ドローン研究と社会実装に力を入れている慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムは11月3日、静岡県御殿場市の総合体育施設でドローンの実演展示会「第3回富士山UAVデモンストレーション」を開催した。国内初の一般公開となった「アストロ」、ソニーが技術の粋を集めた話題機「エアピークS1」など注目の新型機、話題機がデモフライトを披露したほか、ドラム缶3つの吊り下げ飛行も行われた。デモを実演した10組を含め、21組が関連技術やサービスを展示した。前回を上回る400人超が来場し飛行や展示を堪能した。御殿場市に展開する米海兵隊キャンプ富士の関係者も会場を訪れ、投稿サイトに「このようなイベントはテクノロジーの理解、地域のつながり維持、同盟関係の強化に重要」と絶賛した。
富士山UAVデモンストレーションは御殿場市が共催し、防衛省南関東防衛局が後援した。
2組のデモフライトのあと開会式が行われた。ドローン芸人の谷+1。(プラスワン)さんが進行役を務める中、古谷知之慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアム代表が「御殿場市とは2019年12月に連携協定を締結して以来、自動運転、STEM教育の取り組みでお世話になっている。本日も生活の中ではなかなか見ることのないドローンが飛ぶ様子を実際に見る機会なので、楽しんで頂けることを期待しています」とあいさつした。
御殿場市の勝又正美市長もあいさつに立ち、「富士山のまち御殿場、そしてドローンのまち御殿場にようこそおいでいただきました。富士山と箱根に囲まれ、空気が清く、水が豊かな高原都市、御殿場の魅力に触れて頂きながら、ドローンの飛行をご覧いただき、有意義な一日にしていただき、よい思い出を持ち帰って頂きたいと思います」と来場を歓迎した。
来賓として登壇した渡辺秀明・元(初代)防衛装備庁長官は「世界各国の防衛でドローンは主要な役割を果たしています。民間の技術向上は重要でこうしたデモンストレーションが開催されることを心強く思っています。ドローン産業の成長は間違いなく、さらに加速することを期待しています」と期待を寄せた。
同じく来賓の佐藤丙午・拓殖大学海外事情研究所副所長は「御殿場はドローンをはじめいろいろな取り組みがなされている町だと思っております。ドローンな産業として発展すると思います。御殿場でドローンの最先端をご覧いただき、盛り上げていけたらいいと思っております」と展望した。
御殿場市に展開する米海兵隊キャンプ富士の関係者も会場を訪れ、投稿サイトに「このようなイベントはテクノロジーの理解、地域のつながり維持、同盟関係の強化に重要」と絶賛した。
富士山UAVデモンストレーションで実演したのは、実演順に、株式会社空撮技研(香川県観音寺市)、ジオサーフ株式会社(東京)、有限会社森山環境科学研究所(愛知県名古屋市)、エアロセンス株式会社(東京)、株式会社ドローンママ(東京)、株式会社イデオモータロボティクス(東京)、イエロースキャンジャパン株式会社(東京)、株式会社 WorldLink&Company (京都府京都市)、サイトテック株式会社(山梨県南巨摩郡身延町)、株式会社エアロジーラボ(大阪府箕面市)の10組。それぞれの実演はENWA株式会社(大阪市)のテレビ会議システムを使って展示会場にリアルタイム配信された。
実演のトップバッター、空撮技研は「ライン」と呼ぶ極細のケーブルでドローンを係留する暴走防止装置であるドローンスパイダーを、実機にとりつけて実演した。ドローンの上昇とともにラインがスムーズに送り出され、反対にドローンが近づいてラインがたわみがちになると素早く巻き取られ、ドローンの飛行の自由度と暴走防止の安心感を両立させる様子を示した。この日はラインが100mの「004シリーズ」と、航空法改正に対応するためラインの長さを30メートルに抑えた新型機「005」シリーズを実演した。
二番手で登場したGNSS事業を手掛けるジオサーフは、マッピングに幅広く使われているスイスsensFly社製の固定翼機「eBee X」を飛ばした。プロペラを一つだけ備えた翼長116センチの機体はほぼ樹脂製で重さは1.4キログラム。標準バッテリーデ90分の飛行が可能だ。デモではオペレーターが、起動後ファンの回転を確認し、押し出すようにリリースすると機体は予め定められたルートをたどり滑らかな飛行を見せた。デモの間には「マルチスペクトルカメラを搭載し太陽光パネルの点検に使われることも多い」などの用途も説明された。
開会式をはさんで三番手で登場した森山環境科学研究所は、スイスに本社を構えるWingtra 社製のVTOL機、 WingtraOneの飛行を披露した。ロケットのように天を仰ぐ姿勢で待機しているが、離陸は姿勢を維持したまま、プロペラでふわりと浮かび上がった。上空30メートルでホバリングしたあと、姿勢を水平に変えると、進行方向に固定翼機のようにスイっと進んだ。珍しい動きを見せたうえ、よく晴れた青空に赤い機体が映えたこともあり、競技場の観客席ではカメラに納める姿が多く目についた。
エアロセンスは現時点でアピールしたい目玉機体2種のうち、この日はVTOL機、エアロボウイングの実演を披露した。広範囲を1フライトでカバーでき、災害調査、測量、スマート農業などに使われる機体だ。離陸前は直前のWingtraOneと異なり、水平状態で待機。起動すると、その姿勢でふわりと浮かび上がり、上空で方向を転換し滑るように進む。白と青の機体が富士山に映え、来場者にシャッターチャンスを提供した。
五番手で登場したドローンママはこの日唯一の、飛ばないドローンを実演した。競技場入り口前の広場に無人操縦装置を取り付けたトラクターを用意。周囲への配慮から運転手が乗車したが、動き出すとハンドルに触れずに直進した。飯原夏子代表は「直進は実は難しく、段差があるところでは小刻みなハンドル操作が求められます。このトラクターは自動で小刻みにハンドルを制御して直進に進めます」と解説した。さらにパイロンを立てた間を自動でS字走行する様子もみせ、囲んだ来場者をうならせた。システムは中型、小型にも取り付け可能で、同社は現在、割安なキャンペーンを打ち出して利用を呼び掛けた。
イデオモータロボティクスはこの日が国内初の一般公開となる小型空撮機ASTROの飛行を実演した。ASTROは米Freefly Systemsがこの秋に発表したばかりで、オープンソースのドローン用OS開発を手掛けるスイスのAuterionと協業した機体として知られ、次世代フライトコントローラーAuterion Skynodeを搭載している。4本アームの伝統的な回転翼機スタイルながら、この日のデモでは、軽やかなプロペラ音と俊敏な動きで観客先を魅了した。マニュアルモードの場合の最高速度は時速95㎞。ソニーのデジタル一眼カメラ「Sony α7R IV」用の専用ジンバルの搭載ができ、その場合でも28分の飛行が可能という。
イエロースキャンジャパンは、有人機にもUAVにも使えるLiDAR ソリューションYellowScanExplorerを実機に搭載して飛行。「センチメートル単位の精度で飛行できる」と説明した。また、全方位衝突回避が可能な非GPS環境下で自律飛行を可能にするHovermapを搭載した機体も披露。SLAMベースで「機体が自動で飛行すべきコースを探し当てて飛んでいきます」などと説明した。
WorldLink&Companyは、ドイツWingcopter(ウイングコプター)社製のVTOL機と、ソニーが開発したプロフェッショナル向けドローン「Airpeak S1」を飛行した。Wingcopter はテフィルトローターと呼ばれる向きを変えることのできるプロペラのアームが特徴で、この日のデモでは、プロペラが回転すると機体は待機中の姿勢のまま浮かび上がると、空中でアームが方向を変え、グライダーのようにスムーズに動き出した。飛行中には「ANAが取り組む離島輸送にもつかわれている」などと説明がされた。また、ソニーの「Airpeak S1」はフルサイズミラーレス一眼カメラを実際に搭載して離陸。上空で着陸用の脚を上げ、撮影の視野を広げると、一気に機体を傾けて力強く飛ぶ様子を見せるとともに「映像のためのドローンです」などと解説した。
この日、最も大きな機体を持ち込んだのはサイトテックだ。重い荷物を運ぶYOROIシリーズの最新作「Y12B1750」が幅3メートル、バッテリー込み総重量60㎏の赤い機体がフィールドに姿を現すとどよめきが起きた。6本のアームを備え、40㎏の荷物を運べる仕様だが、「実験では80キロを吊り上げたこともある」などとポテンシャルの高さを示唆した。
デモフライトでは、4mの単管パイプ2本、あわせて25㎏を吊り上げ、上空で機体を回転させて積み荷を揺らしながら安定した飛行を披露した。また荷物を地上1メートルまで降りたところで切り離して降ろし、安定を維持しながら積み荷を降ろした。さらにドラム缶3つ約40キロをぶらさげた飛行も披露。単管パイプのように揺らしながら安定して飛行できることを示した。同社は「すでに山や谷などで運用されている」と話した。なお大きな機体の準備や撤収などの一連の作業がすべて速やかで、鍛えられたオペレーションぶりも印象的だった。
また、日唯一のハイブリッド機を飛行させたのが国産ドローン開発を手掛けるエアロジーラボだ。デモ機は今年お目見えしたばかりのAeroRangeQUAD(エアロレンジクアッド)で、混合ガソリン4リットルを燃料に発電機で電気を起こし、4つのプロペラで飛行する。発電機から絶えずバッテリーに給電されるため、バッテリー消費の大きい回転翼機でありながら最大で140分飛行を続けることができる。機体には給油口があり、フィールドでも給油する光景が印象的だった。
デモフライトでは発電機を起動させるとフィールドにバイクのようなエンジン音が響き、その後オペレーターの指示で浮上すると、安定した飛行を見せた。積み荷がなければ2時間以上飛び続けることができる機体で、この日は10分の短時間飛行ながら、長時間飛行の潜在力を見せつけた。3月には石垣島でユーグレナバイオ燃料を使った輸送実験も成功させていて、クリーンエネルギーの活用を模索している。11月25日(木)には、飛行見学会の開催も予定している(12:00~、13:00~、14:00~、15:00~ 受付は先着順、場所は大阪府豊能郡能勢町宿野の能勢高原ドローンフィールド。希望者は、希望日程、参加者数を【Email:support@aerog-lab.com】まで連絡を)。谷紳一社長も会場を訪れデモフライトの様子を見守った。
競技場と道路を挟んで隣接する体育館では、ドローンの機体、技術、サービスなどを展示する展示会も開催され、多くの来場者がブースを訪れていた。中にはドローンの凄腕パイロットや、AGV、ドローン開発の先駆者などの姿も見られた。ドローン産業を応援し、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)のアンバサダーとして活躍するシンガーソングライターSaashaもブースをのぞき込んだり、出展者の話に耳を傾けたりしていた。陸上自衛隊東富士演習場自衛隊が立地することもあり、会場内では関係者の姿を見かけた。
出展していたのは、ENWA株式会社、菱田技研工業株式会社、エアロセンス株式会社、イエロースキャンジャパン株式会社、株式会社イデオモータロボティクス、株式会社エアロジーラボ、有限会社森山環境科学研究所、Pix4D株式会社、ジオサーフ株式会社、株式会社WorldLink&Company、有限会社ボーダック、株式会社ジェピコ、株式会社空撮技研、サイトテック株式会社、エアロファシリティー株式会社、株式会社トプテック、株式会社ドローンママ、ESRIジャパン株式会社、株式会社リヴィングロボ、株式会社NTTドコモなど。
御殿場市に展開する米海兵隊キャンプ富士の関係者も会場を訪れ、投稿サイトに「このようなイベントはテクノロジーの理解、地域のつながり維持、同盟関係の強化に重要」と絶賛した。
UAVデモンストレーションは、慶応義塾大ドローン社会共創コンソーシアムが2018年6月に神奈川県藤沢市の県立湘南海岸公園で「湘南UAVデモンストレーション」として開催したイベントが最初の取り組みとなった。このときは江ノ島を背景に国内外の機体の飛行をお披露目した。翌年の2019年以降、静岡県御殿場市に会場を移し、2019年9月に「富士山UAVデモンストレーション」を開催。以降、毎年の恒例行事となっている。すでに来年の開催も決まり、御殿場がドローンのまちとして毎年来場者を迎えることになりそうだ。
東京株式市場で6月11日、ドローン関連銘柄が物色された。ブルーイノベーション株式会社(東京)の株価は一時ストップ高の2023円をつけ、2023年12月に上場して以来の2000円台を回復した。同社株のストップ高は2日連続。株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)、株式会社ACSL(東京)、Terra Drone株式会社(テラドローン、東京)も買われた。ドローン4銘柄はグロース市場の午前の売買高ランキング上位10銘柄にそろって登場した。
ブルーイノベーション株は寄り付き前から買い注文を集め、前日終値の1623円より316円高い1939円で寄り付いたあと午前9時24分に、前日終値比400円高いストップ高となる2023円をつけ、上場日以来の2000円超えとなった。なお前日も獲りき時間中に、その日の値幅制限である300円高のストップ高をつけていた。
そのほかのドローン関連株も買われていて、リベラウェアは一時、前日終値113円高の1870円、ACSLも一時、前日終値比79円高い1359円、テラドローンも一時、前日終値の6240円から600円高い6940円を付けた。
ドローン関連株はトランプ米大統領が6月6日に署名した“Unleashing American Drone Dominance” と“Restoring American Airspace Sovereignty,”の2つの米国内でのドローン開発やビジネス活性化に関わる大統領令を受けて買われやすくなっていた。6月10日にはロンドンで開催されていた米中閣僚級協議で、ラトニック米商務長官が中国によるレアアース輸出規制を「解決されるだろう」と見通した発言が伝わるなど協議の進展が経済の活性化を展望させたことでハイテク株を中心に投資を呼び込み、ドローン株への物色を後押ししたとみられる。
また日本国内では、政府による道路陥没対策やコメ不足対策に関連するスマート農業対策推進などの期待から、関連技術としてドローン関連が買われやすくなっていた。
米国でもトランプ大統領令に連動する形でAAM開発のジョビー・アビエーション、アーチャー・アビエーションなどが急騰した。
日本UAS産業振興協議会(JUIDA)と株式会社コングレは、6月4~6日に千葉・幕張メッセで開催したドローンの大規模展示会「第10回Japan Drone2025/第4回次世代エアモビリティEXPO2025」の来場者は3日間合計で、2万3049人と前年の2万1273人から1776人(8.3%)増えて閉幕したと発表した。
次回の開催は2026年6月3~5日に、千葉・幕張メッセで「第11回Japan Drone2026/第5回次世代エアモビリティEXPO2026」として開催する。また本開催とは別に地方版として、2025年11月26、27日に大阪で「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」の開催も決まっている。
今回の「第10回」の来場者数は、6月4日が7491人(前年初日の6961人から530人、7.6%増)、6月5日が7669人(前年2日目の7062人から607人、8.6%増)、6月6日が7889人(前年3日目の7250人から639人、8.8%増)だった。
出展は285組(社・団体)で、国内が221組、海外64組(9か国・地域)だった。
期間中に開催した「Japan Drone & AAM Awards 2025」の結果は以下の通り。
<ハードウェア部門>
最優秀賞:エバーブルーテクノロジーズ株式会社「除雪ドローン®」
<ソフトウェア・アプリケーション部門>
最優秀賞:株式会社ROBOZ「インドアドローンショー」
<Advanced Air Mobility部門>
最優秀賞:AeroVXR合同会社「①認証コンサルティング事業、②テストパイロット育成事業(JTPS)」
<海外部門>
最優秀賞:上海中研宏科ソフトウェア株式会社「車両とドローンの協調システム」
<オーディエンスアワード>
株式会社ROBOZ「インドアドローンショー」
<10周年記念特別賞>
株式会社Liberaware「IBIS2」
<審査員特別賞>
DIC株式会社「全方位マルチコプター HAGAMOSphere」
また「Drone Movie Contest 2025」の結果は以下の通り。(敬称略)
<一般映像部門 グランプリ>
「厳冬の果て、流氷のまち羅臼」(LOVE.PHANTOM 宮川和之)
<縦ショート動画部門 グランプリ>
「【ホームビデオ】妖精のもりへ」(矢尾板亨)
<審査員特別賞(SEKIDO賞)>
「~四季が彩る安達太良山~福島」(武藤貴之)
<審査員特別賞(ごっこ倶楽部賞)>
「【ドローン撮影】イトーキ本社オフィスを飛行(2025ver.)」(株式会社イトーキ)
作品は以下のサイトで
https://ra-drone.dhw.co.jp/contest/
ドローンの運航サービス、人材育成などを手掛ける株式会社ダイヤサービス(千葉市)が、応急手当講習の普及を目指し協賛パートナー制度を導入した。現在、協賛パートナーの募集を進めている。同社はドローン運航中にけがをしたりさせたりしたさいに、医療機関にかかるまでの間にすべき応急手当の方法を身に付ける講座を6年前から提供している。協賛制度を通じて講習や応急手当の必要性の普及を加速させ、講習の受講料抑制につなげることを目指す。
ダイヤサービスが協賛制度を通じて普及を目指す「ドローン応急⼿当講習」は、ドローンを使っているときにけがをしたりさせたりした場合の応急手当のノウハウを学ぶ講習で、安全を重視するダイヤサービスが、看護師、救急救命士、民間航空機の客室乗務員経験者らとともに開発に着手、2019年3月にカリキュラム化した。「一次救命措置」と呼ばれる措置の手順やそれぞれの方法から具体的な方法、CPRと呼ばれる措置の方法、AEDの使い方、バイタルサイン、PRICES 処置、止血対応などをテキスト、実技を通して体系的に学ぶ。止血方法が含まれるのは珍しい。
受講者には学んだことを証明する認定証「ドローン応急⼿当資格認定者」を発⾏する。「ドローン応急⼿当資格認定者」が在籍する法人は、「ドローン応急⼿当資格取得者在籍事業者」を名乗ることが認められる。また学んだスキルを維持するための3年毎の更新講習もある。
受講者は、ドローンを使う現場が都心部でないことが多いことから、緊急通報をしてもすぐにかけつけてもらえる場所でないことが多いことに伴う不安の解消を求める人が多く、「体系的に効率的に学べる講座として有益」と評価が高い。
同社がカリキュラム化したあとの2021年に成立し、2022年12⽉に施行された改正航空法では、ドローン運用中に事故でけが人が出た場合、操縦者には負傷者の救護義務が課されることが明記された。具体的には航空法第132条90第1項に「無⼈航空機の⾶⾏により⼈が負傷した場合、操縦者は直ちに負傷者の救護等、危険を防⽌するために必要な措置を講じなければならない」とあり、義務を怠った場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰⾦が科される可能性があることが盛り込まれた。
また2022年11月に制定された報告要領(無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領)には、救護義務についてさらに詳しく記されている。まず、「法第132条の90第1項に規定する事故が発生した場合に、『負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置』として、操縦者が直ちに無人航空機の飛行を中止し、講じる必要のある措置をいい、具体的には次の事項をいう。なお、事故に該当する場合に限らず、必要と認められる場合には、所要の救護活動を行うべきである」と「次の事項」を必要な措置と定めている。
具体的には「a)負傷者を救護すること 事故が起きたときは、操縦者及びその関係者は次のような措置を講じなければならない。ア)負傷者がいる場合は、医師、救急車等が到着するまでの間のガーゼや清潔なハンカチ等での止血等、可能な応急救護処置を行う。この場合、むやみに負傷者を動かさない(特に頭部に傷を受けているときは動かさない)ようにする。ただし、二次的な事故等のおそれがある場合は、速やかに負傷者を安全な場所に移動させる。(以下略)」などと記され、「止血」が含まれている。ダイヤサービスの「応急⼿当講習」にはこの止血の方法が含まれる。
一方、義務となった救護の方法を身に付ける方法が限られていたり、学習者には身に付ける場を探すことが難しかったりと、応急⼿当の方法を学ぶ場は依然、増えていない。
このためダイヤサービスは協賛パートナーとともに、応急手当の啓蒙、講習の普及拡大、講習内容の随時更新、受講料金の抑制につなげたい考えだ。ダイヤサービスは社団法人を設立したのちに、協賛パートナーを含めた普及・啓蒙活動の主体を社団法人に移管する方針だ。
ダイヤサービスの戸出智祐代表取締役社長は「万が一の事故時に現場で応急対応できる人材は、いまもほとんど育っていません。われわれは6年前から応急手当講習を地道に展開して参りましたが、協賛パートナー制度で万が一の備えを業界の常識にすることに挑戦したいと思っています」と話している。
株式会社ダイヤサービス:https://daiyaservice.com/
協賛パートナー説明と問い合わせ:https://daiyaservice.com/sponsorship/
狭小空間点検用小型ドローンIBIS2Assistを使ったレース、「JR東日本グループドローンDX CHAMPIONSHIP」が6月7日、JR高輪ゲートウェイシティ駅と一体化した一帯に構える大型複合ビルで開幕した。初日の7日はJR東日本の設備点検、工事設計業務などでドローンを活用する部署4チームがIBIS2でタイムを競い合う「JR 東日本グループ Challenge Cup」が行われた。駅そっくりで観客からドローンが見えるよう工夫されたコース、選手の表情が分かるステージ、手に汗握る実況、ドローンの操縦席にのっているような迫力ある映像など、本格的なレース仕様の演出が特徴で、白熱したレースと各チームの熱のこもった応援で来場者も大きな拍手を送った。8日には企業対抗戦が行われる。
ドローンDX CHAMPIONSHIPはJR東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本、東京)、デジタルツインのCaLta株式会社(東京)、Liberawareが開催した。レース演出はプロチームの運営、イベント企画を手がけ、国際レースへの出場や優勝の経験も豊富なDRONE SPORTS株式会社(東京)が担った。
会場はJR高輪ゲートウェイシティ駅改札からすぐのTAKANAWA GATEWAY CITY THE LINKPILLAR 1の地下2階にあるTAKANAWA GATEWAY Convention Center LINKPILLAR Hallだ。
ホール内にJR高輪ゲートウェイシティ駅そっくりのミニチュアコースが設置された。駅の天井をくぐるコース、ホーム床下の配管をもぐるコースのほか、二次元コードを読み取る仕掛けや、SUICA改札にタッチする仕掛けなどJR東日本らしさを取り込んだ。飛行コースは観客の目の高さが中心で、観客が間近でドローンの動きをみられる工夫も凝らされている。
選手は会場内に設置されたステージの上の所定のシートに座り、ゴーグルを装着して、コントローラーを操作してドローンを動かす。ステージの背景の大型スクリーンには、選手の表情や飛行中のドローンの操縦席に座っているかのような映像が映し出される。
レースは2チームの対戦で、勝ちあがる形式で行われた。各チームは3選手で構成され、3つの対戦の総合ポイントで勝者を決め、勝ち上がる。レースがスタートするとスクリーンに経過時間や、ミッションをクリアするたびに加算されるポイントなどが表示される。ドローンが上手にコースを抜けると、チームの応援団から大きな拍手があがるなど白熱した展開が続き、わかりやすいルールに一般公開された身に来た観客も拍手を送っていた。
この日は決勝で最速タイムをたたき出したチーム「E-Wings」(電気ネットワーク部門)が優勝した。2位が「Z3C」( エネルギー企画部)、3位が「チームKENKOU」(建設工事部)、4位が「Kenchiku Smart Maintenance」( 設備部門=東京建築建設技術センター)だった。
2日目の6月8日には、IBIS2を活用する8つの企業チームによる「JR 東日本グループ presents『IBIS2 Master Cup』」が開催される。ソフトバンク株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、新潟工科大学フィールドロボティクス研究室/株式会社アグリノーム研究所/九電ドローンサービス株式会社合同チーム、KDDI スマートドローン株式会社、セントラル警備保障株式会社、株式会社えきまちエナジークリエイト、JR東日本コンサルタンツ株式会社、JR東日本ビルテック株式会社がレースに挑み、「通信キャリア対決や、電力大手対決が楽しみ」などの声があがっている。
7日のレース後に取材に応じたJR東日本マーケティング本部まちづくり部門品川ユニット(次世代まちづくり創造)の出川智之マネージャーは、「TAKANAWA GATEWAY CITY は『100年先の心豊かなくらしのための実験場』として新たなビジネス・文化が生まれ続けるまちづくりに取り組んでいますので、ドローン、ロボットの取り組みをお示しすることでその一端をお示しできたと考えています。初日は保守点検、設計など各部署でドローンを使っていることをお客様にも知って頂く機会にしたいとの思いを込めて、社内の取り組みを一般公開することにしました。レースというエンタメ要素を取り込みつつ、これらを通じて安全性や生産性を高めようとしている姿勢を伝えられたのではないかと感じています。また会場内に掲示してあるJR東日本グループのドローンの取り組み、たとえば山間部での使い方や災害時の使い方などを読んでくださっている姿を目にし、JR東日本グループのDXの取り組みを広く知って頂く機会になったと感じています」と述べた。
またこの日、選手としても出場したJR東日本建設工事部基盤戦略ユニット(技術戦略・DX)主務の石田将貴さんは「維持管理などの部署はなかなか表に出る機会が少ないので、このような機会にDXで生産性向上に励んでいる姿勢をお示しできたとも思います。働きやすい環境、職場を目指していることをお示しすることで企業の魅力向上にもつながればいい、とも思っています」などと捕捉した。
