一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が能登半島の豪雨災害への対応を開始した。自衛隊と連携し孤立集落へのドローンによる物資配送などにあたる。株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)、株式会社ACSL(東京)がすでに現地入りし、株式会社エアロジーラボ(AGL、箕面市<大阪府>)、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)が近く合流する。ブルーイノベーション株式会社(東京)も一両日中に加わる。
JUIDAは9月23日に被害の大きい輪島市に入った。翌9月24日にはNEXT DELIVERY、ACSLが合流した。株式会社エアロジーラボ(箕面市<大阪府>)、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)も9月25日中に現地入りし、ブルーイノベーション株式会社も追って合流する見通しだ。
このうち事業者として現地にもっともはやく合流したNEXT DELIVERYは小菅村、小松市(石川県)のそれぞれから現地で運用していた物流用機Air Truckを持ちこんだ。2機を持ちこんだのは、孤立集落への物資配送の輸送頻度が高くなることが見込まれるためだ。1月に発生した能登半島地震の震災対応のさいには小菅村の機体を持ちこみ、医薬品の輸送で被災地を支援した。同社はドローン配送を平時と有事の両面で活用するフェーズフリー活用に取り組んでいる。
輪島市中心部では9月21日午前9時10分までの1時間に120ミリの大雨が記録され、気象庁が輪島市、珠洲市、能登町に大雨特別警報を発表した。その後22日午前10時10分、気象庁金沢地方気象台が大雨特別警報を大雨警報に切り替えたと発表した。
国土交通省は9月22日午後3時に輪島市、珠洲市、穴水町、能登町を国土交通大臣による航空法第132条の85による緊急用務空域公示第2号に指定した。ドクターヘリや救急搬送などの活動を妨げることにならないよう、国、地方などの要請を受けていないドローンは現地での飛行させることができない。一方、孤立集落への物資搬送などにドローンの活用は期待されていて、石川県は9月24日、JUIDAに対し支援を要請した。
JUIDAは石川県の要請より前に現地への急行を準備し、9月23日には現地に入りし、自衛隊など関係機関と調整を開始。24日の石川県からの要請を受けて具体的な取り組みを進めることになった。25日にはひとつの孤立集落への物資輸送を開始する準備を進めていたが、幸いにもこの集落への陸路が開通したためこの集落への配送は陸路にまかせ、ドローン配送は別の集落への取り組みに切り替えることを決め、次の対応を練っている。
JUIDAのもとにはドローン事業者から協力の申し入れも届いており、JUIDAが現地の需要とすりあわせながら、対応を検討している。
能登地方では9月25日も不明者の捜索が続けられ、この日輪島市で3人がみつかり、いずれも死亡が確認されたことから、豪雨の死者は計11人となった。午後4時現在、5人の行方がわかっていない。また輪島市、珠洲市、能登町の16カ所の集落が孤立し、157人が取り残されている。
大阪府は2月3日、いわゆる空飛ぶクルマの社会受容性向上を目指し「空飛ぶクルマシンポジウム~私たちのくらしはどう変わる!?~」を大阪・天満橋の大阪府立労働センター(エル・おおさか)内「エル・シアター」で開催する。参加は無料。空クル事業者のほか、クイズ番組などでの人気のQuizKnockの鶴崎修功さん、山本祥彰さんがパネリストとして登壇する。進行は「そこまで言って委員会NP」を手がけたことで知られるテレビプロデューサー、結城豊弘氏がファシリテーター、フリーアナウンサーの薄田ジュリア氏がMCを務める。DroneTribune編集長の村山繁も登壇する。参加希望者は応募フォームから申し込む。2月2日17時が現時点での締め切りだ。
登壇する空クル関係事業者は、テトラ・アビエーション株式会社取締役の新井秀美氏、株式会社SkyDriveエアモビリティ事業開発部事業開発チーム国内事業開発統括の金子岳史氏。2氏とも登壇経験が豊富で、各催事で豊富な話題と来場者をひきつける語り口で定評がある。
