「空飛ぶクルマ」についての3人談義の後編です。前編では空飛ぶクルマの開発を手掛ける株式会社SkyDriveの福澤知浩代表、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発に携わった航空機開発に詳しいPwCコンサルティング合同会社の宮川淳一顧問(Aerospace&Defense担当)、ドローンや空飛ぶクルマ関連の業務・技術支援に携わるPwCコンサルティング合同会社の岩花修平ディレクターが、空飛ぶクルマ開発のきっかけや想定されるユースケース、普及までの工程について意見を交換しました。後編では、普及に向けた課題、新型コロナウイルス感染症の影響、取り巻く市場のイメージなどについて議論を深めます。
岩花氏:空飛ぶクルマの実用化、普及に向けて乗り越えるべき大きな課題は何でしょうか。安全性が気になるところだと思いますが、それ以外でもヨーロッパなどで注目されているものとして、社会受容性があります。騒音、燃費、二酸化炭素排出などへの意識も必要になるかもしれません。
福澤氏:そうですね。極論を言うと、社会受容性ありきだと思っています。日本ではそれが比較的低いのが現状です。例えば、空飛ぶクルマという単語そのものは知っている人が多いと思います。ただ、それがあと3年ほどで実現する、ということになると、95%ぐらいの方がご存じないでしょう。社会受容性を上げるには、まず事実を知ってもらうこと、次にそれをポジティブに捉えてもらうことが必要です。
岩花氏:社会受容性の重要性を指摘する声も増え始めました。
福澤氏:そうですね。実際、規制にも影響します。例えば国土交通省が規制を所管するのは、住民が困らないようにするための備えです。つまり、もとよりこの技術に対する住民の方々の受容性が高ければ、規制が和らぐ可能性があるのです。開発抑止的であってはいけない、という声も出てくるかもしれません。そうなれば私たちも資金を集めやすくなりますし、大企業からの認知度も高まり、提携の話も進むかもしれない、といった好循環が生まれます。より多くの人々が技術をポジティブに捉えることが最も重要なのではないかと思います。
岩花氏:空飛ぶクルマやエアモビリティと、ドローンとでは、社会受容性に違いがありますか。
福澤氏:エアモビリティのほうが、みなさんが気にする点や知らないことが多いと思います。講演会やセミナーなどでお話しをすると質問が山ほど飛んできます。もちろん全てにお答えするのですが、1時間ほど質疑応答を続けると、ちゃんと考えているんだね、安心したと言われます。情報が入ってくれば、見方や思いも変わってくるはずです。日本は欧米と比べると航空機を気軽に利用する習慣がないので、理解を深めていただくまでには時間がかかるかもしれません。FAQをウェブサイトに公表したり、講演などで懸念要素をできるだけ網羅して話したり、情報公開には注力していきたいと思っています。デモフライト(2020年8月25日に愛知県豊田市で公開有人飛行試験を実施。今後も順次開催予定)をご覧いただくのもその一環です。
宮川氏:飛行機の歴史そのものが、社会的受容性の克服の歴史ですからね。歩いて移動するしか方法がなかった人間が、ある時、馬に乗るようになり、やがて、自動車に乗ることになった。その延長線上に飛行機があります。社会受容性は、メリットが懸念を克服していくプロセスを経て醸成されるものだと思うんです。福澤さんは理解者を増やすとおっしゃいましたが、これもメリットが懸念を克服していくことで増えていくはずです。ある程度の時間はかかるでしょうが、そのメリットを享受した人が増えていけば、社会全体が変わっていきます。一方で、アメリカは飛行機に対する社会受容性は高いですが、飲酒操縦やガス欠に起因する事故があると聞きます。
岩花氏:社会受容性のほかにも、想定されている課題はありますか。
福澤氏:今ご指摘いただいたことは全て課題です。新しい機体、という観点でケアすべき話と、航空機全体に関係する話とがあります。当然セキュリティも重要度が高い課題で、無人操縦を想定している以上、自動運転を進めていくうえで避けて通ることはできません。ただ、私たちが自社で対応するというよりも、業界全体で取り組むべき課題であるとも思います。
