いわゆる空飛ぶクルマの開発を手掛けるEHang(イーハン、億航智能、広東省広州市)は、同社の開発した「EH216-S」に対し、中国の国家局のひとつで民間航空行政を管轄する中国民用航空局(CAAC)から10月13日に、商用運航の前提となる型式証明(「TC」)を正式に取得したと発表した。国家の航空当局が、いわゆる空飛ぶクルマにTCを発行したのは世界で初めてだ。今後中国国内で商用運航に向けた動きが加速するとみられる。EHangは日本で型式の申請をしていないため、日本での商用運航はこのままではできない。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の理事長をつとめる鈴木真二東京大学名誉教授・特任教授は「型式証明の手続きへの直接的な影響はないが、いわゆる空飛ぶクルマが夢物語ではないと広く認識させる効果はあると思われる」と話している。
いわゆる空飛ぶクルマが商用運航をするためには、製造国とともに飛行する国からTCを取得することが原則だ。UAM関係者の間では、EHangやドイツのVolovopter(ヴォロコプター、ブルッフザール)など有力メーカーのTC取得が昨年来ささやかれてきた。結局昨年中のTC取得はなく、今回のEHangの「EH216-S」による取得が第1号となった。
EHangの機体は日本国内でも「飛行試験」などの形で飛行している。ただ、EHangは日本で型式証明を申請しておらず、商用運航はいまのままではできない。
日本では現在、株式会社SkyDrive(愛知県豊田市)、Volovopter 、アメリカのJoby Aviation(ジョビーアビエーション、カリフォルニア州サンタクルーズ)、イギリスのVertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)が国交省に型式証明を申請している。
EHangによるCAACからのTC取得が、日本国内や各国の型式取得の手続きに直接的に影響することはない。ただし国同士の関係の中で、中国の決定を尊重する国はあり、今後、アジア諸国を中心に同社の機体が飛行できる国が出てくることは考えられる。
鈴木真二氏は「EHangによる型式証明の取得は想定内です。安全性を判断する型式証明の手続きが、直接的に影響を受けることはありません。一方で、いわゆる空飛ぶクルマの実用に関するニーズの掘り起こしが加速したり、夢物語ではないと広く認識させたりするといった効果はあると思われます」と話している。
EHangは同社の公式サイトで取得について公表している。
サイトはこちら。
概要は以下の通りだ。
アーバンエアモビリティー(「UAM」)技術プラットフォームの世界的リーディング企業であるEHang Holdings Limited(「EHang」または「当社」)(Nasdaq: EH)は、自社開発の旅客輸送無人航空機(「UAM」)システムであるEH216-Sが、中国民用航空局(「CAAC」)から正式に発行された型式証明書(「TC」)を取得したと発表した。これは、EH216-Sのモデル設計がCAACの安全基準および耐空性要件に完全に適合し、EH216-Sが旅客輸送UAMの商業運航を行う資格があることを証明する。電動垂直離着陸機(electric vertical take-off and landing aircraft、eVTOL)向けの世界初のTCとして、EH216-S TCは、中国や海外の革新的なeVTOLの耐空証明の基準となるだけでなく、UAMの商業運航の画期的なマイルストーンとなる。
TC授与式は10月13日、北京のCAMIC国際コンベンションセンターで行われ、CAACがEHangにTCを授与した。
CAACが2021年1月にEHangのEH216-S TC申請を正式に受理して以来、EHangのチームはCAACやその専門家チームと緊密に協力し、航空機の革新的な最先端技術の検証と検証に取り組んできた。粘り強い努力であらゆる困難や課題を克服し、すべての型式認証目標を乗り越え、EHangが成熟したeVTOL製品を独自に設計、開発、製造する能力を十分に備えていることを証明した。
EH216-Sは、技術的アーキテクチャ、構成、性能、機能性、運用モード、飛行環境などの主要分野において、従来の航空機とは大きく異なる先駆的な技術革新、製品革新として位置づけられている。EH216-Sの型式証明のために、CAACとEHangは、従来の100年来の航空原則を遵守しつつ、EH216-Sの特徴的な技術的特徴に合わせた特定の認証基準や適合手段を策定する、革新中心のアプローチを採用し、型式証明業務を実施した。
