君津市(千葉県)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区)、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)、KDDIスマートドローン株式会社(東京都港区)は2024年1月14日、君津市でドローン配送の実証実験を行った。実験をふまえセイノー、エアロネクストなどが進めるドローンや既存手段を融合させた新スマート物流の構築を進める。実験ではJR君津駅から13㎞南東の中山間地にある清和地域に住む住民の買い物支援のため、7㎞離れた宿原青年館との間で物流専用ドローンAirTruckを飛行させ、日用品やドリンクを運んだ。エアロネクスト、NEXT DELIVERYは能登地震の被災地でもドローン物流で災害対策を支援している。関係者が公表した発表資料は以下の通りだ。
千葉県君津市(市長:石井 宏子)と、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口 義隆、以下 セイノーHD)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路 圭輔、以下エアロネクスト)、株式会社 NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下 NEXT DELIVERY)、KDDI スマートドローン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長: 博野 雅文、以下 KDDI スマートドローン)は、2024 年 1 月 14 日に、君津市の清和地区において次世代高度技術の活用により新しい物流サービスの構築を目指した「中山間地におけるドローン配送」の実証実験を実施し、報道関係者に公開しました。
昨年 11 月には君津市、セイノーHD、NEXT DELIVERY の親会社である次世代ドローンの研究開発スタートアップ、株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区、代表取締役CEO田路 圭輔、以下エアロネクスト)、株式会社テラならびに KDDI スマートドローンの 5 者は、ドローンを含む次世代高度技術の活用による地域共創に向けた連携協定を締結しており、新たな物流のビジネスモデルの構築をめざし、連携して活動しています。
今回の実証実験は、NEXT DELIVERY と KDDI スマートドローンが連携して、セイノーHD とエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流*1”SkyHub®“
*2 の社会実装
の検討に向けて行われたもので、清和地域拠点複合施設に仮設のドローンデポを設置し、ドローンを活用し日用品のドローン配送サービスを実施しました。
1.背景と目的
君津市は、都心に隣接した立地でありながら、人口は平成7年の 93,216 人をピークに令和2年には82,206 人に減少しています。また、市の老年人口(65 歳以上)の割合は令和2年には 32.1%となっていますが、中山間地域の清和地区や上総地区では 50%を超え、今後もさらに上昇することが見込まれおり高齢者の買物支援が地域課題として挙げられています。さらに、物流の 2024 年問題の影響により、中山間地域における輸配送の質の維持が困難となり、地域住民の利便性の低下が危惧されています。
このような背景を受け、今回、清和地区において、地域課題の一つである中山間地域における買い物支援等の新たな取り組みに向け、住民の理解度向上、定期飛行に向けた課題の洗い出しを目的として実証実験を行いました。
2.実施内容
今回の実証実験では、買い物代行配送サービスを実施しました。
清和地区に住む、1世帯を対象に、子供が風邪をひいてしまった状況を想定し、お子様向けの緊急物資輸送の配送を実施しました。(お母さんが買い物に出かけられない状況を想定)住民の理解度向上、地域課題の洗い出しを目的として清和地域拠点複合施設を仮設のドローンデポ®*3 とし、宿原地区まで日用品のドローンで配送いたします。
今回のドローン配送の実証はエアロネクストが開発した物流専用ドローン AirTruck*4 を使用し、機体の制御には、KDDI スマートドローンが開発したモバイル通信を用いて機体の遠隔制御・自律飛行を可能とするスマートドローンツールズ*5 の運航管理システムを活用しました。
清和公民館から宿原青年館までの片道約 7 kmの距離を約 21 分で、子供の風邪を想定した日用品、ドリンクなどの詰め合わせをドローン配送いたしました。ドローンにより配送された荷物を受け取った眞板高子さんは、「すごく楽しかった!自分の住んでいるところも孤立する可能性があるので、その時は本当に助かると思う。色々な課題が解決できるといい。」とコメントしています。