開催概要
1.日時
令和6年2月3日(土曜日) 午後1時から午後3時
2.場所
エル・シアター
大阪市中央区北浜東3-14 エル・おおさか(大阪府立労働センター)
3.主催
大阪府
4.内容(予定)
・「空飛ぶクルマ絵画コンクール」表彰式
・シンポジウム
空飛ぶクルマの開発を行う機体メーカーの担当者等にパネリストとして登壇いただき、参加者の皆様と「空飛ぶクルマのある未来社会」を一緒に考えるトークセッションを実施します。
登壇者の詳細は、決定後に関連ホームページで順次公開いたします。
能登地震対応にドローン事業者が続々と参画している。イームズロボティクス株式会社(南相馬市<福島県>)は中型の「E6106FLMP2」、大型の「E6150TC」をあわせて4機を持ちこみ現地の需要に対応しているほか、石川県庁内に設置されたリエゾン拠点で業務調整にあたっている。ドローンが被災地で活躍するには、現地のニーズ、活躍できる事業者の選定、必要な申請など数々の業務調整が不可欠で、その調整役に経験のあるドローン事業者の知見や経験が役立っている。また株式会社SkyDrive も「SkyLift P300S」1機を含め4機を持ちこみ、ドローンの運用に定評のあるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(NTTコミュニケーションズ、東京)は主に上空の通信環境整備を担う。株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー(横浜市)、日本航空株式会社(東京)、ヤマハ発動機株式会社(磐田市<静岡県>)、日本DMC株式会社(御殿場市<静岡県>)、川崎重工業株式会社(東京、神戸市<兵庫県>)などが現地で被災地の支援の先頭に立っている。
ドローン事業者は主に輪島市、珠洲市で活動をしている。両市は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)に支援を要請していて、要請を受けたJUIDAのもと、ドローン事業者が災害対応に奔走している。
イームズロボティクスは機体の運用のほか、石川県庁DMAT調整本部内に情報連絡のために設置されたリエゾン拠点で輪島市などで活動するJUIDAや、経産省、国交省、事業者との業務調整にあたっている。政府、国内ドローン事業者へのヒアリングシートを作成したり、政府と災害時のドローン飛行などについて定めている航空法138条92項の取り扱いや災害救助法適応についても協議した。事業者との調整では株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー、双葉電子工業株式会社(茂原市<千葉県>)と連絡をとり事前調整にあたった。
また、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研、つくば市<茨城県>)とは、オルソデータをアップロード出来るSIP4Dイームズロボティクスパイロットシステムを準備し、SIP4Dにアップされたオルソデータが災害対応機関が閲覧する災害情報サイト、ISUT-SITEに表示されるようにした。一般財団法人日本気象協会、株式会社ウェザーニューズとは活動支援用の特設サイトの準備を調整した。 ウェザーニューズにはドクターヘリ位置情報を輪島市でも確認出来るように、輪島市のDMAT本部にもシステムが設置されるよう調整した。NTTコミュニケーションズとは輪島市上空の電波状況について再計算を受ける調整をし、輪島市で活動するJUIDAチームとの共有を図った。
ドローンオペレーターとしては、輪島市、珠洲市からの撮影要望のある場所を持ちこんだ機体などを使い空撮し、オルソを作成したうえSIP4Dにアップロード した。佐川急便にも物流ニーズを確認したうえで物流用機体の準備を図った。
SkyDriveは1月8日から14日にかけて現地入り。物流、状況把握を担った。スペースエンターテインメントラボラトリー(横浜市)は水上飛行を調整し、日本DMCは飛行前のロケハンのためにドローンを運用した。
