医師がオンラインで診察し、処方した医薬品をドローンで届ける実験が、北海道旭川市で7月18、19日に行われる。ドローンは補助者あり目視内で飛行する予定で、難易度は高い方ではない。見どころはオンライン診療、オンライン服薬指導に必要となる数々の連携に、ドローンまで組み込んだ複雑なオペレーションの実効性の確認だ。新型コロナウイルス感染拡大防止で、遠隔、非接触サービスへの期待と需要が高まる中、オンライン診療の普及促進に向けた実験の重要な一部を、ドローンが担う。難易度は高くなくても、重要度は高い。
実験は7月18、19日、北海道旭川市の国立大学病院旭川医科大学(旭川市)などで行われる予定だ。経済産業省北海道経済産業局(北海道札幌市)が公募した実証実験で、北海道経産局によると事業主体となる北海道経産局に加え、旭川医科大学、ANAホールディングス株式会社(東京都港区)、株式会社アインホールディングス(北海道札幌市)が中心的な役割を担う。
ほかに北海道旭川市、エアロセンス株式会社(東京都文京区)、トッパン・フォームズ株式会社(東京都港区)、特別養護老人ホーム緑が丘あさひ園(旭川市)株式会社日通総合研究所(東京都港区)が協力する。
実験は、外来患者が医師の診療をオンラインで受けることを想定して行われる。実験当日は、特別養護老人ホーム緑が丘あさひ園の入居者(実際には関係者が入居者役を担う)が、旭川医科大の医師のオンライン診療を受ける。医師は処方箋を作成し、患者と、患者が希望する薬局に発行する。オンライン診療では、患者が薬局に薬を受け取りに行く方法と、薬を配達してもらう方法とがある。今回の実験では、薬局が患者のところまで、ドローンでまで運送することを想定。処方箋はアインホールディングス系のアイン薬局旭川医大店が受け取る。
アイン薬局は処方箋を受け取ると、クスリを処方し、その場に待機しているドローンの運用事業者であるANAに配送を依頼する。ANAが、トッパンフォームズ製の容器にクスリを収め、エアロセンス製のドローンに乗せ、患者の待つ緑が丘あさひ園まで薬を届ける。緑が丘あさひ園にドローンが到着すると、あさひ縁の看護師が荷物を受け取り、クスリを確認して患者に受け渡す。医師が処方する医療用医薬品は、薬剤師による服薬指導が必要と定められており、実験ではオンラインによる服薬指導も実施する。
ドローンはアイン薬局と緑が丘あさひ園の間の540mを目視でフライトし薬を運ぶ。補助者もつけ、両施設の間を走る道路は、実験の間は通行止めにする。オンライン診療、オンライン服薬指導、処方箋のもとで提供される医療用医薬品のドローンによる配送を、ひとつの流れとして行う実験は、過疎地域の医療現場を想定した訓練に近い。実際を想定した実験の実施は「今回が初めて」(ANA)だ。
実験の背景には過疎化の進行に伴う医療サービスの低下懸念がある。北海道経産局地域経済部健康サービス産業課は「特に地方で医師不足が加速している。医師が減り、患者が増える状況をカバーする工夫のひとつとして非対面非接触医療の提供が考えられる。今後、トラックドライバーなど配送の担い手も減ることが考えられ、無人で効率的に配送できるドローンへの期待が高まる」と、地域医療の維持、拡充への展望を見据える。
オンライン診療は、外来・入院・在宅に続く医療提供の一形態として2018年度診療報酬改定で保険適用となった。導入当初は、通常の外来診療に比べ点数が低かったり、算定要件が厳格であったりと普及の阻害要因が指摘されていた。その後、要件の見直しや対象疾患の拡大が行われ、普及環境が徐々に整備されている。また、厚生労働省医政局は今年(2020年)4月10日、都道府県などに向けて、新型コロナウイスルの感染拡大に伴い「時限的・特例的な対応」として、条件付きで初診のオンライン診療も可能にするなどの緩和措置を事務手続きとして連絡した。これに伴い、オンライン診療を受け入れる医療機関が急増するなど、対応が進んでいる。
