8月14日の東証グロース市場で株式会社ACSL(東京)株に買いが先行し、午前中の取引では一時、前日終値の741円より59円高い800円に載せる場面があった。前日13日の取引終了後にACSLが発表した1~6月期中間決算(決算期は12月)で、売上高が前年同期の290.6%増の20億5000万円と大幅に拡大し、2024年12月期決算も売上高が272.6%増の33億4000万円と見込んでいることが好感されたとみられる。
この日の株価は前日終値比15円高の756円で取引がはじまり、じわじわと買いが集まった。午前の取引時間中は749円を下回ることはなく、前日終値を超える水準で取引された。
ACSLが前日に発表した1~6月期決算では売上高が前年同期の5憶2483万円に対し20億5014万円と290.6%増加した。営業損益は10億2632万円の赤字、経常損益は9億6327万円の赤字、純損益は10億1035万円の赤字だった。
1~6月期の売上高20億5014万円をセグメントごとに見ると、「実証実験」「プラットフォーム機体販売」「用途特化型機体販売」「その他」4分野のうち、「その他」が17億3134億円と飛び抜けて高く全体の84%を占める。前年同期の売上高5憶2483万円の3倍を上回る額に相当する。「その他」はもともと、機体の保守手数料や消耗品販売などが想定されている。今回はそれとは別に、インドのパートナー企業Aerarc社と締結したMOU(覚え書き)に基づき、インド市場での「地上走行ロボットの販売」として1097万米ドル(17億51万円)を受注したため、その額が「その他」を押し上げた。
残るセグメントの「実証実験」は前年同期比5327万円減(19.8%減)の2億1534万円、「プラットフォーム機体販売」は前年同期比2553万円減(52.2%減)の2330万円、「用途特化型機体販売」は前年同期比3757万円減(31.9%減)の8015万円と、「その他」以外の3事業は伸び悩んだ。前年同期は「その他」が8964万円と売上高全体の17.0%を占めていたが、今回は84.4%を占め、インド関連事業に支えられたことを色濃く反映した決算となった。
12月通期決算では売上高を272%増の33億4000万円と見込むが、営業損益は30億600万円の赤字、経常損益は18億6000万円の赤字、純損益は19億3500万円の赤字を見込んでいる。
株式会社ACSL(東京)の株価が2月15日、取引開始からストップ安売り気配のまま値が付かずに推移し、そのまま午前の取引を終えた。前日の2月14日に2023年12月期決算、希望退職の募集による事業改革などを発表しており、市場参加者が嫌気した。決算発表では売上高が45%の大幅減収だった。純損益の赤字幅は縮小した。また希望退職は2月中に40人程度と同社の正社員の半分程度を減らし、事業の再構築を図る。
東証グロース市場では2月15日、午前午前9時に取引が始まった中、ACSL株には成り行きでの売り注文が殺到し、売り越し状況が続いた。株価も値段がつかないまま、値幅制限いっぱいの前日終値比150円安の726円のストップ安売り気配で推移し、午前の取引を終えた。前日の2月14日は607社が決算を発表するなど発表が集中し、株式市場はそれを受けて明暗が分かれ方向感のつかない展開となった。グロース市場には赤字決算の企業を中心に、売り気配のまま値が付かない銘柄が多い展開となった。
ACSLが2月14日に発表した23年12月期連結決算では、売上高が前期比45.2%減の8億円9600万円と大幅に減少した。業績のけん引役と期待された高セキュリティ型の小型空撮ドローン「SOTEN」の販売台数が伸び悩んだことが響いた。23年12月期はSOTENの販売台数は国内で51台と、前22年12月期の645台から92%減った。一方、研究開発費を35%抑制したことなどから、純損益は25億4300万円の赤字と、前22年12月期の25億9100万円の赤字から赤字幅を縮小させた。また20.7億円の受注残があると明らかにしており、翌期以降の売上高に計上される可能性もある。2024年12月期の連結業績は、売上高について23年12月期の2.7倍にあたる33億4000万円を見込んでいる。
