株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)と、大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ、大阪市)は大阪エリアで空の移動革命を社会実装させるために共同で取り組む業務提携を結んだ。また大阪メトロがSkyDriveに出資した。大阪メトロによるSkyDriveへの出資は8月23日付。今回の出資の金額は非公表だが、SkyDriveの資金調達は2022年9月のシリーズCラウンド以降の3回で累計約80億円となり、またこれを含めた調達総額は350億円超となった。大阪メトロは2025年の大阪・関西万博でVポート(離発着場)の整備を担うことになっている。これをきっかけにエアモビリティ事業に本格的に参入する方針で、10月1日には社内に専門の部署を発足させる。万博閉幕後の2028年に大阪市内の大阪城東部の開発エリアに新設を計画しているメトロ新駅にVポートの設置を目指しており、大阪メトロの河井英明社長は新駅の開業にあわせ、Vポートを活用した空のサービスを開始することを目指すことに「願わくば、そうなれば望ましいと期待しています」と意欲を示した。
提携は8月26日に発表された。大阪市内の大阪メトロ本社では、大阪メトロの河井英明代表取締役社長、SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOらが会見した。
河井社長は「大阪全域での格段に便利で快適な移動サービスを構築するモビリティのベストミックスカンパニーに取り組んでおります。空飛ぶクルマが加えることで地下、地上、空が一体となったあらゆる移動サービスにこたえる交通インフラの確立を目指します」と空クル事業への参入の意義を説明。「当社がVポートの整備や運営を手掛けます。ストレスフリーな、多様なモビリティの結節点として、今後開発する中規模から大規模の乗り継ぎハブとして、必要に応じて(ビルの)屋上などにも設置して、都市機能のさらなる強化を図りたいと思っています」と述べた。
業務提携について、河井社長は「空飛ぶクルマの社会実装、都市内の輸送などでの両者の目指す姿が一致したことと、大阪メトロのVポート事業、SkyDriveの機体製造、運航事業の補完関係が極めて明確で、SkyDriveは私どもにとってベストパートナー。当社はこれから空飛ぶクルマ事業に本格的に参入していく所存ですが、現時点では知見が不足しており、事業かに必要な各種調査、人材交流、事業化後の協力体制までを盛り込んだ提携を結びました」と提携締結の経緯を説明。「(大阪城東部に計画している)『森之宮新駅』のVポート設置をはじめ、当社の空クル事業を加速させ、大阪における空飛ぶクルマの社会実装につなげたいと考えています」と意欲を示した。
大阪メトロからSkyDriveへの出資について、河井社長は「空飛ぶクルマ事業は先行事例もなく両者とも相当のリソース、エネルギーを投入する必要があり、出資することでSkyDriveの財務面をサポートし、強固なパートナーシップを築くことにしました」と説明。関連して「また空飛ぶクルマに関わる専属の組織をたちあげることを決めました」と10月1日付で新部署を設置する方針を示した。後世メンバーは今後調整するが、この時点では中期的に10人規模をめざし、社内の人材のほか、外部の有識者の登用も検討する見込みだ。
SkyDriveは、自社開発のエアモビリティを、自動車を日常的に使うように運転の延長線上で空を移動できる乗り物を作りたいという思いから創業時から「空飛ぶクルマ」と呼び、英語表記として「FLYING CAR」を使っている。現在開発中の機体は操縦士1人と同乗者2人までの3人乗りの12基のローターを搭載するバッテリー駆動のエアモビリティで、陸上を走る機能は持たないが、創業時の思いは自動車の延長線上で日常使いできる空の乗り物だった。現在も将来的な空と陸の両用機の開発を排除していない。
この日の会見では福澤CEOが自社開発中、製造中の「空飛ぶクルマ」の特徴や開発にかける思い、エアモビリティのある社会の利便性などを説明したあと、大阪メトロとの関係について言及した。その中で、大阪メトロの河井社長らがSkyDriveの施設を見学に訪れて熱心に見学したことや、意見交換でモビリティ革命について意気投合したことなどを紹介した。
福澤CEOは「大阪における多くの方々の日常的な移動の向上に起用したいと思っています。新しいものを生み出す観点からは、機体開発だけではなく、効率のいいオペレーション、利用者にとっての使いやすさも同時に満たす必要があります。両者一眼となってプロジェクトに取り組んで参ります」と抱負を述べた。