岩花氏:衝突回避や高度な運航管理システムなど安全を確保する機能の実装、実証実験の繰り返しによる信頼性の向上、騒音の低減などを通じた社会受容性の向上が、普及に向けたポイントになりますね。機体だけでなく、ポートなどの地上支援システム、運航管理システム、管制、オペレーター、法規制、セキュリティ、関連サービスなど、さまざまな関係者が一体となって進めることが重要だと感じます。
岩花氏:ところで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響はありますか。
福澤氏:部品の到着が遅れるといった影響はあります。また、取引先がテレワークを苦手としていて会議が滞りがちになっています。大企業でもインフラ系の方々はテレワーク環境がなかったり、セキュリティの制限があったりするんですね。とはいえ、私たちはスタートアップなので、この程度の問題は社内外で常に経験していて、COVID-19もそのうちの一つに過ぎません。ただもう少し広い視点で見ると、移動に関する概念は10年ほど進んだ気がします。移動しなくても済むなら移動するのをやめよう。その時間で別の価値を生み出そう。本当に移動すべき場合にはちゃんと行こう。そんな考え方が増えたと思います。それに伴って、移動するならどんなモビリティに乗るか、という話も出てきます。本当に行くべきところに行く時には、定期輸送よりも、タイムリーに移動することが求められる、つまりMaaSに近づいてくるのではないでしょうか。こうしたことを考えると、空飛ぶクルマは、コンパクトかつパーソナルに移動できるという意味で、比較的COVID-19発生後の要請に答えていると感じます。
岩花氏:私もどちらかといえばチャンスであると捉えています。非接触で物を届ける需要が出てきたことでドローンへの注目度が高まっていますが、空飛ぶクルマも一定のペイロードを運べ、災害時には物資輸送もできる。また、オフィスに出勤しなければいけないという習慣が見直され、生活や働き方のリフォームが進む中で、地方で完結できる仕事も出てきました。そうなると、都市部と違って地方の移動手段には既存の交通体系では足りていない部分がありますから、そこを充足できるツールの一つとして育っていくのではないでしょうか。
福澤氏:これからは地方空港の活用が、コンパクトな航空機の利用も含めて中長期的に増えていくと思っています。空路利用が活性化し、移動に支障がなくなりさえすれば、地方に住んで仕事をするという選択肢がより身近になりますね。
岩花氏:そうですね。空飛ぶクルマをきっかけに、地方の見直しが進むはずです。安全に飛ばすという観点でも、人や建物が密集していない地方の方が相性は良いですし、課題を背景とした社会受容性も高いと想像できます。これまでの電車やバスが数時間に1本という状況を考えれば、オンデマンドで移動したいときに移動できるメリットが受け入れられやすい。
福澤氏:インフラ前提の都市計画が変わりそうですね。IT事業であれば都市部でなくてもできる業務は多いですし、その上で移動にこうした新しいモビリティを活用できるとなれば、仕事ができる場所がさらに広がります。
岩花氏:COVID-19の中で移動の考え方には2通りがあるように思います。1つは移動を極力せずに済むようにする。これは移動マーケットが縮小することを意味します。それだけであれば、空飛ぶクルマにとっては乗り越えるべき課題となるかもしれません。もう1つが、移動は前提でなく付加価値であるという考え方。これをどう発揮するかが、空飛ぶクルマにとって重要になるのではないでしょうか。
福澤氏:移動が少なくなっている点については同意しますが、国によって違いがあるとも思います。発展途上国であれば人口が増加しているので、当面は移動せざるを得ない仕事が多く、移動はどんどん増える。そこでの焦点は、「移動のパイ」のどこを取るかです。私たちは移動市場の全部を独占するつもりはありません。移動手段には新幹線もあればキックボードもある。移動市場は縮小傾向にあるとしても、私たちはその中に空飛ぶクルマを使うことが適切と考える層が一定以上いると想定しているので、その層に最適なサービスを提供することがゴールであると考えています。
岩花氏:A地点からB地点に移動する際に、駅を経由し、乗り換えをして、そこから歩く、といった経由前提の移動ではなく、ピンポイントでAからBに行けることの価値は高いですね。
福澤氏:オンラインフードデリバリーサービスも、当初は配送料が高く需要に見合わないと考えられていましたが、今では結構みなさん利用されていますよね。600円のお弁当に200円を上乗せして届けてもらっています。これはこれまでになかった価値を提供することによる新市場の創出ですが、移動においても、このモビリティがなければ生まれなかったという新たな市場が出てくると思っています。
宮川氏:COVID-19の影響で確かに移動が減ってはいますが、リモートが進むからこそ、実際に人と会うことの価値、移動することの価値が高まるのではないでしょうか。インドネシアで空港の仕事をしていた時に、人はどういう理由で移動するのかというアンケートをとったことがあります。移動理由の第1位は、ビジネスでも観光でもなく、家族や親族に会いに行くことでした。移動の欲求は減ることがないと私には思えます。
福澤氏:移動の欲求は確かに増えるかもしれませんね。これは、新しい通信機器が発売されるたびに「もう移動はいらないんじゃないか」という話が出てくるのと似ています。電話やメールやSNSがあるからわざわざ相手のところまで行かなくていい、となるかというと、やはり行きますよね。別に「移動した方がいい」というキャンペーンをするつもりはありませんが、結局はニーズはなくならないのだと思います。
岩花氏:ビジネスの視点から、空飛ぶクルマの市場をどう考えていますか。
福澤氏:市場予測は難しいです。10の機関があれば10通りの全く違う予想をします。私たちが間違いなく言えるのは、ルールが整備され、社会受容性が高まり、本来使うべき人が使う流れができれば利用者数は増えるだろうし、バッテリーの品質が向上すれば航続距離は伸びるということです。計画を立てるときには、これらをもとにしています。
岩花氏:グローバル市場と日本市場では、社会課題や消費者意識、地理的な環境などによって、想定されるユースケースも異なりますね。グローバルでは利益を上げられる領域が、必ずしも日本でもうまくいくとは限りません。日本独自の課題やニーズを見極めて日本の市場として形成できることが重要でしょう。先ほどMaaSの話もありましたが、ビジネスの選択肢としては、機体の販売もあれば、その先の離着陸場所であるポートの運営や、運航管理システムの構築、さらに、スマートシティ、エネルギーマネジメントなど、派生する事業がさまざまあると思います。事業領域としては、SkyDriveはどこまでを視野に入れているのでしょうか。また、ここまでは自社で手がける、ここからは他社と連携して取り組むといった構想があればお聞かせください。
福澤氏:まずはサービスだと思っています。「空を、走ろう。」という当社のキャッチコピーが示すような世界を実現することが第一です。機体開発を中心として、お客さまに快適にお使いいただけるサービスの提供までを担います。また、エネルギーマネジメントも必要になってきます。現在はバッテリーが機体価格の1/3ほどを占めており、重さも1/3程度、あるいはそれを上回る可能性もあり、事実上バッテリーを飛ばす会社、などと言われてしまいそうなので。戦略として取り組むというよりは、必然的に手がけざるを得ない、ということになります。
岩花氏:機体を操縦するパイロット、航空管制を行うオペレーター、運航管理業務に従事する専門家など、モビリティの運航に必要な人材の育成はどうされるのでしょうか。
福澤氏:操縦もオペレーションも運航管理も、機体によってやり方がだいぶ変わってくると思います。官民協議会の議論の中で統一ルールにすべきだという発案はありましたが、実際は機体ごとにだいぶ違います。そのため、どんな機体でどんな運航をするのかというパターンができてから、必要な人材を考えていくのが良いと思っています。
岩花氏:宮川さん、航空機の世界では、人材育成はどうなっているのでしょうか。
宮川氏:パイロットでいえば、航空機では操縦士免許に加えて機種ごとの免許があります。機種ごとでもさらに型式に対応するための試験を受けないといけない場合もあります。操縦は機体ごとにまったく別物ですし、繊細な課題だと思います。
岩花氏:慎重な対応が必要になりそうですね。
宮川氏:SkyDriveが世界で勝負をしてどこで勝つかと考えると、勝てる面はいろいろとありますが、私はその一つが操縦だと思っています。航空機ではコントロールホイールやサイドスティックが使われますが、空飛ぶクルマの世界では人間の感性にぴったり合った操縦が可能になるでしょう。機体ごとに特性が違うのですが、今のフライトコントロールのソフトウェアの技術をもってすれば、そうした違いは克服できます。操縦が簡単になれば、パイロット免許も取得のハードルが低くなって、操縦できる人が増える。事故も少なくなるはずです。そうした優れた操縦方法を開発することが強みになると思いますし、それをSkyDriveが自社で担うのか、タイアップをして協業するのかについてもいくつかの選択肢がありそうです。