ドローンのオペレーションを担うANAも、今回の実験がドローンのフライトそのものよりも、ドローンのフライトも前提した全体のオペレーションの連携の可能性を確認することにあると話す。「クスリが間違いなく手元に届くか、個人情報が守られるかといったオンライン診療に要請されるオペレーションの機能性を確認したい。実装に備えて課題やリスクの洗い出したいと考えている」と意欲的だ。
また、北海道経産局地域経済部健康サービス産業課は「実験の参加団体はそれぞれに課題感をもって取り組んでいる。われわれとしては非対面非接触の医療サービスを完全リモートにするために、無人で配送するドローンは不可欠だった。医療用医薬品の配送が可能になれば、地方で進む医師不足への対策として有力な選択肢になりうる。なお今回は医薬品の配送がテーマだが、今後は過疎の進む地方を想定して、日用品の配送にも取り組みたい」と次の展開も見据える。
今回の実験は、全体の流れの有効性を確認するため、一定の条件の下で行われる。たとえばアイン薬局にはあらかじめドローンが配備されている前提だ。ドローンを飛行するための許可も取得している。実装するにあたっては、この条件以外の場合も想定した課題への備えも必要になる。薬局にドローンが配備されていない場合の配送依頼、ドローン事業者から薬局までの飛行と薬局側の積み下ろし、患者が配送を希望するかどうかを判断するための、薬局と患者との円滑なコミュニケーション、届いた医薬品の荷下ろしの適否などが残る。
さらに、オンライン診療と外来とで異なる診療報酬がもたらす医療機関への負担や、ドローンを含む配送事業者の配送費の収受などの経済性などについて、検証ポイントを列挙しておくことが、オンライン診療の維持、利便性拡大につながるとみられる。
今回の実験を契機に、ドローン医療分野でも当たり前に活用できる環境の整備が進めば、ドローン前提社会の構築で価値ある豊かな未来を手繰り寄せる一歩につながる期待が高まる。
<■プレスリリースに説明されているシナリオ>
本実証では、「処方箋医薬品」をテーマに、医師・薬局薬剤師の参加・協力のもと、医療分野における実際の活用を想定し、以下のシナリオにて実証を行います。
・旭川医科大学病院のオンライン診療による処方箋に基づき、アイン薬局 旭川医大店にて、薬局薬剤師がオンライン服薬指導のデモンストレーションを実施します。
・アイン薬局 旭川医大店から緑が丘あさひ園までの間で、ドローンによる処方箋医薬品配送を実施します。
・緑が丘あさひ園に到着後、配送した処方箋医薬品の品質・状態をオンラインにて確認します。本実証の結果をもとに、北海道内におけるドローンの地域実装に向けて、課題の洗い出しやビジネスモデルの具体的検討を推進し、将来的には、地方における通院が困難な方に対して、「オンライン診療⇒電子処方箋発行⇒オンライン服薬指導⇒ドローンによる処方箋医薬品配送」という一連のサービス提供を目指します。
※本実証は厚生労働省より発表された「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」
(https://www.mhlw.go.jp/content/000621247.pdf)に基づき実施しております。
株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、山口県山口市で重ねてきたリハーサル飛行を収めた動画を公開した。
リハーサル飛行は、山口県山口市の「山口きらら博記念公園」内に設けた飛行試験場で春から行われていて、動画には大阪・関西万博のデモフライトに使われるSD-05が離陸し、移動し、向きを変えて飛行するなどの様子が納められている。
大阪・関西万博では7月31日から8月24日まで、火、水曜以外の原則週5日の予定で、来場者の前で飛行する様子を公開する。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
公式アカウントが公開した動画はこちら
AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
ジョビーの発表はこちら
東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら