一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、2025年1月30日、仙台市と「災害時におけるドローンによる支援活動に関する協定書」を締結したと発表した。仙台市での発災時などにドローンでの支援活動を行う。
協定では、仙台市内で災害が発生したさいなどに、JUIDAが支援活動を行うことを盛り込んだ。この中には①ドローンによる調査、情報収集、物資運搬②操縦者派遣、機体提供、手続きや他機関との調整などの事務作業③映像等のデータの提供④そのほか必要な活動などが含まれる。
JUIDAは能登半島地震で災害支援に取り組みで自治体との協定が迅速な対応に有効と判断し、現在、都道府県や広域自治体、政令指定都市などとの連携を進めている。自治体からJUIDAに対する相談や問い合わせも増えている。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は阪神・淡路大震災が発生した1月17日、ドローンによる災害対応の調整力や現場の統括力を養成する新講座、「ドローン防災スペシャリスト教育講座」を発表した。能登半島地震でドローンの運用を調整、統括した実践経験もふまえ、どこで災害がおきても現場で調整、統括できる人材の要請を目指す。避操縦にも受講を呼び掛ける。
「ドローン防災スペシャリスト教育講座」は、パソコン、スマートフォンなどを使うオンライン学習(eラーニング)形式で提供する。価格は税込み44000円で、JUIDA会員であれば38500円になる。テキストがないかわりに、3年間は繰り返し視聴できる。収録時間は4時間程度で、早送り再生での視聴に慣れていれば短縮も可能だ。終了すればJUIDAから終了証が発行される。
JUIDAが能登半島地震でドローンの運用現場を統括したさい、自衛隊や自治体、民間事業者、被災者など関係各方面との意見や都合の調整と、統括して災害対応の成果をあげることの重要性を痛感し、現場で調整役、当活役を担える人材を養成する講座をつくった。
受講対象に操縦者である必要がないことも特徴で、ドローンを用いた防災活動への関心層を広く対象としている。この中には、自治体職員、自衛隊、消防、自衛隊、DMATなどを含み、ドローン事業者も入る。
講座には、災害時のドローン運用調整、役割分担、各方面との連携を円滑に運ぶスキル、連携各方面との共通の目標設定、災害時の法令、体制構築スキル、事前準備、意思決定、最適な活用方法を判断するスキル、などが含まれている。
JUIDAの発表はこちら:https://uas-japan.org/information/information-34732/
自動制御技術のブルーイノベーション株式会社(東京)は、一宮町(いちのみやまち、千葉県長生郡)が同社の開発したドローン自動巡回システム導入を決めたと発表した。機体、ポート、ソフトなど2セットを町役場と町内の小学校に設置する。一宮町は年間60万人のサーファーが訪れるサーフィンの町で、津波注意報が出たときなどドローンが自動で出動し、7.5㎞にわたる海岸線の上空からスピーカーで避難を呼びかける。一宮町は仙台市が導入した事例を参考にしたといい、「長い海岸線があっても迅速に対応し被害を最小限にしたい」と話している。11月15日の発表後の東京証券市場ではこの決定を好感して同社株は急反発した。
ブルーイノベーション株は一宮町へのシステムの導入が決定した週明けの11月18日、前週末15日の1株あたり719円から71円高い790円で始まり、一時121円高の850円をつけるなど終日、前日終値を超えて取引された。18日の終値も808円で、翌19日の取引も812円と続伸で始まった。
一宮町が導入を決めたシステムはブルーイノベーションが開発した「BEP(ベップ)ポート|ドローン自動巡回システム」だ。ドローンと格納庫になるポート、それを稼働させるソフトウェアで構成される。BEPとは異なるIT機器同士を連携させて果たしたいミッションを遂行させるブルーイノベーションのプラットフォームで、Blue Earth Platformの略称だ。「BEPポート」はBEPを組み込んだドローンの離発着用ポートをさす。
主な機能は監視や警戒が必要な地域、施設、現場などでの自動広域巡回だ。必要なときにドローンが自動で離着陸し、各農事には自動で充電できる。Jアラート(全国瞬時警報システム)と連動していて、津波注意報などが発令された場合にドローンが離陸する。一宮町はこのシステムは2組導入する。2機のドローンは海岸まで飛行し、7.5㎞連なる海岸線を分担して飛び、上空から海岸や波の上のサーファーらに自動音声で避難指示を伝える。設置場所は一宮町役場屋上と町立東浪見(とらみ)小学校屋上を想定している。一宮町役場には非常用電源も備えている。
