神奈川県が、ドローン前提社会の実現に向けた取り組みを推進するために構築した産学公連携型のコミュニティ、「かながわドローン前提社会ネットワーク」が、第二期のモデル事業を受け付けている。募集対象事業は、海上環境、インフラメンテナンス、高所にある湖での水難者捜索、プランクトン調査、など広範囲にわたるほか、対象外であっても応募を受けつけ、採択に道を開いている。採択事業には県が関係機関との調整などのサポートを担う。
第二期は、モデル事業の対象を「社会課題の解決に資する事業」と幅広く受け付けていることが特徴だ。水中ドローンも対象になり、法人であれば神奈川県に本社を構えていなくても応募可能だ。
対象事業は具体的には以下の通りだ。
ア)海中などに含まれるマイクロプラスチックの回収
イ)橋梁や地下鉄道庁舎・トンネルなどの点検や維持管理
ウ)海抜300メートル以上の高所にある混濁した湖における水難者捜索
エ)湖の水産資源管理のためのプランクトン生育状況等の調査及び分析
オ )河川や湖のカワウの営巣調査や追払等対策
カ )森林と人の居住区域との境界付近等での鳥獣害対策
キ )アからカに掲げる事業のほか、社会的課題の解決に資する事業
例示された事業が広範囲にわたっていることがわかるほか、「キ)」で、具体例以外の申請も可能であることが明記されている。また「相談票」という仕組みを取り入れ、第一期よりも応募手続きの簡素にした。
かながわドローン前提社会ネットワークは昨年9月、神奈川県が、高齢化の進展などにより顕在化する様々な社会的課題の解決に向けた実践的な取組を推進するために昨年9月に発足させた。アカデミア、企業・団体、市町村などで構成し、メンバーの会費は無料。神奈川県政策局未来創生課が事務局機能を担っている。講演会、交流会などのほかに、モデル事業をサポートする方針を打ち出し、第一期として18法人、23案件が採択されている。
第1期で採択されたモデル事業の主体は以下の通りだ(固有名詞で50音順、和名先掲)
・株式会社アイネット<2件=災害、観光>
・株式会社アイ・ロボティクス<点検>
・株式会社エアロネクスト<物流>
・エミー測量設計有限会社<点検>
・株式会社エムテックス<災害>
・株式会社アイネット<人材育成>
・一般社団法人神奈川県ドローン協会<点検>
・一般社団法人鎌倉ドローン協会<観光>
・株式会社カラーチップス<観光>
・NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパン<災害対策>
・学校法人慶應義塾大学<4件=人材育成、農業、災害、観光>
・株式会社シアン<観光>
・株式会社四門<環境>
・ドローン・アイティ株式会社<その他>
・パーソルプロセス&テクノロジー株式会社<2件=環境、点検>
・ブルーイノベーション株式会社<物流>
・株式会社リコー<災害対策・観光>
・TEAD株式会社<環境>
【第2期モデル事業ホームページ】
【募集要項】
問い合わせは神奈川県政策局未来創生課(045-285-0710)まで。
ドローンが事業や生活に根付く「ドローン前提社会」の実現を目指している神奈川県が12月26日、「第2回かながわドローン前提社会ネットワーク~ドローンを活用した災害対策について~」を開催する。来賓の講演、モデル事業や取り組みの事例の紹介や、交流会の開催が予定されている。入場は無料。
神奈川県がネットワークを開催するのは2回目。9月に行われた第1回でモデル事業の募集を公表し、11月21日には応募のあった31件から7件の事業を採択した。
採択されたのは、▽NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパン(災害対策への空撮ドローンの総合的活用)▽株式会社リコー(音響通信を活用した防災及び観光振興)▽パーソルプロセス&テクノロジー株式会社(公共施設における施設点検の効率化)▽エミー測量設計有限会社(海岸線の3Dデータ化と解析モデル)▽一般社団法人神奈川県ドローン協会(空撮による県内の観光資源の発掘)▽株式会社アイネット(ドローン活用人材の育成)の7件。
今回は台風19号など相次いだ自然災害への取り組みも含めた災害対策を切り口にドローンの活用事例を紹介し、有効性を検証する。
「第2回かながわドローン前提社会ネットワーク~ドローンを活用した災害対策について~」の概要は以下の通り。
