日用品大手の花王株式会社(東京)は11月9日、中津川市(岐阜県)で荷物を積んだドローン3機を自動で編隊飛行させ、そのうち1機から降ろされた荷物を自動配送ロボットに載せ替え、50mほど離れた目的地に無人で届ける自動ラストワンマイルの実証実験を行った。3機の編隊飛行は1機で載せきれない場合複数機にわけて貨物列車のように運ぶことを想定した。ドローンが荷物を下ろせる場所でおろしたあと、人の手を介して載せ替えることなく最終目的地まで運ぶ実用性や経済性、技術的な改善点などを探ることが目的で、実験は予定通りに進行した。今後、関係者が結果を解析する。実験にはイームズロボティクス株式会社(南相馬市<福島県>) ブルーイノベーション株式会社(東京)、NTTコミュニケーションズ株式会社(東京)が技術や知見を持ち寄った。
実験は国土交通省の国土交通省の「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」の採択を受けて、花王が統括した。無人で最終目的地まで届ける技術として、ブルーイノベーションのドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」や自動配送ロボット運航を担った。ドローンはイームズロボティクスのヘキサコプターE6106を3機活用、1機をリーダー機、2機を追従機として編隊飛行させた。イームズは編隊飛行の経験を豊富に持つが、試験場ではなく、導入が検討される現場で一般道をまたぐルートで編隊飛行が行われたのは今回が初めてだ。またドローンの長距離飛行に必用な上空LTE技術をNTTコミュニケーションズが提供した。
実験会場は、地域の観光スポット、椛の湖(はなのこ)のほとりに広がる椛の湖オートキャンプ場で、荷物を受け取る目的地になった。物流用ドローンポートを搭載した自動走行ロボットもここで待機する。出発地点は直線距離で1,9㎞離れた中津川市立坂下小学校のグラウンドだ。標高差は200mあり、小学校から目的地のオートキャンプ場までは、180度折り返す急カーブがくねくねと4,6㎞にわたり続く。直線では105パーミル、陸路でも43パーミルといずれも急こう配だ。
実験では出発点の小学校のグラウンドで、ドローン3機に、日用品を中心に2㎏ずつの密が積み込まれた。飛行ルートは予め決められた。出発の合図とともに、3機が1機体ずつ、1秒ほどの間隔で離陸した。3機は上昇すると地表から110mの高さで目的地に向かった。標高差があるので、斜面をなぞるように高度をあげながら進んだ。
目的地では、実験の関係者、地元行政、議会関係者、離陸地となった坂下小学校の児童らが空を見上げドローンの到着を待った。週っ発の合図から3分ほどでプロペラの回転音と3機の姿を確認すると、小学生から「来た」「あそこだ」などの声があがり、関係者も場所を確認しあった。
機体は目的地上空でホバリングをしたあと下降を開始した。編隊飛行を船頭してきた1機が、目的地に待機していたドローンポート付き自動配送ロボットのうえに着陸すると、居合わせた生徒や関係者から拍手があがった。飛行時間は約5分だった。残る2機もすぐそばに着陸した。ポート上に着陸した機体は、積み荷を自動で切り離し、再び浮上してポートから離れた着陸した。荷物を受け取った自動配送ロボットは、決められたルレーンを50mほど走り、受け取り地点で止まり、任務を終えた。
最終目的地に荷物を運んだ自動配送ロボットは、ブルーイノベーションが開発したデバイス統合基盤技術BEP(べっぷ=Blue Earth Platformの略称)が組み込まれていることが特徴だ。物流用のドローンポートのシステムについては、国際標準化機構(ISO)が設備要件を国際標準規格ISO5491として発行しており、今回の実験では、ブルーイノベーションがISO5491に準拠して開発したドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」を使った。関連する運航管理気象センサー、障害物検知、侵入検知などの機能を持つ。センサーから得た情報はVISで一元管理された。
ブルーイノベーションの田中建郎取締役は「今回の実験で満足することなく、今後もさらに利便性、安全性など改善を図っていきたい」と述べた。
イームズロボティクスの 曽谷英司代表取締役は「1台で運びきれない場合に、複数台を1人で運用できればより多くのものを運べる。機体開発や編隊飛行には現在も取り組んでおり、今後、1人が運用できる台数の拡大や、1台あたりの積載能力の大きい機体開発を通じて、ドローン物流が広がることを期待している」などと述べた。