また福澤CEOは、記者会見の質疑応答に答える形で自社製品について触れ「(大阪関西万博では)デモフライトを実施すべく動いております。そのタイミングで(世界の)いろんな会社が飛行を目指しています。その一番進んでいる会社とあまり大きな差はないレベルだと思っております。ほかのプレイヤーと一緒に万博でデモフライトができればいいと思っています」と自信をのぞかせた。
また大阪メトロからの出資については、「とっても助かります。大変ありがたい」と感謝した。そのうえで「モノができたあとには、利用者が実際にどう使い、うまくワークするのかどうかが大事になります。ぼくらは飛ばすことについてはできますが、利用者にとって移動ニーズがあるのか、コストと価格が見合うのか、地下鉄やオンデマンドバスと組み合わせたときの結節点のありかたはこれでいいのか、といった需要側のことがわからない面があります。そうしたところをワンチームで勧めたいと考えています」と付け加えた。
空クル事業のサービスについて、大阪メトロの河井社長は「最初は遊覧飛行ぐらいかもしれません」などと展望。日本で最初の商用運航でありたいか問われた質問に対して、「できることでありましたらそういうことも目指したい」と応じた。
商用運航のスタートの時期について河井社長は「万博が終わって数年以内にはスタートしたいと思っています」と述べたあと、2028年に開設を目指す森之宮新駅との関連について追加で質問をされ、「新駅にVポートをつくれないか検討を進めていきたいと思っています。(森之宮では)新しい駅ビルもつくります。再開発も行いますのでそこにVポートをつくりたい。タイミングがあえば(2028年のサービス開始が)望ましいかな、と期待しているところです。私どもだけでできるわけではないですが、私どもとしてはそう願っています」と2028年のサービス開始に期待を寄せた。福澤CEOも「われわれも目指します」と同調した。
大阪メトロとSkyDriveは提携についてプレスリリースを発表している。SkyDriveのプレスリリースは以下の通り。
~併せて、Osaka MetroからSkyDriveに出資いただきました~
(※編集部注:大阪メトロもほぼ同じ内容のリリースを公表している。会社名の場所や上記の「出資いただきました」が「出資しました」になるなど文章上の係り結びが整理されている)
「空飛ぶクルマ」(※1)の開発およびドローン関連サービスを提供する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO 福澤知浩、以下「SkyDrive」)は、空飛ぶクルマの社会実装を目指し、2025年日本国際博覧会(以下「大阪・関西万博」)後の大阪エリアでの空飛ぶクルマを用いた事業化に向けた検討を行うことを目的に、大阪市高速電気軌道株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長 河井英明、以下「Osaka Metro」)と業務提携契約を締結したことをお知らせします。併せて、Osaka MetroからSkyDriveに出資いただきました。
SkyDriveは「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに、「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく、「空飛ぶクルマ」の開発をしています。大阪・関西万博においては、「空飛ぶクルマ」の2地点間での運航事業者に選定されています(※2)。
Osaka Metroは、地下鉄およびニュートラムを9路線運営しており、1日の乗降客数は平均約240万人にのぼります。大阪を各段に便利で快適なまちにしていくことを目的に都市型MaaS構想「e METRO」を推進しており、パーソナルな移動を実現するための新たな選択肢として「空飛ぶクルマ」も視野に入れています。2024年2月には大阪市の「空飛ぶクルマ」会場外ポート事業者として選定され、バーティポートの整備を進めていきます。
両社は、Osaka Metroが「空飛ぶクルマ」会場外ポート事業者として選定されて以来、協議を進めてきました。議論を進める中で、Osaka Metroが都市型MaaS構想で目指す「あらゆる移動ニーズに応える交通インフラの確立」と、SkyDriveが実現を目指している、「空飛ぶクルマ」によって日常の移動に空を活用する世界に親和性があると考え、この度、業務提携契約の締結に至りました。
今回の提携により、両社はビジネスモデルの策定・精緻化、オペレーション内容の設定・確定など、「空飛ぶクルマ」の事業化に必要な検討を進めてまいります。
