埼玉県八潮市の道路陥没で、対応にあたっていたドローン運航業務のチームが2月5日、下水管内でドローンを飛行させた。このうち株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)が開発した超狭小空間点検ドローンIBIS2(アイビスツー)が「キャビンらしきもの」を発見した。埼玉県が発見した事実を公表した。埼玉県によるとこの飛行で、下水管内には事前に推測されていた堆積物があり、管内をふさいでいることも分かったという。現場では一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が統括し、屋内空間の点検に使われるドローンが運用された。IBIS2のほかブルーイノベーション株式会社(東京)が運用するスイス、Fliabirity社の屋内点検用球体ドローンELIOS3も運用されている。埼玉県は2月6日以降も、ドローンで状況の確認を進める。
埼玉県によると、IBIS2が埼玉・八潮の陥没対策として飛んだのは2月5日午前10時25分から45分の20分間。陥没現場より下流方向に600mほどのところにあるマンホールから機体を投入した。もともとは、下水管の流れをせき止めているものがあると推測されていたため、この下水管内の捜索を邪魔している堆積物の有無や状況を確認するための飛行だった。IBIS2はマンホールから陥没現場方向に400~500mのところに、金属製の白っぽい構造物が、下水管の水につかり一部が水面に出ているのを見つけた。
埼玉県はIBIS2が飛行後に撮影した映像を確認し、同日午前11時34分に「キャビンらしきもの」と判断した。「らしきもの」と含みを残しているのは、「原型をとどめておらず正確な判断ができないこと、該当するクルマであると断定できないこと」によるという。
またIBIS2はこの「キャビンらしきもの」からさらに陥没地点近くまで進んだ場所で、下水管をふさぐ堆積物も確認した。ただし堆積物そのもがなにかはわかっていない。また人の姿もこの時点では確認できていない。
埼玉県の大野元裕知事は2月5日夕方の会議や記者会見で「これまでも何度かドローンを挑戦してうまくいかなかった。今回、下水管の水位が下がり下流側から飛行ドローンを投入することができた。これは支障となっているものを確認するためだった」「われわれとして力を尽くし、また多くのみなさまの協力を頂きながら、これまでの事故から一週間で手がかりがほぼなかった。今回ようやくの一歩前進。奇跡を信じる」「今回超狭小空間点検ドローンによる管渠(かんきょ)内の確認ができ、キャビンらしきものを発見した。引き続きドローンを使用してまきこまれた方の消息などの確認をお願いしたい」などと述べた。
複数の情報を総合すると、現地には能登半島地震の被災現場でも状況確認、物資搬送などで活躍したJUIDAのドローンチームが八潮の現場にかけつけている。JUIDAの統括のもと、IBIS2のLiberawareのほか、内部に損傷を及ぼさないよう機体を球体ガードで覆った屋内点検用ドローン「ELIOS3(エリオススリー)」も満ち込まれ、ブルーイノベーションが飛行させているとみられる。
現地では、「速い水流、土砂、人が活動できる濃度を超えた硫化水素」が作業を阻んでいる。堆積物により下水管内の水流がせき止められていることは、下水管内で鉄砲水が起きるリスクと背中あわせで、人が立ち入れない危険の要因となる。今回、堆積物や「キャビンらしき」ものの場所の特定ができたことで、今後は肝心の人の確認や下水道機能の確保、周辺住民の生活確保などへの手順策定などの対応を加速させることになる。
株式会社東京証券取引所(東京)上場部は6月25日、取引終了後に、小型ドローンの開発を手掛ける株式会社Liberaware(千葉市)の新規上場を承認したと発表した。上場予定日は7月29日、市場はグロース市場で、業種は「精密機械」に分類される。ドローン関連事業を本業にする企業の上場で精密機械に分類される企業は初めてで、東京電力福島第一原発の格納容器内点検や、能登半島地震での倒壊家屋内点検ほか豊富な屋内狭小空間の点検実績を土台に事業拡大を図ることになる。
Liberawareはドローン産業関係者の間では名の通った日本に拠点を構える機体開発事業者のひとつ。高性能小型ドローンIBIS(アイビス)を活用した事業で知名度を広げ、ゼネコン、電力などエネルギー、インフラなどでの産業で活用も拡大している。
廃炉作業が進む東京電力福島第一原発の格納容器内の点検作業では、東京電力が作業で活用したデバイスがLiberaware製であることを記者会見で認め知名度が広がった(このとき使われた機体は「IBIS」だった)。2021年にはJR東日本スタートアップ株式会社、JR東日本コンサルタンツ株式会社と点群データ取得や鉄道・インフラ業界のデジタル化事業を展開する合弁会社、CalTa株式会社(東京)を設立し、現在、デジタル化ソフトウェアTRANCITYを提供していることで知られる。
社会貢献にも積極的で2024年元日に発生した能登半島地震では一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の呼びかけに応じて輪島市などへの災害支援対策にあたり、倒壊家屋内の点検に同社の技術を活用した。
同社が開発したIBIS2は2023年6月に千葉・幕張で開かれたドローンの展示会「JapanDrone2023」ですぐれたプロダクトであったことで表彰された。
ドローン関連事業を本業の柱に位置付ける企業としては、株式会社ACSL(東京、分類:機会)ブルーイノベーション株式会社(東京、分類:情報・通信)に続く上場となる。
狭小空間点検技術開発の株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)は1月11日、輪島市<石川県>での能登半島地震の災害対応活動の様子を報告した。リベラは1月6、7日に輪島市内でJUIDAに合流し、狭小空間点検ドローンIBISを使い、倒壊家屋の内部や床下を調査したと報告している。同社は「今後も必要なタイミングで支援する」と話している。
リベラは、狭くて、暗くて、危険な屋内空間の点検、計測に向けた小型ドローンIBISシリーズの開発で知られる。今回もIBISの、GPSの届かない空間への進入が可能な特徴を活用し、輪島市内の倒壊家屋内部や、倒壊リスクがあるため人が立ち入れない設備の内部を調査した。これによりドローンがなければ確認できなかったり、危険を冒して分け入るしか状況把握の手段がなかったりする屋内の様子を把握でき、作業に貢献した。
リベラは活動を以下のように報告している。
(以下発表より引用)
■支援活動について
期間:2024年1月6日(土)~2024年1月7日(日)
場所:石川県輪島市内各所
内容:・倒壊した家屋内部の現状調査
・家屋床下の現状調査
・倒壊リスクのある大型商業施設内部の現状調査
(引用以上)
リベラは「この度の令和6年能登半島地震により、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。今後も、2次災害抑止のための被災地域の建造物内部調査など必要なタイミングでの支援を継続し、当社のミッションである『誰もが安全な社会を作る』ことに向け邁進してまいります」と話している。