株式会社センシンロボティクス(東京)は8月2日、災害や事故の発生時などに、同社のドローンの自動運用プラットフォーム「SENSYN Drone Hub」が有効に機能するかどうかを確認する実証実験を北海道更別村で6月に行ったと発表した。事故想定の実験では現場に差し向ける緊急車両の台数の判断などに役立つことを確認し、災害想定の実験では災害現場の速やかな3Dマップ作成で適切な避難誘導に有効であることが分かった。更別村の西山猛村長は「多様性のある活用ができることが分かりました」などとコメントしている。更別村は、スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定を目指しており、採択された場合にはSENSYN Drone Hubの導入が視野に入る。
実験は更別村で6月23、24日に、ドローンの自動離着陸、自動充電、取得データの自動転送を特徴とする「SENSYN Drone Hub」が、事故発生時、災害発生時などに、有効に機能するかどうかを確認するために行われた。「SENSYN Drone Hub」が想定通り機能すれば、作業員が現地に赴く必要がなくなるなど、効率的で安全な業務遂行が可能となるため、災害、建設、工場などの点検や監視の現場などでの活用が期待されている。今回は、更別村が取り組む災害などでの緊急時対応、農業分野での対応について実験した。
実験会場の更別村は、スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定を目指している自治体のひとつで、北海道からは唯一、提案書を提出した自治体だ。「100歳になってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」を掲げた「SUPER VILLEGE」構想をまとめていて、この中に「ヒトモノコトの自動移動、IoTヘルスケア、世界No.1生体認証の実装」を盛り込んでいる。特に「ヒトモノコトの自動移動」はドローンや空飛ぶクルマの実装を想定している。5G基地局の整備を北海道で最初に進めるなどテクノロジーへの理解も深い。
事故の発生を想定した実験では、ドローンを現場に急行させ、現場の映像を取得。村役場、事故現場、東京に伝送し状況確認や適切な初動対応の判断に機能するかどうかを確認した。飛行にSENSYN Drone Hub、飛行制御にSENSYN COREを使い、ルート設計と自動航行にSENSYN CORE Pilot、映像伝送にSENSYN CORE Monitorの機能を使った。伝送された映像から、現場に倒れている人物の認識が可能で、地図上のドローンの位置を表示させたり、飛行予定ルートを確認したり、遠隔拠点からカメラを操作したりすることもできることが確認できた。とかち広域消防事務組合とかち広域消防局更別消防署署長が「災害が起きた際に周辺住民に緊急車両を何台用意するかを判断する、初動の戦略に用いることができる」と有効性を評価した。
また河川氾濫を想定した実験では、ドローンを被害状況の調査にどこまで活用できるかを確認した。具体的には搭載したカメラで撮影した土砂堆積物のデータから土砂の流出量を算出したほか、災害エリアの3Dマップを作成した。「SENSYN Drone Hub」はLTEネットワーク経由で、取得データをリアルタイムにクラウドサーバーにアップロードし解析するため、実験参加者は、データをフライトごとに取り出し、PCに取り込む作業から解放されることの意義を体感した。クラウドへの自動アップロードから解析レポート作成までをひとつの作業で済ませられ、3D化は「半日程度」で完了したという。これにより、災害発生時の避難行動の適切な呼びかけなどに貢献できる可能性が高まった。
なお、今回の実験ではLTE通信の空中使用では、総務省関東総合通信局に申請したうえで実施している。
このほか農作物の生育状況確認、鳥獣害駆除対策についても確認を実施。それぞれに「一次確認に有用である」ことが分かったという。
センシンは、「発災直後の身動きが取れない状況でもSENSYN Drone Hubがあれば、その間にもドローンが必要なデータを収集することが可能になります。今後も業務の効率化・高度化を進め、社会課題でもある人手不足の解消や作業者の安全確保に貢献できるソリューションを開発してまいります」と話している。
また、更別村の西山猛村長は、「更別村ではスーパーシティ構想の指定を目指しており、その一環として今回、『SENSYN Drone Hub』での実証試験を行い、災害などで人の立ち入りが困難な場所の確認や被害状況の把握や農作物の発育状況の確認など、多様性のある活用ができることが分かりました。人々の生活を豊かにしていく、災害に備え安心安全な暮らしを守る、被害を予想して対応策を組み立てるという点で有効であると考えています。更別村、ひいては十勝全体の農業の活性化や災害に対する備えなど、すばらしい村づくりに向けて尽力してまいります」とコメントしている。スーパーシティ構想に採択された際には、更別村はSENSYN Drone Hubの導入を視野に入れて検討する方針だ。