(以下にSkyDriveのシリーズCについてのリリースがあります)
~「空飛ぶクルマ」の機体開発および製造を加速~
「空飛ぶクルマ」の開発およびドローン関連サービスを提供する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO福澤知浩、以下「当社」)は、新たに4社を引受先とした第三者割当増資により追加調達を完了しました。2022年9月に実施したシリーズCラウンド以降、3回に渡り追加調達した金額は累計約80億円となります。
<本ラウンドの引受先>(五十音順)
<これまでの追加調達のプレスリリース>
2024 年 1 月:https://skydrive2020.com/archives/41403
2023 年 4 月:https://skydrive2020.com/archives/21778
■ 資金調達の背景・目的
当社は、「100 年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに 2018 年に設立し、「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく、空飛ぶクルマの開発を行っています。社会実装する上で不可欠な認可の1つが型式証明です。当社の製品『SKYDRIVE(SD05型)』は、2021年に日本の国土交通省により、型式証明申請が受理され、2022年には審査適用基準の方針を合意しました。現在は、次の段階である適合性証明計画の合意に向け、開発と並行して証明活動を行っております。そして、証明計画合意後は、その計画に沿って地上試験、飛行試験等を行います。
今回の資金調達を通して、前述の地上試験、飛行試験等の環境や体制を強化し、開発・証明活動を加速していく所存です。加えて、量産に向けた品質保証部門等の増員・強化にも着手してまいります。
また、当社の『SKYDRIVE(SD-05型)』は、4カ国(日本、アメリカ、韓国、ベトナム)から、合計263機のプレオーダーをいただいております。お客様に納入後も機体のコンディションが管理できるよう、設計から製造そして納入後まで、一貫して機体データを管理するデジタルプラットフォームの構築を進めてまいります。
■株式会社SkyDrive代表取締役CEO福澤知浩コメント
2022年9月のシリーズCの資金調達時以降、多くのグローバルトップクラスの航空機エンジニアがチームに加わり、当社の機体開発は大きく前進する事が出来ました。また、株主でもあり強力なパートナーであるスズキ株式会社のご協力の元、2024年3月、スズキグループの静岡県磐田市の工場で『SKYDRIVE(SD-05型)』の製造を開始することが出来ました。
事業開発においても、スズキのサポートの元、インドでの市場開拓を進め、グジャラート州政府と戦略パートナーシップを締結しております。
アメリカにおいては、2023年11月にSkyDrive America, Inc.を設立、サウスカロライナ州やジョージア州等の各空港を起点とした航路検討が進んでおります。
この度、投資家の皆さま、事業会社の皆さまに、当社の進捗を評価していただき、強力なサポートをいただくことができました。感謝するとともに、皆様のご期待に応えるべく全力で開発と事業を進めてまいります。
KDDIスマートドローン株式会社(東京)は10月16日、「AIドローン設置に関する説明会」を東京・高輪の本社で開き、KDDI株式会社(東京)とKDDIスマートドローンが10月15日に能登地域4カ所に米国Skydio社のAIドローン「Skydio X10」と基地となる「Skydio Dock for X10」を配備し、遠隔運航実証を実施したことを、同日の映像をまじえて説明した。また、定期運航させるサービスを10月16日から24時間365日対応に拡充させたことや、必要時にだけ運航に応じる「スポット運航サービス」も11月に始めるなど、遠隔運航サービスの拡充と新機能の追加を発表した。
説明会は7月1日に正式にオープンした高輪ゲートウェイ駅に隣接する新本社内で行われた。会場には運航指揮者が準備し、オペレーションが実演できる態勢を整えていた。実際、石川県に配備している4機のドローンを、報道陣の前で運航する計画をたてていたが、石川県内での荒天で断念した。説明会では現地の雨量が7mmを超えたことが報告された。「雨量7mm」は、1時間に1㎡あたり7ℓの雨が降る強さで、本降りに相当する。このため説明会では、前日の15日に行われた実証の動画をまじえて4機の運用例をまじえて説明した。
