ドローン配送を既存物流と融合させる「新スマート物流」を進めている株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)など3社は、山梨県と、新スマート物流の広域化と県全域での整備と、災害時に物資輸送などを担う平時と有事との両用化を推進し、地域物流インフラを強靭化する連携協定に締結した。新スマート物流は2021年に山梨県小菅村で発足し、これまでに市町村単位での連携で実績を積み上げ全国各地に広がってきた。今回の山梨県との締結は、新スマート物流の都道府県単位で協定としては初めてで、山梨県の長崎幸太郎知事は、県内生まれのプロジェクトで協定を締結することに「子供が立派になって戻ってきてくれたよう」と目を細めた。
協定の締結式は8月28日に、山梨県庁内で行われた。山梨県と協定を締結したのはNEXT DELIVERYのほか、セイノーラストワンマイル株式会社(東京)、富岳通運株式会社(甲府市)の3社。締結式では各社の代表が協定に署名し、抱負を述べた。
協定は「山梨県におけるフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、もって県民生活や地域経済基盤の強靱化に資すること」が目的で、2024年問題など地域の物流課題、災害時の物資輸送など防災インフラづくりなどで協力して進めることが記されている。具体的な内容や進め方は今後、3社と県が検討を進める。
NEXT DELIVERYの田路圭輔代表取締役は6月28日に修正された防災基本計画が、「交通の途絶等により地域が孤立した場合でも食料・飲料水・医薬品等の救援物資の緊急輸送が可能となるよう、無人航空機等の輸送手段の確保に努めるものとし」など、ドローンの積極活用が明記されたことを引き合いに「平時、緊急時をまたいでドローンをしっかり活用する国の方針は心強く思いました。小菅村、丹波山村(ともに山梨県)で始めた新スマート物流を山梨県全域に広げ、緊急時にもしっかり地域を支えるインフラにしたいと思っています」と決意を述べた。
また、「新スマート物流のアップデートには山梨県のお力添えが不可欠だと思っています。最初に提携したかったのは、小菅村での活動のベースである山梨県でしたので、一番早く協定を結んで頂きました」と付け加えた。
山梨県の長崎知事はこれを受けて「大変、親孝行な子供をもって幸せだと思います」と笑顔を見せた。さらに「山梨県には災害がおきると孤立集落になるおそれのある場所があります。医薬品や食品の輸送などの課題がありますので、その解消をどうするか。有事対応が前提ですが、平時に使い慣れていないと機能しないとも思います。(離発着場となる)ドローンポートは孤立の恐れのあるところに設置する必要があると思います。これは急いでやりたい。設置した住民に『ここにドローンが来ますからびっくりしないでくださいね』と伝えて、普段使いもしていただいて。災害がおきたときにも物流にあてられるようにしたいですね」と述べた。
協定締結を受けて公表されたプレスリリースの内容は以下の通り
~県民生活や地域経済基盤の強靱化を目指して~
写真向かって左より山梨県知事 長崎幸太郎、NEXT DELIVERY 代表取締役 田路圭輔、セイノーラストワンマイル 代表取締役社長 河合秀治、富岳通運 代表取締役 浅沼 克秀
山梨県(知事:長崎幸太郎)と株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下NEXT DELIVERY)、セイノーラストワンマイル株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:河合 秀治、以下 セイノーラストワンマイル)および富岳通運株式会社(山梨県甲府市、代表取締役:浅沼 克秀、以下富岳通運)は、2024年8月28日に、山梨県におけるフェーズフリーな地域物流インフラの構築に向けた連携協定を締結いたしました。
NEXT DELIVERYの親会社である株式会社エアロネクスト(以下 エアロネクスト)とセイノーホールディングス株式会社(以下 セイノーHD)は、トラックや軽バン等の陸上配送にドローン輸送を組み合わせて物流を効率化する新スマート物流SkyHub®を、山梨県の第1期TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業による試験的運用を経て、2021年10月から日本で初めて小菅村にて社会実装し、現在では北海道上士幌町や福井県敦賀市をはじめ全国10ヶ所で展開しています。
その後NEXTDELIVERY、セイノーHD、富岳通運等は、2024年問題対策として各社のリレー方式で物流の効率化を図る共同配送を、2023年8月から小菅村・丹波山村においていち早く開始しています。中山間地域の物流において、大手物流会社含む複数社での共同配送を実施する事業は全国でも珍しい事例です。
富岳通運は、2022年8月に山梨県と災害時における山梨中央ロジパークの施設使用に係る連携協定を締結するとともに、県下27市町村と災害時の連携協定を締結しています。
エアロネクストとNEXT DELIVERYは、2024年1月に起きた能登半島地震において、孤立集落・避難所へのドローンによる医薬品の物資輸送を国内で初めて実施した経験を踏まえ、平時、有事を問わず、ドローンを活用したフェーズフリー型統合ソリューションの構築が必須であり、そのためにはこれまで推進してきた新スマート物流SkyHub®が基盤になりえると考え、国や自治体と前向きな会話を始めています。
今回、4者が相互の連携・協力により、山梨県における2024年問題など平常時の地域の物流ネットワークの強化や買い物弱者対策、並びに災害時の被災地への迅速な物資輸送を可能とするフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、県民生活や地域経済基盤の強靱化を図ってまいります。
<連携協定の概要>
1.締結日 2024年8月28日
2.協定の目的
本協定は、山梨県におけるフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、もって県民生活や地域経済基盤の強靱化に資することを目的とする。
