ドローンや関連製品の製造、開発、関連事業を手掛けるVFR株式会社(東京)が経営体制を刷新した。代表取締役社長に蓬田和平氏、取締役に糸岡健氏が就任し、社外取締役の大前創希氏は引き続き社外取締役を務める。VFRは新たな体制のもとで高品質な製造技術や製品に対する深い知識など、同社の強みや持ち味を生かす体制の強化に舵を切る。
VFRは2月中に取締役会、株主総会を相次いで開き、体制刷新を準備してきた。2月10日に取締役会、20日に株主総会を開き、蓬田氏、糸岡氏、大前氏の取締役就任を決めた。また株主総会では、取締役会で代表の職を解かれていた湯浅浩一郎氏の任を解くことを決めた。一時的に代表取締役に就いていた留目真伸氏も辞任した。川口伸氏は引き続き監査役を務める。
新代表の蓬田氏はVFRに出資するDRONE FUNDに2020年から参画し、財務のスペシャリストとして3号ファンドで新規投資先の開拓、出資の実行などの先頭に立ってきており、出資先企業の強みを熟知している。蓬田氏は三井住友銀行、マッキャンエリクソン、リクルートでキャリアを積み、IoTデバイス開発メーカーでCOOを務めた。これらの経験を体制強化にいかす。今後も成長プロセスに応じ、体制を改めていくとみられる。
取締役に就任した糸岡氏は、 ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)を経て2014年からVAIO株式会社で取締役執行役員常務CFOに就任し、2020年3月VFRの社外取締役を兼務してきた。
DRONE FUNDの大前創希共同代表パートナーは引き続き社外取締役として経営に参画する。大前氏は2002年に株式会社クリエイティブホープを創業し戦略面を重視したWebコンサルティングを展開し2013年に同社会長に就任。2014年からはドローンを使った動画撮影などクリエイティブ活動を展開するドローンフラファとして活動し、2016年3月には「ドローンムービーコンテスト2016」で 準グランプリ受賞した。2017年5月にDRONE FUNDアドバイザリーボードを経て、2018年9月DRONE FUND共同創業者/代表パートナーに就任している。ビジネス・ブレークスルー大学/大学院教授も務める。
ドローンや関連製品の製造を手掛けるVFR株式会社(東京)は2月11日、代表取締役社長に留目真伸氏が就任したことを公表した。前代表の湯浅浩一郎氏は取締役と紹介されている。同社は2月9日、メーカーにかわって購入前の見積もり作成から購入後のトラブル対応などに対応するカスタマーサービス事業に参入することを公表しており、2月10日に取締役会を開き、新体制を決めたとみられる。3月からを見込む新事業の運用開始には新体制で臨むことになりそうだ。
新たに代表に就任した留目真伸氏は、レノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータ代表取締役社長を経て、 SUNDRED株式会社代表取締役に就任。2020年VFR株式会社創業後、取締役を経て、代表取締役社長に就任した。就任同社公式サイトで「ご挨拶」として、「多様なパートナーとの共創を通じてイノベーションを推進します」、「『技術と情熱で、人と社会の可能性を切り拓く』をビジョンとして、産業の共創に取り組んでまいります。」などと談話を公表している。
VFRは2月9日、湯浅前代表の体制でカスタマーサービス代行事業の参入を決めた。カスタマーサービス代行事業は、開発、生産中心になりがちな国内のドローンメーカーの手薄になりがちな作業を代行するサービスで、問い合わせに対応して見積もりを作成したり、商品を紹介したりする業務から、購入時の支払い、使い方説明、購入後のトラブル対応、返品対応までを提供することを想定している。3月にコールセンターを開設する方針だ。開発中心の体制を持つメーカーの場合、トラブル対応などに追われることで、開発速度に影響が及ぶ恐れがあるため、その部分をVFRに代行してもらうことでリスク軽減が図れる。
サービス実施にあたり、VFRは関連事業を展開する高知県の企業2社を「サービスパートナー」として連携することも発表している。2社はソフトウェア企業向けにカスタマーサポートセンター事業を展開する株式会社SHIFT PLUS(高知県高知市)と、ITハードウェア販売やアフターサービス、ドローンの講習などを手掛ける株式会社エレパ(高知県高知市)で、2月9日に説明会を含むセミナーを開いていた。
株式会社では代表選出は取締役会が担い、取締役の選定は株主総会が担う。
代表に就任した留目真伸氏氏のあいさつの掲載ページはこちら