売上高の減少について、ACSLは新型コロナウイルス感染症の流行に伴う経済活動の停滞、半導体価格の高騰、外国為替市場での急激な円安進行、インフレなどの外部環境が、同社の想定より厳しかったと分析。これをふまえ「大幅な売り上げ増加を前提としない黒字化を実現できるコスト構造へ転換」すると表明した。「選択と集中」を明確化し、国内の人員最適化と関連間接費削減、注力事業以外の研究開発の中止、高セキュリティ型ドローンへの潜在需要が大きい米国・台湾市場への再投資を進める。
国内の人員最適化の一環として、同社は希望退職の募集を発表した。募集対象は正社員で人数は40人程度。「程度」の幅次第では、同社の2023年12月期の従業員86人の半数にあたる。募集期間は2月16日から29日までで、3月31日を退職日とする。応募者には特別退職金を支給する。希望退職の実施に伴って発生する費用は2024年12月期に特別損失として計上する予定で、人数などが確定した時点で金額が確定する見込みだ。
また2月14日に開いた取締役会で、資本金、資本剰余金などの取り扱い方針を決議し、3月27日に開催予定の株主総会に付議することを決めた。繰越利益剰余金の欠損補填、財務体質改善、資本政策上の柔軟性、機動性確保が目的だ。資本金は9億8642万1997円のうち、9億7642万1997円減額して1000万円とし、資本剰余金も54億9218万482円のうち、40億6807万5032円を減額し、14億2410万5450円とする。減額分はその他資本剰余金に振り替える。発行済株式総数は変更させない。勘定科目間の振り替え処理でACSLは「業績に与える影響はない」と説明している。
あわせて鷲谷聡之代表取締役、早川研介取締役が月額報酬の15%を3カ月自主返納することも発表した。「経営責任を明確にするため」を理由としている。
ACSLはドローン市場の急成長を見込む姿勢を変えていない。主力機SOTENについては、国内10カ所で体験会を開いたほか、米国子会社ACSL Inc.の設立で全米代理店網を整備したほか、輸出許可も取得し海外展開も進めた。このほか米、台湾、インド市場でMOU(覚え書き)を交わすなど販売につながる対応を進めており今後の業績の上積みへの寄与が期待される。
<以下はACSLの発表>
ACSLの2023年12月期決算短信
ACSLの2023年12月期決算説明資料
役員報酬一部返上
希望退職募集と事業改革
資本金減少など
特損計上
前期実績との差異
株式会社ACSL(東京都江戸川区)が11月11日、2022年1~9月期決算(第三四半期)を発表した。売上高は11億6165万円で、通期売上高である16億5000万円(業績予想修正後)をあと約5億円の上積みで達成する。期中に1000万円強の為替差益が発生し営業外収益に計上したことも発表した。インドでは8000万ルピー(1.4億円、1ルピー=1.75円として計算)、日本国内では1.39億円の大型受注をしたとも発表しており、それぞれ2022年12月期か2023年12月期か、いずれかの業績に反映させる見込みだ。
ACSLの1~9月期決算によると、売上高は11憶6150万円、営業損益は13億2901万円の赤字、経常損益は12億5684万円の赤字、最終損益は12億7745万円の赤字だった。前年度の実績については記されておらず比較はできない。その理由を「2021年12月期より決算日を3月31日から12月31日に変更し」「2021年度第三四半期連携財務諸表を作成していないため」と説明している。実際、変更前の決算では、2021年9月期は4~9月期(第二四半期)にあたり、比較対象にならない。
ACSLが力を入れている機体販売について、小型空撮ドローン「SOTEN」は9月末までに488台を出荷済みで、これも含めた受注は初期ロット600台を上回ると言及した。同社は年度末にかけて追加生産を進める方針だ。また株式会社エアロネクストやセイノーホールディングス株式会社が中心となって全国で進めているドローンを組み込んだ物流事業、「新スマート物流」に使われている物流専用ドローン「AirTruck」も9月末までに15台を出荷したという。