今後も地域住民への理解促進及び地域課題の解決へ向けドローンをはじめとする次世代高度技術を活用しドローン配送と陸上配送を融合した新スマート物流”SkyHub®“の社会実装に向けた検討を進めてまいります。
※本実証実験は、一般社団法人環境普及機構により、令和4年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金交付対象事業(社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業)として採択されています。
*1 新スマート物流
物流業界が共通に抱える人手不足、環境・エネルギー問題、DX 化対応、等の課題を、デジタルやテクノロジーを活用しながら解を探究し、人々の生活に欠かせない生活基盤である物流を将来にわたって持続可能にするための官民での取り組み。ラストワンマイルの共同配送、陸送・空送のベストミックス、貨客混載、自動化技術、等々、業界内外の壁を越えたオープンパブリックプラットフォーム( O.P.P.)による共創で実現を目指す。
*2 新スマート物流 SkyHub®
エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存の陸上輸送とドローン物流を繋ぎこみ、地上と空のインフラが接続されることで、いつでもどこでもモノが届く新スマート物流のしくみ。ドローン配送が組み込まれた、オープンかつ標準化したプラットフォームで、ドローンデポ®を拠点に、車とドローンを配送手段として、SkyHub®TMS をベースに、SkyHub®Delivery(買物代行)、SkyHub®Eats(フードデリバリー)、SkyHub®Medical(医薬品配送)、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送など、地域の課題やニーズに合わせたサービスを展開、提供する。SkyHub®の導入は、無人化、無在庫化を促進し、ラストワンマイルの配送効率の改善という物流面でのメリットだけでなく、新たな物流インフラの導入であり、物流 2024 年問題に直面する物流業界において、物流改革という側面から人口減少、少子高齢化による労働者不足、特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対策、物流弱者対策等、地域における社会課題の解決に貢献するとともに、住民の利便性や生活クオリティの向上による住民やコミュニティの満足度を引き上げることが可能になり、地域活性化を推進するうえでも有意義なものといえる。
*3 ドローンデポ®
既存物流とドローン物流との接続点に設置される荷物の一時倉庫であり配送拠点。
*4 物流専用ドローン AirTruck
株式会社エアロネクストが株式会社 ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY®*6 により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機。日本では各地の実装地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高 1300m、外気温-15°Cという環境下の飛行実績をもつ(2023 年 11 月)。
*5 スマートドローンツールズ
KDDI スマートドローン株式会社が提供する、ドローンの遠隔自律飛行に必要な基本ツールをまとめた「4G LTE パッケージ」に、利用者の利用シーンに合った「オプション」を組み合わせて利用できるサービス。「4G LTE パッケージ」は、全国どこからでもドローンの遠隔操作・映像のリアルタイム共有を可能とする「運航管理システム」や、撮影したデータを管理する「クラウド」、データ使い放題の「モバイル通信」、どのエリアでモバイル通信を用いた目視外飛行が可能か、事前に確認できる「上空モバイル通信エリアマップ」などのツールをまとめて提供している。
*6 機体構造設計技術 4D GRAVITY®
飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させるエアロネクストが開発した機体構造設計技術。エアロネクストは、この技術を特許化し 4D GRAVITY®特許ポートフォリオとして管理している。4DGRAVITY®による基本性能の向上により産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がる。