福澤氏:なるほど、ありがとうございます。
岩花氏:本日は、さまざまな角度からSkyDriveの事業についてお伺いし、今後が楽しみになってきました。PwCコンサルティングでは空飛ぶクルマの普及に向けて、物理的な安全の確保や社会受容性の向上に向けた取り組みを進めていますが、それだけでなく、大きなリスクとして懸念されるハッキングなどサイバーセキュリティへの対策や、空飛ぶクルマの運用・サービスで発生する多種多様なデータの分析など、従来の航空機やドローンの事業推進よりも高度なアプローチでチャレンジを行っているところです。最後に福澤さんからメッセージをお願いします。
福澤氏:これからデモフライトの実施や情報発信に注力していきますので、ぜひ注目していただければと思います。見て、知って、関心を寄せてもらえば、それが社会受容性を高めることにつながります。できるだけ多くの方に空飛ぶクルマのメリットや楽しさを享受してもらえるよう取り組んでいきます。
岩花氏:本日はありがとうございました。
<3人談義の参加者> ■福澤 知浩氏 株式会社SkyDrive 代表取締役 東京大学工学部卒業。トヨタ自動車株式会社にて自動車部品のグローバル調達に従事。同時に多くの現場でトヨタ生産方式を用いたカイゼンをし、原価改善賞受賞。2014年に有志団体CARTIVTORに参画し、共同代表に。2017年に独立し、製造業の経営コンサルティング会社を設立。20社以上の経営改善実施。2018年に株式会社SkyDriveを創業、代表に就任し現職。 ■宮川 淳一氏 PwCコンサルティング合同会社 顧問 40年以上にわたり、主に航空機開発に従事。B7J7(後のB777)主翼空力設計、JRリニア先頭車両形状設計、防衛省先進技術実証機基礎設計等の先端技術開発・製品開発や、民間航空機開発では50年ぶりとなるMRJ(SpaceJet)の事業化、基本設計、海外セールス取りまとめなどで責任者を歴任。三菱重工業執行役員フェローを経て現職。 ■岩花 修平氏 PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 大手監査法人系コンサルティング会社、外資系統計解析ソフトウェアベンダーを経て現職。前職では、主に電力を中心としたエネルギー、自動車を中心とした製造業の企業に対する統計解析技術、アナリティクスを活用したソリューションの提供やIoTアナリティクスチームの立ち上げなどに携わる。現在は、デジタルテクノロジーを活用した新規事業の推進や企業の業務改善を支援しており、主にドローンや「空飛ぶクルマ」など無人航空機に関連するビジネスやMaaS(Mobility as a Service)などモビリティ関連ビジネス、IoTや人工知能(AI)、データサイエンスなどの領域を中心に従事。 (※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。9
<PWCコンサルティングのサイト> 空飛ぶクルマの未来展望(後編) https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/disruptive-technology-insights/flying-car02.html エマージングテクノロジー コラム・対談 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/disruptive-technology-insights.html エマージングテクノロジー https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/disruptive-technology.html ドローンテクノロジー/ソリューション https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/disruptive-technology/drone-powered-solutions.html モビリティ(MaaS・自動運転) https://www.pwc.com/jp/ja/industries/mobility.html トピック解説/コラム/対談 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column.html ナレッジ https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge.html PwC Japanトップ https://www.pwc.com/jp/ja.html