なお、2022年7~9月期に生じた為替差益1020万円を営業外収益に計上していることを報告している。インドで受注した8000万ルピーの大型案件も個別に発表していて、それによると受注したのは「プラットフォーム機体」。インドが2022年2月から外国製ドローンの輸入を禁止していることから、ACSLは現地資本との合弁企業、ACSL India Private Limtedに生産を委託するという。2023年5月までに納品する。SOTENも国内で1.39億円を受注していて、納期は12月。業績の上積み要素として、運航支援事業で7700万円の受注(納期は2023年3月)をしたことも発表している。
ドローン開発、製造の株式会社ACSL(東京)が上場来安値を更新している。ACSLは2月14日の取引終了後に2021年12月期の通期連結決算と、資本金を99.7%減額する取締役会決議を発表した。発表翌日である15日の株式市場では同社株式の売りが先行し、15日中に一時、2018年12月21日に上場して以来の最安値である1株あたり1612円を下回る1592円をつけた。その後も軟調に推移し、前週末2月18日の取引終了までに、一時、1459円をつけた。一方、国内のドローンに関わる事業や実証実験では、ACSL製ドローンが活躍の幅を広げている。2021年12月7日には情報漏洩リスクなどのセキュリティ対策を凝らした小型空撮機「SOTEN(蒼天)」の受注も始めており、関係業界の間ではポジティブな評価も少なくない。
東京マザーズに上場するACSLは、2月14日大引け後に2021年12月期決算を発表した。期中の2021年5月24日に、決算期を従来の3月から12月に変更すると発表しており、2021年4月~12カ月の9カ月決算となった。決算期変更後初となる連結決算の売上高は5億101万円、営業損益は11億8899万円の赤字、経常損益は12億1374万円の赤字、当期純損益は12億2607万円の最終赤字、このうち親会社株主に帰属する当期純損益が12億2586万円だった。
前期である2021年3月期は売上高が6億2,070万円、最終損益は15億1179万円、親会社の株主に帰属する当期純損益が15億1171万円の赤字だったが、期間が12カ月と9カ月とで異なることから、決算短信には前期との比較は記されていない。
進行中である2022年12月期の業績予想については、売上高を25.0億円、営業損益、経常損益、最終損益はいずれも3.5億の赤字から6.5億円の赤字と、幅を持たせて公表している。見込み通りに推移した場合、最終損益は最大8.75億円の改善となるが、これも算出期間が異なるため、決算短信には比較が記されないないことが織り込み済みだ。
22年3月期連結決算の売上高5億101万円は、実証実験による収入が1億2491万円、プラットフォーム機体販売が6781万円。ほかに機体の保守費、消耗品販売を含む。また、通常、「営業外収益」に計上する国家プロジェクトの受託費について、「SOTEN(蒼天)」に関わる国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「安全安心なドローン基盤技術開発」と、事関連のプロジェクトと、「準天頂衛星システムを利用した無人航空機の自律的ダイナミック・リルーティング技術の開発」に関連する金額を、新規開発を伴わない既存技術の活用であることから、売上高に計上した。
なお新株発行などにより、期首に30億218万円だった資本金は45億3775万円に拡大。総資産は40億893万円から57億1518万円にまで増え、純資産は54億1941万円。自己資本比率は88%から94%に高まった。
なおACSLは決算短信で「重要な後発事象」として「資本金の減少」に言及。それによると21年12月期末の資本金45億3775万円のうち、45億2775万円を減額し、資本金を1000万円にすることを、2月14日の取締役会で決議した。減額分は全額を「その他資本剰余金」に振り替える。理由については資本政策の柔軟性確保のほか、「繰越歴剰余金の欠損を補填する」と、経営の立て直しをあげている。