独自の創意工夫で移住、定住を推進し、成果をあげている境町(茨城県)は4月5日、フードデリバリー大手の株式会社出前館(東京)、ドローン技術開発の株式会社エアロネクスト(東京)と連携協定を締結した。この日は出前館のサイト上に、境町の商店が扱う食品、日用品などの商品を集約できるバーチャルショップ「SkyHub Delivery境町店」が開店し、配達エリアにいる利用者がアプリや電話で注文すると、ドローンやトラックを使い分けて効率よく注文の品物が届けられるサービスを受けられるようになった。この日は協定式と出発式が行われ境町の橋本正裕町長が最初の注文を実演し、出前館のロゴがついたエアロネクストの物流ドローン、AirTruckが地元で焼かれたピザを乗せて離陸した。境町にとっては町民生活の利便性向上を期待する取り組みで、境町は地元の商工会と連携して商店に加盟や商品登録を呼び掛けるほか、クーポンの活用など利用促進を図る方針だ。ITツールやドローンに不慣れな利用者が注文をしぶる“注文ハードル”の引き下げへの効果にも期待が寄せられている。
協定式と出発式が行われた境町は、鉄道の駅がないことによる利便性の不足を、子育て補助、英語教育支援、自動運転バス運航など独自の創意工夫で補う意欲的な政策を打ち出していることで全国的に知られる。買い物に不便を感じる買い物弱者の増加を抑えるため、ドローンを使った配送の導入にも早くから前向きで、この日の協定で、その具体化の第一歩に踏み切った。
デジタルツールには初心者や高齢者が敬遠しがちと言われがちなことから、いわゆる「注文ハードル」を乗り越える期待も寄せられる。その中で今回の協定式と出発式は関係者が多く出席するなどにぎわいが演出され、初めての利用者が興味をひくとみられる。
境町役場内で行われた協定式では境町の橋本正裕町長、出前館の藤井英雄代表取締役社長、エアロネクストCEOで同社の物流子会社、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)代表取締役を兼ねる田路圭輔氏が協定書に署名した。この様子を、境町幹部職員、町議会、境町商工会、昨年(2022年)10月3日に境町、エアロネクストとともに「ドローン、自動運転バスを含む次世代高度技術の活用に関する協定」に署名したセイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)の河合秀治執行役員、BOLDLY株式会社(東京)の星野達哉氏、株式会社セネック(東京)の和歌良幸副社長も見守るなど、会場には関係者が集結した。
協定式後の出発式は、境町役場から約2キロの道のりの旧ゲートボール場で行われ、協定式参加者に加え、来賓、地域関係者を含め100人を超える参加者が新サービスの門出を祝った。会場には式典用のテント、ランディングパット、神事用の八本足などの神具も設営された。式典では橋本町長をはじめ関係者のあいさつのほか、永岡桂子文部科学相、若宮健嗣前万博相の祝電が披露され彩を添えた。ドローンの安全祈願の神事が地元香取神社の神職も執り行われ、参加者の期待を高めた。
橋本町長は式典の最中、促されて着席のままタブレット操作して出前館での注文を実演すると、これを合図に地元のピザ店で焼かれたピザがトラックで運ばれ、容器ごとドローンに積まれた。離陸準備が整ったところで、協定式に調印した橋本町長、出前館の藤井代表、エアロネクストの田路CEOがボタンを押すセレモニーを行い、出前館のロゴの入ったドローン、AirTruskが離陸した。
境町の橋本町長は式典で「協定は、ドローンを使った配送サービスを取り入れることで、日々の生活に困らないようにするためです。かつて栄えていた場所で人口が減り、高齢化が進み、不便だから移ると言って他の自治体へ引っ越してしまう状況も出ています。今回の協定で、さまざまな物が届くようになります。課題を少しずつ解決し、住み続けたい町づくりを目指していきます」と述べた。子育て、給食費補助、英語教育、自動運転バス、効果的なふるさと納税など独創的な政策を次々と牛出してきた橋本町長の発言で、この事業は「住み続けたい町」の一端を担うことになった。
エアロネクストの田路CEOは、「今回の取り組みのコンセプトは“町まるごと出前館”で、このような取り組みは今回が日本で初めてです。これまで出前館の配送サービスは大都市中心でしたが、これからは校外の社会課題解決のサービスにもなります。今回の取り組みで地域の課題解決に役に立つとともに、出前館のサービス空白地域の解消に進んで参ります。境町が運航している自動運転バスとの連携も検討しています。ドローンの飛行も現在のレベル3ですが、レベル4への準備も進めています」と述べた。
出前館の藤井社長は「市街地以外もカバーすることで、高齢者や買い物難民に生活必需品を届けていきたいと考えています」と述べた。藤井社長は、機体価格が下がれば、郊外型ビジネスでも採算性が展墓できる可能性があると見込む。一方で、初心者や高齢者がIT機器を敬遠することなどが理由で利用をしぶる「注文ハードル」を課題にあげ、今後、引き下げへの対応を模索する考えだ。一問一答は以下の通り。