災害対応の現場では、業務調整が不可欠だ。結集した事業者や、それぞれの事業者が持つ知見は、適切に運用が図られてはじめて本領を発揮する。どこで、なんのために飛行することが求められているのか、そのためにどこに、どう申請するのか、飛行環境は整っているのか、など数々の業務調整が果たす役割は大きく、今回は、専門家とのつながりも含めた業務調整の蓄積が一定水準で機能したといえそうだ。災害対応はまだ続くが、ドローン事業者が災害対応のために集結し、それぞれが果たした役割や成果は、今後の検証事例やモデルケースになることは間違いない。
JUIDAは発災直後から内部で調整を進め、1月4日以降、活動を具体化させ、1月5日にはブルーイノベーション株式会社(東京)、株式会社Liberaware(千葉市)とともに支援を始めた。被災地では1月2日に緊急用務地域に指定され(1月5日に改定)ている。現在の航空法では緊急用務地域では国か地方、または現地災害対策本部の要請を受けていない場合、原則としてドローンの飛行は禁止されている。JUIDAは輪島市、珠洲市の要請を受け活動をしており、ドローン事業者も原則として、JUIDAの統括のもとで運用している。
JUIDAが公表している活動報告
株式会社 SkyDrive((豊田市<愛知県>)は1月10日、インド北西部のグジャラート州政府と「空飛ぶクルマの社会実装を戦略的に推進させるためのパートナーシップ契約」を締結したと発表した。2027 年を目途に、同社が開発中の空飛ぶクルマ「SKYDRIVE(SD-05型)」について、インド国内での社会実装を目指す。
契約に基づき、SkyDrive とグジャラート州政府が管轄する科学技術省が2027年を目途に「SKYDRIVE(SD-05 型)」の社会実装を目指す。手始めに事業化調査を始める。
■株式会社SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOのコメント
2022年以降、空飛ぶクルマの事業化を目指し、スズキ様と共にインド市場開拓およびユースケース開発を進めてきました。今回、モディ首相の出身地でもあり、国内で最も革新的な取り組みを推進する、グジャラート州との戦略パートナシップ締結により、政府と共に事業を推進出来ることは非常にありがたく思います。モビリティの排出ガスや都市渋滞等の社会課題の解決に向け、新しいモビリティが貢献できるよう、官民一体で進めて行きたいと思います。
(なお、SkyDriveは「空飛ぶクルマ」について<空飛ぶクルマとは:電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段です。諸外国では、Advanced Air Mobility(AAM)や Urban Air Mobility(UAM)と呼ばれています>と説明している)
東京・臨海部の大規模展示会場、東京ビッグサイトで10月26日から11月5日まで開催されたJapan Mobility Show2023は、AAM(次世代エアモビリティ、いわゆる空飛ぶクルマ)の、社会受容性を格段に引き上げた催事として記憶される可能性が高い。トヨタ、ホンダ、SUBARU、スズキなど大手自動車メーカーは空の移動を表舞台に載せ、今後の展望を来場者に印象付けた。米Joby Aviation、日本のSkyDriveはAAMの知名度や認知度を愛好家やマニアの水準から市民、生活者、消費者に拡大し、期待を引き上げた。期待先行の印象が強いAAM開発はまもなく、米アドバイザリ大手、ガートナー社が提唱する「ハイプサイクル」で指摘される「幻滅期」への準備も併行させる時期にさしかかる。
Japan Mobility Show2023は公開前日の10月25日に行われたメディア公開以降、メディアの報道、SNSでの拡散などで多くの市民の「行きたい展示会」に躍り出た。東京モーターショーの刷新で展示範囲を自動車関連から乗り物に拡大し、主役の自動車に加え、AAM関連のプロダクト、技術にも光が当たることになった。自動車産業そのものもAAM関連への関与や展望を打ち出し、来場者に近未来を強烈に印象付けた。
トヨタ自動車の佐藤恒治社長は10月25日午前8時半、同社が設置した巨大ブースにステージに立ち、国内外からつめかけた人垣ができるほど大勢の報道陣を前に、「トヨタのブースで伝えたいのは多様性あふれるモビリティの未来です」と、バッテリーEV、IMV 0(アイエムブイ ゼロ)、KAYOIBAKOの3つを中心にプレゼンテーションをした。AAMへの直接の言及はなかったが、佐藤社長の背後の大型スクリーンに映し出されたコンセプト映像に、同社の出資先、米Joby AviationのeVTOLエアクラフト「S-4」の映像が投影される場面があり、トヨタのエアモビリティ分野への関心を印象付けた。
