ドローン研究と社会実装に力を入れている慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムは11月3日、静岡県御殿場市の総合体育施設でドローンの実演展示会「第3回富士山UAVデモンストレーション」を開催した。国内初の一般公開となった「アストロ」、ソニーが技術の粋を集めた話題機「エアピークS1」など注目の新型機、話題機がデモフライトを披露したほか、ドラム缶3つの吊り下げ飛行も行われた。デモを実演した10組を含め、21組が関連技術やサービスを展示した。前回を上回る400人超が来場し飛行や展示を堪能した。御殿場市に展開する米海兵隊キャンプ富士の関係者も会場を訪れ、投稿サイトに「このようなイベントはテクノロジーの理解、地域のつながり維持、同盟関係の強化に重要」と絶賛した。
富士山UAVデモンストレーションは御殿場市が共催し、防衛省南関東防衛局が後援した。
2組のデモフライトのあと開会式が行われた。ドローン芸人の谷+1。(プラスワン)さんが進行役を務める中、古谷知之慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアム代表が「御殿場市とは2019年12月に連携協定を締結して以来、自動運転、STEM教育の取り組みでお世話になっている。本日も生活の中ではなかなか見ることのないドローンが飛ぶ様子を実際に見る機会なので、楽しんで頂けることを期待しています」とあいさつした。
御殿場市の勝又正美市長もあいさつに立ち、「富士山のまち御殿場、そしてドローンのまち御殿場にようこそおいでいただきました。富士山と箱根に囲まれ、空気が清く、水が豊かな高原都市、御殿場の魅力に触れて頂きながら、ドローンの飛行をご覧いただき、有意義な一日にしていただき、よい思い出を持ち帰って頂きたいと思います」と来場を歓迎した。
来賓として登壇した渡辺秀明・元(初代)防衛装備庁長官は「世界各国の防衛でドローンは主要な役割を果たしています。民間の技術向上は重要でこうしたデモンストレーションが開催されることを心強く思っています。ドローン産業の成長は間違いなく、さらに加速することを期待しています」と期待を寄せた。
同じく来賓の佐藤丙午・拓殖大学海外事情研究所副所長は「御殿場はドローンをはじめいろいろな取り組みがなされている町だと思っております。ドローンな産業として発展すると思います。御殿場でドローンの最先端をご覧いただき、盛り上げていけたらいいと思っております」と展望した。
御殿場市に展開する米海兵隊キャンプ富士の関係者も会場を訪れ、投稿サイトに「このようなイベントはテクノロジーの理解、地域のつながり維持、同盟関係の強化に重要」と絶賛した。
富士山UAVデモンストレーションで実演したのは、実演順に、株式会社空撮技研(香川県観音寺市)、ジオサーフ株式会社(東京)、有限会社森山環境科学研究所(愛知県名古屋市)、エアロセンス株式会社(東京)、株式会社ドローンママ(東京)、株式会社イデオモータロボティクス(東京)、イエロースキャンジャパン株式会社(東京)、株式会社 WorldLink&Company (京都府京都市)、サイトテック株式会社(山梨県南巨摩郡身延町)、株式会社エアロジーラボ(大阪府箕面市)の10組。それぞれの実演はENWA株式会社(大阪市)のテレビ会議システムを使って展示会場にリアルタイム配信された。
実演のトップバッター、空撮技研は「ライン」と呼ぶ極細のケーブルでドローンを係留する暴走防止装置であるドローンスパイダーを、実機にとりつけて実演した。ドローンの上昇とともにラインがスムーズに送り出され、反対にドローンが近づいてラインがたわみがちになると素早く巻き取られ、ドローンの飛行の自由度と暴走防止の安心感を両立させる様子を示した。この日はラインが100mの「004シリーズ」と、航空法改正に対応するためラインの長さを30メートルに抑えた新型機「005」シリーズを実演した。
二番手で登場したGNSS事業を手掛けるジオサーフは、マッピングに幅広く使われているスイスsensFly社製の固定翼機「eBee X」を飛ばした。プロペラを一つだけ備えた翼長116センチの機体はほぼ樹脂製で重さは1.4キログラム。標準バッテリーデ90分の飛行が可能だ。デモではオペレーターが、起動後ファンの回転を確認し、押し出すようにリリースすると機体は予め定められたルートをたどり滑らかな飛行を見せた。デモの間には「マルチスペクトルカメラを搭載し太陽光パネルの点検に使われることも多い」などの用途も説明された。