3月25日に開催予定の株主総会はかり、認められれば4月15日に実施する予定だ。
また減資にあたり、株主への払い戻しなどはせず、発行済み株式総数は変更させない方針のため減資は無償減資となる見込みだ。
一方、この発表後からACSL株は下落が続いている。決算発表当日の2月14日は1株あたり1705円でその日の取引を終えていた。大引け後の決算発表を受けた翌15日、取引開始から売りが先行し、2020年3月17につけた上場来の安値である1612円を割り込み、14時過ぎには一時、1592円まで売り進められた。
株式市場は、緊迫するウクライナ情勢を背景に、世界経済への先行き不安や、欧米での金利引き上げ観測から地合いが軟調で、とくにハイテク株と呼ばれる銘柄に買いが入りにくい状況が続いている。ハイテク銘柄に数えられるACSLもその影響を受けたほか、決算や資本金減少発表が、投資家心理をゆさぶったとみられる。
同社株はその後も売られ、決算発表週の週末18日まで4日続落。この日は一時、1459円まで売られる場面があり、1505円で取引を終えた。
一方、国内のドローン開発に関わる事業や実証実験では、ACSL製ドローンが活躍の幅を広げている面もある。決算発表後の2月16日には、KDDI株式会社、日本航空株式会社などが、東京都心部の上空をドローンで医療物資を運ぶ実験が公開されたが、このときに医療物資を運ぶために用いられたのはACSL製の回転翼機「PF2」だ。その前週、2月11日には千葉県勝浦市で株式会社エアロネクスト、セイノーホールディングス株式会社などが地元商店街の活性化を目指してご当地グルメをドローンで配送する実験が行われたが、この時に用いられた機体もACSL機をベースに、エアロネクストなどが開発した機体だ。昨年末にANAホールディングス株式会社、株式会社セブン-イレブン・ジャパンが東京・日の出町で実施した配送実験で使われたのもACSL機がベースなど、各地の実験、事業でACSLの活躍がひろがっている。
2021年12月7日には情報漏洩リスクなどのセキュリティ対策を凝らした小型空撮機「SOTEN(蒼天)」の受注を始めた。
政府は週内にも経済安全保障推進法案を閣議決定する見通しであるほか、脱炭素をめぐる世界的な流れが加速している。岸田文雄首相は施政方針演説でデジタル田園都市国家構想、スマートシティの推進に触れドローンによるインフラ点検、配送などへの需要が高まることが確実視されている。また2022年度中に有人地帯で補助者を設置しない「レベル4」と呼ばれる飛行が解禁される見通しであるなど、とりわけACSLをはじめとする国内企業への期待と注目度は高まっている。ACSLの鷲谷聡之代表取締役COOは「ドローン産業を取り巻く環境は、従前に比べ圧倒的に追い風」と強気の姿勢を崩しておらず、中長期的な収益体質構築を着々と進める構えだ。
株式会社自律制御システム研究所(ACSL、東京)は5月12日、2021(令和3)年3月期通期連結決算を発表した。最終損益(純損益)は15億1100万円の赤字だった。2022年3月期は2.8億~6.8億円の最終赤字を見込み、赤字幅が縮小する予想だ。また同日、代表取締役最高経営責任者(CEO)の太田裕朗氏について、代表CEOを退任し、取締役会長となる異動を内定したと発表した。異動は6月24日に開催予定の株主総会後の取締役会で正式に決まる。この日の決算発表は、鷲谷聡之代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)が、太田氏に代わり代表者として名を連ねた。
ACSLの2021年3月期連結決算は、売上高6億2070万円、本業での収支を示す営業損益は11億3927万円の赤字、金利収入や助成金などを含めた経常損益は10億8164万円の赤字、税引き後の最終損益は15億1179万円だった。ドローン事業の需要の高まりを背景に先行投資として研究開発を加速させた一方、新型コロナウイルス感染の影響の長期化を受け、2021年度中に見込んでいた事業が翌期への繰り越しや、一時停止となるなどの影響があった。出資している米Automobility社の株式評価損3億517万円を特別損失として計上した。