3.協定の内容
上記目的を達成するため、以下の事項について相互に連携・協力する。
(1)2024年問題など地域の物流課題の解決に関すること
(2)災害時の物資輸送など防災インフラづくりに関すること
(3)その他、目的を達成するために必要な事項
8月28日に実施された連携協定締結式において、代表4者が以下のとおりコメントしています。
<山梨県知事 長崎幸太郎のコメント>
NEXT DELIVER、セイノーラストワンマイル、富岳通運の3者の皆さまと連携協定を締結することができ、心より感謝申し上げます。山梨県小菅村での実証実験からスタートした「新スマート物流」は、すでに全国各地に展開されており、このたびのフェーズフリーな地域物流インフラの構築は、山間部など人口減少エリアを数多く抱える本県にとって、非常に重要な課題であります。また、先般の「南海トラフ地震臨時情報」を機に災害への備えを見直すなかで、ドローンの活用が非常に有効なものと改めて認識したところです。このたびの協定は山梨県にとっても大変意義深いものであり、3社の皆さまと県民生活の強靱化に向けた取り組みを加速して参ります。
<NEXT DELIVERY代表取締役 田路 圭輔のコメント>
2021年1月に小菅村にNEXT DELIVERYを設立し、ドローン配送をスタートしたのも山梨県、共同配送をスタートしたのも山梨県で、山梨県は様々な新スマート物流の取り組みの起点になってきました。この度、山梨県とこのような新たな取り組みをスタートできることを本当に光栄に思います。地元の運送会社様との連携をベースにして、平常時と緊急時をフェーズフリーに利活用できる地域物流インフラを構築していく今回のプロジェクトを全都道府県に拡げていきたいと思います。
<セイノーラストワンマイル代表取締役社長 河合 秀治のコメント>
セイノーHDは、幹線輸送の強みを活かしたラストワンマイル配送領域において、生活様式の変化や構造変化に対応すると共に、買い物弱者対策、生活困窮家庭対策等の社会課題解決型ラストワンマイルの構築を積極的に推進・拡大しております。山梨県小菅村、丹波山村においては、物流会社が抱える2024年問題や地域課題に対して、富岳通運様をはじめとする物流各社様と連携して共同配送を構築、また、この配送インフラを緊急時は物資輸送に利活用できるしくみとしています。今後も同じ課題をもつ全国の地域にこの小菅・丹波山モデルを展開し、住民の皆様が持続的に安心して暮せる環境づくり、住民サービスの維持、向上を進めてまいります。
<富岳通運 代表取締役 浅沼 克秀のコメント>
提携協定を契機に、更なる地域の物流ネットワーク構築及び課題解決に向けた取り組みを協同して参りますのでよろしくお願い致します。
「新スマート物流」実用化の原点である小菅村(山梨県)で4月17日、この取り組みの土台となってきた連携協定が、ほぼ3年半越しに新たな協定に更新された。新協定にはセイノーホールディングス株式会社(大垣市<岐阜県>)が加わり、小菅村、株式会社エアロネクスト(東京)、エアロネクストの子会社である株式会社NEXT DELIVERY(小菅村)を含む4者が小菅村役場で締結式に臨んだ。協定の有効期限は5年間。今後は結束して、新たなテクノロジーの導入も見据え、オープンイノベーションで地域物流の高度化にあたる。締結式では各代表が書面ではなく分厚い無垢材の協定書を受け取った。小菅村の舩木直美村長は「ここは人口減少の先進地。この村がなんとかなれば日本はなんとかなる」と決意を新たにした。
新協定は「ドローン配送事業を含む次世代高度技術の活用による新しい地域物流のビジネスモデルの構築に向けた包括連携協定」で、農業、観光などの産業振興から雇用、人材育成、環境負荷低減との両立、防災、新しいインフラ整備まで幅広く盛り込んだ。次世代高度技術について、「人、モノを区別した現在の移動の形は変わっていく必要がある考えています。ドローン、トラック以外に、自動運転なのか、ロボットなのか、あらゆるテクノロジーの活用を、みなさんの声を聞き、相談しながら検討したい」(エアロネクストの代表取締役CEOでNEXT DELIVERYの代表取締役も務める田路圭輔氏)や、「荷物をパケットに例えて革新的な物流をを示す『フィジカルインターネット』という言葉が物流の世界で幅広く使われているが、まだ具体例はない。高度技術が必要なフィジカルインターネットを進めたい」(セイノーHDの河合秀治執行役員)などと意欲を示した。
新協定への期待について小菅村の舩木村長は「2024年問題もあり物流が滞ることになれば、ここは一番先に切られる可能性のある地域だと思っています。これまでなんとかみなさんのお力をお借りしてありがたくおもっています。うちの村は課題が多いので、課題解決のために、お知恵とお力を貸して頂き、新しいモデルを作って頂きたいしもうけにもつなげて頂きたい。そのためにどんどん小菅村を使って頂きたい」と展望を述べた。
エアロネクストの田路CEOも「新スマート物流は全国で17の自治体と連携協定を結び、これまでに9地区、現時点では8地区で社会実装をしています。これは小菅村が原点。協定の更新ができ、ますますがんばりたいと気持ちが固まりました。次々と『日本初』の事例をここであみだしたい」と抱負を述べた。
セイノーHDの河合秀治執行役員は「2023年8月に小菅村で始まった複数の物流会社が一本にまとまった共同配送は継続的に行われている全国でも非常に珍しいももっとも先進的な事例で、全国の過疎地で共同配送の検討が進みはじめていて、そのお手本となるプロジェクトとしてしっかり進めたい。モデル化して標準化することが重要で、継続できるビジネスにするためには環境負荷低減が不可欠。共同配送は5社分を1社で扱えば環境負荷も5分の1になるのでグリーンという領域も取り組みたい」と持続可能なモデルづくりに意欲を示した。