(※【DF】センシンロボティクスはDRONE FUNDの投資先企業です)
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株式会社センシンロボティクス(東京)が提携、協業を相次いで発表した。伊藤忠商事株式会社とは、ロボティクス技術を活用したインフラの保安・点検で業務提携、JXTGホールディングス株式会社とは、ドローンステーション構築に向けた協業の開始を、それぞれ発表した。またJXTGの100%投資子会社JXTGイノベーションパートナーズ合同会社(東京)の資本参加を受けたことも発表した。
伊藤忠との業務提携では、センシンロボティクスの「SENSYN FLIGHT CORE」「SENSYN DRONE HUB」「SENSYN DC」といったソリューションを、伊藤忠が取引する国内外の製鉄、鉱山、炭鉱、港湾などの事業者が抱える老朽インフラ点検などの課題解決に活用する。
伊藤忠との業務提携では、センシンロボティクスの「SENSYN FLIGHT CORE」「SENSYN DRONE HUB」「SENSYN DC」といったソリューションを、伊藤忠が取引する国内外の製鉄、鉱山、炭鉱、港湾などの事業者が抱える老朽インフラ点検などの課題解決に活用する。
伊藤忠との業務提携では、センシンロボティクスの「SENSYN FLIGHT CORE」「SENSYN DRONE HUB」「SENSYN DC」といったソリューションを、伊藤忠が取引する国内外の製鉄、鉱山、炭鉱、港湾などの事業者が抱える老朽インフラ点検などの課題解決に活用する。
JXTGと開始する協業は、ドローンの離発着となるドローンステーションの開発。JXTGは太陽光など環境配慮型エネルギーの供給拠点としてドローンステーションを活用する構想を描いており、センシンの完全自動運用型ドローンシステム「SENSYN DRONE HUB」を活用した実行計画を策定したうえで、2023年の設備開発、実証を目指す。あわせてドローンを活用した設備点検、災害対策、警備・監視のソリューション開発にも取り組む。
センシンは4月に株式会社自律制御システム研究所(ACSL、千葉氏)とソリューション構築の連携開始も発表している。
産業用ドローンなどを活用して業務用ロボティクスソリューションを提供する株式会社センシンロボティクス(本社:東京都渋谷区)の北村卓也代表取締役が、DroneTribuneのインタビューに応じ、2020年の事業と展望を語った。
北村社長は、2019年の同社の活動について「当社が目指す『ドローンによる業務の完全自動化』を実現するコアテクノロジーとなる完全自動運用型ドローンシステム『SENSYN DRONE HUB』のサービス提供を開始したことが大きなトピックです」と振り返った。
「SENSYN DRONE HUB」は、ドローンの機体を格納し、自動での離発着や自動充電に対応する基地(ドローンポート)。ソフトウェアによる制御と組み合わせることで、事前に設定されたルートへの自動飛行や、画像などの撮影を自動化できる。先に行われた国営飛鳥・平城宮跡歴史公園(奈良市)での実証実験のように、定期的な施設の点検が可能になる。センシンロボティクスでは、ビル、工場、高層施設などの警備や監視業務をはじめ、津波、雪崩などの災害対策と定点観測や、鉄塔、陸橋、ダムなどの定期点検、さらに山間部、高所、災害危険地域などにおける業務に利用できると提案している。
北村社長は「当社のお客様は、鉄鋼、石油、電力、鉄道、道路、建設、通信などです。大きな工場の設備点検や、石油タンクなどの点検を行っています。すべての事業者に共通した課題が『人が足りない』という状況です。高所の点検などは危険が伴います。そのため、なかなか点検要員のなり手が増えません。こうした課題をドローンが解決していけます」と展望した。
始動した2020年の取り組みについて、北村社長は「今年は『SENSYN DRONE HUB』の実導入の年と位置づけ、様々な業種で、実運用に向けた試験導入を行ってまいります。具体的には、有人地帯における目視外飛行(レベル4)に向けた準備を進めていくことになります。現在は法規制の関係上、オペレーターの目視可能範囲(レベル3)での飛行検証を行っていますが、ドローンによる業務の完全自動化を実現するためには、目視外補助者なしでドローンにミッションを行わせる必要があり、ハードウェア・ソフトウェアの進化、社会的受容性の喚起を促進して参ります」と話す。
