一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長は、JUIDAが「創立5周年記念シンポジウム・交流会」を8月19日に開催するのを前に、DroneTribuneのインタビューに応じ、黎明期を振り返り、今後を展望しました。「ここまで大きくなるとは思っていませんでした」と成長速度が予想を上回ったことを明かす一方、今後の取り組みの方向について「機体登録で安心の制度化を」と明確に示しました。

――JUIDAの創設から理事長として歩んできました
鈴木理事長 創設した当時は、これほどドローンに深く関わることになるとは、思ってもみませんでした。ドローンに「空飛ぶクルマ」が入ってきていて、ドローンというカテゴリーそのものも変化しています。これまでも大きく変化してきましたが、これからも今までとは異なった大きな変化が起こるのだと思います。
――どんな5年でしたか
鈴木理事長 ドローンが今の電動マルチコプターとして広がりだしたのは2010年以降です。その後DJIのPhantomシリーズが出て、Amazonが宅配にドローンを使うと動画を流し始めたのが2013年12月1日で、2014年ごろには、今後はドローンが広がるとみていました。当時、ユーザーの立場の団体がなく、「作りましょう」と声をかけられて、「ではやりましょう」みたいな話から始まりました。最初は10人ほどの規模でのスタート。会員が1万人規模になるなど予想できませんでした。
――目指していたのは?
鈴木理事長 ドローンと呼ばれているものが、ちゃんと、安全に使える環境づくりです。それには、ネットワークがないと困るだろうということではじめました。とはいえ、ネットワークがどれほど広がるか、までは予想していませんでした。そもそも当時は、「小型無人航空機」というカテゴリーがなかったので、暗中模索で動いていました。
――当初は不審がられました
鈴木理事長 ありましたね。ドローンを持って歩いていると、不審なものを持っているように見られたり、「何やってるんだ」って言われたり、通報されたり、などという話がたくさんありました。ただしわれわれは、業務用のツールとして定着するだろうな、と思っていました。社会にネガティブなとらえ方があることを知ったのはJUIDAを設立した後です。そこで、ドローンが不審なものとして受け止められることがないよう、使うための安全ガイドラインの必要性を感じて、事業者や国交省航空局、経産省などに入って頂いて、意見交換を始めたんです。2015年1月あたりから、何回か会合をやって、議論をし始めた2015年4月22日、首相官邸で不審なドローンが落下しているのが見つかった。いやこの日はですね、国交省航空局の松本大樹安全企画課長(当時)の誕生日だったんです。松本課長の功績は大きくて、大変なご尽力をされました。その松本課長の誕生日に、首相官邸の屋上でドローンが見つかった。私はその日、あるところで講演をしていたのですが、連絡が入ってNHKのニュースに出ることになりました。その日の夜のニュース番組、翌朝のニュース番組、午前11時まで、帰らずに出ることになりました。『おはよう日本』にも出ました。その日は渋谷の放送センターに近いホテルで仮眠してそのまま、という、そんな出来事がありました。
――ドローンにとっては大きな出来事でした
鈴木理事長 ドローンを国民が広く知るきっかけとなったと思います。
――航空法改正のきっかけにもなりました
鈴木理事長 そうなんですが、当初はすぐに法改正なんて、できるわけないよねって思っていました。特に航空法改正は時間がかかると聞いていたこともあって、すぐに小型無人機の制度ができるとは思ってもみなかったわけであります。ところがそれが実現する。それにはそれまで議論を重ねていたことが生きるわけです。このときの改正法、施行は2015年12月10日なんですが、交付されたのは9月11日でして、この日って、私の誕生日なんです。松本さんがいつもおっしゃっていました。「事件が起きたのははわたしの誕生日、交付されたのが鈴木先生の誕生日」って。(笑い)

――JUIDA設立の5年間には質的、量的にいろんな変化があったと思いますが、その変化について、こうなってくれてよかったと思うことと、こうなっていればよかったと思うことは?