JobyのS-4は、原寸大のモックアップが、トヨタのブースとは別の会場内のブースに展示され、来場者がスマホで撮影するなど存在感を放った。JobyはANAホールディングス株式会社とチームを組み、2025年4月に開幕する大阪・関西万博で、利用者を載せて飛行する4つの事業者グループのひとつに決定している。「S-4」はトヨタが駆動系の開発に参加しているほか、型式証明の交付を日本の航空局に申請がされていて、日本での飛行を待ちわびる視線を集めた。
日本発AAMの現時点での代表格のひとつ、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)も型式証明を申請している「SD-05」の5分の1サイズモデルを展示し、来場者の足を止めた。展示された場所はスズキ株式会社(浜松市<静岡県>)が展開しているブースの一角だ。SkyDriveは6月にスズキとの協力関係について基本合意書を交わしていて、スズキグループの工場を活用して2024年春ごろに機体の製造に着手したい意向だ。SkyDriveは代表の福澤知浩氏の出身企業であり、SkyDriveへのスポンサーでもあるトヨタと縁が深いが、Japan Mobility Showではスズキとの連携を印象付けたことで、自動車業界をあげたエアモビリティ支援体制構築の進展が期待される。
メディアの間で当初、最大の話題のひとつとなったのが、株式会社SUBARU(東京)のエアモビリティ発表だ。トヨタから1時間後の10月25日、午前9時30分にスバルのブースのステージに登壇した大崎篤社長CEOは「自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えていると言われ数年がたちます。本日は次世代モビリティとしてふたつのコンセプトモデルを披露します」と宣言。軽快な音楽とともに最初のコンセプトモデル「SUBARU SPORT MOBILITY Concept」が紹介された後、音楽が切り替わると、背後のパネルが中央からふたつに開き、奥からリフトアップされた機体がせり出した。メディアがいっせいにフラッシュをたくなか、せり出した機体はステージでファッションショーのモデルのように右左に動いたり、正面を向いたりして、洗練されたデザインをアピールした。
大崎CEOはこの機体を「SUBARU AIR MOBILITY Concept」と紹介。「電動化、自動化技術が進歩し航空機の世界でも空の移動革命を実現する新たなエアモビリティへの期待が高まっている中、スバルが目指すより自由な移動の未来を示したコンセプトモデル。現在、自動車部門と航空宇宙カンパニーが協力し飛行実証を進めています」と紹介した。6つのローターを持つ電動機だが、スペックは今後詰めるという。
本田技研工業株式会社(ホンダ、東京)のブースは、見る角度によっては自動車より飛ぶ乗り物が目立つほどに空への展開をアピールした。小型ビジネスジェット「HondaJet Elite II」の搭乗体験モデルの隣に、8つの揚力用ローター、2つの推進用ローターを搭載する開発中のAAM、「Honda eVTOL」の縮小モデルを展示した。
Honda eVTOLは名称に電動を示す「e」が入るが、ガスタービンを搭載している。シリーズ式ハイブリッドと呼ばれる方式で、ガスタービンは電力の生産に使われ、その電力はバッテリーに溜めて機体を動かす。ガスタービンで得られた力を推進力には使われない。機体が電気で動くのでガスタービンを搭載していても「e」がつく。
ホンダはHonda eVTOLの安全性、快適性、静粛性を前提としていて、利用者が感じる価値はその先にあると考えている。重視しているのは時短価値だ。
開発プロジェクトリーダーを務める株式会社本田技術研究所(和光市<埼玉県>)先進技術研究所新モビリティ領域チーフエンジニアの東弘英氏は、DroneTribuneの取材に、「空港に行かなくてもより身近に空を体験して頂けることが新しい価値だと思っています。身近であるためには安全や静粛性は前提です。利用者が『いいね』と感じる価値はさまざまあると思いますが、われわれはその中でもまずは、時短価値が大事だと考えています。そのためにはショートレンジでは価値が出しにくい。たとえばクルマを使えば10分で行けるところにHonda eVTOLでは5分で行けたとしても時短価値は少ないと考えられます。ひょっとすると降りてから乗り換えるとさらに時間がかかる可能性すらある。ある程度のレンジがないと時短価値が出せない。ガスタービンの搭載もそのためです。ターゲットレンジは400㎞です」と話し、出発点から目的地までの移動時間の短縮に挑む。
Japan Mobility Showの「飛ぶもの」はAAMにとどまらない。株式会社エアロセンス(東京)やブルーイノベーション株式会社(東京)などドローンに力を入れている企業や、気球で宇宙旅行を企画しているか株式会社岩谷(いわや)技研(札幌市<北海道>)、自律航行技術で知られ、ストレッチャーロボットが海外メディアでも取り上げられた株式会社アトラックラボ(三芳町<埼玉県>)なども数多く登場している。ブルーイノベーションはトヨタが開発したドローンポートシステムをUCCホールディングス株式会社(神戸市<兵庫県>)などのスペースで実演。ドローンから届いたコーヒーをポートに降ろしたのち自動走行のAGVに乗せ換えて届け先まで走行する様子を再現している。
連日行列を作っていたのは、マイクロドローン関連事業を展開する株式会社ドローンエンタテインメントが株式会社トムスと連携して展開していた体験型ブース、「ドローンツアー」だ。球体型スクリーンの手前にシートが用意され、そこに座ると同社代表でドローンレーサー元日本代表の第一人者で横田淳氏が撮影した全国の名所の映像が流れる。映像にあわせてシートが振動したり傾いたりして、まるで映像の中を自分が飛ぶ感覚を味わえる。よりリアルな体験を楽しむ方法として、横田代表がその場で飛ばすFPVドローンのとらえた映像を浴びることもできる。球面スクリーンの隣に設置された特設フライトスペース内をドローンが飛ぶと、シートに座った来場者はそのドローンの操縦席にでもいるかのような臨場感が味わえる。
一般公開期間中は連日、午前の予約開始直後に埋まる盛況ぶり。会場にはキャンセル待ちのレーンも用意され、そこにも連日、来場者がつめかけていた。
一般公開日に3人組で参加した女性の一人は「報道で見て、知人から聞いて参加しました。期待していたよりも、ずっと楽しかったです。なにより、よく言われる臨場感ってこういうものか、と感じました」と感激した様子で話した。いっしょにいた女性も「有料でも乗ります。ほかで味わえないから。あの映像を味わえるようにドローンを操縦したくなりました」と話していた。
Japan Mobility Show2023はAAMへの期待を高め話題性を作ることに成功した。社会実装にむけて実用局面に移行する。米ガートナー社が提唱する期待の増減を示すハイプサイクルによると、新しいテクノロジーは話題性とともに登場すると、一気に期待値があがるが、その後、期待と現実との落差を目の当たりにすることで一時的に急降下することになる。その後、真価の適切な評価を経て社会システムに採用され、実装に至る。AAMも急上昇した期待の社会実装への道筋を構築する局面に入ることになる。
大阪府枚方市は3月2日、中国の空飛ぶクルマメーカーEhang(イーハン)の2人乗り機体「Ehang216」のデモフライトを実施した。デモ飛行では人は乗せず、かわりに人の体重に近い80㎏のコメを積んで飛行させた。時折、風速7m/秒を超える風が吹く中だったが、機体はあおられることもなく安定した飛行を見せた。2025年に開催される大阪・関西万博の主会場を抱える大阪府内で、空飛ぶクルマの飛行実験が行われたのは初めてだ。デモフライトに続いて開催したセミナーでは、枚方市の伏見隆市長が「“空飛ぶクルマのあるまち・枚方”を実現させたい」とアピール。セミナーに登壇したDRONE FUND最高公共政策責任者の高橋伸太郎氏は、「枚方市は空飛ぶクルマの京阪奈における輸送ネットワークの拠点としての可能性がある」と枚方が空飛ぶクルマに取り組む重要性を指摘した。