業務の自動化やDXを支援する株式会社センシンロボティクス(東京都渋谷区)は、5月11日、東海地域などで配電事業を手掛ける中部電力パワーグリッド株式会社(愛知県名古屋市)と共同で送電線(架空地線・電力線)を自動追尾する送電設備自動点検技術を開発したと発表した。ドローンに標準搭載しているカメラで送電線を自動検知でき、ドローン本体に追尾用のセンサーや小型PCなどを外付けすることもない。超高圧送電線路など大型設備の点検にも対応する。今後、ソフトウェアを開発したうえで、2022年度中の点検業務での実装を目指す。
開発した技術は両者が取り組んできた送電設備にかかわる業務の効率化に関する開発研究の成果で、送電線(架空地線・電力線)をドローンで自動追尾する。すでに飛行ルートや撮影アクションの自動生成技術を開発しており、新たな技術を追加することになった。市販されているドローン、カメラを使うことが特徴で、メーカーや機種を選ばずに運用できるという。
発表は以下の通り。
社会インフラ DX のリーディングカンパニーである株式会社センシンロボティクス(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:北村卓也、以下「センシンロボティクス」)は、中部電力パワーグリッド株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役 社長執行役員:清水隆一、以下「中部電力パワーグリッド」)と共同で、送電設備の業務効率化に関する開発研究を実施し、送電設備自動点検技術の大型鉄塔への適用拡大と送電線(架空地線・電力線)を自動追尾する送電設備自動点検技術を開発しました。本技術をもとにソフトウェアを開発し、中部電力パワーグリッドが保有する送電設備の点検業務で運用を図る予定です。
両社はこれまでにも飛行ルートおよび撮影アクションを自動生成し、ドローンを活用した送電設備自動点検に特化した技術を確立してまいりました。(https://www.sensyn-robotics.com/news/chuden-pg)。
このたび送電線(架空地線・電力線)自動追尾機能を追加したことで、自動点検飛行中の機体やカメラ操作が不要となり,ドローンに関する特別な知識を持たない作業員でもより簡単に送電線点検業務を実施することが可能になります。
この技術は、市場に流通している一般的なドローンを使用するため、これまで専用のセンサーを使用するなど実験的な側面が強かった自動飛行を実用レベルに押し上げるもので、送電設備の点検業務の効率化が期待されます。また、超高圧送電線路など大型設備の点検も対応可能になったため、より点検範囲が広がります。
【開発成果】
■大型送電設備(超高圧送電線路等)の自動点検飛行に対応
標準的な送電設備だけでなく、大型な送電設備(超高圧送電線路等)でも自動点検飛行が可能になりました。センシンロボティクスが保有する業務自動化プラットフォーム「SENSYN CORE」と、中部電力パワーグリッドの送電設備点検ノウハウを用いて共同開発した送電設備自動点検技術を組み合わせることで、鉄塔(支持物・がいし)と送電線(架空地線・電力線)を一括で自動点検します。また、単導体送電線だけではなく、多導体送電線も点検できるようになったため、より多くのシーンで送電線点検業務の効率化を実施することが可能になりました。
■送電線(架空地線・電力線)を自動検知し、高精細な映像を取得する技術を確立
