株式会社エンルートを連結子会社として持つ株式会社スカパーJSATホールディングス(東京)は、公式サイトでエンルートの解散を伝えた。「競争激化」と「事業譲渡終了」を解散理由としている。またスカパーJSATHDはエンルート解散により2022年3月期の連結損益計算書での税金費用の約9億円の削減を見込むとしている。なお6月3日に開催されたエンルートの臨時株主総会では書面決議で解散決議が行われた。
スカパーJASTHDによると、同社は2016年7月からエンルートを連結子会社としていた。グループの株式会社衛星ネットワーが52%、スカパーJSAT株式会社が48%を保有しており、スカパーJSATグループで間接的に100%の株式を保有していた。
スカパーJSATの公式サイトは「解散の理由」について「エンルートは、2016 年7 月から当社連結子会社となり、産業用ドローンの販売等の事業を展開してまいりましたが、海外メーカーの日本市場参入による競争激化等により、厳しい経営状態が続いておりました。このような中、同社は 2021年1月に㈱NTT e-Drone Technology への一部事業譲渡を行い、当社グループにおけるドローン事業会社としての役割を終えたため、解散することといたしました」と伝えた。不正受給の影響などについては直接言及しておらず、スカパーJSATはドローントリビューンの取材に「直接の原因ではなく、それ以前から経営状況は良いとはいえなかった」と話している。
6月3日に行われた臨時株主総会は、エンルートの解散について書面を通じてやりとりをする書面決議で行われた。定時株主総会で行われるような株主と会社側との質疑はなかったという。
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社オプティム、株式会社WorldLink & Companyの3社が合弁で設立した株式会社 NTT e-Drone Technology(埼玉県朝霞市)が始動した。会社ホームページを公開し、国交省航空局が掲載している「管理団体」にも社名が登場した。同社は1月、農業分野を中心に注力していくことを表明している。新会社の登場で、ドローン関連の産業振興や、社会実装への期待が高まりそうだ。
NTT e-Droneの会社名は、国交省航空局が2月1日付で改訂した「無人航空機の講習団体及び管理団体一覧」の管理団体として登場した。55件の管理団体の6番目に、「株式会社 NTT e-Drone Technology(旧名称:株式会社エンルート)」と表記され、株式会社エンルートから関連事業の譲渡を受けて始動したこと、またエンルートが運営していたドローンスクール事業を継承したことを周知した形だ。また「HP掲載日」も「平成29年6月1日」を継承。国交層が「管理団体」の掲載を開始した当初の4団体のひとつであった実績を刻み込んだ。
1月の設立発表時には、2021年度の売上高を10億円と見込み、5年後には40億円規模を目指す考えを表明している。発表会では、NTT e-Drone Technologyの代表取締役社長に就任した東日本電信電話株式会社の田辺博代表取締役副社長がドローンビジネス市場への大きな期待を表明し「各産業分野でドローンの活用による活性化が期待されている」と産業全体に与えるインパクトの大きさを強調した。
当面はエンルートが2019年10月にお披露目すると、あっと言う間に評判を獲得した「AC101」を中心に、農業事業を展開していく。事業には機体開発、運用支援、ソリューション、プラットフォームなどを掲げており、同社の始動が市場を盛り上げそうだ。
■株式会社NTT e-DroneTechnologyのサイトはこちら
ドローン事業をNTT東日本系のドローン新会社、NTT e-Drone Technologyに譲渡することを発表した株式会社エンルート(埼玉県朝霞市)に在籍する社員は、全員が1月31日付けで退職することが分かった。早期退職制度などを適用する。エンルートの会社は2月1日以降も存続し、昨年発覚した不正受給関連の事業など譲渡以外の業務にあたる。業務には親会社であるスカパーJSATグループからの出向担当者などが当たる。
エンルートには、現在50人弱の社員が在籍している。社員は1月31日付けで退社する。当日が日曜日のため、多くの社員にとって1月29日がエンルート社員としての最終出勤日になるとみられる。退職する社員のうち機体開発などに携わってきたメンバーには、e-Droneに就職し、同社の社員として2月1日以降もドローン事業の中核を担うメンバーもいる。