今回の実験の会場となった中津川市は花王の創業者、長瀬富郎(ながせ ・とみろう)の生家の造り酒屋がある縁の深い場所だ。実験には恵那醸造(えなじょうぞう)株式会社の長瀬裕彦代表取締役も立ち会い、荷物の受け取り役を引き受けた。裕彦氏は「いまあるのも花王がここまでになってくれたから。その花王が地元で実験をしてくれるのは感慨深い」と話した。
今回の実験で花王のスタッフは、「かおぞら」と白く染め抜かれた色違いのジャケットを着用してのぞんだ。花王のドローン物流推進事業は、同社が「01KAO(ゼロワン花王)」と呼ぶ社内の2021年7月に導入した事業提案制度から発足した事業で、実質的に稼働をはじめた2022年以降、「かおそら」を使いドローン物流に取り組んでいる。今年(2023年)9月には養父市(兵庫県)で15㎏の荷物を空送する実験を実施した。
花王SCM門ロジスティクスセンターの山下太センター長は「花王は日用品メーカーとして多様化するニーズにこたえるために、マーケティング、生産、物流、販売の船体最適のサプライチェーンの構築に取り組んでいる。創業者、長瀬富郎の有名な言葉に『天祐は常に道を正して待つべし』があり、花王はそれを今も理念と考えている。今回はその志を持つメンバーがこのプロジェクトに集まっており、その気概と熱意を届けたい」と中津川での実験に寄せる思いを伝えた。
プロジェクトリーダーの一人、是澤信二氏は「花王は全国に工場、配送センターを構えており、これらの物流資産をドローン物流に生かしたいと考えている。工場やターミナルにドローンデポと呼ばれる基地を整備し、そこから一括で供給する物流を目指したい。2024年問題もあり、無人化にこだわりたい」と意気込みを伝えた。
もう一人のプロジェクトリーダー左藤真彦氏も「最終的に届くまで多くの人の手を介するいまの物流をできるだけ無人化したい。今回も荷下ろし、詰め替えの作業をせず、そのまま届ける。こうしたシンプルな物流を実装したい」と述べた。
実験には、事業者、メディアのほか国交省中部運輸局、経産省中部経済局、岐阜県、岐阜県議会、中津川市などが立ち合い、実験の様子を見守り、関係者の話に耳を傾けた。中津川市の青山節児市長は「私たちは環境に恵まれた土地で生まれ生活していると思っている。私はストレスマネジメントのできる地域と形容している。恵まれた環境が当たり前になる中、人口減少に歯止めはかからない。いなかでもしっかりと生活できるようになってほしいし、そのための取り組みには市としても積極的に参加したい。それを通じて自分たちの郷土にほこりを持って頂けるようになればいいと思っている」とあいさつした。また実験後には、「子供たちの歓声がすべてを物語っている。この地でカタチができていくと確信した」と感想を述べた。
ドローン物流事業を手掛ける株式会社かもめや(香川県高松市)は、香川県三豊市で、本土と離島である粟島(あわしま)との間をドローンで結んで運送を担うドローン物流航路を、2021年8月に開設する計画を発表した。離島住民の買い物弱者の解消を目指す。運行は悪天候時を除いて原則毎日行う。同社は「海を越える長期定期航路は世界初」と挑戦への意気込みを示している。
かもめやがドローン物流航路を開設するのは、香川県三豊市と瀬戸内海に浮かぶ人口約180人の離島、粟島。往復約8kmを原則毎日運航する計画だ。計画では午前中に粟島の住民から買い物の注文を受け付け、当日の午後にドローンで本土側から荷物を運ぶ。ドローンは粟島で荷物を自動で切り離したあと自動帰還。荷物は、切り離されたあと島のスタッフが自宅まで届けることを想定している。ドローンは日本製の機体を使う予定にしている。
かもめやと三豊市は6月、持続可能なドローン物流エリアモデルの実現などに関連する連携協定を結んでおり、ドローンなどを活用した地域活性化の取組を加速する。物流のほか、災害発生時の情報収集にも力を入れる。
国土交通省のWEBマガジン「Grasp」がDRONE FUNDの創業者、千葉功太郎代表パートナーへのインタビューの後編を掲載した。DRONE FUNDの投資先企業の取り組み事例の紹介や、ドローン物流の展望、都市部での実装について言及している。自家用機の操縦桿をにぎるパイロットでもある千葉氏は、空の便利は地上で想像するよりもはるかに高く、その便利さを誰もが使える社会を目指す、と取り組みへの決意を表明している。
千葉氏のインタビューはGraspが「ロボットの目に映る『物流の未来』」のシリーズの一環で、5月18日に公開した「前編」の続きだ。千葉氏は株式会社エアロネクストなど、DRONE FUNDの投資先企業の取り組みと進捗を紹介したり、千葉氏が住むハワイでの物流での工夫やドローン導入議論の様子を紹介したりと具体例をまじえ、ドローンに対する期待感の高さを伝えている。この中で千葉氏は「ドローン物流は100%実現する未来」と確信し、取り組みを進めていることを明言している。