会見では、エアロネクストが開発した物流用ドローンが1月に発生した能登半島地震の被災地で活動した話題に展開。来賓としてあいさつした小菅村議会の青柳諭議長が「議会としても何度も見学をさせていただいたので、テレビで薬を配送しているのをみたときにすぐにわかりました。石川県に小菅のドローンが行ってると」と言及した。石川県でドローンの運航を担ったNEXT DELIVERYの青木孝人取締役が「小菅村での経験が役に立ちました。日頃から飛ばしていたことが現場力になることが証明できたと思っています」と応じた。一方、「課題も分かりました。みなさんが不慣れなので、ドローンを飛ばす前に、現地のみなさまや担当者にこのように飛んできて『置き配』をします、などと説明をしないといけなくい。機体も現地にないので、この小菅村から現地に20時間ほどかけて運びました。慣れていれば、現地にあれば、と感じました」と、小菅で得た機会がいきたこととと、教訓についても披露した。
エアロネクストの田路CEOはこれを受けて、「青木さんの話からも、ドローンは配送手段でありながら社会インフラであることがわかります。震災は痛ましい出来事ですが、ドローンという日本の強靭性を担うインフラが存在することも証明したと思っています」とインフラとしてのドローンの認知の拡大と整備の推進に期待を寄せた。
また、連携協定が継続できている背景については、登壇者全員が「信頼関係」と回答。小菅村の舩木村長は「人です。信頼関係あってこそ。私は田路さん、河合さんを会ったときから信じていますしかれらも信じてくれています」と話すと、田路CEOも河合執行役員もうなずいた。河合執行役員は「村長のイニシアチブがすごいし、支える役場のみなさん、ご担当のみなさん、議会のみなさんのサポートも非常に大きい。なにより小菅村への視察の数の多さがその証左」と応じた。
4月27日には、先行で稼働している無人コンビニ「SkyHubスマートストアこすげ」が、村内の「道の駅こすげ」に正式にオープンし、連携協定による過疎対策がさらに充実する。
プレスリリースにはこれまでの経緯や談話が掲載されている。内容は以下の通りだ。
~地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築を目指して~
山梨県小菅村(村長:舩木直美)と株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路 圭輔、以下エアロネクスト)、株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下NEXT DELIVERY)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口 義隆、以下 セイノーHD)は、2024年4月17日に、ドローンを含む次世代高度技術の活用による地方創生に向けた包括連携協定を締結いたしました。
エアロネクストと小菅村は、2020年11月に、ドローン配送事業の実現化およびドローン配送導入による地域活性化に向けた連携協定を締結し、ドローン配送導入による産業振興、地域雇用・人材育成等への貢献および社会・インフラの整備を推進してまいりました。
具体的には、小菅村ならびに村民の理解と協力のもと、2021年1月に小菅村内に設立した戦略子会社NEXT DELIVERYが、セイノーHDと連携し、既存の陸上輸送とドローン物流を繋ぎこんだ地域の新たな物流インフラ、新スマート物流SkyHub(R)を、日本で初めて2021年4月から試験的運用を開始し、2021年10月からは社会実装フェーズに移行させました。
橋立地区の閉店した商店の建物内を整えて新スマート物流SkyHub(R)の拠点、ドローンデポ(R)とし、現在は、SkyHub(R)Delivery(買物代行)、SkyHub(R)Eats(フードデリバリー)、SkyHub(R)Store (オンデマンドドローン配送)を展開しています。昨年8月からは、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送も開始するなど、小菅村の課題やニーズに合わせた配送サービスを提供しています。
さらに、住民の利便性、ならびに地域活性化による関係人口の増加に貢献するため、4月27日には、SkyHub(R)スマートストアこすげ(無人コンビニ)を道の駅こすげの物産館横に正式にオープンいたします。
なお、小菅村における新スマート物流SkyHub(R)の取組みは、デジタル田園都市国家構想の優良事例に採用され、全国で横展開が進んでいます。
本協定は、今後もさらにこのドローンをはじめとする次世代高度技術を活用した活動を推進し、相互の連携・協力により、地域発展に資する施策の推進を目的に締結するものです。
<連携協定の概要>
1.締結日
2024年4月17日
2.協定の内容
ドローンをはじめとする次世代高度技術の活用により、以下の事項において連携・協定する。
(1)農業・観光・産業・経済の振興に関する事項
(2)地域雇用、人材教育、人材育成および産業基盤整備に関する事項
(3)カーボンニュートラルと利便性が両立した持続可能な地域交通・物流の確保と住みやすい環境づくりに関する事項
(4)地域防災への貢献および新しい社会インフラの整備に関する事項
(5)その他、全ての当事者間にて協議し必要と認める事項
4月17日に実施された連携協定締結式において、代表三者が以下のとおりコメントしています。
<小菅村長 舩木 直美のコメント>
2020年11月より株式会社エアロネクストと連携協定を締結し約3年半が経過しましたが、その間多くの皆様のお力をお借りし、小菅村を取り巻く諸課題の解決にご尽力いただきました。その中心的な役割を担っていただいておりました株式会社NEXT DELIVERY、セイノーHDの皆様方と、改めて包括連携を締結できることを大変嬉しく、また心強く感じております。小菅村は全国の過疎、少子高齢化の先進地であります。小菅村がなんとかなれば日本は何とかなる。その想いで4者が今まで以上に強固な連携を図り、課題解決に取り組んで参ります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
<エアロネクスト代表取締役CEO/NEXT DELIVERY代表取締役 田路 圭輔のコメント>
2020年11月に連携協定を締結させていただき、2021年1月にNEXT DELIVERYを設立して以来、小菅村とは二人三脚で新スマート物流SkyHub(R)︎の社会実装を進めてきました。小菅村との出会いがなければエアロネクストグループの成長はもっと限定的なものになっていたと思いますし、感謝してもしきれない恩を感じています。この度、光栄にも連携協定を更新し、次のステージに進めることを心より嬉しく思います。しっかり小菅村の皆さまに寄り添って、新しい社会インフラの創造でお役に立つことができればと思います。