開会式をはさんで三番手で登場した森山環境科学研究所は、スイスに本社を構えるWingtra 社製のVTOL機、 WingtraOneの飛行を披露した。ロケットのように天を仰ぐ姿勢で待機しているが、離陸は姿勢を維持したまま、プロペラでふわりと浮かび上がった。上空30メートルでホバリングしたあと、姿勢を水平に変えると、進行方向に固定翼機のようにスイっと進んだ。珍しい動きを見せたうえ、よく晴れた青空に赤い機体が映えたこともあり、競技場の観客席ではカメラに納める姿が多く目についた。
エアロセンスは現時点でアピールしたい目玉機体2種のうち、この日はVTOL機、エアロボウイングの実演を披露した。広範囲を1フライトでカバーでき、災害調査、測量、スマート農業などに使われる機体だ。離陸前は直前のWingtraOneと異なり、水平状態で待機。起動すると、その姿勢でふわりと浮かび上がり、上空で方向を転換し滑るように進む。白と青の機体が富士山に映え、来場者にシャッターチャンスを提供した。
五番手で登場したドローンママはこの日唯一の、飛ばないドローンを実演した。競技場入り口前の広場に無人操縦装置を取り付けたトラクターを用意。周囲への配慮から運転手が乗車したが、動き出すとハンドルに触れずに直進した。飯原夏子代表は「直進は実は難しく、段差があるところでは小刻みなハンドル操作が求められます。このトラクターは自動で小刻みにハンドルを制御して直進に進めます」と解説した。さらにパイロンを立てた間を自動でS字走行する様子もみせ、囲んだ来場者をうならせた。システムは中型、小型にも取り付け可能で、同社は現在、割安なキャンペーンを打ち出して利用を呼び掛けた。
イデオモータロボティクスはこの日が国内初の一般公開となる小型空撮機ASTROの飛行を実演した。ASTROは米Freefly Systemsがこの秋に発表したばかりで、オープンソースのドローン用OS開発を手掛けるスイスのAuterionと協業した機体として知られ、次世代フライトコントローラーAuterion Skynodeを搭載している。4本アームの伝統的な回転翼機スタイルながら、この日のデモでは、軽やかなプロペラ音と俊敏な動きで観客先を魅了した。マニュアルモードの場合の最高速度は時速95㎞。ソニーのデジタル一眼カメラ「Sony α7R IV」用の専用ジンバルの搭載ができ、その場合でも28分の飛行が可能という。
イエロースキャンジャパンは、有人機にもUAVにも使えるLiDAR ソリューションYellowScanExplorerを実機に搭載して飛行。「センチメートル単位の精度で飛行できる」と説明した。また、全方位衝突回避が可能な非GPS環境下で自律飛行を可能にするHovermapを搭載した機体も披露。SLAMベースで「機体が自動で飛行すべきコースを探し当てて飛んでいきます」などと説明した。
WorldLink&Companyは、ドイツWingcopter(ウイングコプター)社製のVTOL機と、ソニーが開発したプロフェッショナル向けドローン「Airpeak S1」を飛行した。Wingcopter はテフィルトローターと呼ばれる向きを変えることのできるプロペラのアームが特徴で、この日のデモでは、プロペラが回転すると機体は待機中の姿勢のまま浮かび上がると、空中でアームが方向を変え、グライダーのようにスムーズに動き出した。飛行中には「ANAが取り組む離島輸送にもつかわれている」などと説明がされた。また、ソニーの「Airpeak S1」はフルサイズミラーレス一眼カメラを実際に搭載して離陸。上空で着陸用の脚を上げ、撮影の視野を広げると、一気に機体を傾けて力強く飛ぶ様子を見せるとともに「映像のためのドローンです」などと解説した。
この日、最も大きな機体を持ち込んだのはサイトテックだ。重い荷物を運ぶYOROIシリーズの最新作「Y12B1750」が幅3メートル、バッテリー込み総重量60㎏の赤い機体がフィールドに姿を現すとどよめきが起きた。6本のアームを備え、40㎏の荷物を運べる仕様だが、「実験では80キロを吊り上げたこともある」などとポテンシャルの高さを示唆した。
デモフライトでは、4mの単管パイプ2本、あわせて25㎏を吊り上げ、上空で機体を回転させて積み荷を揺らしながら安定した飛行を披露した。また荷物を地上1メートルまで降りたところで切り離して降ろし、安定を維持しながら積み荷を降ろした。さらにドラム缶3つ約40キロをぶらさげた飛行も披露。単管パイプのように揺らしながら安定して飛行できることを示した。同社は「すでに山や谷などで運用されている」と話した。なお大きな機体の準備や撤収などの一連の作業がすべて速やかで、鍛えられたオペレーションぶりも印象的だった。