送電線(架空地線・電力線)を、安全な離隔を保った上で精緻な点検を行うに足る解像度の画像を撮影するには、高度なドローン操縦・カメラ操作技術が必要とされてきました。両社はこれまでにも送電線(架空地線・電線)のたるみに沿った飛行ルートおよびカメラアクションを自動生成する技術を確立してまいりましたが、今回、送電線(架空地線・電力線)自動追尾機能を追加したことで、操縦者の技能に関わらず精度高く・安全に送電設備点検業務を行えるようになりました。特殊なセンサーなどを用いず、一般的に市販されている汎用的な機体・カメラを用いるため、メーカーや機種に依存しない、柔軟な運用が可能となります。
今後も継続的に研究開発を行い、AI や画像解析等の高度な技術を活用したドローン制御により、送電設備点検の更なる省力化・自動化を目指します。
自治体単位で、空飛ぶクルマ、ドローン、エアモビリティの取組が加速している。兵庫県は4月27日、兼松株式会社、中央復建コンサルタンツ株式会社、株式会社パソナグループ、株式会社BUZZPORTと連携要諦を結び、大学生、高校生が空飛ぶクルマの利活用を研究する「HYOGO 空飛ぶクルマ研究室」を創設すると発表した。バーチャル研究室を作り、学生研究員の取り組みを協定として支援し、空飛ぶクルマの産業振興、社会受容性の醸成、担い手となる人材育成を図る。発表会では兵庫県の齋藤元彦知事が、「2025年の大阪・関西万博を前に(空飛ぶクルマを実装する社会の)未来像を示したい」と話した。
発表会には、齋藤元彦知事のほか、協定に参加した兼松の城所僚一・上席執行役員車両・航空部門長、中央復建コンサルタンツの兼塚卓也・代表取締役社長、BUZZPORTの江藤誠晃代表取締役、パソナグループの山本絹子・取締役副社長執行役員が登壇した。公民連携による空飛ぶクルマ事業の第一弾で、今後も随時、事業を拡張する。協定の連携事項は①空飛ぶクルマによる地域創生に関すること、②空飛ぶクルマを活用した観光開発に関すること、③高校生・大学生の研究活動へのメンタリング、協同活動の実施に関すること、④空飛ぶクルマの社会実装に向けた受容性向上のための活動に関すること、⑤その他、空飛ぶクルマによる県民サービスの向上、地域の活性化に関すること、と紹介された。
「HYOGO 空飛ぶクルマ研究室」はバーチャルラボで、県内在住または県内の大学に通う大学生の選抜メンバーで構成する「空飛ぶクルマゼミ」を運営したり、全国の高校生を対象とした観光甲子園内「空飛ぶクルマ部門」を開催したりすることを構想している。
説明会では事務を担ってきた兵庫県企画部地域振興課の高橋健二・公民連携班長がこれまでの経緯を説明した。それによると兵庫県は昨年6月から空飛ぶクルマの連携事業の構想を開始。地元発祥の兼松、淡路島にオフィスを構えるパソナなど連携の枠組みを作り20回以上の協議を重ねてきた。大阪・関西万博を当面を目標に設定して空飛ぶクルマの実装に向けた協議を重ねている大阪府の「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」にも参加して知見も獲得。その中で、地域創生、観光開発、受容性向上など兵庫県民の豊かな生活の実現に貢献することで合意し、具体策を練ってきたという。
実際、兵庫県では多自然地域と呼ぶ山間部で生活の利便性向上や不便、不安の解消にドローンを役立てる取り組みを進めるなど、ドローンの利活用には積極的だ。空飛ぶクルマは「パッセンジャードローン」とドローンの派生形ととらえられ、空域利用や遠隔・無人操縦などで議論が共通することも多く、兵庫県のように自治体でドローンや空飛ぶクルマの利活用を進める動きが広がりを見せている。
発表会で兼松の城所上席執行役員は「(空飛ぶクルマの離発着場となる)バーティポート開発を手掛ける英スカイポーツ社と業務資本提携を締結しており、神戸にルーツを持つ企業として地域に尽くしたい」と決意を述べた。パソナの山本副社長は「地方の企業にとって距離は不利益です。でも空飛ぶクルマの実装で、不利益は利益になるかもしれないと思いました。なにより若い方々のベンチャー精神に期待しています」と期待を寄せた。
齋藤元彦知事は「空飛ぶクルマの実装には、先んじて取り組むことが大事だと思っています。9月1日には県と内閣官房が主催するドローンサミットも開催されることになっていて、2025年の大阪・関西万博を前に(空飛ぶクルマを実装する社会の)未来像を示していきたいと思っています」と抱負を述べた。
人を乗せて飛ぶドローン“空飛ぶクルマ”の開発を手掛けるテトラ・アビエーション株式会社(東京)が、「マンガでわかる! 空飛ぶクルマ」を刊行した。小中学生向けに航空機の歴史や空飛ぶクルマの開発について紹介している。