<セイノーHD執行役員 河合 秀治のコメント>
セイノーHDは、幹線輸送の強みを活かしたラストワンマイル配送領域において、生活様式の変化や構造変化に対応すると共に、買い物弱者対策、生活困窮家庭対策等の社会課題解決型ラストワンマイルの構築を積極的に推進・拡大しております。小菅村においては、物流2024年問題にいち早く対応し、昨年8月より、地域の物流各社様と中山間地域における物流の効率化、持続性の確保という共通認識のもと、小菅村におく旧商店を活用したデポ(集約拠点)に各社の荷物を集め、共同で配送するしくみを構築してまいりました。今後も同じ課題をもつ全国の地域にこの小菅モデルを展開し、住民の皆様が持続的に安心して暮せる環境づくり、住民サービスの維持、向上を進めてまいります。
この連携協定により、4者が相互に連携、協力し、村の課題や住民のニーズに沿って、ドローンを含む次世代高度技術の活用により、小菅村における地域の課題解決と地方創生に寄与してまいります。
君津市(千葉県)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区)、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)、KDDIスマートドローン株式会社(東京都港区)は2024年1月14日、君津市でドローン配送の実証実験を行った。実験をふまえセイノー、エアロネクストなどが進めるドローンや既存手段を融合させた新スマート物流の構築を進める。実験ではJR君津駅から13㎞南東の中山間地にある清和地域に住む住民の買い物支援のため、7㎞離れた宿原青年館との間で物流専用ドローンAirTruckを飛行させ、日用品やドリンクを運んだ。エアロネクスト、NEXT DELIVERYは能登地震の被災地でもドローン物流で災害対策を支援している。関係者が公表した発表資料は以下の通りだ。
千葉県君津市(市長:石井 宏子)と、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口 義隆、以下 セイノーHD)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路 圭輔、以下エアロネクスト)、株式会社 NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下 NEXT DELIVERY)、KDDI スマートドローン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長: 博野 雅文、以下 KDDI スマートドローン)は、2024 年 1 月 14 日に、君津市の清和地区において次世代高度技術の活用により新しい物流サービスの構築を目指した「中山間地におけるドローン配送」の実証実験を実施し、報道関係者に公開しました。
昨年 11 月には君津市、セイノーHD、NEXT DELIVERY の親会社である次世代ドローンの研究開発スタートアップ、株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区、代表取締役CEO田路 圭輔、以下エアロネクスト)、株式会社テラならびに KDDI スマートドローンの 5 者は、ドローンを含む次世代高度技術の活用による地域共創に向けた連携協定を締結しており、新たな物流のビジネスモデルの構築をめざし、連携して活動しています。
今回の実証実験は、NEXT DELIVERY と KDDI スマートドローンが連携して、セイノーHD とエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流*1”SkyHub®“
*2 の社会実装
の検討に向けて行われたもので、清和地域拠点複合施設に仮設のドローンデポを設置し、ドローンを活用し日用品のドローン配送サービスを実施しました。
1.背景と目的
君津市は、都心に隣接した立地でありながら、人口は平成7年の 93,216 人をピークに令和2年には82,206 人に減少しています。また、市の老年人口(65 歳以上)の割合は令和2年には 32.1%となっていますが、中山間地域の清和地区や上総地区では 50%を超え、今後もさらに上昇することが見込まれおり高齢者の買物支援が地域課題として挙げられています。さらに、物流の 2024 年問題の影響により、中山間地域における輸配送の質の維持が困難となり、地域住民の利便性の低下が危惧されています。
このような背景を受け、今回、清和地区において、地域課題の一つである中山間地域における買い物支援等の新たな取り組みに向け、住民の理解度向上、定期飛行に向けた課題の洗い出しを目的として実証実験を行いました。
2.実施内容
今回の実証実験では、買い物代行配送サービスを実施しました。
清和地区に住む、1世帯を対象に、子供が風邪をひいてしまった状況を想定し、お子様向けの緊急物資輸送の配送を実施しました。(お母さんが買い物に出かけられない状況を想定)住民の理解度向上、地域課題の洗い出しを目的として清和地域拠点複合施設を仮設のドローンデポ®*3 とし、宿原地区まで日用品のドローンで配送いたします。
今回のドローン配送の実証はエアロネクストが開発した物流専用ドローン AirTruck*4 を使用し、機体の制御には、KDDI スマートドローンが開発したモバイル通信を用いて機体の遠隔制御・自律飛行を可能とするスマートドローンツールズ*5 の運航管理システムを活用しました。
清和公民館から宿原青年館までの片道約 7 kmの距離を約 21 分で、子供の風邪を想定した日用品、ドリンクなどの詰め合わせをドローン配送いたしました。ドローンにより配送された荷物を受け取った眞板高子さんは、「すごく楽しかった!自分の住んでいるところも孤立する可能性があるので、その時は本当に助かると思う。色々な課題が解決できるといい。」とコメントしています。
今後も地域住民への理解促進及び地域課題の解決へ向けドローンをはじめとする次世代高度技術を活用しドローン配送と陸上配送を融合した新スマート物流”SkyHub®“の社会実装に向けた検討を進めてまいります。
※本実証実験は、一般社団法人環境普及機構により、令和4年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金交付対象事業(社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業)として採択されています。
*1 新スマート物流
物流業界が共通に抱える人手不足、環境・エネルギー問題、DX 化対応、等の課題を、デジタルやテクノロジーを活用しながら解を探究し、人々の生活に欠かせない生活基盤である物流を将来にわたって持続可能にするための官民での取り組み。ラストワンマイルの共同配送、陸送・空送のベストミックス、貨客混載、自動化技術、等々、業界内外の壁を越えたオープンパブリックプラットフォーム( O.P.P.)による共創で実現を目指す。
*2 新スマート物流 SkyHub®
エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存の陸上輸送とドローン物流を繋ぎこみ、地上と空のインフラが接続されることで、いつでもどこでもモノが届く新スマート物流のしくみ。ドローン配送が組み込まれた、オープンかつ標準化したプラットフォームで、ドローンデポ®を拠点に、車とドローンを配送手段として、SkyHub®TMS をベースに、SkyHub®Delivery(買物代行)、SkyHub®Eats(フードデリバリー)、SkyHub®Medical(医薬品配送)、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送など、地域の課題やニーズに合わせたサービスを展開、提供する。SkyHub®の導入は、無人化、無在庫化を促進し、ラストワンマイルの配送効率の改善という物流面でのメリットだけでなく、新たな物流インフラの導入であり、物流 2024 年問題に直面する物流業界において、物流改革という側面から人口減少、少子高齢化による労働者不足、特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対策、物流弱者対策等、地域における社会課題の解決に貢献するとともに、住民の利便性や生活クオリティの向上による住民やコミュニティの満足度を引き上げることが可能になり、地域活性化を推進するうえでも有意義なものといえる。
*3 ドローンデポ®
既存物流とドローン物流との接続点に設置される荷物の一時倉庫であり配送拠点。
*4 物流専用ドローン AirTruck
株式会社エアロネクストが株式会社 ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY®*6 により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機。日本では各地の実装地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高 1300m、外気温-15°Cという環境下の飛行実績をもつ(2023 年 11 月)。
*5 スマートドローンツールズ
KDDI スマートドローン株式会社が提供する、ドローンの遠隔自律飛行に必要な基本ツールをまとめた「4G LTE パッケージ」に、利用者の利用シーンに合った「オプション」を組み合わせて利用できるサービス。「4G LTE パッケージ」は、全国どこからでもドローンの遠隔操作・映像のリアルタイム共有を可能とする「運航管理システム」や、撮影したデータを管理する「クラウド」、データ使い放題の「モバイル通信」、どのエリアでモバイル通信を用いた目視外飛行が可能か、事前に確認できる「上空モバイル通信エリアマップ」などのツールをまとめて提供している。
*6 機体構造設計技術 4D GRAVITY®
飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させるエアロネクストが開発した機体構造設計技術。エアロネクストは、この技術を特許化し 4D GRAVITY®特許ポートフォリオとして管理している。4DGRAVITY®による基本性能の向上により産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がる。
ドローン配送をトラックや鉄道など既存交通手段と組み合わせて、効率性、利便性の向上と環境負荷の低減を図る「新スマート物流」の実証実験が、群馬県安中市で行われた。市内の3カ所にドローンの離着陸地点を設置し、ドローンが3地点を巡回し、荷物を届けては受け取り、次の目的地に届けた。野菜を届けた先では医薬品を積み込むなど空荷にならない配送の効果を検証した。あわせて群馬県外の漁港で水揚げされたアンコウをタクシー、新幹線とリレーして、調理施設のある拠点に運び、調理した弁当をドローンで届ける配送も試した。ひとつの実験としては多くの要素をぎゅっと詰め込んでおり、関係者は「目標としていたことをすべて遂行できた」と話した。今後、成果や課題を洗い出す。
実験は安中市、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、株式会社エアロネクスト(東京)が実施。実験の拠点会場となった旧九十九小学校の講堂には「安中市ドローン配送実証実験出発式~10 年後、 20 年後の未来の為に」と書かれた横断幕が掲げられ、あいさつに立った安中市の岩井均市長らが実験の趣旨を強調した。3者は2022年 10 月 4 日にドローンを含む次世代高度技術活用で地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた包括連携協定を結んでいる。この実験は協定に基づく取り組みの第一弾だ。国土交通省の「CO2 削減に資する無人航空機等を活用した配送実用化推進調査事業」を活用した。
地域自主組織や地元事業者と連携し、地元の課題を解決することが特徴で、採算性の検討を軸に、貨客混載、オンライン診療の有効性を検証した。