一方で、ドローンによるソリューションの提案先が抱える構造的な課題があると、北村社長は指摘する。いまの社会を支えている歴史ある重厚長大企業の本社の管理職や現場の責任者などが、積極的に未知の新しいソリューション導入に踏み切れないでいる現状だ。「少子高齢化や設備の老朽化に伴う課題やリスクへの対応は待ったなしと認識しつつも、自分が定年するまでは、点検などに大きな変化を起こしたくない」との心理的抵抗が大きいため、現場へのドローン導入がなかなか進まない。
こうした課題を解決するために、北村社長は「能動的な提案をぶつけるようにしています。お客様の課題を解決するひとつの手法として、ドローンやロボティクスがあることを提案しています。また、大きな事業所などでは、数多くの利害関係者が点検や検査に携わっているので、地域や地元の構図を理解した上で、ビジネスを推進しています」と取引先の事情を丁寧に向き合う姿勢を明確に打ち出している。実際、こうした取り組みが実を結び、これまでにドローンによる送電線点検や、警備サービスの強化などに導入されてきた。
北村社長は「これまでの実績が口コミで伝わることで、いろいろな部署や新規の事業者からも、問い合わせが増えています。ドローンによるソリューションは、最初の信頼を築くまでは苦労も多く事業化へのハードルも高いと思います。しかし、ひとつの実績が評価されると、わらしべ長者のように新しいビジネスへとつながっていきます。今年から、様々なシーンでドローンの社会実装が加速していくと考えています。当社が注力する設備点検、警備監視、防災・減災対応においても、産業用ドローンの市場はさらに大きく拡大していくものと想定されます。我々はドローンサービスのリーディングカンパニーとして市場を牽引して参りたいと考えております」と2020年に向けた抱負を語る。
株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)と、株式会社センシンロボティクスは1月8日、国営飛鳥・平城宮跡歴史公園(奈良市)で、ドローンによる全自動点検の実証実験を行った。実験は国土交通省が推進する公園のスマート化事業「パークスマートチャレンジ」の一環で、センシンが開発したシステム「SENSYN DRONE HUB」が、ドローンの離着陸や業務遂行などの自動運用を、JIWが取得データの解析を担い、汚損、亀裂、塗装の剥がれの有無の確認などを実施した。
この日は実験では、朱雀門の前に広がる広場のわきにある駐車場にドローンを格納する基地を設置。あらかじめ設定された指示に従い、格納庫が開きドローンが起動すると、自動的に離陸し、少し離れた朱雀門まで飛行。そこからデータ取得、データ転送、SfM処理、帰還、給電を自動で実施した。午前から昼にかけて3回のフライトを実施した。午後には、風速10メートル/秒をこえる強風に見舞われると、気象センサーがドローンの離陸を見合わせる判断を下すなど、安全確保の仕組みが機能する様子も確認した。
実験は国交省が推進する都市政策の一環で、実施にあたっては、自治体、民間企業とコンソーシアムが編成され、民間から応募のあったアイディアの中から、2019年度は11件が採択されている。今回の実験はそのうちの一件。JIWのアイディアが採用され、全自動システムを持つセンシンロボティクスが参加した形だ。
コンソーシアムの事務局を務める国土交通省近畿地方整備局国営飛鳥歴史公園事務所平常分室の宇川裕亮調査設計課長は「全国でモデル事業が展開される中、国の直轄で維持管理をする国営公園でも先導的にチャレンジを実施することになっており、今回はその一環。国営公園でドローンの実験が実施されるのは今回が初めてだ。結果を見ながら、地元などへの横展開を進めたい。平常宮跡歴史公園は平成30年に開園したばかりの新しい国営公園。この実験を機に知名度向上や利用促進も図りたい。実験は次年度も継続したい」と手ごたえを感じていた。
実験の運用を担ったJIWの吉田達也さんは、「現在、原則として人の手で行われている構造物の維持管理や、公園の植生の解析について、ドローンが代わりにできるかどうかを確認することが実験の目的。実験が国営公園でできることは、ドローン活用の普及など、ドローン前提社会を構築するうえで大きな意義がある」と話した。
また、全自動システムSENSYN DRONE HUBの運用を担ったセンシンロボティクスの妹尾美樹さんは「自動化は、業務フローの煩雑さや高所作業に伴うリスクから人々を解放することができる。今回も機体の現場への持ち込みや充電などの作業をすべて自動化した。構造物の実験で威力を発揮する。そのほか、大規模災害の発生時には状況の把握を担う担当者自身が被災している可能性があり、人に代わって視察ができるため災害場面での活用も想定している」と自動化の意義を強調した。