また、日唯一のハイブリッド機を飛行させたのが国産ドローン開発を手掛けるエアロジーラボだ。デモ機は今年お目見えしたばかりのAeroRangeQUAD(エアロレンジクアッド)で、混合ガソリン4リットルを燃料に発電機で電気を起こし、4つのプロペラで飛行する。発電機から絶えずバッテリーに給電されるため、バッテリー消費の大きい回転翼機でありながら最大で140分飛行を続けることができる。機体には給油口があり、フィールドでも給油する光景が印象的だった。
デモフライトでは発電機を起動させるとフィールドにバイクのようなエンジン音が響き、その後オペレーターの指示で浮上すると、安定した飛行を見せた。積み荷がなければ2時間以上飛び続けることができる機体で、この日は10分の短時間飛行ながら、長時間飛行の潜在力を見せつけた。3月には石垣島でユーグレナバイオ燃料を使った輸送実験も成功させていて、クリーンエネルギーの活用を模索している。11月25日(木)には、飛行見学会の開催も予定している(12:00~、13:00~、14:00~、15:00~ 受付は先着順、場所は大阪府豊能郡能勢町宿野の能勢高原ドローンフィールド。希望者は、希望日程、参加者数を【Email:support@aerog-lab.com】まで連絡を)。谷紳一社長も会場を訪れデモフライトの様子を見守った。
競技場と道路を挟んで隣接する体育館では、ドローンの機体、技術、サービスなどを展示する展示会も開催され、多くの来場者がブースを訪れていた。中にはドローンの凄腕パイロットや、AGV、ドローン開発の先駆者などの姿も見られた。ドローン産業を応援し、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)のアンバサダーとして活躍するシンガーソングライターSaashaもブースをのぞき込んだり、出展者の話に耳を傾けたりしていた。陸上自衛隊東富士演習場自衛隊が立地することもあり、会場内では関係者の姿を見かけた。
出展していたのは、ENWA株式会社、菱田技研工業株式会社、エアロセンス株式会社、イエロースキャンジャパン株式会社、株式会社イデオモータロボティクス、株式会社エアロジーラボ、有限会社森山環境科学研究所、Pix4D株式会社、ジオサーフ株式会社、株式会社WorldLink&Company、有限会社ボーダック、株式会社ジェピコ、株式会社空撮技研、サイトテック株式会社、エアロファシリティー株式会社、株式会社トプテック、株式会社ドローンママ、ESRIジャパン株式会社、株式会社リヴィングロボ、株式会社NTTドコモなど。
御殿場市に展開する米海兵隊キャンプ富士の関係者も会場を訪れ、投稿サイトに「このようなイベントはテクノロジーの理解、地域のつながり維持、同盟関係の強化に重要」と絶賛した。
UAVデモンストレーションは、慶応義塾大ドローン社会共創コンソーシアムが2018年6月に神奈川県藤沢市の県立湘南海岸公園で「湘南UAVデモンストレーション」として開催したイベントが最初の取り組みとなった。このときは江ノ島を背景に国内外の機体の飛行をお披露目した。翌年の2019年以降、静岡県御殿場市に会場を移し、2019年9月に「富士山UAVデモンストレーション」を開催。以降、毎年の恒例行事となっている。すでに来年の開催も決まり、御殿場がドローンのまちとして毎年来場者を迎えることになりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は阪神・淡路大震災が発生した1月17日、ドローンによる災害対応の調整力や現場の統括力を養成する新講座、「ドローン防災スペシャリスト教育講座」を発表した。能登半島地震でドローンの運用を調整、統括した実践経験もふまえ、どこで災害がおきても現場で調整、統括できる人材の要請を目指す。避操縦にも受講を呼び掛ける。
「ドローン防災スペシャリスト教育講座」は、パソコン、スマートフォンなどを使うオンライン学習(eラーニング)形式で提供する。価格は税込み44000円で、JUIDA会員であれば38500円になる。テキストがないかわりに、3年間は繰り返し視聴できる。収録時間は4時間程度で、早送り再生での視聴に慣れていれば短縮も可能だ。終了すればJUIDAから終了証が発行される。
JUIDAが能登半島地震でドローンの運用現場を統括したさい、自衛隊や自治体、民間事業者、被災者など関係各方面との意見や都合の調整と、統括して災害対応の成果をあげることの重要性を痛感し、現場で調整役、当活役を担える人材を養成する講座をつくった。