また、離島、山間部などの地方での移動困難などの課題解決とセットで取り上げられることの多いドローン物流を、市街地での利用でも有効であるとも説明している。具体例としてマンション宅配に活用する構想をイラスト化。マンション宅配の配達員の労力軽減や時間短縮、住民の負担利便性向にドローン物流が効果的であることを説明している。
千葉氏は自身が自家用機の操縦士として空を移動手段に活用していることをふまえ、「空は空いています。(移動は)直線です」と利便性を強調。物流、移動などの空の利用への期待を呼び掛けている。
(公表されたままお届けします)株式会社自律制御システム研究所(所在地:東京都江戸川区、代表取締役社長 兼 COO:鷲谷 聡之、以下「ACSL」)は、12 月2日(水)〜12月5日(土)に実施された、ANAホールディングスらによるドローンでの日用品・処方箋医薬品の即時配送サービス実証※1において、5kgペイロードの中型物流ドローン原理試作機の実環境における現場実証を実施し、合計65回、総延長160km以上の飛行をしました。
ACSLは国産の産業用ドローンを開発しており、物流、インフラ点検、災害等、様々な分野で採用されています。ドローンの制御を担うフライトコントローラを自社で開発しており、セキュアで安心なドローンの社会実装を推進してきました。特に物流領域においては、労働力不足という社会問題を解決するためのロボティクス技術として、ドローンの社会実装へのニーズが高まっており、ACSLでは多くの企業と物流領域における補助者なし目視外飛行(Level3)の実証を重ねてまいりました。
こうした各社との実証実験を通して、物流領域においてLevel4が実現した際にドローン物流の社会実装を推進するためには、現状の機体よりもペイロードを大きくし、5kg程度の輸送を可能にすることかつ飛行距離が20km程度あることが重要であることがわかってきたため、2020年8月発表の中期経営方針「ACSL Accelerate FY20」※2において、中型物流ドローンの開発、量産化を戦略の1つとして掲げ、推進しています。
本原理試作機は、12 月2日(水)〜12月5日(土)に福岡市にて実施されたドローンでの日用品・処方箋医薬品の即時配送サービス実証において、実環境における現場実証を実施しました。
今後、ACSLは本実証に用いた中型物流ドローン原理試作機の更なる現場検証を重ね、社会実装可能な物流ドローンの開発を目指してまいります。
※1:本実証実験に関するプレスリリースは以下URLよりご覧いただけます。
https://www.acsl.co.jp/news-release/press-release/1583/
※2:中期経営方針「ACSL Accelerate FY20」は以下URLよりご覧いただけます。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6232/ir_material_for_fiscal_ym/85186/00.pdf
(プレスリリースをそのままお届けします)ブルーイノベーション株式会社、株式会社きっとすき、株式会社オーイーシーと大分県は、この度、大分県杵築市で地域定着を見据えたドローン物流の実証実験を行いました。本実証実験は大分県ドローン物流活用推進事業を活用した取り組みで、大分県杵築市を対象とした地域における実装をゴールとして、ドローンシステムインテグレーターであるブルーイノベーション、地元企業であるオーイーシー、きっとすきが連携して検証を進めるものです。
ドローン物流の社会実装では、採算性の確保が大きな課題になっています。そのため、本事業では観光体験と組み合わせた新たな活用モデルを提案するとともに、①大型ドローンによる大量輸送、②物流ドローン体験の観光活用、③テクノロジー利用による人的運用コストの削減、の3つの施策を検証しました。
①大型ドローンによる大量輸送では、株式会社SkyDrive製の「カーゴドローン」を使い、神田楽市(※DroneTribune注=熊本県杵築市にある食品スーパー。運営主体は店名と同じで株式会社神田楽市)から約1km離れた山香中学校まで、全校生徒分の菓子類(チョコレート菓子とお饅頭)を運搬し、その後、神田楽市から約1km離れた杵築市営サッカー場にいるサッカーチーム、大分トリニータまでスポーツドリンクを運搬しました。