・日時:令和元年12月26日(木)13:30~15:30
・会場:ワークピア横浜2F(横浜市中区山下町24−1)
・プログラム(予定):
第一部(13:30~14:40)
(1)講演「空の産業革命に向けた国の取組みについて」(内閣官房小型無人機等対策推進室)
(2)ドローン前提社会の実現に向けたモデル事業の紹介等(神奈川県政策局未来創生課)
(3)ドローンを活用した災害対策の取組み事例の紹介(ドローン関連企業)
第二部(14:50~15:30)
交流会及びドローン展示会
・申し込みは参加申し込みフォームから。
また随時会員の募集も行っている。入会申し込みフォームはこちら(入会無料)
神奈川県は9月2日、ドローン前提社会の実現に向けた取り組みを推進する産学公連携型のコミュニティ「かながわドローン前提社会ネットワーク」の第1回会合を横浜市の神奈川県庁で開催した。あいさつに立った神奈川県の黒岩祐治知事は「日本も世界も、ドローン前提社会に必ず入っていく。その先鞭を神奈川県でつけたい」と決意を表明。急遽参加した鎌倉市の松尾崇市長も「神奈川県を中国・深圳に負けないドローン前提社会にしたい。鎌倉も一員として全力で取り組む」と気勢を上げた。会合では県が取り組み概要を説明したあと、ドローン研究の第一人者である一般財団法人先端ロボティクス財団の野波健蔵理事長、慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が講演し、ドローンの事業を展開する7団体が活動内容を紹介した。
「かながわドローン前提社会ネットワーク」第1回会合は横浜市の神奈川県庁本館3階の講堂で開催され、会場は事前登録者や関係者など約200人の参加者で埋まった。
冒頭であいさつに立った神奈川県の黒岩祐治知事は、県の10市2町(相模原市、平塚市、藤沢市、茅ヶ崎市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、綾瀬市、寒川町、愛川町)が国から指定を受けている「さがみロボット産業特区」での取り組みのひとつとして、ドローンの研究開発に力を入れていることを紹介。この中で「箱根で火山活動が活発化したさいには、状況把握に活用するなどの経験を重ねてきた。第四次産業革命はドローンで劇的に変わると展望している。ドローンにはまだまだ使い道がある一方、技術である以上、光と影があり、それらをみんなで考え、共通認識を持ちたい。日本も世界も、ドローン前提社会に必ず入っていく。その先鞭を神奈川県でつけていきたい。みんなの知恵を結集したい」と、知事選で公約に掲げたドローン前提社会の実現に強い意欲を示した。
ドローン前提社会の実現に向けた取り組みの事務機能は、神奈川県政策局未来創生課が担う。会合では知事のあいさつに続き、現在の取り組みを紹介。現在、9月12日までの日程でモデル事業を募集していることなどを説明した(記事、神奈川県の告知)また今後の展望として、実証実験の蓄積や、これに伴う経済価値の向上、将来的なサプライチェーン構築のための議論を構想していることを明らかにした。
これに続く講演では、一般財団法人先端ロボティクス財団の野波健蔵理事長が、ドローンの産業活用について、農業、建設、測量、災害対応、物流などセクターごとに、研究フェーズ、開発フェーズ、事業化フェーズの段階に分類して分析。農薬散布などについて「すでに事業化フェーズに入っている」と紹介するとともに、「災害対応と物流とは非常に相性がいい」などと、ドローンの活用法を具体的に展望した。
あわせて、東京湾をはさんで千葉県と神奈川県をドローンで横断させる構想を披露。「直線であれば40キロだが、道路を移動すれば80~90キロメートルと長く渋滞リスクもある。具体的なことは今後検討するが、たとえば重量20キログラム、ペイロード5キロのエンジンを積んだ日本製のカイトプレーンなら、機体に凧がついていて、エンジンを切ってもすぐには落ちない。飛行時間2時間で、飛行距離は100キロと往復できる」などと展望した。さらに、若手研究者を対象としたコンペティションを来年6月に開催すると発言。「日本にはソフトウェア技術者が少ない。この遅れを取り戻すべくエンジニアを育成したい。今年10月から公募したい」と説明した。
