株式会社自律制御システム研究所(ACSL、東京)は5月12日、2021(令和3)年3月期通期連結決算を発表した。最終損益(純損益)は15億1100万円の赤字だった。2022年3月期は2.8億~6.8億円の最終赤字を見込み、赤字幅が縮小する予想だ。また同日、代表取締役最高経営責任者(CEO)の太田裕朗氏について、代表CEOを退任し、取締役会長となる異動を内定したと発表した。異動は6月24日に開催予定の株主総会後の取締役会で正式に決まる。この日の決算発表は、鷲谷聡之代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)が、太田氏に代わり代表者として名を連ねた。
ACSLの2021年3月期連結決算は、売上高6億2070万円、本業での収支を示す営業損益は11億3927万円の赤字、金利収入や助成金などを含めた経常損益は10億8164万円の赤字、税引き後の最終損益は15億1179万円だった。ドローン事業の需要の高まりを背景に先行投資として研究開発を加速させた一方、新型コロナウイルス感染の影響の長期化を受け、2021年度中に見込んでいた事業が翌期への繰り越しや、一時停止となるなどの影響があった。出資している米Automobility社の株式評価損3億517万円を特別損失として計上した。
同社は2022年3月期の業績予想について、新型コロナウイルスの感染状況やそれに伴う経済活動などにいくつかの前提を置いたうえで、ひとつの予想値ではなく、下限と上限の幅を示した。売上高は25億円から30億円、営業損益は7億円の赤字から3億円の赤字、経常損益は6億8000万円の赤字から2億8000万円の赤字、最終損益は6億8500万円から2億8500万円の赤字を見込む。この通りに推移すると最終損益の赤字幅は2021年3月期から縮小する。
ひとつ前の決算である2020年3月期通期については、昨年2020年5月12日に、売上高は12億7872万円、営業損益は1594万円の黒字、経常損益は2億3142万円の黒字、最終損益は2億3980万円と発表していた。そのさい2021年3月期通期の業績予想については、売上高の上積み、各損益の黒字予想を表明したものの、新型コロナウイルスの影響を受け合理的な予測が困難として、数字での公表を見送っていた。
その後、2020年8月に第一四半期決算を発表したさいに、2021年3月期の通期業績予想を売上高が14億~17億円の増収、最終損益が2億3000万円の赤字から5000万円の黒字と公表。さらに第三四半期決算を発表したさい(2021年2月12日)には、売上高を6億円、最終損益を13億円の赤字に下方修正していた。また第三四半期には、2020年12月に設立したCVC、ACSL1号有限責任事業組合を含む連結決算に変更している。このため2021年3月期通期も連結決算となり、非連結だった2020年3月期通期決算との連続性が失われたことになり、決算短信では比較を示していない。ただし「説明資料」の中では、それぞれの数字をグラフ化して推移を示している。
ACSLは2020年8月に中期経営方針を発表しており、それに基づく取り組みをすでに加速させている。
決算発表当日の5月12日には、インドで産業用ドローン事業を手掛けるAeroarc Private Limitedと共同出資の合弁会社、ACSL India Private Limitedを7~9月期をめどに設立すると発表した。インドを中心にASEANで製造、販売、アフターサービスを提供する。その2日前の5月10日には、合弁相手であるAeroarc社の親会社、マレーシアのエアロダイングループの第三者割当増資の引き受けを発表し、関係を強化した。エアロダイングループとは2020年11月に連携しており、ACSLのASEAN進出に重要な役割を担う。
このほかACSLの主力機PF2を点検用途向けにサブスクリプションサービスを導入、上下水道など水のインフラ事業の株式会社NJS(東京)と、技術開発、販売を担う合弁会社、株式会社ファインドアイ(FINDi、東京)を設立、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業でコンソーシアムリーダーとして開発している小型空撮機の第三四半期以降の販売方針表明、煙突点検機、調達水槽点検機の開発などを進め、体制を整えつつある。
一方、太田裕朗代表取締役最高経営責任者(CEO)については、「経営体制の強化を図る目的」で取締役会長への移動を内定したと発表した。6月の株主総会後の取締役会で正式決定される。その後の代表取締役は、鷲谷聡之代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)1人となる。
ACSLは「市場拡大、法整備が進み、セキュアなドローンの需要も高まっている」と掲げた目標の実現に向けで今後も事業を進めていく方針だ。
株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、山口県山口市で重ねてきたリハーサル飛行を収めた動画を公開した。
リハーサル飛行は、山口県山口市の「山口きらら博記念公園」内に設けた飛行試験場で春から行われていて、動画には大阪・関西万博のデモフライトに使われるSD-05が離陸し、移動し、向きを変えて飛行するなどの様子が納められている。
大阪・関西万博では7月31日から8月24日まで、火、水曜以外の原則週5日の予定で、来場者の前で飛行する様子を公開する。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら