建設機械、測量機器の大規模展示会「第6回建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO2024)」で、ドローンや関連技術の存在感が高まっている。会場の中央エントランスでは、天井から吊るされたアミューズワンセルフの展示案内が来場者を迎えるほか、広大な展示会場にはDJI JAPAN、アミューズワンセルフ、スペースワン、ジュンテクノサービス、セキドなどドローン、水中ドローン、グリーンレーザーなどの関連技術が数多く出展されている。開催初日には一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事業も、講演の冒頭に「昨年度に比べ今年度はドローンや関連技術の展示がさらに増えている印象を持ちました」と話した。CSPIは24日まで。
CSPIは千葉市の大型展示会場、幕張メッセで5月22日に開幕した。CSPIそのものの規模は大きくなった。展示スペースは幕張メッセの1~6ホールにまたがっているほか、屋外展示場も含めて4万7千㎡になり、455社が出展している。主催者によると過去最大の規模という。初日の開場直前に行われたオープニングセレモニーでは、開会を告げるテープカットが行われ、主催者、業界団体代表など42人もの開催関係者が2列にわたりずらりと並び、合図にあわせてハサミを入れた。JUIDAの鈴木真二理事業も参加した。
来場者はホールに足を踏み入れる前にドローンの存在感に触れる。幕張メッセの「中央エントランス」口から入るとすぐ、天井から吊るされた巨大な株式会社アミューズワンセルフ(大阪市)の展示案内が視界に飛び込む。視線の先のイベント名である建設・測量生産性向上展」の表示板よりも目立ち、同社の力の入り具合と、展示会が含む事業領域の中にしめるドローン関連技術の存在感を強調することに貢献している。
アミューズワンセルフは会場内の展示ブースの工夫も目に留まる。大きなブースに離れた場所からでも目に付く構え、色とりどりの華やかな装飾はCSPIの恒例だが、今回はブースの配置にしかたにも工夫がある。通路をはさんで2エリアを一体運用し、より広く見せる工夫だ。も試みている。プレゼンテーションが行われるさいには、ブース内に用意された演台で行われているプレゼンテーションを、通路ごしに聴講できる。レイアウトのアイディアは同社の独自性を印象付けていて、多くの来場者が足を止めていた。
アミューズワンセルフはレーザー技術が中心で、CSPIでもドローン搭載型グリーンレーザーシステム「TDOT 7 GREEN」(ティードットセブングリーン)、グリーンレーザーを搭載する独自開発ドローン「GLOW.H」を柱に、グリーンレーザーを搭載できる他社機などを展示している。
このほか、ドローン関連として知られる企業が多く出展している。DJI JAPAN株式会社(東京)は、多機能格納庫の新製品「DJI Dock2」(ディージェイアイドック2)」や新型ペイロード「ZenmuseH30」(ゼンミューズH30)シリーズなどを、DJI製品を扱う株式会社セキド(東京)もDJIの物流機「DJI FlyCart 30」などを展示し、客足を止めていた。
水中ドローン普及の火付け役、株式会社スペースワン(福島県)は、中国・深圳に本社を置く水中ドローン大手、Chasing-Innovation Technology Co.LTD(チェイシング社)の新型機「CHASING X(チェイシングエックス)」を展示している。今春に海外で初公開されたさいには最深350メートルまで潜航できる性能で話題を集めた。今回は日本でそのデザインが初めて公開されたこともあり、大きなブースにひっきりなしに来場者が訪問している。ブースでは連日、関連するさまざまなテーマを取り上げて説明会を開いており、開始時刻の毎正時には多くの来場者が集まり、説明に耳を傾けている。またCSPIにあわせてCHASING社の幹部が来日し、利用者層のニーズを確認している。
株式会社ジュンテクノサービス(埼玉県)も、中国の水中ドローン製造大手、Shenzhen QYSEA Tech Co.,LTD(QYSEA社、キューワイシー)の3万ルーメンのLEDを備えて推進350mまで潜れる新型水中ドローン「FIFISH X2」など新製品3機種など日本で初めて公開する製品などを展示している。ブースでは引野潤代表、ササモモ(佐々木桃子)さんら、知名度の高いスタッフが製品、用途、サービスなどについて説明している。
このほか定評あるエアロボウィングを展示する株式会社エアロセンス(東京)、公共測量に対応する「FLIGHTS SCAN」のリニューアル版「FLIGHTS SCAN V2 M2X」や、マルチユース向けのバックパックなどを展示している株式会社FLIGHTS(フライト、東京)、Z30ポータブルGNSS受信機などを展示しているGNSSスペシャリストのジオサーフ株式会社や、注目度急上昇中の株式会社Autonomy(オートノミー、東京)ほか、多くのドローン、関連技術の事業者が出展している。
独自技術「無振動エンジン」の特許を持つ株式会社石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)は8月9日、無振動エンジンを活用したハイブリッド式のヘキサコプター型ドローン「ハイブリッドフライヤー」の試作機で連続50㎞の飛行実験を実施に挑み、目標を達成させた。風速8m/秒の向かい風の中の飛行を強いられる場面もありながら、1時間10分ほどで50㎞を完走した。石川満社長は着陸後、「風が強かったので、ほっとしました。技術的には熟成してきたと思います。これを軸に商品開発を進めます」と述べた。1年後をめどに今回の飛行を支えたエンジン発電機の商品化を、2年後をめどに機体としての「ハイブリッドフライヤー」の商品化を目指す。
飛行させたドローンは同社が開発中の「ハイブリッドフライヤー」の試作機。6つのローターを備えるヘキサコプターで、バッテリーのかわりに同社の独自開発技術である無振動エンジンで発電するエンジン発電機を搭載している。また軽量で剛性と強度を持つマグネシウム合金を使っていることも同社のドローンの特徴だ。ハイブリッドにはいくかの方式があるが、「ハイブリッドフライヤー」は、ガソリンで動かしたエンジンはプロペラをまわすためには使わず、発電に使う「シリーズ方式」だ。この日は3.5ℓの燃料タンクに約3ℓの燃料をつんで飛行に挑んだ。伝送にはLTEを使った。
飛行ルートは福島県福島県双葉郡浪江町の福島ロボットテストフィールド浪江滑走路・滑走路附属格納庫を起点にした。機体は午前8時5分に離陸し、上空80mまで上昇したのち、400m飛行して海岸に出て方向を変えた。そこからは海岸にそって約10㎞を北上、その後折り返して南下するなどほぼ2往復強で50㎞の飛行コースをつくった。
機体は「ハイブリッドフライヤー」が搭載するフライトコントローラー、アルデュパイロットの地上管制局ミッションプランナーで組んだ飛行ルートの通りに飛行した。安全確保と機体の状況確認のため、飛行ルート上に数人の監視員を配置した。起点に設置した管制局と監視員とはたえず連絡を取り合った。風が強めだったが監視員から「黒煙などの異常は見られません」などと連絡が入ると、安堵の表情が見える。向かい風のときには「機体の速度はだいぶおそめです。向かい風にむかって機体がすごくがんばってくれているようにみえます」と連絡が入り、担当者が応援する表情になる様子がみられた。
約1時間後の午前9時10分ごろ、離陸地点上空に機体が姿を表し、社員ら担当者、見学者が見守る中、予定した地点に着陸するといっせいに拍手があがった。
同社はすでに22㎞の連続飛行を果たしており、昨年30㎞の連続飛行に挑戦したが断念。今年6月には目標を引き上げ40㎞に挑んだが悪天候に阻まれた。今回の再挑戦は前回の目標をさらに引き上げて行われ、前日の8月8日のリハーサルで50㎞飛行を達成していた。試験飛行本番の8月9日は風が強い予想があり、担当者は「前日は着陸時にガソリンが1ℓあまっていたので大丈夫です」と自信を示しながら、制御しきれない天候の行方に気をもみながらの実験となった。
