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ブルーイノベーション株式会社(東京)は4月9日、球体点検ドローンELIOS3にとりつけて使う新たな検査装置「UT検査ペイロード(UT Payload)」を5月7日にリリースすると発表した。同日に運用サービスを始め、7月には販売も始める方針だ。詳細は今後調整する。UT検査ペイロードには人の耳でとらえられる可聴域を超えた高い周波数の超音波を発生させるプローブと呼ばれる端子が備わり、検査対象の壁にくっついて超音波を発生させ壁の厚さを測定したり内部の空洞の有無などを検査したりする。ELIOS3に搭載することで、足場を組まずに高所壁面の検査が可能になる。橋梁などの定期点検では詳細点検の必要性を判断するための一次点検に限らず、より詳細な二次点検にも対応可能という。インフラの維持管理の重要性が高まる中、非破壊検査の効率化に貢献しそうだ。4月10~12日に東京ビッグサイトで開催される展示会でデモンストレーションを実施する。

鉄製プレートの厚さ測定を実演 熊田社長「圧倒的なパフォーマンスを発揮」

UT検査ペイロードについて説明するブルーイノベーションの熊田貴之代表取締役社長

4月9日にブルーイノベーションの本社で行われた発表会では、UT検査ペイロードを搭載したELIOS3が展示され、熊田貴之社長、田中健郎取締役が機能や動作を説明したほか、ELIOSの本体容器に張り付けた小さな鉄製プレートの厚さを実際にUT検査ペイロードで検査する様子を実演した。熊田社長は、「ELIOSはELIOS3以降、センサー類の搭載が可能になり拡張性が広がっています。放射線量測定のRADペイロード、レーザー照射量が2倍の130万発となった測量ペイロードに続く今回は『診る』という新しい機能を搭載しました。これまでのドローンによる点検は簡易的な一次点検を担ってきましたが、今回はより詳細な二次点検ができることが大きなポイントです」と説明した。

UT検査ペイロードは、超音波の送受信をするプローブヘッド(探触子、トランスデューサー)、プローブを対象物に接触させる飛行の妨げにならないよう工夫されたプローブアーム、探触子と測定物の間の空気層をなくし超音波を測定物に伝えるためのジェル、カプラント(接触媒質)と、作業中に適量を供給するディスペンサー、点検の妨げになる表面のほこりを払う清掃モジュールなどで構成される。超音波測定機器大手、英シグナス・インスツルメンツ社(Cygnus Instruments)が、ELIOSを開発したスイスのフライアビリティ(Flyability)社と共同開発した。測定結果はリアルタイムでA-Scan表示される。ELIOS3専用ソフトで測定位置を3D表示できる。

デモンストレーションでは、パイロットがFPVでUT検査ペイロード搭載のELIOS3を飛行させた。会場にはあらかじめ本体容器の壁面に5cm四方程度の小さな鉄製のプレートをはりつけてあり、プレートの厚さの測定がミッションだ。ELIOS3がアーム先端を前に、チョウチンアンコウのように進みながら検査対象の鉄板に近づく。接近すると期待がレーザーポインタを照射してプローブの設置点を確認しながら、機体位置を細かく調整して接触させる。接触すると、操縦者の手元のコントローラー画面にA-Scanの波形や、測定されたプレートの厚さなどが数字で表示される様子が、モニターにうつしだされた。

UT測定は、超音波を照射した時間と反射した音波の受信した時間から肉厚を測定する。測定対象の材質が変わると音波の一部が反射する特性から、内部の腐食やキズなどによる空洞の有無も判定できる。ELIOS3は3Dモデリングでできるため、測定した素材の厚さを3Dモデル上に表示させることもできる。

熊田社長は「圧倒的なパフォーマンスを発揮できるようになったと思います」と期待をのぞかせた。

ブルーイノベーションは10~12日に東京・臨海副都心の東京ビッグサイトで開催される国愛海事展SeaJapan2024にFlyability社とともに実機を展示し、デモンストレーションも行う。

同社が発表したリリースは以下の通りだ

発表会で鉄製プレート(四角で囲われた部分)に接触し厚さを測定する実演を披露
測定対象に向かって飛ぶELIOS3
レーザーポインタで接触目標をわかりやすくし、機体位置を調整
UT検査ペイロードのプローブ
デモ概要を説明するブルーイノベーションの田中健郎取締役。右のパイロットが目視外でELIOSを飛行させた
超音波の波形や測定した対象物の厚さなどがリアルタイムで表示される
「国内で300の導入例がある」と説明する熊田貴之代表
UT検査ペイロード搭載のELIOS3を説明するブルーイノベーションの熊田貴之代表取締役社長

屋内点検・測量ドローン「ELIOS 3 用 UT 検査ペイロード」、5月 7 日リリース

ブルーイノベーション株式会社

ドローンで非破壊検査(UT 検査|超音波厚さ測定)が可能

屋内点検・測量ドローン「ELIOS 3 用 UT 検査ペイロード」、5月 7 日リリース

ELIOS 3・UT 検査ペイロードを用いた運用サービス提供開始

4 月 10 日から開催 Sea Japan(東京ビッグサイト)にてデモンストレーションを披露

ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田 貴之)(以下、ブルーイノベーション)は、この度、屋内点検・測量ドローン「ELIOS 3」※1に着脱可能な専用ペイロードシリーズの新製品として、ドローンによる遠隔かつ安全な超音波厚さ測定を可能にする「UT 検査ペイロード」(以下、UT検査ペイロード)をリリースし、運用サービスは5月7日より、販売サービスは 7 月(予定)より開始します。