説明会では冒頭、KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長が、石川県内の輪島市に2台、七尾市に2台のドローンを配備したことを説明し、日本国内に1000台のAIドローンを配備する計画が具体的に始まったことを説明した。
配備したドローンは通常時に点検や測量など主に空からの情報収集に使われるほか、災害発生時に現地の状況を確認するために急行するなど、平時、平時と災害発生時と両面で活用することを念頭に配備していると説明した。説明会では前日の10月15日に石川県内で実施したドローンの運用実証の様子を動画などを活用しながら説明した。
具体的には輪島市、七尾市の機体をKDDI高輪本社(東京都港区)、KDDIスマートドローンアカデミー新十津川校(北海道樺戸郡)に待機したオペレーターが遠隔運航を実施した様子が説明された。その中ではトンネルの3Dモデリング空撮と橋梁点検を進めているときに地震が発生した想定で、オペレーションが緊急時に移行するシナリオが披露された。博野社長は「平時利用から有事利用への移行オペレーションを通じて、BCP(事業継続計画)を想定したシナリオで実証した」と説明した。なお1人のオペレーターが2機を運航する1対2運航で行われた。
また説明会では遠隔運航サービスの拡充も発表された。事前に設定したスケジュールにそった定期飛行サービスを24時間365日対応するサービスに拡充したほか、災害発生時などのニーズに対応する「スポット運航サービス」も設定した。23時間365日の定期運航サービスは10月16日に導入をはじめた。スポット運航サービスは11月1日の提供開始を予定している。
KDDIスマートドローンの測量士が、点群データの取得・生成、出来形や体積差分の算出・報告書作成までを一貫して行うワンストップサービス「測量パッケージ」も10月16日に開始した。米シリコンバレー初のAI活用型IoTソリューション開発を手掛けるMODE社,の現場特化型AIアプリケーション「BizStack」と連携させ、ドローンが撮影した画像・映像データを遠隔で取得できる「MODE連携機能」を追加することも発表し、2025年内に提供をはじめる計画だ。
博野社長は「ドローン運用の手間をゼロに、の実現のため、今後も邁進したい」と決意を表明した。
能登地域4箇所にAIドローンを常設:https://kddi.smartdrone.co.jp/release/9459/
SkydioとKDDIが資本業務提携:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr_s-4_3362.html
石川県とKDDI、創造的復興へ連携協定:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-302_3559.html
24時間365日定期運航などサービス強化:https://kddi.smartdrone.co.jp/release/9429/
新機能の追加詳細:https://kddi.smartdrone.co.jp/solution/monitor/
遠隔運航サービス紹介動画:https://youtu.be/CHLQnKkefOU
MODE連携紹介動画:https://youtu.be/mesewNbiPwQ
大林の事例リリース:https://kddi.smartdrone.co.jp/release/9144/
清水建設の例動画:https://www.youtube.com/watch?v=PP5UPmAmSSc
石川県県警の例リリース:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-552_3833.html
石川県と県警の事例動画:https://www.youtube.com/watch?v=0MqLTdkpIus&feature=youtu.be
ドローン物流と既存物流を融合させた「新スマート物流」を提唱、展開している株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>、田路圭輔代表取締役)は10月8日、足利市<栃木県>、足利市内で燃料小売などのカーライフサポートを手がける両毛丸善株式会社 (河内覚代表取締役)と3者で、足利市内での新スマート物流の実施を見据えて「新スマート物流社会実験に関する覚書」を交わした。ドローン事業専門の部署を持つ両毛丸善がドローンの運航を担う。災害時にも通常時にも物流機能を担う運用を目指し、飛行ルートの検証などの可能性を探る。早ければ来年(2026年)1月にも運航に着手する。