さらに大会の今後の開催について出川マネージャーは「お客様を含めて内外の反響などを確認したうえで検討することになります。ただ、JR東日本管内は青森、新潟にも職場がありますので、各地から気軽に参加できる機会はこれからもつくりたいと考えています。個人としては各地でで地方大会を開き、ここ(TGWC)で決勝ができたらおもしろいかな、とは思いますが、これはまだ私個人のアイディアです」と述べた。
ブルーイノベーション株式会社(東京)、VFR株式会社(ブイエフアール、名古屋市)など4社のコンソーシアムは6月4日、千葉・幕張メッセで開催中のドローンの大規模展示会Japan Drone 2025で、試作した国産ドローンポートを公開した。複数のメーカーによる使用が可能な汎用性や、日本主導で発行にこぎつけたドローンポートの国際標準規格ISO 5491に準拠し、外部システムとの連携を可能にしている。発表ではプロジェクトの責任者をつとめるVFRの戸國(とくに)英器取締役が「2027年の社会実装と量産化を目指しています」と展望を表明した。
開発にはブルーイノベーション、VFRとCube Earth株式会社(キューブアース、大阪市)、株式会社Prodrone(プロドローン、名古屋市)の4社がコンソーシアムを組み「4社の強みをいかして開発している」(VFRの戸國氏)という。
開発の背景については「ドローン運用の全自動化、長距離長時間化、インフラ点検活用拡大、緊急武士輸送ニーズ拡大などから対応するドローンポートの需要が高まっている一方、海外製が多く、国際情勢のうえでも、関連する経済安保の観点からも国産ポートが必要との声が高まっている」と説明した。
事業は経済産業省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」に採択されている。
事前に公開された発表内容は以下の通り
~VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションの4社コンソーシアムが 国産ドローンポートの社会実装に向けた試作機を初公開~
VFR株式会社(本社:愛知県名古屋市 代表取締役社長:蓬田 和平 以下 VFR)と、Cube Earth株式会社(本社:大阪府大阪市 代表取締役社長:武田 全史 以下 Cube Earth)、株式会社Prodrone(本社:愛知県名古屋市 代表取締役社長 : 戸谷 俊介 以下 Prodrone)、ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区 代表取締役社長 最高執行役員 : 熊田 貴之 以下 ブルーイノベーション)の4社は、2023年10月に採択された経済産業省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」において共同開発を進めている「国産ドローンポート」の試作機を、2025年6月4日より開催の『Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO 2025』にて初公開します。
■背景|ドローンの社会実装に必要な“空の拠点”
近年、災害対応やインフラ維持管理をはじめ、様々な分野でドローンの活用が広がっています。その中で、安全な離着陸、充電、保守を担う「ドローンポート」の整備は、今後の省人化を進める上で不可欠です。
しかし、現在開発されているドローンポートは海外製が多く、安全保障の観点からセキュリティ対策の必要性が高まっています。また、日本の災害環境やインフラ構造に最適化された、安全な国産ドローンポートの開発が急務となっています。
こうした社会的なニーズに応えるため、VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションの4社は連携し、国産ドローンポートの実用化に向けて共同開発を開始しました。この共同開発は、2023年より経済産業省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の支援を受けています。
■国産ドローンポートの社会実装に向けた本格展開
本コンソーシアムでは、ドローンポートの社会実装を加速するため、より高い「安全性」「汎用性」「拡張性」を備えた、国産ドローンポートの開発に取り組みます。
このドローンポートは、以下の設計要件に基づいています。
■各社の役割と開発体制
VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションは、それぞれの強みを活かし、ドローンポート本体の設計、機体連携、遠隔制御、統合管理システム、現場実装に至るまで、4社共同で開発に取り組んでおり、以下にそれぞれの役割を示します。
・安全性 : ドローンは離着陸時に最も事故が多く、確実かつ安全に離着陸できることを目指します。
・汎用性 : 現場の多様なニーズから複数のメーカーのドローンの離着陸を可能にします。
・拡張性 : 外部システムとの連携を可能にし、我が国が主導したISO 5491(ドローンポート国際標準)※2に準拠します。
■試作機の概要(Japan Drone 2025で初公開)
展示された国産ドローンポート試作機は、将来の社会インフラとしての「空の拠点」の実装に向けた第一歩となる設計です。
■今後の展開
本コンソーシアムは、今年度内に複数の地方自治体およびインフラ事業者との連携による実証実験を実施予定です。これを通じて実用化に向けた機能検証と運用設計を進め、2027年の社会実装および量産化を目指しています。
ドローンの大規模展示会「第10回Japan Drone 2025/第4回次世代エアモビリティEXPO」(主催:一般社団法人日本UAS産業振興協議会<JUIDA>、共催:株式会社コングレ)が6月4日、千葉・幕張メッセで開幕した。過去最大の285組が出展し、初日から新モデルの初公開、新サービスの発表が相次いだ。第10回を祝うようなにぎやかなブースが目立ち、ダンサーによるパフォーマンスで盛り上げを図るところもあるなど、はなやかな幕開けとなった。6月6日まで。
開幕を前に開会式が行われ、衆議院無人航空機普及利用促進議員連盟(ドローン議連)、総務省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、千葉市、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、株式会社コングレなどの代表が参加し、それぞれ祝辞、最近の取り組み、今後の展望などを述べた。主催者であるJUIDAの鈴木真二理事長は「JapanDroneは記念すべき第10回開催となりました。法改正、規制緩和、ドローンとエアモビリティについて深く議論する場を設けております。みなさまにとって、ビジネスチャンスの創出、知識の深化、ドローンと空のモビリティの未来をともに考える貴重な機会となることを願っています。そしてこの展示会が新たな社会の実現に向けた大きな一歩になると確信しています」などとあいさつした。
会場には仕掛けの凝った大掛かりなブースが目立つ。GMOインターネットグループ、ブルーイノベーション、JUIDA、テララボ、ロボデックス、ソフトバンク、DRONE STAR powered by ORSOトピアドローン技術研究所、Suzakなどが広く面積をとったブースを構えた。DRONE STAR powered by ORSOや、スペースワンと日本水中ドローン協会の共同ブースには大型のLEDモニターが設置され会場に華やかさを添えている。
海外勢も目立つ。台湾が大きなブースを設置するなど18の企業、団体が製品やサービスを紹介しているほか、米国、中国、フランス、デンマーク、韓国、スイス、ベトナムなどからの出展が国際色を豊かにしている。
初公開、新規発表など相次いだ。JUIDAが東急コミュニティー、ハミングバードとともにマンション点検のドローン操縦者を育成する「ドローン点検スペシャリスト」資格の創設を会場で正式に発表した。株式会社ORSOは出展しているブースDRONE STAR powered by ORSOで、ブラウザからすぐに操縦できる無料シミュレーターゲーム「DRONE STAR PILOT(ドローンスター・パイロット)」を先行公開した。株式会社プロドローンは第一種型式認証の取得を目指し現在最終テスト段階の大型ドローン「PD6B-CAT3型」を初公開した。
にぎやかな装いで人目をひく演出もある。水素燃料電池ドローン開発の株式会社ロボデックスは、ブースにカートリッジに高圧で充填できる移動式充填トラックを持ちこみ、プレゼンテーションの冒頭には、ブース内を光、スモーク、ダンス音楽の中をダンサー4人がエネルギッシュなパフォーマンスを披露して客足を止めていた。
初日の4日は開場の午前中から多くの来場者がつめかけ、出展者に話を聞いたり、後援などステージ企画を訪れたりする姿が見られた。JapanDroneは6月6日まで開催。事前予約で入場は無料になる。