Q 今回は校外での事業となるが、境町での事業の意義は
藤井社長 「コストの中では機体金額が占める比率が大きいので、電気自動車が出たころのリチウム電池に似ている状況かと思います。当初は高かったものが下がってきました。機体の金額も下がれば運航コストが下がります。そこはエアロネウストさんが試算しています。現状では配送は人海戦術です。自転車やバイクで運んで頂き、お1人あたる500円とか600円とかをお支払いしているのが現状ですが、ドローンだと機体の金額を含めても100円とか200円とかになることが見込めます。時代が進めばコスト効率は良くなると思います。それ以外に規制緩和も含めて、われわれとして取り組まないといけないことは多くあります。市街地では自動配送ロボットの利用などが検討要素になるかと考えています」
Q 幅広い選択肢から選ぶ基準は
藤井社長 「まずは安全性。あとは考えられるハードルが低いものをテストして決めて行くことになると思います」
Q 定着には利用者が実際に注文するかどうかが重要と聞きます
藤井社長 「これも今回を含めてテストしてみていくことになります。今回、配送時間帯を一日に2回に設定している理由には、そういった意味もあります。今後クーポンを使って利用者が使いやすくなるかどうかも見ていきたい。スマートフォンに慣れていない地域もあって、最初の注文ハードルさえ下げていけば、その後も注文して頂けるのではないかということは、いままでの実験で実証できている部分があります」
Q 境町の取り組みの印象は
藤井社長 「橋本町長のリーダーシップで、商工会も含め幅広い団体の方にご参加頂けました。加盟店リストにある地元の名店は、自治体が入っていなければなかったでしょう。私たちの営業だけでは難しかったと思います。つながりの強い地域では特に自治体と連携する強みを感じます。今回も橋本町長がきっかけを作ってくれたと聞いています。境町での取り組みは、ここでスタートさせたことをある程度パッケージ化して、他の地域にも展開していければよいかなと考えております。他地域に導入するさいのスピードもあがると思います」
Q 出前館のサービスとしてラインナップに入る可能性もある?
藤井社長 「そうですね。私たちがこれまでサービスエリアにできなかったところをエリアにできる、ということが、ビジネスの観点ではあります。コロナをこえて一過性のサービスではダメだです。わたしたちのサービスが継続的に拡大できるようにするには、ユーザー、自治体、事業者のみなさまに、選ばれて愛されるサービスでないといけないと本質的には思っています。その中で社会課題解決にわれわれのサービスが寄与することはすごく重要だと思います。とくに自治体さまとは、その地域の課題解決になるソリューションの一部として、われわれのパッケージをお届けできたらいいなと考えています」
株式会社ACSL(東京都江戸川区)が11月11日、2022年1~9月期決算(第三四半期)を発表した。売上高は11億6165万円で、通期売上高である16億5000万円(業績予想修正後)をあと約5億円の上積みで達成する。期中に1000万円強の為替差益が発生し営業外収益に計上したことも発表した。インドでは8000万ルピー(1.4億円、1ルピー=1.75円として計算)、日本国内では1.39億円の大型受注をしたとも発表しており、それぞれ2022年12月期か2023年12月期か、いずれかの業績に反映させる見込みだ。
ACSLの1~9月期決算によると、売上高は11憶6150万円、営業損益は13億2901万円の赤字、経常損益は12億5684万円の赤字、最終損益は12億7745万円の赤字だった。前年度の実績については記されておらず比較はできない。その理由を「2021年12月期より決算日を3月31日から12月31日に変更し」「2021年度第三四半期連携財務諸表を作成していないため」と説明している。実際、変更前の決算では、2021年9月期は4~9月期(第二四半期)にあたり、比較対象にならない。
ACSLが力を入れている機体販売について、小型空撮ドローン「SOTEN」は9月末までに488台を出荷済みで、これも含めた受注は初期ロット600台を上回ると言及した。同社は年度末にかけて追加生産を進める方針だ。また株式会社エアロネクストやセイノーホールディングス株式会社が中心となって全国で進めているドローンを組み込んだ物流事業、「新スマート物流」に使われている物流専用ドローン「AirTruck」も9月末までに15台を出荷したという。
なお、2022年7~9月期に生じた為替差益1020万円を営業外収益に計上していることを報告している。インドで受注した8000万ルピーの大型案件も個別に発表していて、それによると受注したのは「プラットフォーム機体」。インドが2022年2月から外国製ドローンの輸入を禁止していることから、ACSLは現地資本との合弁企業、ACSL India Private Limtedに生産を委託するという。2023年5月までに納品する。SOTENも国内で1.39億円を受注していて、納期は12月。業績の上積み要素として、運航支援事業で7700万円の受注(納期は2023年3月)をしたことも発表している。
