、現場の知見と技術革新の橋渡しとなる取り組みが求められます。今回のプロジェクトは、まさに「技術を持ち込む」のではなく、「現場に寄り添いながら共に育てていく」姿勢を重視した共創型のアプローチでした。
特に注力したのは、鉄道保守に関わる上流から下流までの工程全体に目を配りながら、ドローンを単なる省力化ツールとしてではなく、現場業務の中に自然に組み込める手段として位置づけた点です。現場担当者の動線、作業計画の立て方、飛行申請の実務、そして薬剤の補充や保管管理まで、あらゆる段階で「ドローンだからこそ生じる課題」と「鉄道現場ならではの制約」をすり合わせていきました。
ドローン技術単体ではなく、それを運用する体制や、安全を担保する制度・知識、さらには現場環境の理解を含めた“現場起点の導入プロセス”が求められるなか、アイ・ロボティクスは技術と現場、制度と実運用、そのあいだを橋渡しする存在として動いています。これができるのは、創業以来、現場を重視して開発から実装まで取り組んできたからでもあります。
アイ・ロボティクスは、ドローンによってすべてを代替するのではなく、「人と技術が役割分担しながら持続的に保守作業を続けていける未来」に向けて、今後も一歩ずつ取り組みを進めてまいります。
今後の展望
今回の取り組みを通じて、アイ・ロボティクスとJR西日本 敦賀保線区のチームは以下のような技術・運用基盤の整備に注力してまいります:
また、鉄道事業者の皆様と連携し、地域ごとの植生や地形に応じた散布設計、制度整備への共同対応など、技術導入だけでなく“運用の設計”をともに進めていく協業体制の構築を目指しています。
ドローンが本当に使えるものになるかどうかは、現場の知見とセットで育てていけるかどうかにかかっています。共に次の一歩を踏み出すパートナーとして、ご相談をお待ちしています。