受講対象に操縦者である必要がないことも特徴で、ドローンを用いた防災活動への関心層を広く対象としている。この中には、自治体職員、自衛隊、消防、自衛隊、DMATなどを含み、ドローン事業者も入る。
講座には、災害時のドローン運用調整、役割分担、各方面との連携を円滑に運ぶスキル、連携各方面との共通の目標設定、災害時の法令、体制構築スキル、事前準備、意思決定、最適な活用方法を判断するスキル、などが含まれている。
JUIDAの発表はこちら:https://uas-japan.org/information/information-34732/
昨年末に破産を申請したドイツのAAMメーカー、ヴォロコプターはJCAB(日本の国交省航空局)に申請している型式認証の申請について取り下げない方針だ。同社がDroneTribuneの取材に回答した。これまでに2年以上当局と良好な関係を構築しており、「今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もない」という。テスト飛行など必要な作業を続けながら、立て直しに注力し、弁護士をまじえて立て直しの方向を模索するとともに、昨年末から投資家とも接触している。
ヴォロコプターはDroneTribuneの質問に回答し、国交省航空局が申請を受理して手続きを進めている同社の2人乗りeVTOL型AAM「VoloCity(ヴォロシティ)」の型式認証(TC)取得について、申請を取り下げない方針を明確にした。航空局も受理した申請について手続きを継続する姿勢を示しており、当面は従来通り、TC取得手続きが進行む。
ヴォロコプターのTC申請については、国土交通省航空局(JCAB)、欧州航空安全機関(EASA)と日欧それぞれの航空当局が受理し、これに基づいて手続きを進めている。当局が受理したのは2023年2月21日だが、ヴォロコプターが申請したのはその前年(2022年)の末だ。これをふまえ、ヴォロコプターは「2年以上EASA&JCABと良好な関係を築いているうえで、技術説明、テスト飛行、書類の整理などを行なっております。昨年、大阪・関西万博での飛行が商用運航からデモ飛行に切り替わったことに伴い(TC取得を)急ぐ必要性が薄まり、プロセスを一時保留しておりますが、今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もありません」と話している。
一方、再建にも注力する。現時点で具体策はまとまっていない中、もともとコスト管理を徹底して対応を進めており、立て直す箇所の特定を弁護士とともにすすめている。「他社と比較し認証費用を半分以下に抑えている」ケースもある中で、EASA監査の75%を完了していて、当面は投資家との連絡も図りながら再建策構築に注力する方針だ。
ヴォロコプターがTC取得を目指しているヴォロシティは2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。海外製AAMの中では日本でなじみの深い機体のひとつで、2023年3月には、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開され、居合わせた来場者や通行人の搭乗体験を受け入れていた。もともと、大阪・関西万博で飛行を披露する機体に含まれていたが、2024年9月に飛行を担う4グループのひとつ、日本航空、住友商事グループが、運用機体をヴォロコプターのヴォロシティから、米国 アーチャー社(Archer Aviation, Inc. )のMidnight(ミッドナイト)に変更することが公表された。なお、運用機体変更のタイミングで、万博での運航チームそのものも日本航空、住友商事から両者が出資する株式会社Soracle(ソラクル、東京)に引き継がれている。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は会員向けに株式会社ウェザーニューズ社が登壇するWEBセミナーを案内している。テーマは気象リスクでJUIDA会員は無料で受講できる。登録方法などはJUIDA会員に直接連絡している。
JUIDAは会員向けのサービス提供に力を入れていて、ウェザーニューズのセミナーもその一環だ。セミナーはWEB会議ツールを通して行われ、ウェザーニューズの無料アプリを使いながら気象リスクを説明する。
JUIDAの会員向けには1月下旬に、JUIDAの鈴木真二理事長が年間スローガンを公表することで知られる新春パーティーを開催し、会員相互の親睦を図る。例年、ドローン議連を構成する国会議員らがかけつけあいさつをする機会にもなっている。