福井県敦賀市で10月8日、ドローンを組み入れた新スマート物流「SkyHub」の住民向け配送サービスが始まった。敦賀市、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県)、KDDIスマートドローン株式会社(東京)、株式会社エアロネクスト(東京)、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)が、一帯の配送拠点となる「ドローンデポ」を置く愛発(あらち)公民館で出発式を行い、第一便が飛んだ。エアロネクストなどによるSkyHubサービス提供は、山梨県小菅村、北海道上士幌町に続き3例目となる。
敦賀市でのサービスは、JR敦賀駅から東南の一帯に広がる中山間地、愛発(あらち)地区で始まった。11ある集落のうち、「疋田」、「奥野」、「曽々木」、「杉箸」の4集落が対象だ。3集落にはドローンの停留所「ドローンスタンド」が整備されている。利用者は専用の電話番号に電話で注文をする。早ければ注文から30分で、最寄りのドローンスタンドに注文の品物が届く。トラックで自宅に届けるサービスも併用する。注文できるのは、ドローンデポに在庫のある食品を詰め合わせた「おかしセット」、「朝食セット」、「洋風朝食セット」で、商品群は順次拡大する。デポはSkyHub Storeとして地域のコンビニに育てる計画で、今後、配送拠点にとどまらず、立ち寄ればその場で買えるようにもする。
注文方法も不慣れな初心者も使いやすいアプリを開発したうえで、タブレットから注文できるようにする。サービスは、対象地域にいれば住民でなくても利用できる。配送料は1回あたり300円で、祝日をのぞき、原則火、水、木、金曜日の午前9時~午後5時が営業時間だ。
この日の出発式では、敦賀市の渕上隆信市長が「便利になるととても喜んでいます。ゆくゆくは地域の防災にも活用できないか考えたい」と期待を表明した。セイノーHD事業推進部新スマート物流推進プロジェクト課の須貝栄一郎課長は「愛発モデルとして今後展開させたい」と明言。KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長は「このサービスでは遠隔物流のシステムと物流専用ドローンの統合を図りました。今後、地域配送のひとつの形になると考えています。われわれは『叶えるために、飛ぶ』を掲げており、このサービスを全国に広めていきたい」と抱負を述べた。
エアロネクスト代表取締役CEOで、NEXT DELIVERY代表取締役でもある田路圭輔氏は、「この地域では2年前にコンビニが撤退してから買い物に不便を感じる住民が多いと伺いました。アンケートでも8割の方が不便を感じていると回答しています。このサービスを導入することでその不便の解消につなげて参ります」などと決意を表明した。
出発式のあと、第一便が注文の品を積んだドローンがデポを飛び立ち、5.2キロ離れた杉箸集会所に置かれたドローンスタンドに向かった。ドローンは10分ほどで杉箸のドローンスタンドに到着し、注文者や近所の住民が見守る中で荷物を下ろすと、周囲から拍手が起きた。注文者は「このあたりはコンビニがなくなってから買い物が不便になっていました。ドローンのサービスはこの地域をもう一度便利にしてくれるのではないかと期待しています。荷物もほら、ぜんぜん傾いたり傷んだりしていません。今後、クスリなんかも運んでもらえるとうれしいです」と喜びをかみしめていた。
ドローンが荷物を届ける様子を見ていた敦賀市の渕上市長は「便利ですね。冬には雪が降る地域ですが、実証実験のときに雪が降る中を飛んだこともありまして可能なこともあるのかなと期待しているところです。それと、キャンプ場に注文した食材をドローンで運んでくれるとなると、それを楽しみに足を運んでくれる観光客が増えくれるかもしれないですね。期待は高まるばかりです」と話した。
3例目となった敦賀市での新スマート物流のサービス開始は、KDDIスマートドローンにとっては、運航管理システムを統合させて初のサービス提供となった。エアロネクストがセイノーHDなどと開発、提供を進める新スマート物流は、今後需要も広がりに応じて事業規模が拡大する見通しで、管理業務のシステム化を進めていて、敦賀市でのサービスは、運航管理システムを組み込んだことで、新スマート物流にとって新しい一歩を踏み出した節目の船出となった。