一宮町は長い海岸線と地域特産のフルーツなどから「緑と海と太陽のまち」を標榜する。海岸へは鉄道駅の玄関口、JR外房線の上総一ノ宮駅から自転車で10分、徒歩なら30分強。バス便もあるが、駅のバス停留所の発車は平日が15時ちょうど、16時ちょうどの2本のみ。休日の運航はなく、年末年始など運航しない時期も設定されている。
約7・5㎞の海岸線には絶好のサーフポイントが多く点在する。トラブル回避のため、禁止行為、エリア分けなどルールも作られている。この恵まれた環境が年間60万人のサーファーを引き寄せている。11月現在も、一宮海岸の駐車場は多くの車とサーフウェアに身を包むサーファーで賑わっていた。県外ナンバーも多い。
一方、街中では「津波注意」と注意を喚起する張り紙や「ここの海抜は〇メートル」と書かれた表示板が目立つ。海岸から広い範囲で海抜の低い平地が広がるため、津波発生時の避難場所も記されている。避難場所は小学校などの公共施設であったり、海岸から離れた丘陵地側にたつ寺院であったりする。町役場は海岸から約2㎞内陸だが、隣接する中央公民館には「この付近は海抜3.4メートル」と示す表示板がある。巨大地震発生時には数メートルから10mの津波も想定されていて、役所の4階より上階に避難することになる。
一宮町は津波が身近だ。さかのぼると1677年10月の延宝房総沖地震(えんぽうぼうそうおきじしん)では、各地で多くの津波被害をもたらしたといわれる。全体像を示す記録はないが、延宝5年(1677年)から享保4年(1719年)までの一帯の出来事を記した『万覚書写(よろづおぼえがきうつし)』には、一帯で住宅52軒が押し流され、137人の男女と子供が死亡し、その後1か月でさらに14~15人が死亡したとする記述が残る。町内には元禄7年(1694年)に建立された供養塔も残る。消防団の施設の玄関前には、延宝地震が再来した場合に想定される津波の高さを示した表示板もある。
システムの導入を決めた背景には、2011年の東日本大震災の津波で避難広報活動中の職員2人、消防団員3人を失った仙台市の事例が教訓となっている側面がある。仙台市は防災担当者自身の安全確保を検討し、2022年10月にブルーイノベーションの津波波避難広報ドローンの運用を始めた。運用にあたり、仙台市はシステムの主な利点を、道路寸断時でも空から俯瞰できるなど災害時におけるドローンの有用性を活用できること、防災担当者の安全確保や広域確認の迅速性確保など東日本大震災からの教訓をいかせること、行政無線やメールなどとあわせた津波避難広報の手段を多重化できることの3点をあげた。一宮町も海岸が広域で、行政無線の設置に限界があるなど、課題が重なっていた。
一宮町は「万が一のときでも被害を最小限に食い止めるため、導入を検討した。仙台市の事例も聞いていて、実験もして有効と判断した。DXを推進しつつ、まかせきりにはせず対応の強化につなげて町を活性化したい」と話す。
ブルーイノベ―ションの発表内容は以下の通り。
~Jアラートと連動し、自動飛行でサーファーに避難誘導を実現。令和7年度より運用開始~
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田 貴之、以下 ブルーイノベーション)は、千葉県一宮町において当社の「BEPポート|ドローン自動巡回システム」※1を活用した津波避難広報ドローンシステム(以下、本システム)の導入が決定したことをお知らせします。本システムは令和7年度より運用を開始し、一宮町の防災力を大幅に強化します。さらに、津波リスクが高い他地域への導入を拡大し、全国的な防災力向上に貢献することを目指します。
■ 新たな防災の形として
本システムはJアラート(全国瞬時警報システム)と連動しており、津波注意報以上が発令された際に、一宮町役場および東浪見小学校の屋上に設置されたドローンポートからスピーカーやカメラを搭載したドローンが自動的に発進。指定された海岸エリア(海岸線延長約7.5km)を飛行し、上空から自動音声でサーファーや海水浴客、周辺住民に対して避難指示を伝達します。これにより、迅速かつ効果的な避難指示・誘導対応が可能となり、地域の安全を強化します。
■ 導入の背景
一宮町では、大規模地震に備え、津波災害への防災対策を整備していますが、現状の防災無線だけでは、海岸線延長約7.5kmの沿岸地域に対して充分な避難指示・誘導を行うことが難しい状況です。また、一宮町は全国有数のサーフィンスポットであり、東京2020オリンピックの正式競技会場にも選ばれており、海上にいるサーファーへの迅速な情報伝達が求められています。