「ドローン前提社会」の名付け親でもある慶大ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表は、日本では、ドローンが首相官邸で発見されたことなどから否定的にとらえられがちな状況について、「これは産業として健全ではない」と感じたことを説明。「ドローンは日常的にみんなが使えるもの、という状況にシフトさせたい。ドローンは空を活用するためのデジタルツールである、というコンセプトで研究している」と述べ、ネガティブなイメージから日常の道具への認識の転換に意欲を示した。
そのうえで南氏は自身の活動をいくつか紹介。昨年6月に神奈川県立湘南海岸公園で開催した「湘南UAVデモンストレーション」の様子や、現在開発中の航行中の船舶から離発着ができる機体を紹介し、「多くの方々にドローンの魅力を伝えて、いつも使っているスマ-トフォンのように、それほど特別なものではない、ということを伝えたい」と述べた。
またドローンについては、「デジタルテクノロジーが広まっている時代の中で、タンジブル(実体感のある)な、人が手で触れられるテクノロジー」と特徴を説明。「これまでサイバースペースの世界でしかできなかったビジネスが、リアルの世界でもできるようになってきた」と紹介し、可能性が広がっている状況を解説した。
県が「ドローン前提社会」の実現に向けてモデル事業を募集していることを念頭に、南氏は、「それを考えるうえでヒントとなる4つの視点」を提示。「①従来、人が得られなかった視点を持てる、②空間で静止できるなど自在のポジショニングが可能、③インターネットと連携できる、④群で行動できる」と列挙し、多くのアイデア、工夫を呼び掛けた。
「ドローン前提社会でしたい」として「実証実験で終わることではなく、サービスや産業として継続できること」を掲げた。「そのために新たに産業に参入できる環境づくりが大事だ。人材、プラットフォーム、規制緩和、事業支援の4つの『財』を大事に、担い手、価値づくり、仕掛けの3つのセクターが三位一体となって進むことをイメージしている」と展望した。
さらに、ドローンが社会に受け入れられるための「パブリックアクセプタンス」についても言及。「ドローンが当たり前に受け入れられる社会では、利用の目的があらゆる目的に対応できる、という点が大事。社会受容性はリスクと利便性に対する社会のコンセンサスであると考えており、そこでは、思いやりが大切であり、机上でなく実例が重要であり、関係者による公平かつオープンが議論の場が必要。完全な合意をもとに進めることよりも、ゆるやかな合意形成を図る『ラフコンセンサス』を土台にスピード感を重視する考えも重要だ。さらに民意とマーケット志向で、個人が自発的に、みずから寄っていくアプローチが大事。こうしたことがキーワードになる」と、ドローン前提社会の実現に必要となる要素を列挙した。
講演に続き、ドローンの事業、研究を展開、推進する企業、団体が取り組みを発表した。発表したのは、ソリューションを手掛ける株式会社アイ・ロボティクス、機体フレーム技術の研究開発を手がける株式会社エアロネクスト、離島の物流問題解決に取り組む株式会社かもめや、体が不自由な方々にバーチャルツアーを提供する株式会社シアン、ドローンスクールの運営や橋梁点検サービスなどを提供している一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)認定スクールのDアカデミー、空撮で魅力を発信する事業を展開している株式会社Dron é motion(ドローンエモーション)、災害発生時に迅速な発災地地図作成を手掛ける「災害ドローン救援隊DRONEBIRD」や「Japan Flying Labs」などの活動を実施している特定非営利活動法人クライシスマッパーズ・ジャパンの7団体。
アイ・ロボティクスの我田友史氏は、「事業のひとつ、プラントソリューションでは国内鉄鋼大手と研究している。スーパー専門家集団というのが強みで、課題を解決していく」と事業を紹介。エアロネクスト伊東奈津子執行役委員は、「ドローン前提社会の前提は安全を担保する機体の信頼性。ソフトウェアでの解決をめざす企業が多い中、われわれはハードでの解決を試みている。最大の特徴は特許ポートフォリオ。世界の産業ドローンに搭載させたい」と意欲を語った。