KDDIスマートドローンとエアロネクストは9月20日、ドローン配送サービスの社会実装に向けた業務提携契約を締結している。KDDI株式会社(東京)も、新事業共創を目的とした、「KDDI Open Innovation Fund 3号」(運営者:グローバル・ブレイン株式会社)を通じてエアロネクストに出資するなど関係が緊密化している。
エアロネクストとKDDIスマートドローンの業務提携の内容は、第一が、ドローン配送サービスの自治体導入と導入のための実証実験の共同実施、第二が、ドローン物流に必要な機体・モバイル通信・運航管理システムの販売・導入での連携強化だ。すでに2022年3月に新潟県阿賀町でドローン配送の実証実験を実施し、2022年6月にエアロネクストがACSLと開発した物流専用機「AirTrack」とKDDIスマートドローンが開発した運航管理システムなどツールをセットにした「スマートドローンツールズ」を組み合わせたドローン配送パッケージ「AirTrack Starter Pack」の提供を始めている。
敦賀でこのシステムと統合したサービスを提供することで自治体での運用例ができたことになり、今後地方での導入にはずみがつくことが予想される。
また、敦賀市のSkyHubサービスは順次、拡充する。当面はデポのストック商品を電話注文で届ける。専用アプリの開発も進めている。11月には、デポにない商品も、提携先スーパーから取り寄せて届ける買い物代行サービス「SkyHub Delivery」を始める。株式会社出前館(東京)が運営する、宅配ポータルサイト「出前館」のアプリを活用し、提携先の飲食店の食べ物をドローンスタンドか自宅に届ける「SkyHub Eats」も追加する。閉校して商品ラインアップの拡充も進める。
11月にも始めるアプリ注文に対応し、スマホ操作に不慣れな高齢者を想定して、スマホ講習会も実施する。講習は11月以降も随時実施する計画で、利用者からの意見をサービスの改善につなげる仕組みもつくる。このころには愛発地区にある11の集落すべてにドローンスタンドが整う見通しだ。
田路エアロネクストの田路圭輔代表は「SkyHub Store」愛発は、地域のコンビニとして機能することを目指します」と宣言し、ひとつひとつ着実に積み重ねていく。
自動運転バスを運航させている茨城県境町が、自動運転バス、自動航行の性能を備えるドローン、トラックなど既存の物流手段を組み合わせて、使い勝手のいい物流サービスを実現する取り組みが11月にも始まることになった。取り組みを進める境町、株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、BOLDLY株式会社(東京)、株式会社セネック(東京)は10月3日、境町役場で連携協定を結んだ。境町の橋本正裕町長は締結式の中で、「公共交通が脆弱でも住み続けられる町をつくりたい」と意気込みを語った。式典後は焼き立てパンを自動運転バスとドローンでリレー輸送して役場まで運んだり、小学生の待つ学校に町の名産のせんべいを運んだりするなど配送を実演した。今後、実証を重ね、11月にサービスを開始する。サービス開始にあたっては、対象エリアの住民から希望者を募り、利用体験のフィードバックをサービスの品質向上に生かす。2023年度中にもいわゆる「レベル4」の飛行を含めた配送サービスの実現を目指す。
境町では2020年以降、自動運転バスの定時運行を導入し町民の移動手段として定着している。この自動運転バスを支えている遠隔管理システム「Dispatcher」に、ドローンの管理も加えることで、無人運転バス、ドローンの両方の遠隔管理を可能にする。さらにトラックなど既存の物流手段も有効に組み合わせて最適化し、無人バス、ドローン、トラックの連携させた境町版の新スマート物流構築を目指す。
利用の対象は町内全域の住民で、複数の町内の商店が参加を表明している。利用者はスマートフォンなどで対象の食料、日用品などを注文をすると早ければ30分以内で届くことも可能になる。政府の進める「デジタル田園都市国家構想」対象事業だ。
連携協定は、次世代高度技術の活用を通じて、観光や産業振興、物流課題の解決、地域防災への貢献、地域の雇用拡大の実現を図ることにしている。荷物を集積し、ドローンが集荷する「ドローンデポ」は整備をはじめている。
境町に導入している自動運転バスは貨客混載を実施し、町内の住民向けの商品を2か所の連携拠点まで運ぶ。ドローンは、自動運転バスから積み替えられた荷物を載せて届け先まで飛行する。なお市街地への届け出は従来通りトラックが担い、市街地の周辺の農村部への配送をドローンが担うなどの役割分担を想定している。
連携協定の締結式で境町の橋本正裕町長は、「境町は公共交通が脆弱なため、動けるうちに嫁いだ娘の近くに引っ越す、といった人口減少が起きています。そんな困りごとをなくしたいというのがこの連携協定の目的です。一人暮らしでも生活に困らない町にしたい。困っている人を助けて、住み続けられる町にしたい。好きな町に住み続け環境を提供したい」と述べた。