実施したのは2月8日、安中市内の廃校となった旧・九十九(つくも)小学校、碓氷病院、ゴルフ場THE RAYSUMを結ぶルートを設定して行われた。旧九十九小学校を配送拠点みたて、周辺で収穫された野菜を積み、ゴルフ場に配送。野菜を届けて空いた荷物室にゴルフ場のクラブハウスにあるキッチンで調理した弁当を積んで、碓氷病院に届けた。碓氷病院では届けられた弁当を自転車で近所のスーパーに運んだ。また碓氷病院で弁当をおろして空いた荷室に、病院が院内薬局で処方した医薬品を乗せ、遠隔診療をした患者の待つ旧九十九小まで届けた。
なお、ゴルフ場THE RAISUMには、九十九小学校から運ばれた野菜とは別に、新潟県糸魚川市から、地元特産のアンコウも届いた。アンコウは糸魚川で水揚げされ鮮魚店で並んでいたもので、スタッフが地元のタクシーを使ってJR糸魚川駅までお運び、そこから安中榛名駅まで新幹線で運び、駅からゴルフ場まではセイノーグループが運んだ。ゴルフ場に届いたアンコウは、ゴルフ場内のクラブハウスのシェフがキッチンで調理して唐揚げにして、弁当おかずに加わった。
また、ゴルフ場では、クラブハウス前から、場内のあずまやまでできたてのラーメンを運ぶ実験も実施した。ラーメンはラップをかけて容器にいれて、ドローンに納められた。あずまやに届けられたラーメンは安中市の岩井均市長が試食し、「ラーメンはあんかけのサンマーメンで、あたたかくできたてそのものでした」と感想を述べた。
エアロネクストの田路圭輔CEOは「住民の利便性向上にどの程度貢献できるのかをこれからも注視していきたい。また地域の活性化には、CO2削減など環境負荷の低減を伴うことが重要だと思っていて、こちらも地道に取り組みたい」と話した。
セイノーホールディングスの河合秀治執行役員は、ドローンが到着する様子を幼稚園児たちが見物していたときの様子について「あの子たちが大きくなったときに、ドローン配送が職業として成り立っている可能性があり、それを選ぶ子もいるかもしれないと想像していた。実際に見ることも、実証実験を行う意味のひとつだと思う」と目を細めた。
福井県敦賀市で10月8日、ドローンを組み入れた新スマート物流「SkyHub」の住民向け配送サービスが始まった。敦賀市、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県)、KDDIスマートドローン株式会社(東京)、株式会社エアロネクスト(東京)、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)が、一帯の配送拠点となる「ドローンデポ」を置く愛発(あらち)公民館で出発式を行い、第一便が飛んだ。エアロネクストなどによるSkyHubサービス提供は、山梨県小菅村、北海道上士幌町に続き3例目となる。
敦賀市でのサービスは、JR敦賀駅から東南の一帯に広がる中山間地、愛発(あらち)地区で始まった。11ある集落のうち、「疋田」、「奥野」、「曽々木」、「杉箸」の4集落が対象だ。3集落にはドローンの停留所「ドローンスタンド」が整備されている。利用者は専用の電話番号に電話で注文をする。早ければ注文から30分で、最寄りのドローンスタンドに注文の品物が届く。トラックで自宅に届けるサービスも併用する。注文できるのは、ドローンデポに在庫のある食品を詰め合わせた「おかしセット」、「朝食セット」、「洋風朝食セット」で、商品群は順次拡大する。デポはSkyHub Storeとして地域のコンビニに育てる計画で、今後、配送拠点にとどまらず、立ち寄ればその場で買えるようにもする。
注文方法も不慣れな初心者も使いやすいアプリを開発したうえで、タブレットから注文できるようにする。サービスは、対象地域にいれば住民でなくても利用できる。配送料は1回あたり300円で、祝日をのぞき、原則火、水、木、金曜日の午前9時~午後5時が営業時間だ。
この日の出発式では、敦賀市の渕上隆信市長が「便利になるととても喜んでいます。ゆくゆくは地域の防災にも活用できないか考えたい」と期待を表明した。セイノーHD事業推進部新スマート物流推進プロジェクト課の須貝栄一郎課長は「愛発モデルとして今後展開させたい」と明言。KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長は「このサービスでは遠隔物流のシステムと物流専用ドローンの統合を図りました。今後、地域配送のひとつの形になると考えています。われわれは『叶えるために、飛ぶ』を掲げており、このサービスを全国に広めていきたい」と抱負を述べた。
エアロネクスト代表取締役CEOで、NEXT DELIVERY代表取締役でもある田路圭輔氏は、「この地域では2年前にコンビニが撤退してから買い物に不便を感じる住民が多いと伺いました。アンケートでも8割の方が不便を感じていると回答しています。このサービスを導入することでその不便の解消につなげて参ります」などと決意を表明した。
出発式のあと、第一便が注文の品を積んだドローンがデポを飛び立ち、5.2キロ離れた杉箸集会所に置かれたドローンスタンドに向かった。ドローンは10分ほどで杉箸のドローンスタンドに到着し、注文者や近所の住民が見守る中で荷物を下ろすと、周囲から拍手が起きた。注文者は「このあたりはコンビニがなくなってから買い物が不便になっていました。ドローンのサービスはこの地域をもう一度便利にしてくれるのではないかと期待しています。荷物もほら、ぜんぜん傾いたり傷んだりしていません。今後、クスリなんかも運んでもらえるとうれしいです」と喜びをかみしめていた。
ドローンが荷物を届ける様子を見ていた敦賀市の渕上市長は「便利ですね。冬には雪が降る地域ですが、実証実験のときに雪が降る中を飛んだこともありまして可能なこともあるのかなと期待しているところです。それと、キャンプ場に注文した食材をドローンで運んでくれるとなると、それを楽しみに足を運んでくれる観光客が増えくれるかもしれないですね。期待は高まるばかりです」と話した。
3例目となった敦賀市での新スマート物流のサービス開始は、KDDIスマートドローンにとっては、運航管理システムを統合させて初のサービス提供となった。エアロネクストがセイノーHDなどと開発、提供を進める新スマート物流は、今後需要も広がりに応じて事業規模が拡大する見通しで、管理業務のシステム化を進めていて、敦賀市でのサービスは、運航管理システムを組み込んだことで、新スマート物流にとって新しい一歩を踏み出した節目の船出となった。