同社は2022年3月期の業績予想について、新型コロナウイルスの感染状況やそれに伴う経済活動などにいくつかの前提を置いたうえで、ひとつの予想値ではなく、下限と上限の幅を示した。売上高は25億円から30億円、営業損益は7億円の赤字から3億円の赤字、経常損益は6億8000万円の赤字から2億8000万円の赤字、最終損益は6億8500万円から2億8500万円の赤字を見込む。この通りに推移すると最終損益の赤字幅は2021年3月期から縮小する。
ひとつ前の決算である2020年3月期通期については、昨年2020年5月12日に、売上高は12億7872万円、営業損益は1594万円の黒字、経常損益は2億3142万円の黒字、最終損益は2億3980万円と発表していた。そのさい2021年3月期通期の業績予想については、売上高の上積み、各損益の黒字予想を表明したものの、新型コロナウイルスの影響を受け合理的な予測が困難として、数字での公表を見送っていた。
その後、2020年8月に第一四半期決算を発表したさいに、2021年3月期の通期業績予想を売上高が14億~17億円の増収、最終損益が2億3000万円の赤字から5000万円の黒字と公表。さらに第三四半期決算を発表したさい(2021年2月12日)には、売上高を6億円、最終損益を13億円の赤字に下方修正していた。また第三四半期には、2020年12月に設立したCVC、ACSL1号有限責任事業組合を含む連結決算に変更している。このため2021年3月期通期も連結決算となり、非連結だった2020年3月期通期決算との連続性が失われたことになり、決算短信では比較を示していない。ただし「説明資料」の中では、それぞれの数字をグラフ化して推移を示している。
ACSLは2020年8月に中期経営方針を発表しており、それに基づく取り組みをすでに加速させている。
決算発表当日の5月12日には、インドで産業用ドローン事業を手掛けるAeroarc Private Limitedと共同出資の合弁会社、ACSL India Private Limitedを7~9月期をめどに設立すると発表した。インドを中心にASEANで製造、販売、アフターサービスを提供する。その2日前の5月10日には、合弁相手であるAeroarc社の親会社、マレーシアのエアロダイングループの第三者割当増資の引き受けを発表し、関係を強化した。エアロダイングループとは2020年11月に連携しており、ACSLのASEAN進出に重要な役割を担う。
このほかACSLの主力機PF2を点検用途向けにサブスクリプションサービスを導入、上下水道など水のインフラ事業の株式会社NJS(東京)と、技術開発、販売を担う合弁会社、株式会社ファインドアイ(FINDi、東京)を設立、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業でコンソーシアムリーダーとして開発している小型空撮機の第三四半期以降の販売方針表明、煙突点検機、調達水槽点検機の開発などを進め、体制を整えつつある。
一方、太田裕朗代表取締役最高経営責任者(CEO)については、「経営体制の強化を図る目的」で取締役会長への移動を内定したと発表した。6月の株主総会後の取締役会で正式決定される。その後の代表取締役は、鷲谷聡之代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)1人となる。
ACSLは「市場拡大、法整備が進み、セキュアなドローンの需要も高まっている」と掲げた目標の実現に向けで今後も事業を進めていく方針だ。
株式会社自律制御システム研究所(東京)が8月14日に発表した2020年4~6月期(2021年度第1四半期)決算は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃し、売上高として前年同期比40.6%減の3619万円を、純損益として2億1462万円の損失を計上した。2021年3月期の通期では、売上高が14億~17億円(前年3月期の売上高は12億7000万円)の増収を、純損益が2億3000万円の赤字~5000万円の黒字をそれぞれ見込む。同時に中期経営方針「ACSL Accelerate 2020」を発表し、2023年3月期(2022年度)の売上高を55億円と明記した。10年後の2031年3月期(2030年度)の売上高を1000億円と展望する「マスタープラン」も公表した。