②物流ドローン体験による観光活用では、株式会社自律制御システム研究所製の「PF2」で神田楽市から約3km離れたスポーツ合宿施設「上村の郷」まで補助者なし目視外飛行を行い、ドローンでは杵築市名産のハモ鍋の食材を運搬し、「空飛ぶハモ鍋」を参加者が実食するなどのイベントを開催した結果、大分県内外から約100名を超える見学者が参加しました。
③テクノロジー利用による人的運用コストの削減では、株式会社NTTドコモのLTE通信により、ドローンの位置をリアルタイムでモニタリングし、京セラ株式会社製の通信デバイスを活用することで、離着陸時のドローンポートへの第三者侵入の有無を確認し、少人数での運用時に重要な遠隔での安全確認方法を検証しました。
大分県は傾斜地が多く標高差のある土地であり、沿岸部と山間部から、海の幸と山の幸を双方向で運搬するなどのドローンによる物流需要が見込めます、山間部の温泉街に海の幸をドローンで産地直送するような大分観光の名物となる、採算のとれるドローン物流の新たなモデルケースとして、今後は関係各社で課題を洗い出し、検討を進めて参ります。
■実証実験の背景
大分県杵築市では少子高齢化が進み過疎化が進んでいます。中山間地では日常の買い物が困難な状況に置かれている「買い物弱者」が増加し、移動販売や宅配サービスを行っていますが維持コスト等により十分に行き届いているとは言えない状況です。また、観光面においても農業文化公園や上村の郷などの観光施設があるもの、現在COVID-19などの影響もあり、観光収入が減少しています。そこで物流ドローンの活用可能性に着目し観光利用と組み合わせた実証実験を実施しました。
■社会実装に向けて
■社会実装に向けて
本事業は、 ドローンインテグレーターとしてブルーイノベーションが、各種ソリューション提供会社と強固な連携関係を築き、安全なドローン物流ソリューション「BI ポート」 を含めた様々なソリューションを地域の企業に提供し、社会実装を実現します。
■「BIポート」による物流ソリューションへの取組みについて
ブルーイノベーションでは、独自開発のドローン高精度離着陸システム「BIポート」の技術を軸に、ドローン物流ソリューションを開発しています。BIポートの開発スタートは、産官学共同(国土交通省、東京大学鈴木・土屋研究室、ブルーイノベーション)で、ドローンの目視外飛行において安全に自動離着陸が可能な物流用ドローンポートシステムとしての開発が初でした。GPSによる飛行と違い、画像認識により誤差なく高精度に着陸が可能です。人が立ち入っている場合や、風速が飛行に対して危険な水準である場合は、自動的に離着陸を禁止させる機能も備えています。また、携帯電話などの電波による機体との交信で、飛行計画や位置情報等の様々な情報を統合し、安全な飛行を実現しています。加えて、ドローンポートPCとも通信しており、風速状況や人の立ち入り状況を運航管理システムへ伝達し、安心安全な離着陸を実現しています。本ドローンポートシステムは、複数のドローン・ロボットの統合管理を可能にするプラットフォーム「Blue Earth Platform」を基盤に開発されており、ドローンポートの様々な情報を一元管理、監視が可能です。また、荷物運搬に使用する機体、荷物、各ドローンポートの予約機能も実装されており、物流サービスに最適化されています。
大分県、ブルーイノベーション株式会社(東京)、株式会社オーイーシー(大分市)、株式会社きっとすき(大分県杵築市)は、ドローン物流の採算性を向上に向けた実証実験を11月に大分県杵築市で実施すると発表した。採算性の良い配送ルートの検討、人的コスト削減効果の検証、ドローン物流体験による観光収入増加をテーマに、現在、地元スーパーを起点としたルートを複数、検討している。観光施設向けにバーベキューの食材配送、イベント施設向けの弁当配送などを検討しているという。
杵築市は高齢化に伴う買い物難民の増加、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う観光客の減少、観光地と商業地域が離れていることによる回遊不全などの課題を抱える。地元ではこれらをドローン物流の実現で解決することが求められている。これらの解決に向けて実証プロジェクトを起草し、大分県の「大分県ドローン物流活用推進事業」の制度を活用して実験に取り組む。
実験ではブルーイノベーションが企画、システム提供を、オーイーシーが大分県内企業との調整を、杵築市の地域総合商社、きっとすきが杵築市との調整や実施時の運用を、それぞれ担う。きっとすきは主要事業のひとつにドローン事業があり、空撮、動画制作、操縦体験などを行っている。
きっとすき:https://kit-suki.co.jp/