このような課題を解決すべく、一宮町は、当社が開発サポートした宮城県仙台市の津波避難広報ドローン事業※2の事例に着目し、本システムの導入を決定しました。この取り組みにより、一宮町はサーファーや海水浴客、周辺住民の安全をより一層強化する体制を整えます。
■ 用語説明
※1 BEPポート|ドローン自動巡回システム
施設内・建設現場・河川・ダムなどの点検や監視、警報などの広域巡回を、現場で人が介在することなく定期的に実施が可能。自動離着陸・充電が可能なドローンおよびドローンポートシステム。
https://www.blue-i.co.jp/solution/logistics/port_04.html
※2 仙台市津波避難広報ドローン事業
2022年10月より運用開始。Jアラートと連動しドローンが自動離着陸・飛行し、避難広報と状況撮影の全自動化を実現しています。
https://www.blue-i.co.jp/news/release/20221124.html
東京都内に竣工した大規模物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」に、ドローンの実証実験が可能な施設「板橋ドローンフィールド(板橋DF)」が誕生し、10月2日にお披露目された。LOGIFRONT東京板橋は三井不動産株式会社、日鉄興和不動産株式会社が開発した地元と協議を重ねて竣工した「街づくり型物流施設」でドローンフィールドは物流施設に寄せられる新産業創出機能に対する期待を担う。ドローンフィールドは一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、ブルーイノベーション株式会社が監修した。飛行用ネットフィールドやドローンポートが備わり、稼働中の物流施設を使った実験も可能で、都心の実験場の開設で、高頻度の実験が可能になる。会員制コミュニティも運用し共創を加速させる。
LOGIFRONT東京板橋と板橋DFは9月30日に竣工し、10月2日に竣工式典と説明会が行われた。説明会では日鉄興和不動産の加藤由純執行役員、三井不動産の篠塚寛之執行役員、板橋区の坂本健区長が参加した。加藤氏、篠塚氏が施設を説明し、坂本区長があいさつをした。施設内では内覧会でドローンのデモフイライトが行われ、ここでは三井不動産ロジスティクス事業部の小菅健太郎氏が概要を説明、JUIDAの鈴木真二理事長があいさつをした。ブルーイノベーションの熊田貴之代表取締役社長も登壇した。
板橋DFはドローン飛行用のネットフィールド、ドローン事業者用R&D区画、交流スペースを備える。物流施設に併設していることから、施設を実験会場として活用することも想定していて、施設の外壁を使った点検や配送などの垂直飛行、屋上にはりめぐらされた太陽光パネルの点検、接地されているドローンポートの活用、AGV(自動搬送車)との連携などが想定されている。ドローンオペレーター輩出で実績をもつドローンスクール、KDDIスマートドローンアカデミー(東京)が東京板橋校を構え、人材育成にあたることも発表された。
このうちネットフィールドは、敷地内の広場に整備された広さ約650㎡、高さ14mのネットに囲まれた設備で、この中では申請をせずにドローンを飛ばせる。KDDIスマートドローンアカデミー東京板橋校の講習会場にもなる。敷かれている芝はフットサルコート仕様で、時間帯によって地域住民の健康増進にも開放される。
ネットフィールドに近い入り口から建物に入るとすぐ、ネットフィールドをのぞむ位置にドローン事業者の交流を目指して設置された交流施設「ドローンラウンジ」がある。大型モニター付きのミーティングルームなどが備わり、ネットワーキングイベントにも使える。
この日はデモフライトも行われ、施設内では物流施設内で照明を落とし、光が届きにくい場所で球体ドローンELIOS3などの機体を飛行させる様子や、建物の外壁を点検するような飛行を公開した。
説明会では、東京大学と三井不動産の産学共創協定に基づく「三井不動産東大ラボ」が主体となる共同研究としてGPSに依存しないドローン位置特定技術、高層マンションなどでの垂直配送実現性検証や、ブルーイノベーションが主体となる長距離、長時間、自動航行に対応する高性能ドローンポートの開発などが含まれることが紹介された。