ドローンはエアロネクストが株式会社ACSL(東京)などと共同開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」を使う。荷物を機体内部に格納するため飛行時に荷物が空気抵抗の障害にならない設計を採用するなど、物流に特化した工夫や機構を搭載している。ドローンと自動運転バスの運行管理はBOLDLYが開発したシステム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を使う。自動運転バス用の遠隔管理システムとしてスタートしたシステムで、9月にドローンの監視もする「Dispatcher for Drone」を開発したことで一元管理が可能になった。
またサービス開始にあたって、利用を想定している農村部の住民に参加してもらう会員制度をつくる。利用体験をフィードバックしてもらい、より利便性の高いサービスに品質を向上させていく仕組みにする計画だ。
締結式後には、デモンストレーションを実施。役場に近い町立境町小学校では、全校児童が見守る中、ドローンが飛来。自動は上空にドローンが姿を表すと、立ち上がって指をさすなど「すごい、すごい」と笑顔で歓迎した。また、自動運転バスとドローンとの連携の実演も実施。自動運転バスとドローンとが荷物をリレーするランデブーポイントとなる「道の駅さかい」で、自動運転バスが運んできたパンを、係員がドローンに搭載した。ドローンは道の駅から境町役場に隣接する水害避難タワーまで届けると、待機していた橋本町長がそれを受け取り、味を満喫した。
同日発表されたプレスリリースは次の通り
茨城県の境町(町長:橋本正裕)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路圭輔、以下「エアロネクスト」)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下「セイノーHD」)、BOLDLY 株式会社(ボードリー、本社:東京都港区、代表取締役社⻑兼CEO:佐治友基、以下「BOLDLY」)および株式会社セネック(本社:東京都新宿区、代表取締役:三浦義幸、以下「セネック」)は、2022 年 10 月に、ドローンや境町で定常運行する自動運転バスを、トラックなどの既存物流と組み合わせて物流を最適化する「新スマート物流」の実用化に向けた実証を開始し、2023 年度中をめどに、日本初となる市街地でのレベル4のドローン配送サービスの実装を目指します。5者は、この取り組みを進めるため、2022年10月3日に連携協定を締結しました。
今回の取り組みでは、境町の住民がスマホアプリで注文したスーパーの日用品や飲食店の料理などを、自律飛行するドローンや自動運転バス、トラックなどを組み合わせて効率的に配送する物流システムの構築を目指し、法制度に沿ってドローンの飛行区域を段階的に拡大しながら実証を進めます。まずは、2022年10月以降に、境町でドローンを2台導入し、充電などが可能なドローンスタンド®(3カ所・予定)および荷物の集約拠点となるドローンデポ®(1カ所)を整備した上で、無人地帯での目視外飛行や市街地での目視内飛行の実証を行い、住民の理解促進やルートの検討を進めます。
2022 年末に予定されているドローンのレベル 4 飛行解禁以降は、無人地帯と市街地でドローンの目視外飛行の実用化に向けた実証を行います。ドローンが飛行できないエリアでは、自動運転バスやトラックを活用して配送を行います。テクノロジーを活用して物流を最適化することで、将来的には、注文から30分以内に商品を受け取れる物流システムの構築を目指します。
日本では、過疎化や地方における公共交通の維持、物流業界の人手不足などが課題となっています。境町は、地方が抱える社会課題の解決に向けて、住民や観光客が移動手段として活用できる自動運転バスを導入して公共交通の維持や地域経済の活性化を推進するなど、積極的な取り組みを進めており、2022年度の補正予算において、ドローンの研究開発およびオーダーメードを行う拠点施設の建設(約4億円)を決定しました。このたび 5者が連携することで、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムを構築し、物流業界の課題解決やCO2削減を図るとともに住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指します。