国交省航空局は1月6日、ドイツのAAM開発事業者、ヴォロコプターから受理している型式証明申請の手続きを当面、継続する方針を明らかにした。ヴォロコプターは昨年(2024年)末、裁判所に暫定的な破産手続きを申請しており、関係機関の対応に関心が寄せられている。航空局は、ヴォロコプターの破産を情報として把握しているものの、ヴォロコプター側から直接の報告や申請の取り下げなどの連絡は1月6日時点ではないという。航空局が申請者の財務状況を確認する決まりはなく、ヴォロコプターも事業継続姿勢を転換していないことから、当面は受理に従って手続きを進める。
航空局はヴォロコプターの破産について、同社による昨年12月30日の公表と、それをもとにした報道ベースで把握している。一方、破産に関する連絡や型式証明の取得申請に関する方針転換などの連絡はないという。航空局は「手続きにはリソース(労働、時間など)を投入しており、関心は持っている」ものの、ヴォロコプター側から方針を転換する意思表示などがないいため、「受理した状況が維持している前提で作業を続けることになる」という。
ただし、「型式証明の手続きは、航空局が一方的に行うものではなく、申請側(この場合はヴォロコプター)とやり取りをしあう」ため、その中で方針に関する意図が表明された場合には、改めて対応を検討する可能性がある。
ヴォロコプターは昨年(2024年)12月30日、4日前の2024年12月26日に、拠点のあるバーデン=ヴュルテンベルク州のカールスルーエ高等裁判所に破産手続きの開始を申請したことを公表した。裁判所は申請の翌日に暫定破産管財手続きを開始し、現在、管財人の下で対応を進めながら、事業を継続している。同社の公表文では「破産」に該当する英語をinsolvencyと表現していて、一般に資産を売却して、負債を返済しきれない債務超過の状態を示す。
日本では2023年2月21日に航空局がヴォロコプターからの型式証明の申請を受理したことを発表している。ヴォロコプターが申請した機体は「VoloCity(ヴォロシティ)」と呼ぶ2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。同社は航空局に申請した翌月の3月8日、大阪・関西万博でエアタクシーとして運航を目指す機体として、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開していた。2024年夏のパリ五輪会場の飛行を計画していたが欧州の航空当局EASA(欧州航空安全機関)から基準を満たさない個所があると指摘を受けたことなどから、ヴェルサイユ宮殿で「VoloCity」 の前のモデル「2X」を飛行させるなど計画変更を余儀なくされていた。その後、大阪・関西万博でVoloCityの飛行することになっていた日本航空、住友商事のチームが2024年9月に運用機体を変更することを表明していて、VoloCityは万博での飛行計画からはずれていた。
一方、市場投入を目指す姿勢は維持し続けていて、万博の飛行計画からはずれたさいも、引き続き商用運航を目指す方針を示していた。破産申請も事業継続をするための選択であったと言われており、同社は管財下で財務基盤の強化を目指しつつ事業継続を模索するとみられる。
<関連>
Volocopter破産申請:https://www.volocopter.com/en/newsroom/volocopter-files-for-insolvency-in-germany
航空局がTC申請受理(2023年):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001588330.pdf
大阪で実物大モデル公開(2023年):https://dronetribune.jp/articles/22336/
青森県と一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は1月6日、災害協定を締結した。1月7日にJUIDAが公表し、青森県も認めた。青森県が半島を抱える地形で、地震や風水害などによる陸路の寸断に見舞われたさいに支援することなどを目指す。青森県は1月4日に豪雪対策本部を設置するなど大雪の災害に見舞われているが、青森県は、この状況に対応するための出動調整は現時点では想定していないという。
災害協定は「災害時におけるドローンによる支援活動に関する協定書」で、青森県側は危機管理局防災危機管理課が窓口となり、書面のやりとりで締結した。
