非対面医療の実証で処方薬をドローン配送へ 診療、服薬指導はオンライン 

2020.07.15

 医師がオンラインで診察し、処方した医薬品をドローンで届ける実験が、北海道旭川市で7月18、19日に行われる。ドローンは補助者あり目視内で飛行する予定で、難易度は高い方ではない。見どころはオンライン診療、オンライン服薬指導に必要となる数々の連携に、ドローンまで組み込んだ複雑なオペレーションの実効性の確認だ。新型コロナウイルス感染拡大防止で、遠隔、非接触サービスへの期待と需要が高まる中、オンライン診療の普及促進に向けた実験の重要な一部を、ドローンが担う。難易度は高くなくても、重要度は高い。

北海道経産局がANA、アイン、旭川医大などと実施 過疎医療の充実を

 実験は7月18、19日、北海道旭川市の国立大学病院旭川医科大学(旭川市)などで行われる予定だ。経済産業省北海道経済産業局(北海道札幌市)が公募した実証実験で、北海道経産局によると事業主体となる北海道経産局に加え、旭川医科大学、ANAホールディングス株式会社(東京都港区)、株式会社アインホールディングス(北海道札幌市)が中心的な役割を担う。

 ほかに北海道旭川市、エアロセンス株式会社(東京都文京区)、トッパン・フォームズ株式会社(東京都港区)、特別養護老人ホーム緑が丘あさひ園(旭川市)株式会社日通総合研究所(東京都港区)が協力する。

 実験は、外来患者が医師の診療をオンラインで受けることを想定して行われる。実験当日は、特別養護老人ホーム緑が丘あさひ園の入居者(実際には関係者が入居者役を担う)が、旭川医科大の医師のオンライン診療を受ける。医師は処方箋を作成し、患者と、患者が希望する薬局に発行する。オンライン診療では、患者が薬局に薬を受け取りに行く方法と、薬を配達してもらう方法とがある。今回の実験では、薬局が患者のところまで、ドローンでまで運送することを想定。処方箋はアインホールディングス系のアイン薬局旭川医大店が受け取る。

 アイン薬局は処方箋を受け取ると、クスリを処方し、その場に待機しているドローンの運用事業者であるANAに配送を依頼する。ANAが、トッパンフォームズ製の容器にクスリを収め、エアロセンス製のドローンに乗せ、患者の待つ緑が丘あさひ園まで薬を届ける。緑が丘あさひ園にドローンが到着すると、あさひ縁の看護師が荷物を受け取り、クスリを確認して患者に受け渡す。医師が処方する医療用医薬品は、薬剤師による服薬指導が必要と定められており、実験ではオンラインによる服薬指導も実施する。

 ドローンはアイン薬局と緑が丘あさひ園の間の540mを目視でフライトし薬を運ぶ。補助者もつけ、両施設の間を走る道路は、実験の間は通行止めにする。オンライン診療、オンライン服薬指導、処方箋のもとで提供される医療用医薬品のドローンによる配送を、ひとつの流れとして行う実験は、過疎地域の医療現場を想定した訓練に近い。実際を想定した実験の実施は「今回が初めて」(ANA)だ。

 実験の背景には過疎化の進行に伴う医療サービスの低下懸念がある。北海道経産局地域経済部健康サービス産業課は「特に地方で医師不足が加速している。医師が減り、患者が増える状況をカバーする工夫のひとつとして非対面非接触医療の提供が考えられる。今後、トラックドライバーなど配送の担い手も減ることが考えられ、無人で効率的に配送できるドローンへの期待が高まる」と、地域医療の維持、拡充への展望を見据える。

 オンライン診療は、外来・入院・在宅に続く医療提供の一形態として2018年度診療報酬改定で保険適用となった。導入当初は、通常の外来診療に比べ点数が低かったり、算定要件が厳格であったりと普及の阻害要因が指摘されていた。その後、要件の見直しや対象疾患の拡大が行われ、普及環境が徐々に整備されている。また、厚生労働省医政局は今年(2020年)4月10日、都道府県などに向けて、新型コロナウイスルの感染拡大に伴い「時限的・特例的な対応」として、条件付きで初診のオンライン診療も可能にするなどの緩和措置を事務手続きとして連絡した。これに伴い、オンライン診療を受け入れる医療機関が急増するなど、対応が進んでいる。

オンライン診療対応医療機関などを紹介するページ

 ドローンのオペレーションを担うANAも、今回の実験がドローンのフライトそのものよりも、ドローンのフライトも前提した全体のオペレーションの連携の可能性を確認することにあると話す。「クスリが間違いなく手元に届くか、個人情報が守られるかといったオンライン診療に要請されるオペレーションの機能性を確認したい。実装に備えて課題やリスクの洗い出したいと考えている」と意欲的だ。

 また、北海道経産局地域経済部健康サービス産業課は「実験の参加団体はそれぞれに課題感をもって取り組んでいる。われわれとしては非対面非接触の医療サービスを完全リモートにするために、無人で配送するドローンは不可欠だった。医療用医薬品の配送が可能になれば、地方で進む医師不足への対策として有力な選択肢になりうる。なお今回は医薬品の配送がテーマだが、今後は過疎の進む地方を想定して、日用品の配送にも取り組みたい」と次の展開も見据える。

 今回の実験は、全体の流れの有効性を確認するため、一定の条件の下で行われる。たとえばアイン薬局にはあらかじめドローンが配備されている前提だ。ドローンを飛行するための許可も取得している。実装するにあたっては、この条件以外の場合も想定した課題への備えも必要になる。薬局にドローンが配備されていない場合の配送依頼、ドローン事業者から薬局までの飛行と薬局側の積み下ろし、患者が配送を希望するかどうかを判断するための、薬局と患者との円滑なコミュニケーション、届いた医薬品の荷下ろしの適否などが残る。

さらに、オンライン診療と外来とで異なる診療報酬がもたらす医療機関への負担や、ドローンを含む配送事業者の配送費の収受などの経済性などについて、検証ポイントを列挙しておくことが、オンライン診療の維持、利便性拡大につながるとみられる。

今回の実験を契機に、ドローン医療分野でも当たり前に活用できる環境の整備が進めば、ドローン前提社会の構築で価値ある豊かな未来を手繰り寄せる一歩につながる期待が高まる。

 

<■プレスリリースに説明されているシナリオ>
 本実証では、「処方箋医薬品」をテーマに、医師・薬局薬剤師の参加・協力のもと、医療分野における実際の活用を想定し、以下のシナリオにて実証を行います。
 ・旭川医科大学病院のオンライン診療による処方箋に基づき、アイン薬局 旭川医大店にて、薬局薬剤師がオンライン服薬指導のデモンストレーションを実施します。
 ・アイン薬局 旭川医大店から緑が丘あさひ園までの間で、ドローンによる処方箋医薬品配送を実施します。
 ・緑が丘あさひ園に到着後、配送した処方箋医薬品の品質・状態をオンラインにて確認します。本実証の結果をもとに、北海道内におけるドローンの地域実装に向けて、課題の洗い出しやビジネスモデルの具体的検討を推進し、将来的には、地方における通院が困難な方に対して、「オンライン診療⇒電子処方箋発行⇒オンライン服薬指導⇒ドローンによる処方箋医薬品配送」という一連のサービス提供を目指します。
※本実証は厚生労働省より発表された「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/000621247.pdf)に基づき実施しております。

実験の舞台となる緑が丘あさひ園(左)と旭川医科大学(右)。中心に重ねているのは今回の実験で医薬品の配送を担うエアロセンスの機体
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