3者による覚書の締結は足利市役所内で行われた。新スマート物流の可能性について研究するため相互に協力する。具体的には足利市内で新スマート物流の拠点整備や災害発生時にも緊急物資輸送に使えるルートを検証したり、中山間地などの物流困難地域への物資輸送をしたりすることなどを盛り込んでいる。
地元の企業、両毛丸善が新スマート物流の社会実験を推進し、足利市が地域コミュニケーションやフィールド調整など行政としてサポートする。これまで新スマート物流はNEXT DELIVERYが中心に運用してきたが、今回は地元企業が中心となる点が特徴で、地元企中心のフェーズフリー型新スマート物流のモデルケースを目指す。
NEXT DELIVERYの田路圭輔代表取締役は「両毛丸善さまという地元企業とパートナーを組むことができました。このように地元主導でしっかり新スマート物流を実装に向けて進めるのは、今回がはじめてのケースになると思います。ドローンの運航というのは機体の操縦だけではなくて、運航、システム、着陸地点の調整などすべきことがいろいろとあります。それをわれわれと同じクオリティで担える地元の事業者を探しておりましたが、両毛丸善さまはすごいチームもありビジョンも持っていて、展開できると確信しています。必ずや成功させたいと思っていますし、そのためにわれわれが持つ技術やノウハウを注ぎ込み、われわれのオペレーションを完全に移植して参ります」とあいさつした。
両毛丸善の河内覚代表取締役は「ドローンの利便性、将来性に着目し4年前にドローン事業の準備に入り、3年前に事業に着手しました。空撮、農薬散布に取り組みながら、究極の目的であった物流への参入が難しかったところで、今回、覚書を締結できることになり嬉しく思っております。ハードルは高いですが、災害時も平時も使えるようドローンを使った物流で地域貢献、地域課題解決にさらに力をいれて参ります」と応じた。
足利市の早川尚秀市長は、「NEXT DELIVERYさまとは2年前に実証実験を共同で行いました。今回は両毛丸善さまに入って頂いたことが大きいです。両毛丸善さまの大きな決断で覚書が買わせました。われわれも全力で支えます。まずは実験を積み重ね、近い将来ドローンも使った物流に向けた大きな一歩になると思っています。足利のような歴史ある町で、ドローンの先端の取り組みが行われ、地域課題の解決につなげることが大切だと思っています。まち全体が実験場というつもりで、市としても実装までしっかり役割を果たし、協力しながら成功に導いていきたいと考えています」と抱負を述べた。
締結式の会場には、足利市の実験に投入される機体「PF4」も持ちこまれた。PF4はNEXT DELIVERYがモンゴルで活用していて、日本国内の連携協定などの提携の会場で公開されたのはこの日が初めてだ。5㎏の荷物を往復40㎞の範囲を自動航行で飛行させることができる。NEXT DELIVERYの田路代表は「それまでのAirTruckという機体より詰める箱が大きくなり飛行速度も速くなりました」と説明した。さらに、「ドローン配送は、定期配送の可否が社会実装のカギだと思っています。たとえば毎日午後4時に必ず1便飛ぶ、と決めてそこに地域の荷物を持ちこんでもらって飛ばす。災害があったときに避難生活を送っている方に届けるようなものを普段からそのルートで運び続けるわけです。一日1便から2便、3便、4便と増え、その地域では両毛丸善さんのドローンが毎日飛ぶようになると、それまでとはまったく違う世界になると思っています」と展望した。
足利市は2021年の山林火災対応をきっかけに、災害時の空のトラブルを防ぐための
「緊急用務空域」の仕組みが創設されるきっかけとなった地域で、ドローンの運用にとって新たな枠組みが生まれた地域として知られている。
ドローン機体構造技術の株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区、田路圭輔代表取締役社長・グループCEO)は、独自の特許取得済み重心制御技術「4D GRAVITY®」を搭載した物流専用ドローン「PD4B-M-AN」を、株式会社プロドローン(愛知県名古屋市、戸谷俊介代表取締役社長)と共同開発し、名古屋市で開催された第4回ドローンサミットで発表した。
物流専用ドローンPD4B-M-ANは4つのローターを持つマルチコプターで、バッテリーを含む機体重量は20㎏。最大3㎏までの荷物を運べる。4D GRAVITYの技術を取り入れた荷室を、機体の本体と分けたうえで結合していて、飛行中にドローンが進行方向に前傾しても荷室は前傾せず、荷物が傾かない構造になっていることが特徴だ。これにより飛行性能、機動性の向上も図れる。
エアロネクストとプロドローンは2024年2月に4D GRAVITYテクノロジーライセンス契約を締結していて、プロドローンの汎用機体「PD4B-M」に4DGRAVITYを取り入れた。