ACSLの2020年4~6月期決算は、新型コロナウイルス感染拡大が「売上計上の遅れ」「案件の後ろ倒し」となって直撃し、売上高を構成する「実証実験」が前年同期の2715万円から150万円に、「プラットフォーム機体販売」が前年同期の2445万円から400万円にそれぞれ激減した。一方で保守手数料、消耗品販売、補助金事業のうち既存技術関連事業などを含めた「その他」が前年同期の930万から3069万円に増えて売上高の減少を下支えした。
損益では、コロナの影響を受けていても販管費を2億3032万円と前年同期より増やし、営業損益は2億3723万円の損失(前年同期は1億9717万円の損失)を計上した。営業外収益として6375万円の助成金収入があった一方、事務所移転のための営業外費用もあり、経常損益は1億8013万円の損失(前年同期は8035万円の損失)となった。この結果、税引き後の凖損益が2億1462万円の損失となった。
2021年3月の通期では、4~6月期に間に合わなかった取引の回収を見込みながら、感染状況の推移に影響を受けることを考慮し、「2020年9月頃までに感染拡大が収束し企業活動が直ちに回復基調となった場合の予想」を上限、「新規投資等の抑制など企業活動の停滞が2020年12月頃まで続いた場合」を下限に設定。売上高は上限17億円、下限14億円(前年3月期の売上高は12億7000万円)の増収を見込み、純損益は上限5000万円の黒字、下限2億3000万円の赤字と見通した。
感染の直撃を受けながらも、研究開発を中心に投資姿勢は維持。4月には中堅ゼネコン西松建設株式会社(東京)と共同でコンクリート床のひび割れを自動計測するシステムを開発したことや、株式会社センシンロボティクス(東京)とドローンソリューション構築の連携を開始したことを相次いで公表。5月にはVAIO株式会社(長野県安曇野市)のドローン子会社、VFR株式会社(東京)と用途別産業用ドローンの共同開発に向けた協業を開始した。7月以降も東光鉄工株式会社(秋田県大館市)と防災・減災ドローンの開発・販売の踞尾協業、8月に入ってからも関西電力株式会社(大阪市)との連携で煙突点検ドローンの開発を公表している。
ACSLはこの日、「マスタープラン」と、中期経営方針「ACSL Accelerate 2020」を同時に発表した。マスタープランでは10年後に目指すべき姿を定め、それを実現させるための2020年度から2022年度までの方針を、中期経営方針で示した。
マスタープランによるとACSLは、有人・無人地帯の目視外飛行を中核事業領域として育て、10年後(2031年3月期)に売上高1000億円、利益100億円を目指す。また中期経営方針によると、手始めに今後3年間で用途特化型機体の製品化、サブスクリプションの導入、ASEAN進出を本格化、技術調達向けCVC設立を進め、年間1600台の機体出荷を目指す。研究開発費も年間8億円にまで拡大させる。2023年3月期(2022年度)時点で、売上高55億円、売上総利益率50%、営業利益7.5億円の確保を目標に掲げた。
2023年3月期で目指す売上高55億円の内訳は、「用途特化型機体販売」で20億円、「用途特化型機体のつくりこみ」で30億円、「その他」で5億円。用途特化型機体としては、小型空撮機体、中型物流機体、煙突点検機体、閉鎖環境点検機体の4つを念頭に置いている。
同社は今後3年間に、主に3つの環境変化が起きると想定している。第一が都市部を含む有人地帯での目視外飛行の制度が整備されること、第二が、データセキュリティー強化の必要性が官民で高まること、第三が感染拡大を背景に非接触需要が高まりドローンの有効性が再認識されること。ACSLはこうした変化を「巨大な潜在市場が開放される」と受け止め、機体販売、サブスク導入、CVC設立、ASEAN進出を進める方針だ。