着陸後、石川満社長は「なんとか飛びました」と胸をなでおろしながら「風が強かったので、ほっとしました。技術的には熟成してきたと思います。これを軸に商品開発を進めます」と述べた。同社は今後も改善を加え、1年後をめどに今回の飛行を支えたエンジン発電機の商品化を、2年後をめどに機体としての「ハイブリッドフライヤー」の商品化を目指す。エンジン発電機について石川社長は、「多くの可能性を秘めていると思います。一例ですがたとえばVTOL機に搭載すれば、いまでも長い飛行距離がさらに伸びる可能性があります。数百キロ飛ぶ機体なら1000㎞の飛行も視野に入るので選択肢として有力だと思います」と展望を見せていた。
ドローンに対しては、国や地方自治体などを中心に、長距離、長時間飛行への機体が高まっている。災害対応や広域測量などの需要が高まっているためだ。細かな動きが得意なマルチコプターが長時間、長距離飛行の可能性を身に着ける方法としてハイブリッド技術が注目されていて、国土交通省が5月20、21日に埼玉県さいたま市で実施した長時間飛行実験では株式会社アミューズワンセルフ(大阪府大阪市)のハイブリッドクアッドコプター「GLOW.H」で3時間の連続飛行を確認した。ハイブリッドドローン開発の株式会社エアロジーラボ(大阪府箕面市)は6月、200分飛行できるハイブリッドのクアッドコプター「AeroRangeG4-S」を開発したと発表した。ハイブリッドがVTOLに転用される可能性も含め、今後ハイブリッドへの関心はさらに高まりそうだ。
建設機械、測量機器の大規模展示会「第5回建設・測量生産性向上展 (CSPI-EXPO 2023、建設・測量生産性向上展実行委員会主催)が5月24日、千葉市の大型展示会場幕張メッセで開幕し、会場にはDJI JAPAN、アミューズワンセルフ、スペースワン、ジュンテクノサービス、セキド、エアロセンス、みるくる、ルーチェサーチなどのドローン、水中ドローンや関連技術が大量出展されている。DJIはドローンを格納するDJI Dockや、今月18日に発表されたばかりの産業機Matrice 350 RTKを初公開。ほかにも多くがこの日にあわせたコンテンツを披露している。開会前に行われたオープングセレモニーでは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長がテープカットに加わり、ドローンが建設測量分野で欠かせない技術であることを物語る中、ドローン関係事業者の熱の入った展示は5月26日まで続く。
にぎわいは開場前、会場外ですでに出来上がっていた。
会場である幕張メッセの玄関口前には、株式会社アミューズワンセルフのハイブリッドドローン「GLOW」を描いた巨大案内板が登場し、来場者は会場に入る前にドローンを目にすることになる。また24日午前10時の開場前に、会場ホール入場口前で行われたオープニングセレモニーでも、にぎやかさをアピールするかのように、テープカット用のテープが前後2列にはられ、主催者、業界代表ら33人がズラリとはさみを持って並んだ。JUIDAの鈴木理事長もその一人として加わった。谷鉄也実行委員長は「400社を超える出展企業で開催できた」とにぎわいを総括してあいさつしたほか、来賓として登壇した国土交通省のイノベーション担当の森下博之大臣官房参事官は「注力しているBIM/CIM、ICT施工、遠隔化・自動化などにとって、建設機械、測量機器、ドローン、AI、センサーなどは欠くことのできない主要な技術」と述べた。
展示でもドローンは主役である建設機械とともに彩を添えている。