エアロネクストの子会社、株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)が受託した「あいちモビリティイノベーションプロジェクト空と道がつながる愛知モデル2030」の物流ドローン社会実装モデル推進事業として近く、現場で飛行する予定だ。
千葉・幕張メッセで開催中の農業技術関連展示会「農業WEEK」で、株式会社NTT e-Drone Technology(NTTイードローン、朝霞市<埼玉県>)が発表した鳥獣害対策専用ドローン「BB102」の展示に来場者が集まっている。ブースでは担当者からこれまでの実験の様子や今後の展開などに聞くこともでき、来場者から「発表されていない現場での実験の様子なども聞くことができ、期待が高まった」などの声が聞かれた。農業WEEKでは株式会社石川エナジーリサーチ(太田市<群馬県>)や中国・上海のポジショニング技術のCHC Navigation(CHCNAV)などそのほかのドローン関連技術や自動操舵技術も展示されている。開催は10月3日まで。
NTTイードローンの鳥獣害対策専用ドローン「BB102」は農業WEEKの「NTTグループ」ブースで出展されている。取り回しのよさなどで農業関係者から評価の高い散布ドローン「AC102」を見にきた来場者が、その隣に展示してある「BB102」を見つけ、足をとめて説明に聞き入り、ひとだかりができていた。
展示ブースではBB102が黒い布に赤色と緑色をランダムに照射する様子が実演されていて、担当者から緑の色が鳥獣の痛点を刺激することや、赤い色がエサのようにみえることなどが説明された。
イードローンが9月30日に発表したプレスリリースには、効果が確認された鳥獣として、カラス、ハト、イノシシ、シカ、カワウ、サギ、ハクビシンなどが示されていたが、ほかにも効果的な鳥獣があるなどの話を聞くこともできる。担当者に聞くと、全国で被害が広がっているクマも、このレーザー照射にいやがる様子を見せたと話していて、今後の検証次第ではさらなる効果が期待できそうだ。その場合、クマの出没現場にどのようにドローンを飛ばすか、など具体的な対応法も論点になる可能性がある。
このほか、ある湖で実験したらはっきりと鳥獣がいやがる様子を見せたことなどの実験現場の話も聞くことができる。
農業WEEKではイードローンのほかにも、石川エナジーリサーチの農業用ドローン、CHCNAVのリモートセンシング技術、自動操舵技術などが展示されている。
農業WEEKはRX Japan株式会社が主催し、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、日本農業法人協会農業が後援する、「国際スマート農業EXPO」「次世代農業経営EXPO」など5つの農業関連展示会をまとめたイベントの総称で東京会場(幕張メッセでの開催)は今回が15回目。主催者は「J-AGRI(ジェイアグリ)」の呼び方の定着を目指している。九州でも同じ趣旨の展示会を開催していて、第4回九州農業WEEKが2026年5月27日から29日まで益城町<熊本県>の展示会場、グランメッセ熊本で開催される予定だ。
参考:イードローンが鳥獣害対策機BB102発表
AI、ロボティクスの社会実装推進事業を手掛けるGMO AI&ロボティクス商事株式会社(GMO AIR、内田朋宏代表取締役社長)は9月30日、「ロボット人材派遣型サービス」に中国・深圳のロボットスタートアップEngine AI社製のヒューマノイドロボット「PM01」をラインナップに加え、2026年1月から派遣を始めると発表した。
「PM01」は世界で初めて前方宙返りを達成した高い身体機能で話題になったヒューマノイド。イベント、研究など幅広い分野での活用が期待できる。GMO AIRは「ロボット人材派遣型サービス」として技術指導、ソフトウェア開発サポートも支援する。「PM01」を開発したEngine AIは、自動車と空クルを融合させた「Land Aircraft Carrier」を開発したシャオペンエアロ(XPENG AEROHT)のシャオペン系のテクノロジー企業グループの一員で、高い技術力で知られる。
GMO AIRは「PM01」について、ダイナミックな身体能力、柔軟なカスタマイズ性、アイアンマンに着想を得た洗練されたデザインの3点を主な特徴にあげ、「イベントや展示会で圧倒的な演出力を実現する」と説明している。