締結によりJUIDAが青森県内の地震、風水害等が発生したり、発生のおそれが高まったりしたさいに、①ドローンによる調査、情報収集及び物資の運搬②操縦者の派遣、機体の提供、許認可等の手続及び他機関との調整③映像等のデータの提供④その他、協議により必要と認められる活動―などで支援をすることが盛り込まれている。
青森県は現在、大雪に見舞われ1月4日に豪雪対策本部を設置して対応しており、協定の「風水害等」には豪雪も含まれる。JUIDA側からは寒冷地に対応できるよう発電機を搭載したハイブリッドドローンの出動も選択肢に入ることを青森県側に説明している。ただし青森県では現在、道路や街中に積もった雪の処理を優先事項と考えており、ダンプなど雪を積みだす大型車両の調達を先決の課題と認識し、ドローンの出動はしていない。
JUIDAは能登半島地震のさいに現地にかけつけ、輪島市などから支援要請をとりつけて支援活動を展開した経緯がある。青森県は能登半島同様、半島がちの地形が地理的な特徴で、能登半島の教訓をいかせる可能性がある。JUIDAは「本協定の締結により、災害発生時における迅速かつ円滑な支援体制の構築を目指し、当会と青森県が連携して取り組むこととなります。また、平時からの密接なコミュニケーションを通じて協力関係をさらに深め、万が一の際に備えて参ります」とコメントしている。
ドローンの展示会Japan Droneのスピンオフ企画第二弾となる「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2024 in 関西」が12月18日、JR大阪駅に直結する複合施設、ナレッジキャピタルのコングレコンベンションセンターで開幕した。株式会社ORSO(東京)が開発した国家資格トレーニング用のマットを初公開したほか、白銀技研株式会社(岐阜県)の1人乗り機Beedol-0などを展示、飛行機好きの有志団体が開発したソーラー無人飛行機も展示されている。開催は19日まで。
18日午前9時20分から行われた開幕セレモニーでは、主催する一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長のほか、経済産業省、国土交通省、総務省、大阪府などの来賓があいさつにたち、開催に期待を寄せたあと、登壇者によるテープカットが行われた。
展示会場では午前10時の開場とともに来場者が出展ブースを訪れた。
ORSOのブースでは開発してきた新製品「DRONE STAR トレーニングマット」を初披露。同社の小型練習機DRONE STAR TRAININGを飛行させて使い心地を試せる体験会も開かれ、来場者が次々と飛ばした。ドローン人材育成の第一人者として知られる株式会社Dron é motion(ドローン・エモーション、東京)の田口厚代表取締役が効果的なマットの使い方を伝授するトークセッションも行われ、多くの来場者が足を止めた。
田口氏のトークセッションは19日も午前11時30分から行われる。
白銀技研は1人乗りのパーソナルエアモビリティBeedol-0の実機と、機体の剛性を高めるために開発中のBeedol2号の1/4試験機を展示している。設置したモニターでは試験飛行の映像が見られる。
宇都宮市(栃木県)を拠点に飛行機好きが部活のように集まって活動している有志団体、飛行機研究所は固定翼にソーラーパネルをはりつけたソーラー無人飛行機を展示し客足を止めている。設計上は24時間の飛行が可能で、一昨年時点で7時間の航続飛行を達成している。今後24時間飛行への挑戦を目指している。
伴走するコンサルティングを展開する株式会社Suzak(東京)、上場したブルーイノベーション株式会社、株式会社Liberawareなども人垣を作っていた。
自動車整備用具の株式会社サンコー(東京)のブースには水の気化熱で空気を冷やす業務用冷風機「ECO冷風機」が展示してある。ドローンの「ド」の字も見当たらないため客足が止まりにくいが気になった来場者が展示の趣旨をたずねると「体育館など屋内練習施設で空調が未整備な場所に設置して頂くとお役に立てるかも」という発想だったことがわかり、感心して話し込む姿がみられた。
このほか講演、パネルディスカッションなどにも多くの来場者が詰めかけている。
主催は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、共催は株式会社コングレ。総務省近畿総合通信局、農林水産省近畿農政局、経済産業省近畿経済産業局、国土交通省近畿地方整備局、国土交通省近畿運輸局国土交通省大阪航空局、大阪府、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、公益社団法人関西経済連合会などが後援している。開催は19日まで。