マンガでは空の移動や航空機開発の歴史、空飛ぶクルマがもたらす利点、テトラの開発した機体、将来展望などを、小学校5年生のドローンが趣味の女の子と同級生の男の子を主人公にしたストーリーの中で解説している。ストーリーの中で主人公の2人がテトラの中井佑代表らを訪ね、空飛ぶクルマの実用化で渋滞解消や環境課題などの解消につながる説明を受ける。
マンガを刊行したテトラは100㎞を30分で移動する1人乗りのeVTOLなどの開発を進めており、購入予約も始めている。
テトラは「このマンガで理解が進み愛着が広がればうれしいと思っています」と話している。企画・制作は株式会社ポプラ社、編集協力は株式会社サイドランチ。B5判、オールカラー96ページで1100円(税別)
【オンライン販売】Amazon
【マンガ概要】 「マンガでわかる!空飛ぶクルマ」 発行日:2022年3月11日 判型:B5判/オールカラー/96ページ(表紙除く) 発行:テトラ・アビエーション株式会社 制作:株式会社ポプラ社 制作協力:株式会社サイドランチ
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は4月25日、「ドローン官民協議会(=小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)」がとりまとめた国家資格化に伴う制度変更の方針について、加盟する認定スクール向けに説明会を開いた。協議会の資料や、JUIDAが独自に整理した資料を示しながら、国家資格である「技能証明」を取得するメリットや、取得方法、JUIDA資格保持者の取り扱い、JUIDAのカリキュラムで捕捉が必要な部分などを説明した。国家資格の講習を提供する登録講習機関に転じるスクールの動きが加速しそうだ。
説明会ではJUIDAの鈴木真二理事長は4月20日のドローン官民協議会で制度変更の方針が示されたことや、引き続き検討すべき点が残っていることなどを説明し「みなさまにも引き続きご協力をお願いします」と参加したスクール関係者に呼びかけた。
また国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の梅澤大輔課長が登壇し、制度の概要を説明した。国家資格は「技能証明」と呼び、レベル4飛行に必用となる「一等」と、それ以外の「二等」とがあり、取得には認定を受けた試験機関で学科試験、実地試験を受けて合格することが必要であること、ただし登録を受けた講習機関の講習を受ければ試験機関で実地試験が免除されることなどが説明された。
梅澤課長は「より多くの講習団体が登録講習機関となって質の高い講習を提供頂き、よい操縦士を輩出して頂きたいと思っています」と期待した。
このほか、機体認証、ライセンス、運航管理について説明。機体認証ではレベル4飛行の機体は機体認証を受ける必要があることや、量産機で型式認証を受ければ設計、製造の検査を省略できることなどが説明された。
JUIDAの田口直樹経営企画室長は、JUIDAのスクールに関わる横目について説明した。「技能証明」の取得が、試験機関での受験と、講習機関を通じて実地試験が免除された状態で受験する方法と2通りあることを紹介し、受講希望者に対する説明に誤りがないよう注意を促した。また技能証明を取得するメリットについて、一等は所持しないとレベル4飛行が認められない、二等は、レベル4飛行は認められないものの、特定飛行のうち上空150m以上の飛行やイベント上空などリスクが高い飛行を除き、DID上空、夜間飛行などの飛行の場合には、許可・承認の取得が不要になることなどを説明した。
既存のJUIDAのカリキュラムは、二等の試験に必用なCRMや地上基地などがカバーできていないため、今後対応を検討することが説明されたほか、スクールが講習機関になる場合に備えるべき要件には設備、講師の両面で整える要件があることも説明された。そのうち設備では空域、機体、建物、教則本などの書籍が該当し、講師にも一定の要件を満たすことが求められるなどの説明が行われた。
このほか、具体的な取り組みや今後の方針なども示された。JUIDAによるスクールへの説明会は4月27日にも開催される。