e-Drone が始動したあとも、会社としてのエンルートは存続する。現在のエンルートの社屋はe-Drone の本社となるが、エンルート本社の所在地は現在のまま残す。1月末に社員が退社したあとのエンルートの業務は、親会社であるスカパーJSATグループ出向者らが担う。不正受給関連の事業など譲渡以外の業務にあたる。
エンルートはAC101、EC101の主力2機種をのぞき、ドローンの製造、開発を12月末で打ち切った。保守サポートも、部品入手難などを理由に多くを12月末で修了している。産業用ドローンの「CH940」、「PG390」、「PG560」、「PG700」やその他の特注機は2021年3月末日まで続ける。ただ、エンルートが譲渡する事業の中に、保守サポートも含まれるため今後、このサポート業務もエンルートではなく、事業を引き継ぐe-Drone側で受け持つ可能性がある。エンルート経営管理部は「お客さまへを最優先で対応することに変わりはありません」と話している。
日本製ドローンの開発を手掛けてきた株式会社エンルート(埼玉県朝霞市)は1月18日、同社のドローン事業を、新しく発足するNTT東日本系の株式会社NTT e-Drone Technology に譲渡すると明らかにした。新会社e-Droneは現在のエンルートの社屋に本社を構え、2月1日から事業を開始する。昨年発覚したエンルートの助成金不正受給に関わる対応は譲渡される事業に含めず、引き続きエンルート側で対応する。また譲渡後のエンルートの事業については「親会社であるスカパーJSATグループの中で見直しを図る」としており、ドローン事業からは事実上の撤退となる公算だ。2006年10月の設立から日本のドローン産業をけん引してきたエンルートは、ドローンの表舞台から姿を消すことになりそうだ。
エンルートはこの日、「2021年1月31日をもちまして、ドローン事業及びこれらに附帯関連する事業の一部を、株式会社NTT e-Drone Technology(以下「事業譲受会社」)へ譲渡することになりましたのでお知らせいたします。ここに永年にわたり賜りましたご愛顧、ご厚情に対しまして衷心より御礼申し上げます。」と表明した。
親会社の株式会社スカパーJSATホールディングスも同日、連結子会社にあたるエンルートからe-Droneへの事業譲渡を発表。この中で「当社グループはNTTグループやパートナーとの連携で、引き続き衛星通信とドローンの連携を促進し、山間・島しょ部等の通信不感帯や見通し外飛行における技術的課題の解決、画像解析等のソリューションの提供等、サービス領域のさらなる拡大に取り組む」(一部抜粋)と表明。また業績への譲渡が業績に与える影響を「軽微です」と公表した。
エンルートによると、譲渡するのは、ドローンの機体開発、製造、販売、保守・点検、スクール運営、飛行データ管理、農薬散布、データ収集・加工など。発表では「事業の一部」と表現されているが、継続可能なドローン事業はe-Droneが引き継ぎ、継続しない事業は整理され、不正受給処理対応関係は当面の間エンルートが担う、という対応になるとみられる。
また今回の事業譲渡では、エンルートの社員がそのままe-Drone の社員になることにはなっていない。2月以降はエンルートで開発、製造に関わっていた担当者を中心にe-Droneで開発を担う見通しだ。
エンルートについては親会社の株式会社スカパーJSATホールディングスが1年以上前の2019年ごろから同社の経営健全化、資本政策などを検討し、NTT東日本側に事業譲渡を持ちかけていた。しかし2020年にエンルートが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に採択された事業で助成金、委託費の受給をめぐる不正が発覚し、2020年2月に社長を交代するなど経営を一新。またその後に行った調査で、農林水産省や国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)関係でも不正が見つかったため、受給した資金を返納し、9か月の指名停止処分を受け、事業譲渡に踏み切るタイミングがこの時期になった。
エンルートは今回の事業譲渡に先立ち、先月(2020年12月)末に、既存の機体の大半について生産終了に踏み切った。同社は部品調達が困難になったことを理由にあげている。製造販売を修了したのは、農業用ドローン「AC940D」「AC1500」、産業用ドローン「QC730」、「QC730TS」、「CH940」、「PG390」、「PG560」、「PG700」で、いずれも国土交通省の「飛行申請で書類の一部を省略できる機体」の一覧に掲載が認められている。この生産終了により、エンルートが生産するドローンは農業用ドローン「AC101」と、産業用ドローン「EC101」に集約。今回の事業譲渡により新会社e-Droneも農業に力を入れる方針を表明しており、引き継ぎ機体は新会社の事業に合致する。
新会社e-Droneは、エンルートの事業譲渡が公表された1月18日の同日、東日本電信電話株式会社(NTT東日本、株式会社オプティム、株式会社WorldLink & Company(京都市)の3社が設立を発表した。エンルートの開発系のメンバーを中心に30人程度で構成し、当面は農業用ドローン分野が事業の中心となる。資本金は4.9億円。筆頭株主はNTT東日本で2021年度は売上10億円、5年後に40億円規模を目指す。e-Droneを設立した 3社はこの日の記者発表会し、ドローン市場への期待などを表明している。
■エンルートの「当社の一部事業譲渡に関するお知らせ」はこちら。
■スカパーJSATの「当社連結子会社の一部事業譲渡に関するお知らせ」はこちら。
■NTT東日本の「ドローン分野における新会社設立及び事業開始について」はこちら。
国産ドローン開発、製造などを手掛ける株式会社エンルート(埼玉県朝霞市)は2月5日、スカパーJSAT株式会社執行役員常務だった江口覚郎氏が代表取締役社長に就任する人事を発表した。
社長に就任した江口氏は1958年4月10日生まれ。ソニー株式会社を経て2002年に株式会社スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT(株)。執行役員、執行役員常務経営管理部門経営戦略本部長などを経て、2019年7月から執行役員常務経営企画部門長代行を務めていた。国産ドローン開発を手掛ける企業として3代目の経営者となる。日本国内でのドローン開発、製造への期待が高まり視線が集まる中、江口氏の手腕が期待される。
前代表、瀧川正靖氏は2月4日付けで同社を退任した。瀧川氏は2017年4月1日に、創業者の伊豆智幸氏に代わり就任。社屋を移転し、イメージの刷新、独自開発機の開発など国産ドローンメーカーの地位向上に奔走した。2019年10月には、農業技術の展示会で小型、軽量、低燃費の農薬散布用意新型ドローン「AC101」を発表し話題を集めた。
同社ホームページでのお知らせはこちら。
株式会社エンルート(埼玉県朝霞市、滝川正靖社長)は小型、軽量、低燃費の農薬散布用意新型ドローン「AC101」を発表した。10月11日まで千葉・幕張メッセで開かれている「第9回農業Week」でお披露目されていて、折りたたむと1辺が60センチほどのコンパクトな機体に来場者が足を止めている。
AC101は4ローター機。プロペラを折りたたみ式にして脱着が不要になったほか、バッテリやタンクは、本体のレールをすべらせるように脱着できる構造を取り入れるなど、機体とパーツを大幅に改良した。機体重量(バッテリを除く)は同社の10キロタンク搭載対応機「AC1500」の11・9キログラムより42%軽い6.9キログラムとなった。大きさもアームを折りたたむと、全幅609ミリ、全長509ミリ、全高501ミリと小型化。新開発のインテリジェントバッテリで、1回の充電で農薬4リットルを入れた場合に、5回(計約2.5ヘクタール)散布できる。
コントローラーも7インチモニター付きに刷新。自動離着陸、直進アシスト、ABモード、飛行連動散布などオペレーターの操縦を支援する機能や、音声で警告する音声ガイドも搭載している。フライトコントローラーはエンルートの特徴である国産のRidgeHawkが使われている。
エンルートは2016年に「AC940」が農林水産航空協会の認定第1号となるなど、早くから産業用ドローンの開発に力をいれてきた国内のメーカー。AC101について「利用者から『効率よく散布したい』『部品やバッテリの取り扱いをもっと簡単にできないか』『もっとコンパクトに』など要望を頂いており、その解決策を具体化するために開発した」という。
千葉・幕張メッセで11日まで開催中の「第9回農業Week」のブースにも多くの来場者で盛況。多くの来場者に「ユーザーからバッテリーのもちに不満が多いので、長くとぶことを念頭においてコンパクト設計にたどりつきました。4ローター化で、積載能力を維持し、軽量化ができます。実はすでに、さらなる改善に取り組んでいます」などと説明。説明をきいた来場者が「それならうちの田んぼ、使っていいよ」といった声がかかる場面もあった。