いわゆる空飛ぶクルマの開発を手掛ける株式会社SkyDrive(愛知県豊田市)は1月10日、独ボロコプター社(Volocopter GmbH)で最高技術責任者(CTO)を2022年12月まで勤めていたアーナウド・コウヴェル氏(Arnaud Coville)を役員として招聘し、2023年1月1日付けで最高開発責任者(Chief Development Officer/CDO)に就任したと発表した。すでに日本で活動を初めている。三菱航空機株式会社出身の岸信夫最高技術責任者(CTO)と手を携え、機体開発を加速、強化し、エンジナリング部門の組織力を高める。なおボロコプターのCTOには、チーフエンジニアとして活躍してきたセバスチャン・モレス氏(Sebastian Mores)が就任している。
SkyDriveのCDOに就任したコウヴィル氏は、2020年5月にボロコプター社に入社し、同年7月にCTOに就任して、先月まで同社の空クル開発を指揮していた。ロボティクスの博士号を持ち、ドイツのドルニエ社を起源に持つアメリカの航空機メーカー、米フェアチャイルド・ドルニエ社、ドイツの航空技術会社、ディール社(Diehl Aerospace GmbH)、空クル開発でも知られる航空機メーカー大手、会社、エアバスグループなど、航空業界でキャリアを重ねた著名エンジニアの一人でもある。
SkyDriveは商用機「SD-05」の型式証明を2021年に申請し、国交省が受理している。コウヴィル氏の加入で、型式証明取得の対応を強化し、機体開発、社内の多くを占めるエンジニアリング組織の体制固めなども加速させる。
発表は以下の通り
「空飛ぶクルマ」および「物流ドローン」を開発する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO 福澤知浩、以下「当社」)は、航空機業界で 30 年ほどの経験を持ち、独Volocopter GmbHで最高技術責任者(CTO)を務めたArnaud Coville氏が、2023 年 1 月 1 日に、当社の最高開発責任者(Chief Development Officer/CDO)に就任したことをお知らせいたします。
■ Arnaud Coville氏就任の背景
当社は、2018 年に設立し、「100 年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに、「空飛ぶクルマ」と「物流ドローン」を開発しています。空飛ぶクルマ「SD-05」は、2021年10月に型式証明申請が国土交通省により受理された商用機です。2025年の大阪ベイエリアでのサービス開始を皮切りに日本の各地域、海外での事業拡大を目指しています。Arnaud氏は、自動制御とロボティクスの博士号を取得後、航空機業界で 30 年ほどの経験を積んできました。Airbus社では、プログラムマネージャーとしてヘリコプターや大型航空機の開発を推進し、Volocopter社ではCTOとしてeVTOL開発のための新技術開発や組織強化に従事しました。SkyDriveではこれまでの知見・経験を生かし、「SD-05」の機体開発をさらに加速していただきます。
「SD-05」の機体開発を推進するCDOのArnaud氏と、型式証明取得に向けてより一層尽力する最高技術責任者(CTO)の岸信夫が密に連携することにより、当社は引き続き 2025 年の事業開始を目指してまいります。
■ 各コメント
最高開発責任者(CDO) Arnaud Coville氏
SkyDriveは業界を牽引する可能性に満ちた企業であり、この度CDOとして入社したことを誇りに思います。これまで培ってきた、航空機開発に関わる国際的な専門知識やマネージャーとしての経験は、SkyDriveのエンジニアリングチームのさらなる成長と、機体開発の加速に貢献すると信じています。SkyDriveのみなさんと協力し、私たちの最初の商用モデルである『SD-05』が市場で成功することを楽しみにしています。
代表取締役 CEO 福澤知浩
この度、当社の最高開発責任者として、Arnaudさんを迎えられることを大変嬉しく思います。航空機だけでなく、ゼロ→イチの機体開発経験が豊富で、スタートアップでのマネジメントに関する知見も深いArnaudさんのCDO就任は、日本発の空飛ぶクルマを開発するという挑戦を更に前に進めるものだと確信しています。チーム全員の個性・強みを最大限に生かしながら開発を率いていただくことで、当社は引き続き、世界中の人々が日常的に心地よく使えるエアモビリティの開発を推進してまいります。
■Arnaud Coville 氏、略歴
2000 年 7 月 Fairchild Dornier GmbH 入社
2002 年 11 月 Diehl Aerospace GmbH 入社
2005 年 1 月 エアバス・グループ 入社
2015 年 3 月 エアバス・グループ H135 のプログラムマネージャー就任
2018 年 6 月 エアバス・ヘリコプターズ トランスフォーメーション/デジタライゼー
ションプロジェクトマネージャー 就任
2020 年 5 月 Volocopter GmbH Volocity の開発マネージャー就任
2020 年 7 月 Volocopter GmbH 最高技術責任者(CTO)就任