カスタマーサポート事業に関わる発表は以下の通り
VFR株式会社(本社:東京都渋谷区 代表取締役社長:湯浅 浩一郎 以下VFR)は、プリセールス及び販売後のカスタマーサポートと品質保証を行う、PC業界と同様のカスタマーサービスの開設に向けて、高知県企業2社と連携開始いたします。サービスパートナーとして、ソフトウェア企業向けにカスタマーサポートセンター事業を展開する株式会社SHIFT PLUS(本社:高知県高知市 代表取締役:綿貫健吾、以下SHIFT PLUS)と、高知県を中心にITハードウエアの販売及びアフターサービス・ドローン講習までを行う株式会社エレパ(本社:高知県高知市 代表取締役: 上田 哲也 以下エレパ)が参画します。2023年3月より開始予定です。
1, カスタマーサポート立ち上げの背景
2022年12月に、第三者上空飛行が可能となる「レベル4」が解禁とされる航空法の改正が施行され、ドローンの本格的な社会実装が始まろうとしています。人手不足を補い、これからのビジネス・地域創生を担うドローンは、物流・災害対策・点検など、様々なシーンで活躍していきます。そのため、社会実装に向けたカスタマーサービスの重要性が高まっています。
2, ドローン業界における課題
国産のドローンメーカー及びサービサーはスタートアップ企業が多く、カスタマーサポートを行うリソースがないことが課題となっています。スタートアップ企業の開発リソースがトラブル対応等もこなしているのが現状で、この課題を解決することで開発スピードを止めることなく、必要な情報を開発や製造委託業者へ適時フィードバックすることが可能になります。
3, サービスパートナーについて
VFRは、VAIO株式会社の子会社として設立され、ITハードウェアのカスタマーサポート・テクニカルサポートの重要性を理解しています。PC業界のカスタマーサポートのナレッジを活かしたカスタマーサポートを立ち上げるため、「ITソフトウェア」のカスタマーサポートのナレッジを保有している株式会社SHIFT PLUSと、高知県を起点として「ITハードウェア」のフィールドサービスを行う株式会社エレパと連携し、ドローン業界ベンチャー企業のカスタマーサービスを代行します。
まずは、2023年3月より、カスタマーサポートの基本である法人専用の「コールセンター」を立ち上げ、ドローンの社会実装を促進し、市場規模の拡大を狙います。
①購入前(before purchase)…コンサル、見積、製品紹介
②購入 (point of sales)…支払い、出荷、使い方
③購入後(after purchase)…トラブル対応、返品、TS
4, VFRの今後の役割
VFRはドローンの量産設計、量産、品質保証、販売サポート、アフターサービスなど、ドローンの社会実装になくてはならないサービスを今後も展開して参ります。カスタマーサポートサービスを皮切りに、ドローン業界として必要な情報を蓄積し、それを製品開発から製造にフィードバックすることで、安心安全なドローンの社会実装に貢献して参ります。
産業創造支援のSUNDRED株式会社 (東京都渋谷区) 、株式会社自律制御システム研究所(ACSL、東京都江戸川区)、株式会社センシンロボティクス(東京都渋谷区)など6社は2月9日、ドローン技術の確実な社会実装を実現させるための「人生100年時代に人々を幸せにするドローン作り『Take Off Anywhere』プロジェクト」(ToA)を2月22日(月)に発足させると発表した。
6社はSUNDRED、ACSL、センシンのほか、PHB Design株式会社(大阪府大阪市北区)、VFR株式会社(東京都千代田区)、株式会社理経(東京都新宿区)。各社の専門性や知見を持ち寄り、金銭的、時間的な負担を分け合って、社会実装に必要となる、効率的運用を可能にするシステムを構築する。またその過程で浮き彫りになった課題は公開し、その課題解決に必要な技術も開発する。
この日は発足に参画した6社が東京で会見を開き、SUNDRED代表取締役の留目真伸、ACSL代表取締役社長COOの鷲谷聡之氏、VFR執行役員COOの湯浅浩一郎氏、センシンロボティクス代表取締役社長の北村卓也氏、株式会社理経代表取締役社長の猪坂哲氏らが登壇し、趣旨や背景、展望、抱負について説明したほか、参画企業同士のパネルディスカッションで意見交換をした。
