福島RTFと米セントポール島の試験施設が提携視野に会談 ドローン開発で国境を越えた役割分担も

2019.05.03

ドローンやエアモビリティーの開発に不可欠な実験に関連し、日米の大型テストフィールド同士が提携に向けた動き出したことが分かった。3月中に両者の担当者が福島県の福島ロボットテストフィールドで対面しており、5月にも再会談が行われる見込みだ。国境を越えたテストフィールド同士の提携はこれまでに例がない。

実現すれば世界で初めての試み

 提携に向けて動き出したのは、日本の福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)と、米アラスカ州セントポール島の広大な試験空域をもつセントポール・エクスペリメンタル・テストレンジ「スペクター・コンプレックス(Spectre Complex)」だ。

 福島ロボットテストフィールドは陸海空のドローンの試験に対応する設備を整えていて、専用滑走路、ドローン用通信塔、気象観測機能、レーダーによるセキュリティなどが備わる。10月にはドローンを飛ばせるゲージが完成する。一方、米セントポール島のスペクター・コンプレックスは、世界最大規模となる500キロメートル級のテスト空域を備え、大型機の試験が可能だ。また雨、雪など過酷な気象条件下での試験もできる。

 提携が実現すれば、日本で実施した大規模開発を、スペクター・コンプレックスで実証するなどの役割分担に道を開く。将来的には直線距離で約4000キロの長距離飛行が視野に入る。

 両者は3月に福島ロボットテストフィールドで会談を実施。会談には「スペクター・コンプレックス」から、施設を管理するACSPI(アリュート・コミュニティ・オブ・セントポール島)部族政府のプロジェクトマネージャー、ディラン・コンデュッツィ(Dylan Conduzzi)氏、同施設と提携している大型物流ドローン開発の米Sabrewing Aircraft(セイバーウィング・エアクラフト社、カリフォルニア州)CEOのエド・デ・レイエス(Ed De Reyes)氏らが来日した。また両者の会談をとりもった、ドローンソリューションを手掛けるアイ・ロボティクス(安藤嘉康代表)の斎藤和紀CFOらも同席した。

 会談でディラン・コンデュッツィ氏は「スペクター・コンプレックスにはドローンの試験のためのあらゆる環境が整っている」と説明。これに対して福島ロボットテストフィールド側から福島県商工労働部ロボット産業推進室長の北島明文氏が「ここでテストをし、ルールづくりをし、国に提案するする機能を持っています」と役割を説明した。

 また同席したセイバーウィングのエド・デ・レイエスCEOが、「航空機のテストと認証に31年間に携わっているが、スペクター・コンプレックスは大型UAVの試験空域として最高の環境を持っている。今後、ここで設計に関する研究開発を行うとともに、航空機の認証もここで行う」と補足した。

 セイバーウィングは、ペイロード800ポンド (約360kg) の「ライガル (Rhaegal) 」や、4,400ポンド (約2,000kg) の「ワイバーン (Wyvern) 」の開発を手掛けていて、太平洋横断も目指している。ドローンのスタートアップ特化型ファンド、DroneFund(創業代表パートナー、千葉功太郎氏、共同代表パートナー大前創希氏)から資金調達をしているなど日本との関係も深い。日米テストフィールドの提携が実現すれば、セイバーウィング製の機体による、両フィールド間の試験飛行も現実味を帯びる。

 この日の会談は双方の意思確認の色彩が濃く、具体的な提携のドキュメントに関わる意見交換はなかったが、「お互いに協力をしていきたい」(ディラン・コンデュッツィ氏)、「こういう機会を持てたことは大変よろこばしい」(エド・デ・レイエス氏)、「いずれセントポール島でも会談を」(北島氏)と終始前向きな意見が交わされた。会談後は福島ロボットテストフィールドの施設を周回し、セントポール島側からの出席者は「整った施設は魅力的だ」と感想を話していた。

 関係者によると、米側代表団は今月中にも再来日する見通し。会談が行われれば、提携に向けた動きが加速する可能性がある。

福島ロボットテストフィールドで握手を交わすスペクターコンプレックスを管理するACSPIプロジェクトマネージャーのディラン・コンデュッツィ氏(左から2人目)と、福島県の北島明文室長。北島氏の右は米セイバーウィングのエド・デ・レイエスCEO
福島ロボットテストフィールドで行われた会談では前向きな意見が交換された
会談後にテストフィールド内を視察する会談参加者
セイバーウィングが開発しているペイロード4,400ポンドの広域物流ドローン「ワイバーン(Wyvern)」の模型。垂直離着陸をするハイブリッド機で、パレット積載貨物やばら積み貨物、燃料、水などを運ぶ能力を備える
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