デモフライトは3月2日、市内を流れる淀川の河川敷に広がる公園の一角で行われた。機体はドローンやAAV(Autonomous Aerial Vehicle、いわゆる「空飛ぶクルマ」のひとつ)開発で知られる中国の億航智能(英語表記Ehang、イーハン)が開発したEhang216で、一般社団法人MASC(岡山県倉敷市)が保有している機体だ。飛行は座席には誰も乗らない無人の状態で2度、行われた。1度目は地上30メートルまで上昇後、しばらく空中で静止し、機体の向きを180度転回させて、着陸させた。2度目は人のかわりに80㎏のコメを乗せて離陸したあと、淀川の河川上空を約930mにわたり、5分間飛行した。
デモンストレーションの間は強い風に見舞われ、一時、風速7.6m/秒の風も吹いたが、機体はやや揺れる程度で風にあおられることもなくゆったりと上昇、すいすいと飛行した。また、離陸時は飛行時の音については、周囲からは「30mまで上昇してしまえば、機体がそこにあることが確認できる程度の音」「離陸時にまったく静かというわけではないが、ヘリとは比べると圧倒的に小さい」などと話す声が聞こえた。伏見市長も「音は気にならなかった」と、デモフライトのあとのセミナーの中で話した。
枚方市は 2025 年に開催される大阪・関西万博に向けて、万博開催をきっかけにした地域経済の活性化と地元への愛着の向上を目的に、幅広い取り組みを実施する「ひらかた万博」を推進している。中でも空飛ぶクルマを重視していて、社会実装による地域の人々の生活の質の向上や新しい事業の開拓を期待している。昨年12月11日に市が開催したセミナーで伏見市長は「枚方は京街道の枚方宿として東海道で56番目の宿場にあたり、淀川で物資の運搬も盛んで歴史的にも交通の要衝。万博会場となる大阪中心部と京都の中間点でもあり、空飛ぶクルマが離発着する拠点としてふさわしい」などと猛アピールをしていた。
デモフライト後に開催されたセミナーでは、DRONE FUNDの高橋伸太郎氏、空飛ぶクルマを開発する株式会社SkyDrive(愛知県豊田氏)の金子岳史氏、デモフライトを担当した一般社団法人MASC事務局長の坂ノ上博史氏が登壇し、枚方市の可能性などについて見解を披露した。
DRONE FUNDの高橋氏は「万博の成果を大阪湾岸エリアだけでなく、関西地方・日本・世界全体に広げるためには、今の段階から社会システム・産業エコシステムの視点から、空飛ぶクルマについて議論を進めておくことが必要。そのためまずは京阪奈エリアへの広がりを考えることが重要だ。枚方市は立地、歴史、資源において京阪奈を結ぶ重要拠点となり得る。このため、空飛ぶクルマの京阪奈における輸送ネットワークの拠点としての可能性がある」と分析した。また「今から10年後、15年後の未来を見据えた都市計画を進めるか気にしないかで、結果は大きな差として表れる」と述べ、未来を見据えた都市計画を今から進めることを提案した。
SkyDriveの金子氏は、動画をまじえて機体を紹介しながら「裏側では大きな壁にぶつかりながら開発を進めている」と知られざる苦労の一端を披露。「空飛ぶクルマが実現することは、それにふさわしい都市デザインの考え方にも波及する。そしてもっとも大事なのは、空飛ぶクルマは、ありさえすればいいことがおっこるような、魔法の杖ではないということ。何に使いたいのか、どう活用するのかをどれだけ具体的にイメージするかが試される」と、創造力、想像力の結集を呼び掛けた。
MASC事務局長の坂ノ上氏は、セミナー前に開催されたデモフライトの様子や、フライトさせた機体について、8本のアームがあり、それぞれ2組のプロペラが上下に取り付けられ、合計16組のプロペラがあることが、機体名の「216」の由来であるなどの紹介をしながら報告した。途中、デモフライト実現に協力したEhangセールスディレクターのダレン・シャオ氏を壇上にあげて紹介すると、シャオ氏は「Ehangはすでに3万3,000回、人を乗せた飛行実験を実施している。安全性が高く、環境負荷も低減できるので、安心して空の移動のあるシティライフを楽しめる。特に枚方は京都、大阪、奈良の中継点になり得る、導入するには最適な都市」と分析を披露した。
枚方市の伏見市長は、いち早く空飛ぶ車の事実上の誘致に名乗りをあげた理由について「空飛ぶクルマには大きな魅力がある。ただ、魅力があることが広く伝わると、どの自治体も一斉に手をあげることになる。その前に手を挙げておきたかった。それによって実現を近づけたい」と話している。枚方市は今後も、活動を積極化する方針だ。