三井不動産の篠塚執行役員は「都心での高頻度な実験が進みにくい課題を解決することが可能となります。ドローン技術のイノベーションが起こることを期待しています。またここで検証された技術が配送、建物管理、災害時対応などの分野で課題解決につながることを期待しております」と述べた。
監修を担当したJUIDAの鈴木真二理事長は「ドローン産業の発展に少しでもお役にたてることを期待しております」とあいさつした。
板橋DFの入るLOGIFRONT東京板橋は、三井不動産、日鉄興和不動産が手掛ける大規模街づくり型物流施設で、物流拠点として高い機能と豊かなデザインを備えながら、地元の要望を取り入れた街に開かれた施設で、三井御不動産の篠塚執行役員は「街づくり型物流施設の集大成」と位置付けた。
板橋区との協議では、災害に強いまちづくり、地域に開かれた憩いの場の整備、新産業機能の要望を取り入れ、近くを流れる荒川、新河岸川の氾濫などの災害を想定し、住民の対比場所の確保、支援物資の補完場所の確保なども設けていることが特徴だ。あいさつした板橋区の坂本健区長は「防災力向上に多大な貢献を頂いております」と謝辞を述べた。
開発したのは日本製鉄の製鉄所があった場所で、フロアプレート約36000㎡、屋上に設置した太陽光パネルは4MV、敷地の河川敷として公開空地を設定して地域にも開放した。
ドローンフィールドとの相乗効果について、今回の説明会で物流用途や防災用途でのグ遺体的な実装計画には触れられなかったが、大型物流施設に併設されたフィールドであり、大型河川の流域に位置し、防災に高い問題意識を持つ板橋区にあることなどから、ドローンの実装にも高い期待がかかりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が能登半島の豪雨災害への対応を開始した。自衛隊と連携し孤立集落へのドローンによる物資配送などにあたる。株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)、株式会社ACSL(東京)がすでに現地入りし、株式会社エアロジーラボ(AGL、箕面市<大阪府>)、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)が近く合流する。ブルーイノベーション株式会社(東京)も一両日中に加わる。
JUIDAは9月23日に被害の大きい輪島市に入った。翌9月24日にはNEXT DELIVERY、ACSLが合流した。株式会社エアロジーラボ(箕面市<大阪府>)、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)も9月25日中に現地入りし、ブルーイノベーション株式会社も追って合流する見通しだ。
このうち事業者として現地にもっともはやく合流したNEXT DELIVERYは小菅村、小松市(石川県)のそれぞれから現地で運用していた物流用機Air Truckを持ちこんだ。2機を持ちこんだのは、孤立集落への物資配送の輸送頻度が高くなることが見込まれるためだ。1月に発生した能登半島地震の震災対応のさいには小菅村の機体を持ちこみ、医薬品の輸送で被災地を支援した。同社はドローン配送を平時と有事の両面で活用するフェーズフリー活用に取り組んでいる。
輪島市中心部では9月21日午前9時10分までの1時間に120ミリの大雨が記録され、気象庁が輪島市、珠洲市、能登町に大雨特別警報を発表した。その後22日午前10時10分、気象庁金沢地方気象台が大雨特別警報を大雨警報に切り替えたと発表した。
国土交通省は9月22日午後3時に輪島市、珠洲市、穴水町、能登町を国土交通大臣による航空法第132条の85による緊急用務空域公示第2号に指定した。ドクターヘリや救急搬送などの活動を妨げることにならないよう、国、地方などの要請を受けていないドローンは現地での飛行させることができない。一方、孤立集落への物資搬送などにドローンの活用は期待されていて、石川県は9月24日、JUIDAに対し支援を要請した。
JUIDAは石川県の要請より前に現地への急行を準備し、9月23日には現地に入りし、自衛隊など関係機関と調整を開始。24日の石川県からの要請を受けて具体的な取り組みを進めることになった。25日にはひとつの孤立集落への物資輸送を開始する準備を進めていたが、幸いにもこの集落への陸路が開通したためこの集落への配送は陸路にまかせ、ドローン配送は別の集落への取り組みに切り替えることを決め、次の対応を練っている。
JUIDAのもとにはドローン事業者から協力の申し入れも届いており、JUIDAが現地の需要とすりあわせながら、対応を検討している。