鈴木理事長 やはりよかったことは、航空法の改正が迅速だったこと。何をしてはいけないかが明確になったことで、利用者が使いやすくなった面があります。持っているだけで通報された経験をお持ちの方も、それを守ればいいわけです。
――こうなっていればよかった、ということはありますか
鈴木理事長 逆に法制度がほかよりもはやく進んだひずみ、とでもいいますか。そんな面もあります。今、議論されているのは機体の登録制度です。ドローンは今、自動車のようにナンバープレートをつけているわけではなく、どこかに落ちていても、誰のものだからわからない。海外からの旅行に来られた方が、ルールを知らないまま飛ばして話題になることがありますが、機体の登録や、業務用機体の審査など、管理された状況に関する制度があれば、問題にはならないわけです。そうはいっても、すべてが整うまで待っていては時間ばかりかかるので、とりあえず飛ばし方の部分の制度化を先行したわけです。そこがほかより早く整備されたがゆえに、未整備部分が問題視されています。そこをJUIDAとしても取り組んでいかないといけないと思っています。手始めが機体の登録制度。誰がどのドローンをもっているかわかるようにする。放置してあっても誰の自動車だかわかるようになっているのと同じです。それがあると所有者が責任をもって管理する環境が整います。
――必要性の説明が大切ですね。安全性を高める、とか・・・
鈴木理事長 安全ということよりも、安心して使える、ということでしょうか。安心を制度化する意味で必要だと思っています。不正な使い方をする人への抑止効果もあると思います。が出てくると思う。少なくともブレーキがかかるでしょう。今は場所によってはどこでもだれでもとばせるのですが、それが、ある種の不安になっている面もあります。登録はある種の規制強化ではありますが、安心の制度化です。自動車には車検制度があります。隣に走っているクルマはちゃんと整備されたクルマなわけです。安心してクルマを使える背景になっています。。前を走っているクルマが突然、停まるかもしれない環境では安心して走れないですよね。ドローンにもその安心がないといけない。その第一歩が登録です。つきつめていくと、ちゃんと整備しているのか、ということにもなってくるので、さらに制度作りが必要かもしれません。利用を広げる意味でも、あまりにも怖がってもいけないのでバランスが大事です。
――利用も広がりました。空撮、測量、点検、農業。
鈴木理事長 農業は昔からラジコンヘリによる農薬散布という長い歴史をもっています。ここはすでに市民権を得ているところでしょう。点検、測量は新しく始まったところ。空撮も広がりました。今目にする上空からの映像はほとんどがドローンですね。10年前にはほとんどなかったですが、いまや日常的ですね。
――次に起きるのは?
鈴木理事長 私は人間の根源に、自由に空を飛びたいという、思いがあると思っています。ビジネスとして事業化が進むことの一方で、純粋に、空を飛べる体験がもっと、広がっていいと。その意味で自由に飛ばせるフィールドがもっと提供されればいいなと思っています。大分県湯布院町で、ドローンの方々だけが泊まれる日を設けている温泉旅館を運営しておられる方がいらっしゃいますね。(=「ドローンの宿 時のかけら)。これはすごいな。と思いました。敷地を持つ寺社仏閣などが飛ばせる場所を提供して頂けたりしたらいいな、とも思います。「空を自由に飛べるということは素晴らしいことだ」と共有してくれるといい。



――初めての人がドローンに触れる入口のひとつにスクールがあります
鈴木理事長 スクールの意義は導入教育にあると思っています。使ったことがない人が、標準化されたカリキュラムのもとで、もっとも効率のいい教育を受けて、ちゃんと動かせるようになり、どういうところに気を付けたらいいかを分かる。その次にはもっと専門的で高次なことをやりたいということもあるでしょうから、そこはJUIDAの中で議論をしていますが、底辺を広げることに貢献していると思います。もっと多くの人が、空を飛ぶ体験ができればいいと思っています。
――学ぶという意味では、事故から学ぶことの重要性も多く聞きます
