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機体に載せたスピーカーで避難を呼びかけるなどドローンの災害活用を進めるブルーイノベーション株式会社(東京)は、総務省消防庁が設置した「災害情報伝達手段」としてドローンの有効性を検討する検討会で事務局を担い、実証実験も行ったと発表した。総務省消防庁は3月24日、これに基づいて「災害情報伝達手段としてのドローンの活用に関する検討報告書」を公表した。報告書はドローンを防災行政無線の補完に有効と結論づけ、運用する場合の留意事項などを整理。市町村向けの「災害情報伝達手段の整備等に関する手引き」に反映される見込みだ。

「災害情報伝達手段の整備等に関する手引き」に反映へ

「災害情報伝達」は、行政が住民に対して、避難情報や気象情報を届けるための仕組みや手段だ。「消防白書」(総務省消防庁)や「情報通信白書」(総務省)で多重化や多様化の重要性を盛り込んでいる。防災行政無線のほか、Jアラート(全国瞬時警報システム)、緊急速報メール(エリアメール)、Lアラート(災害情報共有システム)、SNS・HP・登録制メールなどがある。

検討会はスピーカーを搭載したドローンが「主たる災害情報伝達手段の代替、または補完」として有効かどうかを検討した。特に防災行政無線が抱える、広い沿岸部を持つ自治体にとっての設置台数確保、山間部での設置難易度の高さなどの課題をふまえ、①運用上の留意事項の整理、②「主たる災害情報伝達手段」となるための要件設定の検証、③想定される課題の整理などを検証するための実証実験を行った。実証実験では、音声の届く音達範囲や、音声の内容が聞き取れる了解度などを、沿岸部や山間部など環境の異なる場所で、機体と観測者の位置、距離などで条件分けして実施した。

事務局を担ったブルーイノベーションは広い沿岸部を抱える仙台市や千葉県一宮町でJアラートに対応して自動で避難広報のためにドローンが発信するシステムに納入していて、実証実験でもこれらの自治体での検証を実施した。また山間部での実験は宮城県白石市の「みやぎ蔵王白石スキー場」などで、耐候性検証を大型降雨実験施設で、音声伝達性能検証を板橋ドローンフィールドで実施した。

この結果、遮蔽の有無や観測者との向きなどで聞こえ方に差があることや、運用者が安心して活用できるためのマニュアルの整備などの重要性が確認された。音声の伝達性については、「指向性スピーカーを搭載するドローンでは、全方向に音を届けるために工夫することが望ましい」「飛行実験を行った60mまでの高度では、ドローンの飛行高度による音の減少幅は小さいと考えられる」などと考察した。

そのうえで、自治体で災害時の情報伝達手段としてドローンを活用する際の留意事項には、「ドローンの活用においては住民の行動変容につなげることが重要であり、そのためには飛行ルート、運用体制、放送内容、スピーカーの性能等で留意すべき点がある」と結論づけ、飛行ルート、運用体制などそれぞれについて考察した。

たとえばJアラート情報と連動させることについては、津波に関する情報には有効であっても、緊急地震速報では数秒の猶予しかないため「✕」と判定し、「ドローンの飛行までに1~2分ほどを要することを踏まえると、到達までに一定の時間がかかる津波に関する情報等の伝達では有効であるが、特に緊急性の高い緊急地震速報等を放送する場合は、屋外スピーカーその他の手段と連携して災害情報を伝達することが必要だと考えられる」などと整理した。

検討全体として『「主たる災害情報伝達手段として必要な要件のうち、「発災前後を通じて、継続して使用できる耐災害性を有していること」及び「市町村が伝えるべき防災情報を制約なく伝達できること」を満たしているとは言えず、現時点では、防災行政無線等の代替とまではいえないと考えられる。ついては、現時点では、スピーカードローンは、屋外スピーカーや戸別受信機の補助として運用することが望ましいと考えられる』とまとめた。

近くこの内容を「災害情報伝達手段の整備等に関する手引き」に反映させる。

検討会のために実施した実験の様子
実験で使われた機体。検討会の報告書には機体名は記号化されていて明示されていない
仙台市の津波広報ドローン

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村山 繁
DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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