この中でACSLの鷲谷COOは、従来の労働力の需給バランスが崩れ始めた「変極点」にあると分析。「ドローンは空飛ぶロボティクスとして屋外、屋内を含めた3次元移動、遠隔操作、自動化が可能。ドローンの活用で変曲点を乗り越えたい」と述べた。またVFRCOOの湯浅氏はプロジェクトの進行について3段階に分けて説明。「フェーズ1でワンオペ、フェーズ2で無人化、フェーズ3でドローンが生活の一部となる。2023年までにこれを実現し、ドローンを誰もがどこでも必要な時に活用できる社会になることを目指す」などと述べた。
また質疑応答では、プロジェクトの前提である「個社を超えた連携」が生み出す参加各社の投資回収見込みについてACSLの鷲谷氏は「個社にとってリターンは重要」と前置きしたうえで、「この実証のためのプロジェクトではなく、社会実装のプロジェクト。実装できれば循環型社会が実現する。個社にとっても採算性が見込める前提」と回答した。
説明会で紹介された開発途中の機体について、トリビューンが仕様、完成予定時期、価格などを質問したところ、説明会後に「現時点では非公開。今後、随時情報を発信する」と回答が寄せられた。有力な活用場面のひとつである遠隔医療に伴う医薬品配送の、ドローン運用の担い手についても同様に質問したところ、「薬局自身で担う方法、専門業者に委託する方法の2パターンが検討されています」の回答が届いた。
プロジェクトは参画、協力を募っているという。発表当日現在で、加賀EFI株式会社、東京ドロウイング株式会社、VAIO株式会社、マナブデザイン株式会社、株式会社g、菱洋エレクトロ株式会社が協賛パートナーに名を連ねており、関心ある企業、団体などの連絡を歓迎している。連絡は「ToAプロジェクト事務局」まで。
【プロジェクト概要】
■名称 :「人生100年時代に人々を幸せにするドローン作り『Take Off Anywhere』プロジェクト」(略称:ToAプロジェクト)
■発足日:2021年2月22日(月)
■内容 :
①ドローンの確実な社会実装に向け、ドローン技術の可能性および課題の明確な発信とパブリックの知識醸成、パートナーシップ構築
②社会実装をしていくために必要な共同で実施可能な周辺技術の開発
■参画企業と役割
<SUNDRED> : 新産業共創プロセスを活用したエコシステム共創の推進によるドローン産業発展のリード
<ACSL>: ローン機体開発、離着陸制御及び自動航行制御の制御システム開発、 機体技術面から見た、ドローンの可能性と課題の発信
<センシンロボティクス>: 全自動ドローン基地のソフトウェア開発 経済面、ユースケースからみたドローンの可能性と課題の発信
<PHB Design>遠隔医療を完成させる薬局の持つべき物流機能の提案と検証
<VFR>: ドローン機体開発 、全自動ドローン基地のハードウェア開発、 製造面、経済面からみたドローンの可能性と課題の発信
<理経> : 仮想現実空間を利用したドローン開発環境の構築
PC製造やEMS事業を手掛けるVAIO株式会社(長野県安曇野市)は4月9日、ドローン機体開発の子会社、VFR株式会社(東京)の営業を開始したと発表した。VAIOが培ってきたコンピューティングの技術や、2018年以降、国内外のドローン事業者との協業で蓄積してきたドローンの設計、生産などのノウハウを「空飛ぶコンピューターともいわれるドローンの開発」に生かす。当面はテレワークで業務を進め、問い合わせや協業の相談は相談窓口( info@vfr.co.jp )で応じる。
VFRは国内外のパートナーとの共創をベースに、用途に最適化された機体、コンポーネント、ソリューションを提供する。ドローン事業者などからの、設計、製造、修理を請け負うほか、自社製ドローンの企画、設計、製造、販売、修理、保守、点検、輸出入も視野に入る。VAIOのチーフイノベーションオフィサー(CINO)留目真伸氏が代表取締役社長として経営を率いる。「VAIOが作り上げてきたコンピューティングの世界を地上だけでなく空や海などにも拡大」する。
事業はドローン事業者向け、サービサー向け、エンドユーザー向け、全ドローン産業関係者向けの4領域で展開する。ドローン事業者向けには、ドローンの設計・開発・製造を提供する。サービサー向けにはドローンの機体提供、ソフトウェア開発、ソリューション共創を展開し、エンドユーザー向けにドローンを活用したソリューションの提供を進める。さらに全ドローン産業関係者向けに、エコシステム共創を手がける方針だ。
母体のVAIOは2018年からドローン市場で事業を進めている。これまでに、株式会社ナイルワークスの農業用大型ドローン「Nile-T19」の量産、株式会社エアロエクストの重心制御技術4D Gravityの原理試作支援、中国の産業用ドローン大手MMCとの事業検討などを進めてきた。ドローン事業への本格参入し、成長加速のためVFRを設立した経緯がある。