鈴木理事長 重要です。安全を維持する上では事故から学ぶ文化が必要です。事故を起こした人への責任追及では済まされません。その文化を作ることもわれわれの重要な使命だと思っています。事故にならなくても、ちょっと怖い目にあった、というときには、ちゃんとそれを届け出て、それをみんなで共有できることが必要。事故になる前にヒントがあります。「ハインリッヒの法則」というのがありますね(=ひとつの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという労働災害の経験則)。ささいなことの中から、重大なことの芽を発見するということが事故を防ぐ重要な手段ということで、こんなあぶないことをしちゃったよ、みたいなことが、共有できる環境を整えなくてはいけないと考えていまして、JUIDAが取り組む課題のひとつです。あぶないからやめてしまえ、では進化がない。
――ところで鈴木理事長は空への憧れから研究の道に入ったのでしたね
鈴木理事長 私自身は飛行機に乗ると酔っちゃったりするので、小さい飛行機は乗れないんですけどね。旅客機はいいんですけど。そういう意味で自由に操縦することはかないませんでしたけれど、飛行機に携わる仕事ができた、という意味では、子供のころからの夢がかなったと思っています。
――ドローンにも携わることを決めたのは、空を飛ぶから、っていうのは本当ですか
鈴木理事長 はい。それだけの話(笑い)。もともと飛行機が子供のころから好きで、大学の航空学科に入ったんですけど、入ってみると安全に対する、非常に重い責任を負わないといけない、といったところに直面します。『マッハの恐怖』(柳田邦男氏の航空事故の原因を究明したノンフィクション)という本が出てそれを読むと、空を飛ぶのを、カッコいい、ということでこの道を目指したことに、ちょっと反省をするわけです。もっと重い事実だな、と。そこで安全をいかに維持、向上させるか、というところに取り組まないといけないな、と思いまして、それで落ちない飛行機を研究しようと思ってずっときたわけです。単に飛ぶ、ではなく、安全に飛ぶを追求したいわけです。有人機と無人機とは違うわけですが、私の中の存在感としては、あまり違わないです。飛ぶことを自由にコントロールするという意味において。同じような存在です。
――JUIDAとしてほかに取り組むことは
鈴木理事長 実はもうひとつ、JUIDAでやろうとしていることがあります。いま、ドローンの技術、テクノロジー、創意工夫などを共有する場がないのです。学会、技術論文集、発表、というアカデミアの世界があるのですが、ドローンでは育っていない。技術の発表先がほとんどないのです。すそ野を広げることも大事ですが、技術のレベルをあげること、頂点を高くするということも必要。そういった技術を発表する場として、ドローンの技術ジャーナルのようなものを作ることに取り組みたいと思っています。
――ドローンの業界をリードし得るプレイヤーがどんんどん登場し、買活しています。伝えたいことは
鈴木理事長 心強い限りで、どんどん活躍して頂きたいです。伝えたいことがあるとすれば、ビジネスには競争がありますので自社の利益を追求することになるのですが、それだけでは社会全体に広がらない側面もあるということ。みんなで築くプラットフォームなり文化なりも視野に入れて頂ければいい。みんなで基盤を作って、みんなで広げられればいいと思います。
――ありがとうございました。
DJI、飛行禁止区域への強制ブロックを事実上廃止 欧米では実施済み
「国産化」の議論、再び活発化も 「自衛隊ドローンの国産化率は3割」
DJIが「手のひらドローン」DJI Neo 2を発表 日本勢も発売、レビュー動画も
DJI、航空LiDAR「Zenmuse L3」発表 国内でも販売開始、セミナーや対応ソフト発表も
【JapanDrone関西】「8K 360度」のAntigravity初出展
DPCAが設立10周年記念シンポジウム開催へ 12月10日にロームシアター京都で
日本ドローンショー協会、イベントカレンダー公開、メルマガも創刊
DJI,Agras 「T70P」と「T25P」を日本でも発売 7月発表の新農業ドローン
【JapanDrone関西】3006人が来場し閉幕 会場に多くの 機体メーカーの顔ぶれは控えめ