能登地方では9月25日も不明者の捜索が続けられ、この日輪島市で3人がみつかり、いずれも死亡が確認されたことから、豪雨の死者は計11人となった。午後4時現在、5人の行方がわかっていない。また輪島市、珠洲市、能登町の16カ所の集落が孤立し、157人が取り残されている。
ドローン配送を既存物流と融合させる「新スマート物流」を進めている株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)など3社は、山梨県と、新スマート物流の広域化と県全域での整備と、災害時に物資輸送などを担う平時と有事との両用化を推進し、地域物流インフラを強靭化する連携協定に締結した。新スマート物流は2021年に山梨県小菅村で発足し、これまでに市町村単位での連携で実績を積み上げ全国各地に広がってきた。今回の山梨県との締結は、新スマート物流の都道府県単位で協定としては初めてで、山梨県の長崎幸太郎知事は、県内生まれのプロジェクトで協定を締結することに「子供が立派になって戻ってきてくれたよう」と目を細めた。
協定の締結式は8月28日に、山梨県庁内で行われた。山梨県と協定を締結したのはNEXT DELIVERYのほか、セイノーラストワンマイル株式会社(東京)、富岳通運株式会社(甲府市)の3社。締結式では各社の代表が協定に署名し、抱負を述べた。
協定は「山梨県におけるフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、もって県民生活や地域経済基盤の強靱化に資すること」が目的で、2024年問題など地域の物流課題、災害時の物資輸送など防災インフラづくりなどで協力して進めることが記されている。具体的な内容や進め方は今後、3社と県が検討を進める。
NEXT DELIVERYの田路圭輔代表取締役は6月28日に修正された防災基本計画が、「交通の途絶等により地域が孤立した場合でも食料・飲料水・医薬品等の救援物資の緊急輸送が可能となるよう、無人航空機等の輸送手段の確保に努めるものとし」など、ドローンの積極活用が明記されたことを引き合いに「平時、緊急時をまたいでドローンをしっかり活用する国の方針は心強く思いました。小菅村、丹波山村(ともに山梨県)で始めた新スマート物流を山梨県全域に広げ、緊急時にもしっかり地域を支えるインフラにしたいと思っています」と決意を述べた。
また、「新スマート物流のアップデートには山梨県のお力添えが不可欠だと思っています。最初に提携したかったのは、小菅村での活動のベースである山梨県でしたので、一番早く協定を結んで頂きました」と付け加えた。
山梨県の長崎知事はこれを受けて「大変、親孝行な子供をもって幸せだと思います」と笑顔を見せた。さらに「山梨県には災害がおきると孤立集落になるおそれのある場所があります。医薬品や食品の輸送などの課題がありますので、その解消をどうするか。有事対応が前提ですが、平時に使い慣れていないと機能しないとも思います。(離発着場となる)ドローンポートは孤立の恐れのあるところに設置する必要があると思います。これは急いでやりたい。設置した住民に『ここにドローンが来ますからびっくりしないでくださいね』と伝えて、普段使いもしていただいて。災害がおきたときにも物流にあてられるようにしたいですね」と述べた。
協定締結を受けて公表されたプレスリリースの内容は以下の通り
~県民生活や地域経済基盤の強靱化を目指して~
写真向かって左より山梨県知事 長崎幸太郎、NEXT DELIVERY 代表取締役 田路圭輔、セイノーラストワンマイル 代表取締役社長 河合秀治、富岳通運 代表取締役 浅沼 克秀
山梨県(知事:長崎幸太郎)と株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下NEXT DELIVERY)、セイノーラストワンマイル株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:河合 秀治、以下 セイノーラストワンマイル)および富岳通運株式会社(山梨県甲府市、代表取締役:浅沼 克秀、以下富岳通運)は、2024年8月28日に、山梨県におけるフェーズフリーな地域物流インフラの構築に向けた連携協定を締結いたしました。
NEXT DELIVERYの親会社である株式会社エアロネクスト(以下 エアロネクスト)とセイノーホールディングス株式会社(以下 セイノーHD)は、トラックや軽バン等の陸上配送にドローン輸送を組み合わせて物流を効率化する新スマート物流SkyHub®を、山梨県の第1期TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業による試験的運用を経て、2021年10月から日本で初めて小菅村にて社会実装し、現在では北海道上士幌町や福井県敦賀市をはじめ全国10ヶ所で展開しています。
その後NEXTDELIVERY、セイノーHD、富岳通運等は、2024年問題対策として各社のリレー方式で物流の効率化を図る共同配送を、2023年8月から小菅村・丹波山村においていち早く開始しています。中山間地域の物流において、大手物流会社含む複数社での共同配送を実施する事業は全国でも珍しい事例です。
富岳通運は、2022年8月に山梨県と災害時における山梨中央ロジパークの施設使用に係る連携協定を締結するとともに、県下27市町村と災害時の連携協定を締結しています。
エアロネクストとNEXT DELIVERYは、2024年1月に起きた能登半島地震において、孤立集落・避難所へのドローンによる医薬品の物資輸送を国内で初めて実施した経験を踏まえ、平時、有事を問わず、ドローンを活用したフェーズフリー型統合ソリューションの構築が必須であり、そのためにはこれまで推進してきた新スマート物流SkyHub®が基盤になりえると考え、国や自治体と前向きな会話を始めています。
今回、4者が相互の連携・協力により、山梨県における2024年問題など平常時の地域の物流ネットワークの強化や買い物弱者対策、並びに災害時の被災地への迅速な物資輸送を可能とするフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、県民生活や地域経済基盤の強靱化を図ってまいります。
<連携協定の概要>
1.締結日 2024年8月28日
2.協定の目的
本協定は、山梨県におけるフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、もって県民生活や地域経済基盤の強靱化に資することを目的とする。
3.協定の内容
上記目的を達成するため、以下の事項について相互に連携・協力する。
(1)2024年問題など地域の物流課題の解決に関すること
(2)災害時の物資輸送など防災インフラづくりに関すること
(3)その他、目的を達成するために必要な事項
8月28日に実施された連携協定締結式において、代表4者が以下のとおりコメントしています。
<山梨県知事 長崎幸太郎のコメント>
NEXT DELIVER、セイノーラストワンマイル、富岳通運の3者の皆さまと連携協定を締結することができ、心より感謝申し上げます。山梨県小菅村での実証実験からスタートした「新スマート物流」は、すでに全国各地に展開されており、このたびのフェーズフリーな地域物流インフラの構築は、山間部など人口減少エリアを数多く抱える本県にとって、非常に重要な課題であります。また、先般の「南海トラフ地震臨時情報」を機に災害への備えを見直すなかで、ドローンの活用が非常に有効なものと改めて認識したところです。このたびの協定は山梨県にとっても大変意義深いものであり、3社の皆さまと県民生活の強靱化に向けた取り組みを加速して参ります。
<NEXT DELIVERY代表取締役 田路 圭輔のコメント>
2021年1月に小菅村にNEXT DELIVERYを設立し、ドローン配送をスタートしたのも山梨県、共同配送をスタートしたのも山梨県で、山梨県は様々な新スマート物流の取り組みの起点になってきました。この度、山梨県とこのような新たな取り組みをスタートできることを本当に光栄に思います。地元の運送会社様との連携をベースにして、平常時と緊急時をフェーズフリーに利活用できる地域物流インフラを構築していく今回のプロジェクトを全都道府県に拡げていきたいと思います。
<セイノーラストワンマイル代表取締役社長 河合 秀治のコメント>
セイノーHDは、幹線輸送の強みを活かしたラストワンマイル配送領域において、生活様式の変化や構造変化に対応すると共に、買い物弱者対策、生活困窮家庭対策等の社会課題解決型ラストワンマイルの構築を積極的に推進・拡大しております。山梨県小菅村、丹波山村においては、物流会社が抱える2024年問題や地域課題に対して、富岳通運様をはじめとする物流各社様と連携して共同配送を構築、また、この配送インフラを緊急時は物資輸送に利活用できるしくみとしています。今後も同じ課題をもつ全国の地域にこの小菅・丹波山モデルを展開し、住民の皆様が持続的に安心して暮せる環境づくり、住民サービスの維持、向上を進めてまいります。
<富岳通運 代表取締役 浅沼 克秀のコメント>
提携協定を契機に、更なる地域の物流ネットワーク構築及び課題解決に向けた取り組みを協同して参りますのでよろしくお願い致します。