DJI JAPAN株式会社はドローンの格納、充電、離着陸場となるDJI Dockを初出展した。手元のスマホで開閉する様子を実演し、その様子に多くの来場者の足をとめていた。機体を格納するときには離着陸台の左右から箱型の覆いが機体をつつむようせり出して閉じる。機体のプロペラは自動で向きが整えられDockに収まる態勢になる。またDockの周辺環境を監視するカメラも備わり、機体が離着陸するときの安全を確認する。早ければ6月中にも発売となる見込みだ。このほか1週間前に発表されたばかりのMatrice 350 RTKも展示されている。
同社のブースには、株式会社テクノシステム、株式会社kiipl&napなど関係の深い企業がそれぞれの技術をブース内ブースのような形式で展示している。たとえばテクノシステムはUAV支援システム「ランドステーソンUAV」を紹介。ドローンで取得したデータをもとに、作業規定準則などに定めるフォーマットにそった帳票を作成することができ、入力作業を軽減する。
ドローンの販売や人材育成などを手掛ける株式会社セキドは、中国CZIのドローン用のミッションペイロードを紹介している。音声を届けるためのスピーカーなどデジタルボイスブロードキャスティングシステムやライトなどが来場者の興味を引いていた。
NORTEKジャパン合同会社は、手のひらサイズの高精度水中ナビゲーションセンサパッケージ、Nucleus1000を紹介している。音波を出して距離を測る音波発受信部を持ち、圧力計、水温計、超音波式距離計やAHRSセンサーを備え、深度、水底や壁面などまでの距離、姿勢、方位、対地速度などを割り出す水中ドローン向けのアプリケーションだ。油田開発に用いる探査ロボットなどに使われてきたが、ドローンに使えるように応用、調整した。
株式会社スペースワン、ジュンテクノサービスも水槽を用意し水中ドローンを中心に展示している。スペースワンはCHASNGの「CHASING M2 S」を日本で初めて公開した。またジュンテクノは水中ドローンの活用事例を紹介したり、ポータブル電源を開発する中国、エコフローテクノロジー社のポータブル電源や、12分あれば18個の氷が作れるポータブル冷蔵庫GLACIERなどを紹介したりしていて、いずれも多くの来場者でにぎわっていた。
ドローンを使った構造物の高密度測量で知られるルーチェサーチ株式会社は、既存構造物の点群から3DCADに変換するソフトウェア「PINO」を展示している。点群をモデル化するさい、最前面でない点群をつかみ、ゆがんだモデルになってしまう事態を避けるため、簡単な作業で奥の点をつかまずに済むよう工夫してある。同社の尾原保弘技術営業部長は「図面のない構造物が多くあり、その現状を再現することに貢献したい」と話す。
また古河産業株式会社は、最大49㎏までの重量物を運べ、飛行中につり荷の横揺れを防ぐ機能を搭載した「EAGLE 49」を展示。株式会社FLIGHTSは高性能でありながらリーズナブルな次世代いLiDAR「FLIGHTS SCAN」を紹介している。株式会社カナモトはレンタルや運用サービスで活用しているFreeflySystems社製マルチコプターALTA X(アルタエックス)を展示し、都心部での送電線作業をこの機体で遂行している様子を動画で紹介している。エアロセンス株式会社は、200haを30分でレーザー計測できる、YellowScanのLiDARを搭載したVTOL機「エアロボウイング」をアピールしている。NTTコミュニケーションズ株式会社もAIドローン開発で知られる米Skydio社の機体やソリューションを紹介している。
ほかにも株式会社みるくる、株式会社テラドローンなど多くのドローン関連企業が、建設機械メーカーなどとともに会場を盛り上げていた。25日にはJUIDAの鈴木理事長が「ドローン、空飛ぶクルマが拓く未来」の演題で「特別セミナー」での登壇を予定してる。26日にはDJI JAPANの呉韜代表取締役が「現場で活躍する最新の産業用ドローンの現状」について、製品・技術PRセミナーとして講演することになっているなど、ドローンの存在感が高い3日間となりそうだ。