KDDIスマートドローンとエアロネクストは9月20日、ドローン配送サービスの社会実装に向けた業務提携契約を締結している。KDDI株式会社(東京)も、新事業共創を目的とした、「KDDI Open Innovation Fund 3号」(運営者:グローバル・ブレイン株式会社)を通じてエアロネクストに出資するなど関係が緊密化している。
エアロネクストとKDDIスマートドローンの業務提携の内容は、第一が、ドローン配送サービスの自治体導入と導入のための実証実験の共同実施、第二が、ドローン物流に必要な機体・モバイル通信・運航管理システムの販売・導入での連携強化だ。すでに2022年3月に新潟県阿賀町でドローン配送の実証実験を実施し、2022年6月にエアロネクストがACSLと開発した物流専用機「AirTrack」とKDDIスマートドローンが開発した運航管理システムなどツールをセットにした「スマートドローンツールズ」を組み合わせたドローン配送パッケージ「AirTrack Starter Pack」の提供を始めている。
敦賀でこのシステムと統合したサービスを提供することで自治体での運用例ができたことになり、今後地方での導入にはずみがつくことが予想される。
また、敦賀市のSkyHubサービスは順次、拡充する。当面はデポのストック商品を電話注文で届ける。専用アプリの開発も進めている。11月には、デポにない商品も、提携先スーパーから取り寄せて届ける買い物代行サービス「SkyHub Delivery」を始める。株式会社出前館(東京)が運営する、宅配ポータルサイト「出前館」のアプリを活用し、提携先の飲食店の食べ物をドローンスタンドか自宅に届ける「SkyHub Eats」も追加する。閉校して商品ラインアップの拡充も進める。
11月にも始めるアプリ注文に対応し、スマホ操作に不慣れな高齢者を想定して、スマホ講習会も実施する。講習は11月以降も随時実施する計画で、利用者からの意見をサービスの改善につなげる仕組みもつくる。このころには愛発地区にある11の集落すべてにドローンスタンドが整う見通しだ。
田路エアロネクストの田路圭輔代表は「SkyHub Store」愛発は、地域のコンビニとして機能することを目指します」と宣言し、ひとつひとつ着実に積み重ねていく。
自動運転バスを運航させている茨城県境町が、自動運転バス、自動航行の性能を備えるドローン、トラックなど既存の物流手段を組み合わせて、使い勝手のいい物流サービスを実現する取り組みが11月にも始まることになった。取り組みを進める境町、株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、BOLDLY株式会社(東京)、株式会社セネック(東京)は10月3日、境町役場で連携協定を結んだ。境町の橋本正裕町長は締結式の中で、「公共交通が脆弱でも住み続けられる町をつくりたい」と意気込みを語った。式典後は焼き立てパンを自動運転バスとドローンでリレー輸送して役場まで運んだり、小学生の待つ学校に町の名産のせんべいを運んだりするなど配送を実演した。今後、実証を重ね、11月にサービスを開始する。サービス開始にあたっては、対象エリアの住民から希望者を募り、利用体験のフィードバックをサービスの品質向上に生かす。2023年度中にもいわゆる「レベル4」の飛行を含めた配送サービスの実現を目指す。
境町では2020年以降、自動運転バスの定時運行を導入し町民の移動手段として定着している。この自動運転バスを支えている遠隔管理システム「Dispatcher」に、ドローンの管理も加えることで、無人運転バス、ドローンの両方の遠隔管理を可能にする。さらにトラックなど既存の物流手段も有効に組み合わせて最適化し、無人バス、ドローン、トラックの連携させた境町版の新スマート物流構築を目指す。
利用の対象は町内全域の住民で、複数の町内の商店が参加を表明している。利用者はスマートフォンなどで対象の食料、日用品などを注文をすると早ければ30分以内で届くことも可能になる。政府の進める「デジタル田園都市国家構想」対象事業だ。
連携協定は、次世代高度技術の活用を通じて、観光や産業振興、物流課題の解決、地域防災への貢献、地域の雇用拡大の実現を図ることにしている。荷物を集積し、ドローンが集荷する「ドローンデポ」は整備をはじめている。
境町に導入している自動運転バスは貨客混載を実施し、町内の住民向けの商品を2か所の連携拠点まで運ぶ。ドローンは、自動運転バスから積み替えられた荷物を載せて届け先まで飛行する。なお市街地への届け出は従来通りトラックが担い、市街地の周辺の農村部への配送をドローンが担うなどの役割分担を想定している。
連携協定の締結式で境町の橋本正裕町長は、「境町は公共交通が脆弱なため、動けるうちに嫁いだ娘の近くに引っ越す、といった人口減少が起きています。そんな困りごとをなくしたいというのがこの連携協定の目的です。一人暮らしでも生活に困らない町にしたい。困っている人を助けて、住み続けられる町にしたい。好きな町に住み続け環境を提供したい」と述べた。
ドローンはエアロネクストが株式会社ACSL(東京)などと共同開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」を使う。荷物を機体内部に格納するため飛行時に荷物が空気抵抗の障害にならない設計を採用するなど、物流に特化した工夫や機構を搭載している。ドローンと自動運転バスの運行管理はBOLDLYが開発したシステム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を使う。自動運転バス用の遠隔管理システムとしてスタートしたシステムで、9月にドローンの監視もする「Dispatcher for Drone」を開発したことで一元管理が可能になった。
またサービス開始にあたって、利用を想定している農村部の住民に参加してもらう会員制度をつくる。利用体験をフィードバックしてもらい、より利便性の高いサービスに品質を向上させていく仕組みにする計画だ。
締結式後には、デモンストレーションを実施。役場に近い町立境町小学校では、全校児童が見守る中、ドローンが飛来。自動は上空にドローンが姿を表すと、立ち上がって指をさすなど「すごい、すごい」と笑顔で歓迎した。また、自動運転バスとドローンとの連携の実演も実施。自動運転バスとドローンとが荷物をリレーするランデブーポイントとなる「道の駅さかい」で、自動運転バスが運んできたパンを、係員がドローンに搭載した。ドローンは道の駅から境町役場に隣接する水害避難タワーまで届けると、待機していた橋本町長がそれを受け取り、味を満喫した。
同日発表されたプレスリリースは次の通り
茨城県の境町(町長:橋本正裕)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路圭輔、以下「エアロネクスト」)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下「セイノーHD」)、BOLDLY 株式会社(ボードリー、本社:東京都港区、代表取締役社⻑兼CEO:佐治友基、以下「BOLDLY」)および株式会社セネック(本社:東京都新宿区、代表取締役:三浦義幸、以下「セネック」)は、2022 年 10 月に、ドローンや境町で定常運行する自動運転バスを、トラックなどの既存物流と組み合わせて物流を最適化する「新スマート物流」の実用化に向けた実証を開始し、2023 年度中をめどに、日本初となる市街地でのレベル4のドローン配送サービスの実装を目指します。5者は、この取り組みを進めるため、2022年10月3日に連携協定を締結しました。
今回の取り組みでは、境町の住民がスマホアプリで注文したスーパーの日用品や飲食店の料理などを、自律飛行するドローンや自動運転バス、トラックなどを組み合わせて効率的に配送する物流システムの構築を目指し、法制度に沿ってドローンの飛行区域を段階的に拡大しながら実証を進めます。まずは、2022年10月以降に、境町でドローンを2台導入し、充電などが可能なドローンスタンド®(3カ所・予定)および荷物の集約拠点となるドローンデポ®(1カ所)を整備した上で、無人地帯での目視外飛行や市街地での目視内飛行の実証を行い、住民の理解促進やルートの検討を進めます。
2022 年末に予定されているドローンのレベル 4 飛行解禁以降は、無人地帯と市街地でドローンの目視外飛行の実用化に向けた実証を行います。ドローンが飛行できないエリアでは、自動運転バスやトラックを活用して配送を行います。テクノロジーを活用して物流を最適化することで、将来的には、注文から30分以内に商品を受け取れる物流システムの構築を目指します。
日本では、過疎化や地方における公共交通の維持、物流業界の人手不足などが課題となっています。境町は、地方が抱える社会課題の解決に向けて、住民や観光客が移動手段として活用できる自動運転バスを導入して公共交通の維持や地域経済の活性化を推進するなど、積極的な取り組みを進めており、2022年度の補正予算において、ドローンの研究開発およびオーダーメードを行う拠点施設の建設(約4億円)を決定しました。このたび 5者が連携することで、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムを構築し、物流業界の課題解決やCO2削減を図るとともに住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指します。
なお、ドローンおよび自動運転バスの運行管理は、BOLDLYが開発した運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」で行います。BOLDLYが2022年9月に開発した「Dispatcher」のドローン向け機能(「Dispatcher for Drone」)により、「Dispatcher」を自動運転バスとドローンの両方に接続して一元的に管理することが可能になります。これにより、運行管理業務の効率化やコスト削減が実現できる他、将来的には、関連するデータ活用なども期待できます。「Dispatcher」は、2020年11月の境町の自動運転バス導入時から利用されており、境町には自動運転バスの運行に必要なシステムおよびオペレーション体制が整っています。これを土台に、スムーズにレベル4のドローン配送サービスを実装することを目指します。また、今後は、全国の他の自治体と連携して、境町以外の地域を飛行するドローンの遠隔監視を行うことも視野に入れ、取り組みを推進します。
この取り組みは、内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)の事業に採択されています。
■各者の役割
・境町:新スマート物流を含むデジタル田園都市国家構想事業の事業主体、企画統括
・エアロネクスト:境町での新スマート物流実装に向けた各種取り組みの全体統括、物流専用ドローン「AirTruck」の提供
・セイノーホールディングス:共同配送モデルの構築、自治体や各事業者との調整、配送ノウハウの提供
・BOLDLY:「Dispatcher」の提供、境町におけるデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)事業の全体統括
・セネック:境町に設置した遠隔監視センターでの自動運転バスおよびドローンの運行管理
■使用するドローンについて
エアロネクストが物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量(ペイロード)5kg、最大飛行距離 20kmの物流専用ドローン「AirTruck」*を使用します。
物流専用ドローン「AirTruck」エアロネクストが株式会社 ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY®により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティー、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機です。試作機は日本各地の実証実験で飛行し日本 No.1(エアロネクスト調べ、2022 年9月時点)の飛行実績を持ちます。