なお、ドローンおよび自動運転バスの運行管理は、BOLDLYが開発した運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」で行います。BOLDLYが2022年9月に開発した「Dispatcher」のドローン向け機能(「Dispatcher for Drone」)により、「Dispatcher」を自動運転バスとドローンの両方に接続して一元的に管理することが可能になります。これにより、運行管理業務の効率化やコスト削減が実現できる他、将来的には、関連するデータ活用なども期待できます。「Dispatcher」は、2020年11月の境町の自動運転バス導入時から利用されており、境町には自動運転バスの運行に必要なシステムおよびオペレーション体制が整っています。これを土台に、スムーズにレベル4のドローン配送サービスを実装することを目指します。また、今後は、全国の他の自治体と連携して、境町以外の地域を飛行するドローンの遠隔監視を行うことも視野に入れ、取り組みを推進します。
この取り組みは、内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)の事業に採択されています。
■各者の役割
・境町:新スマート物流を含むデジタル田園都市国家構想事業の事業主体、企画統括
・エアロネクスト:境町での新スマート物流実装に向けた各種取り組みの全体統括、物流専用ドローン「AirTruck」の提供
・セイノーホールディングス:共同配送モデルの構築、自治体や各事業者との調整、配送ノウハウの提供
・BOLDLY:「Dispatcher」の提供、境町におけるデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)事業の全体統括
・セネック:境町に設置した遠隔監視センターでの自動運転バスおよびドローンの運行管理
■使用するドローンについて
エアロネクストが物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量(ペイロード)5kg、最大飛行距離 20kmの物流専用ドローン「AirTruck」*を使用します。
物流専用ドローン「AirTruck」エアロネクストが株式会社 ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY®により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティー、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機です。試作機は日本各地の実証実験で飛行し日本 No.1(エアロネクスト調べ、2022 年9月時点)の飛行実績を持ちます。
ドローン開発、製造の株式会社ACSL(東京)の株価が、急回復している。ACSL株は4月5日の東京株式市場で続伸し、一時、前日終値比147円高の2339円を付けた。3月24日の上場ら安値である1319円から6週間足らずで77%超上昇した。それまでの悪材料の出尽くしや懸念材料の一服に加え、話題の新型機「SOTEN(蒼天)」の出荷開始、ACSL機をベースにした物流専用機「AirTruck」の受注開始などが買い材料になったとみられる。4月4日に東京株式市場の再編に伴ってスタートした東証した東証グロース市場の銘柄として同市場の成長をけん引することになりそうだ。
ACSL株は4月5日、前日K終値比58円高の2250円で寄り付いたあと堅調に推移し、一時2339円をつけた。後場に利益確定売りに押し戻されたものの前日終値比129円高の2321円で取引を終えた。
ACSLは、情報漏洩対策が強化された小型空撮機SOTENの出荷を3月18日に開始した。SOTENは昨年12月7日に受注を開始、3月18日の出荷開始時点で初期ロットの600台を超える受注を抱えていて、追加生産が決まっている。
また3月17日には、新物流専用ドローン「AirTruck」の受注を開始している。AirTruckは、物流専用機ACSLと株式会社エアロネクストが共同開発した機体で、ACSLの機体をベースに、飛行時に荷室が傾かないエアロネクストの重心制御技術「4D GRAVITY」を搭載し、荷物配送に必要な機能を装備させた機体で、山梨県小菅村や新潟県阿賀町など各地の課題解決に寄与する取り組みとともに、機体性能の実証を重ねてきた。ACSLは中期経営計画の中で用途特化型機体に注力することを明言しており、今回、物流特化型機体の量産化実現したことになる。
ACSL株は、ウクライナ危機、欧米の金利引き上げ観測と実施、半導体不足などの地合いの悪さに巻き込まれたうえ、ACSLが2月14日に決算と同時に発表した減資(無償)について悪材料視されたことも重なり、2月以降ほぼ一本銚子で下落。3月24日には一時、2018年に上場して以来の安値である1319円を付けていた。
政府はすでにドローンや空飛ぶクルマ事業を重視する方針を打ち出しているほか、とりわけ日本で生産される機体に期待を寄せていると伝えられていることから、悪材料に見舞われたACSLは、足下では追い風をうけて事業を進めることになりそうだ。