山梨県早川町が4月22日、廃校を再生させた宿泊型研修施設「ヘルシー美里」を会場にドローンの知識や操縦を伝授する「南アルプスドローンスクール」の開校式を開いた。スクールの運営主体は早川町。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)に加盟する認定スクールで、自治体がスクール運営者に名を連ねたのは早川町が初めてという。スクールの名付け親でもある辻一幸町長は開講式で「ドローン振興にお役に立つ町として、町のさらなる個性化も目指したい」とあいさつした。
「南アプルスドローンスクール」は2泊3日でJUIDAの操縦技能証明証などを取得するための講習が受けられる宿泊型のドローンスクール。自前の指導者はおらず、辻一幸町長は「指導者の育成をまずはしたいと考えています」と話す。当面はドローンの人材育成などを手掛けるドローン・アイティー株式会社(横浜市)が運営する「横浜ドローン・アイティー・スクール」などがインストラクターを派遣する。開校式にはドローン・アイティー株式会社の金子信洋代表取締役や、インストラクターの宮沢雅幸氏が駆け付け、講習で用いられる機体や、株式会社石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)が開発した農薬散布向けのドローンの飛行を実演した。
スクールは1年間に4回開く計画で、第1回は6月24日に始める。
開講式で辻町長は、「南アルプスを背景とした370平方キロメートル広大な山峡のまちで、これからのまちづくりの一環としてドローン振興にお役に立つためにスクールを開校することになりました。同時にまちのさらなる個性化を目指し、スクールを核としたドローンアドベンチャーの町をめざす早川町でありたいと考えています」とあいさつした。
来賓として参加したJUIDAの鈴木真二理事長は、「JUIDAのスクールとして現在、海外も含め270校が活動していますが、自治体としてJUIDAスクールに取り組むのは早川町が初めてです。辻町長には改めてお礼を申し上げたいと思います。早川町を訪れましたのは本日が初めてですが、実証の場として非常にすばらしい環境だと感じました。ドローンの活用を広げる活動をぜひ一緒に続けて頂ければと思っています」とあいさつした。
式典は、スクールの会場となるヘルシー美里の敷地に大型のテントを準備して、地元の官民関係者、県の関係者、ドローンの事業者ら50人が参加した。
ドローン施策の総合調整を担う内閣官房小型無人機等対策推進室(ドローン室)は4月20日、複数の府省庁が独自にサイトなどで公表しているドローン関連施策を一覧できるようにするため、情報共有プラットフォームを構築し、同日、公開した。国の関連施策として関係法令、各種ガイドラインや手引き、交付金や補助金などの施策が一覧でき、自治体の施策、関連イベントも掲載している。同室は「今後も拡充をはかっていきたい」と話している。
公開されたサイトは内閣官房のサイトの「各種本部・会議等の活動情報」に「ドローン情報共有プラットフォーム」として構築されている。国の関係施策として、主な関係法令、ガイドライン・手引き、交付金・補助金、マッチング、技術開発、関連会議、その他、と並ぶ。ガイドラインの中には、「全般」、「物流」、「点検」、「測量」、「消防」が用途ごとに並べられている。
自治体の主な取り組みとして、福島県、東京都、神奈川県、富山県、愛知県、三重県、兵庫県、大分県の事例が紹介されているほか、関連団体、関連イベントなども掲載している。関連イベントとしては、4月20日の「ドローン官民協議会」(=「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」でも公表された、9月開催の「第1回ドローンサミット」が紹介されている。
内閣官房ドローン室では、国の情報については双方向でやりとりをしながら情報共有をはかる一方、地方や関連団体の情報は、幅広いネットワークをいかした情報網からの収集と、地道なヒアリングとを組み合わせるなどして集めている。
プラットフォームについてはアクセスしたユーザーから「情報が一覧できることはありがたい」などの評価の声が上がっている、一方で情報は質、量ともに増えることが明らかで、同室は「トライ・アンド・エラーを繰り返しながらになるとは思いますが、拡充を図っていきたい」と話している。また、同室への情報提供も受け付けている。
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