GMO AIRは、2025年4月から「ロボット人材派遣型サービス」を展開。4足歩行ロボット、ヒューマノイドロボットの中国・Unitree社(宇樹科技)のヒューマノイド「G1」を中心にエンターテインメント、研究機関、実証実験などの現場に派遣している。2026年2月にはAIとヒューマノイドロボットを手がける中国・UBTECH Robotics社(優必選科技)の「Walker E」の派遣も予定している。「PM01」が追加することでラインナップが充実する。
■サービスURL:https://ai-robotics.gmo/lp/robot-haken/
■GMO AIRについて:https://ai-robotics.gmo/
■GMOインターネットグループ株式会社について:https://group.gmo/
株式会社NTT e-Drone Technology(NTTイードローン、埼玉県朝霞市)は9月30日、鳥獣害対策専用ドローン「BB102」を発表した。搭載したレーザーで赤色と緑色をランダムに照射して鳥獣に強い違和感を与え退避行動を促す。カラス、ハト、イノシシ、ハクビシンなど幅広い鳥獣への効果が確認されたという。イードローンは「BB102」を2025年10月1日に提供を始める。10月1日に千葉・幕張メッセで開幕する展示会「農業WEEK」では、NTTグループブースで公開する。価格は「オープン価格」としている。
鳥獣害対策専用ドローン「BB102」はレーザーを搭載していることが特徴で、一般社団法人地域総研(東京)が2018年1月に実用新案登録証と商標登録証を取得した「クルナレーザー」をドローンに活用した。ドローンは自動航行機能も備える。レーザーを搭載した鳥獣害対策専用ドローンは例がないとみられる。
仕組みは赤色と緑色のレーザーをランダムに照射するもので、これが鳥獣に強い違和感を与え退避を促すという。鳥獣が慣れてしまうことへの対策としてスペックルノイズ(ちらつき)を生じさせ、忌避効果を持続させる工夫もこらした。
農林水産省によるとイノシシ、シカ、カラスなどによる農作物被害は年間約200億円規模にのぼるうえ、鳥インフルエンザ、豚熱など畜産業での防疫対策も深刻で、「BB102」で農作物被害抑制と鳥獣害対策業務の負担軽減との両立を目指す。カラス、ハト、イノシシ、シカ、カワウ、サギ、ハクビシンなど多くの鳥獣への効果が確認されていて、実験では水田、果樹園、山林、湖などさまざまな環境での有効性を示した。
イードローンによる発表は以下の通り。
株式会社NTT e-Drone Technologyは、全国的に深刻化する鳥獣害問題に対応するため開発・製造した、鳥獣害対策専用ドローン「BB102」の提供を2025年10月1日(水)より開始いたします。レーザー搭載の鳥獣害対策ドローン(国内初)による高い忌避効果と自動航行機能により、農作物被害の抑制と鳥獣害対策業務の負担軽減を両立します。
1.背景と目的
イノシシやシカ、カラスなどによる農作物被害は年間約200億円規模(※1)にのぼり、深刻な社会課題となっています。さらに、鳥インフルエンザや豚熱など畜産業における防疫対策も喫緊の課題です。
当社はこれまで農業用ドローン等の提供を通じて農業分野における省力化・効率化を支援してきましたが、今回新たに提供する「BB102」はこれまでの技術を応用し、鳥獣害対策に特化して開発した国産ドローンです。農作物の被害減少に加え、鳥獣害対策に要する人的・時間的負担の軽減を図ることで、第一次産業全体の持続可能性向上に寄与します。
※1:数値データは、農林水産省HPより出典
2.製品概要と特長
「BB102」は、上空から広範囲にレーザー照射を行えるため、地上設置型では難しかった屋上や高所を含む鳥害対策を実現します。
<特長1>「クルナレーザー(※2)」による忌避効果
赤色と緑色のレーザーをランダムに照射し、鳥獣へ強い違和感を与え退避を促進させます。また、慣れへの対策としてスペックルノイズ(ちらつき)を生じさせ、忌避効果の持続性を高めています。
※2:一般社団法人地域総研の登録商標
<特長2>自動航行機能
送信機の画面で飛行範囲を設定するだけで自動航行が可能です。養鶏場や牛舎など、広範囲のエリアを効率的に対策できます。
<特長3>FPVカメラ搭載
送信機の画面上で屋根や高所の確認が可能です。鳥獣害対策に加え、点検用途にも活用できます(目視外飛行不可)
<特長4>幅広い鳥獣への効果
カラス、ハトなどの鳥類、イノシシやシカ、さらにカワウ・サギ・ハクビシンなど、多様な鳥獣に対する忌避効果が確認されています。水田、果樹園、山林、湖など様々な環境での実証実験でも高い有効性を示しました。
4.受付開始日
2025年10月1日より開始
※デモ会、説明会、意見交換会等のご要望にも対応します。
5.価格
オープン価格
<参考>展示情報
第15回農業WEEK(会期:10月1~3日、会場:幕張メッセ)NTTグループブースにて「BB102」を展示します。