かもめやは「離島の物流問題を解決するため、陸、海、空を含め24時間、365日、完全自動、無人で動く離島向け物流インフラをつくることに取り組んでいる」と紹介。シアンは「身体が不自由な方に、行けない、を、行けるにかえる、を掲げて『空力者』というサービスを提供。楽しい旅行を治療にする、というビジョンを掲げて研究をはじめている」と述べた。またDアカデミーは「スクールとして、安全運航で業務を遂行してもらうことを目的にしている。千葉県君津市とは橋梁点検の実証実験で、横浜に本社を置く株式会社アイネットとともに締結をし、手軽に低コストで点検できる方法を開発した」と発表した。
ドローンエモーションの田口厚代表は、「空撮をキーワードにさまざまな事業を展開していて神奈川県でも各地で活動している。ドローンでは、頭上より高く、ヘリコプターより低い、地上150メートル未満の高さという、ドローンを手にするまで人が得られなかった視点を得られる。観光開拓に使えると考え、自治体向けのコンテンツを発信し、旅のドローン前提社会をつくることをテーマに取り組んでいる。ホテル予約のようにスマホでドローンを飛ばせる場所を予約できるシステム『そらチケ』も展開中。今まで観光地でなかったところが、ドローンで絶景になって観光地化すれば、眠っていた土地が、人が集まる土地にかわる。そんな仕組みを神奈川県のみなさんとつくりたい」と表明した。
NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパンの代表で、青山学院大学教授の古橋大地氏は、活動の原点が2010年1月のハイチ大地震だったと述べ、「地図がなかったが、インターネット上で2000人ぐらいがあつまって、地図をできていったことを経験した。これを災害対応にいかすそうと考えた。発災後に迅速に被災地にかけつけて、撮影して、データを共有する。これらを通じて人道的に使いたい」などと活動の一端を紹介した。
事例紹介が終了したあと、鎌倉市の松尾市長が飛び入りで参加。松尾市長は「ドローン前提社会を掲げたとき、わくわくするとともに、どうしたらいいか、とも感じた。鎌倉は高齢化率が30%を超え、17万の人口の場所に、延べ年間2000万人を超える観光客が来る。交通渋滞をはじめとしたオーバーツーリズムの問題もある。解決には、住民や企業と共創を通じて新しい価値を生み出すことが必要だと思っている。その中でドローン前提社会はおおきなキーワードになると思う。ドローン前提社会を実現するためには、産業クラスターの形成が重要と認識している。規制緩和に向けたアクション、空域の実証実験、産官学の連携とともに、企業の集積、人材の集積が重要。課題解決に手を取り合って進める中で、鎌倉も一翼を担える。頭脳、パッションをお貸し頂き、神奈川県を中国・深圳に負けないぐらいのドローン前提社会にしたい。鎌倉も一員として全力で取り組みたい」と表明した。
神奈川県は9月2日、ドローン前提社会の実現に向けた取り組みを推進する産学公連携型のコミュニティ、「かながわドローン前提社会ネットワーク」の第1回会合を開催する。市町村や企業等と連携し、テクノロジーの力を活用して、高齢化の進展で顕在化する社会的課題の解決に向けて実践的な取組を進める。第1回は千葉大学名誉教授で一般財団法人先端ロボティクス財団の野波健蔵理事長、慶応義塾大学SFC研究所ドローン共創コンソーシアムの南政樹副代表の講演などが行われる。県が「ドローン前提社会」の実現を掲げて具体的な取り組みを進めるのは全国でも神奈川県が初めてだ。
かながわドローン前提社会ネットワークは、ドローンが日常で当たり前の選択肢となるドローン前提社会の実現に向けて、市町村や企業、大学、研究機関などのアカデミアと連携し、ドローンの社会実装を促し、地域の課題解決と経済振興を図ることを目的として活動するコミュニティ。勉強会や交流会等を通じ、ドローンを活用した社会的課題の解決に向けたニーズとシーズのマッチング等を推進するほか、県民理解の醸成、規制の緩和、ルールづくり等環境整備を図る。
アカデミア、企業・団体、市町村などで構成し、会費は無料。神奈川県政策局未来創生課が事務局機能を担う。
第1回会合は、9月2日、14時30分から16時30分まで、神奈川県庁で開催。黒岩祐治知事のあいさつ、神奈川県の取組についての説明、先端ロボティクス財団の野波健蔵理事長、慶応義塾大学SFC研究所ドローン共創コンソーシアムの南政樹副代表による講演、取組事例の紹介などが行われる。
ネットワークへの参加は随時申し込みを募集していて、県の応募フォームに必要事項を記入して申請する。神奈川県政策局未来創生課の問い合わせフォームから、問い合わせができる。