なお、UT検査ペイロードは、4月10日から東京ビッグサイトにて開催される Sea Japan のブルーイノベーション / Flyability 共同ブース(ブースNo. 1A-12)において、ELIOS 3 と共に実機展示ならびにデモンストレーションを実施します。

UT 検査ペイロードは、ELIOS 3 の開発メーカーである Flyability 社※2が、超音波厚さ計の世界的トップメーカーである Cygnus Instruments 社※3 と連携して開発した、ELIOS 3 に最適化されたUT 検査用デバイスです。

UT 検査ペイロードを搭載した ELIOS 3 を用いることで、プラント施設やインフラ施設(道路橋、トンネル、下水道など)、自動車や航空機の工場、船舶ドックなど、従来は足場や特殊な機材等を要した点検対象箇所において、遠隔で安全に、かつ効率的・低コストでドローンを用いた超音波厚さ測定が可能になります。

さらに、高精度な点群データを短時間で取得可能な「測量ペイロード」※4(2024 年 1 月販売開始)とUT検査ペイロードを併用することで、従来はそれぞれのチームで行っていた外観目視検査や測量、厚さ測定といった複数の点検作業が ELIOS 3 のみで実施可能(パイロットチーム2名)となり、点検業務における作業効率を飛躍的に向上させます。

【【ご参考事例】※5

5 年ごとの定期検査が義務図けられている船舶において、足場が必要となる大型船舶のバラストタンクの厚さを測定する場合、UT 検査ペイロードを導入することで足場設置などが不要となり、15,000 時間の作業を削減しました。また、測量ペイロードと組み合わせることで、従来 16 名以上で行っていた点検作業を 2名で行うなど、効率化・省人化を実現しています】

※1 ELIOS 3:https://blue-i.co.jp/elios3/

※2 Flyability 社:https://www.flyability.com/

※3 Cygnus Instruments 社:https://cygnus-instruments.com/

※4 測量ペイロード:https://www.blue-i.co.jp/news/release/20240118.html

※5 参考事例:https://www.flyability.com/casestudies/drone-elios-3-ut-ship-hull-inspection

■UT 検査ペイロード|機能

①プローブヘッド

超音波を発信するプローブ(探触子、接触する部分)は点検対象に応じて、2MHz、5MHz、7.5MHzから選択できます。また、プローブを覆うフードには強力な磁石があり、点検時の安定性を向上させます。

2MHzコーティングなどの減衰材料
5MHz汎用、深刻な孔食または腐食のある壁
7.5MHzボイラーチューブなどの小径パイプ、腐食した薄板

②プローブアーム

プローブヘッドと ELIOS 3 のガード部分を接続します。プローブアームは、狭いマンホールの通過時や、複雑な空間内で飛行の妨げにならないよう、機体本体側に折りたためるように設計されています。

③カプラントディスペンサー(塗布装置)

プローブと点検対象の間には、プローブから発信される超音波を点検対象に伝達するのにゲル状のカプラント(接触媒質)が介在している必要があります。このカプラントディスペンサーは、必要量のカプラントをプローブヘッドに供給し、点検に最適な状態を保ちます。

UT 検査ペイロードは、プローブヘッドからレーザーポインタが照射されており、パイロットは照準を定めて対象を測定することが可能です。測定結果は、リアルタイムで表示されるほか、ELIOS 3 の飛行位置情報と共に記録され、飛行後の解析時に位置特定が可能です。

■UT 検査ペイロード 主な特長とメリット

【取付位置が自在なプローブアーム】

プローブアームは、ドローンの上部や前面、または下部に取り付け可能です。点検対象の位置に合わせて変更可能なため、幅広いシーンで測定できます。

【カプラント(接触媒質)残量表示】

カプラントの残量をリアルタイムに把握することができ、カプラントが不足した場合は、ディスペンサーのシリンジを補充または交換できます。

【清掃用モジュール】

点検対象物表面の付着物などにより測定が困難な場合、プローブヘッドを清掃用モジュールに交換し、対象を清掃することができます。清掃後、その位置を位置特定機能でマークできるため、一度機体を戻してからプローブヘッドを交換、再測定時にもパイロットは迷うことなく同じ位置で測定を行うことができます。

【リアルタイム A-Scan(測定結果の波形)表示】

UT 検 査 ペ イ ロ ー ド の 測 定 結 果 は 、 操 縦 専 用 ア プ リ「Cockpit」に A-Scan 結果をリアルタイムに表示されるため、使用するプローブヘッドの選択や清掃用モジュールの必要性など、その場で判断できます。

【測定結果の位置特定】

専用の解析ソフトウェア「Inspector」により、飛行中に記録した位置が 3D モデル上に表示されます。A-Scan 結果の同時表示も可能なため、結果を確認して再測

定の必要性など確認できます

■補足資料:A-Scan について

超音波による測定結果は、波形によって表されます。測定結果の表示の仕方によって名称が変わり、A-Scan、B-Scan、C-Scan などがあります。A-Scan は最も基本的な表示です。プローブ(探触子)からパルス波(連続波ではない波)で発信された超音波が、測定物の反対面で反射し、再度プローブに戻ってくるまで時間(伝播時間)を測定し、厚さを算出します。式で表すと、 [材質の中での音速]×[伝搬時間]÷2=[厚さ] となります。測定の結果は A-Scan の場合、図-1 のように表示されます。もし材質の中に空洞(内部きず)がある場合、図-2 のように伝搬時間が短くなり本来の材質の厚さよりも小さい数値が表示されます。

AUTHER

村山 繁
DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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