GMOインターネットグループ、「2025国際ロボット展」に初出展 ブルーイノベーション株式会社(東京)の熊田貴之社長がドローントリビューンのインタビューに応じ、「お客様」との向き合い方について語った。同社は複数のドローンやロボット、センサーなどを統合管理するデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」や、球体ドローン「ELIOS」シリーズ、ドローンポートなどの事業を展開していて、取引先、顧客との関係について模索を続けている。
ブルーイノベーションはBEP技術を軸に、「点検」、「ドローンポート」、「教育」、「ネクスト」の4つに分類したソリューションを提供している。11月14日に発表した2025年12月期第3四半期決算によると売上高は、7億7000万円で、1年前の第三四半期から4.3%増加した。売上高を構成する4ソリューションのうち「点検ソリューション」の構成比が46%と半分近くを占めた。
熊田貴之社長 「わたしたちはソリューションを提供している会社ですが、ソリューションはお客さまの声をしっかり聞くことなしに作れません。ドローンの機体を開発する、販売する、ということにだけ集中してしまうとプロダクトアウトになり、お客さまの要求に必ずしも合致せずにソリューションにならない、あるいは十分ではないということが起こりえます。ソリューションを提供するには、機体をお客さまの求める作業や動作ができるようアプリケーションが必要になるかもしれません。場合によってはドローンでない方がソリューションとしてふさわしいかもしれません。ソリューションはお客さまのご要望を伺うところから始まります。わたしたちはお客さまとメーカーとをつなぐ部分を担う面があるのかもしれません」
――持ち味はドローンやロボットなどの統合管理プラットフォーム「BEP」だ
熊田社長「はい。主な対象はドローンですが、お客さまとは無人搬送車の運用の話もしています。無人搬送車の複数制御。これにドローンが組み合わされることになれば、走る、飛ぶが統合されて、制御系に対するニーズにつながるのだと思います。それまでお客さまのご要望を伺いながら試行錯誤をしてまいります。プラットフォーマーになることは、その技術がみんなの共有財産になるということだと思っています」
――お話の随所に「お客さま」が登場し、強い意識を感じる
熊田社長「一般論ですが、ドローンに関連する産業が実証実験の段階から商売やビジネスなどの事業の段階に移りつつあることと関係しているかもしれません。実験は提供期間が実験の期間に限られます。それに対して商品を提供する事業段階になると、購入頂いた先での満足度の重要性が高まります。わたしたちも社内でカスタマーサポートの重要性に対する認識が日々高まっています」
――たとえば
熊田社長「ドローンポートは、購入頂いたお客さまのもとにずっと置いてあるわけです。そうするとお客さまからのご意見も寄せられます。問い合わせ、不安、クレーム、トラブル連絡など含めて、お客さまの声に向き合う期間が長くなります。わたしたちも十何年ドローン関連の事業に取り組んでおりますが、お客さまを担当する担当者が現場で親身に対応するフェーズから、組織として対応するフェーズに変わってまいりました。お客さまと向き合うサービスのフェーズに入ってきた、と言い換えてもいいかもしれません。ほかの会社ではすでにできているところもあるのだと思いますが、わたしたちは今年、社内にその体制をつくりました」
――トラブルを現場まかせにしない
熊田社長「はい。経営会議でも話をします。それはそのお客さまの中でわたしたちのサービスが浸透し始めている裏返しでもあると思っています。産業全体でもドローンがサービスのフェーズに入りつつあることを示しているかもしれません。いまではわれわれの提供しているプロダクトやサービスなどを通じて、LTV(Life Time Value)をしっかり提供できているか、本当の意味で長くお客さまに価値を提供するか、より強く意識するようになりました。LTVがKPIにもなりました」
――「お客さま」重視のサービスの会社だと
熊田社長「それを目指していますが、正直なところ、まだ全然です。ようやくそのフェーズに入ったという感じです。サービスがお客さまに浸透していくプロセスを体験している段階かもしれません。カスタマーサポートには大きなコストがかかる面もありまし、決して華やかなことばかりではないです。注目もされないし記事にもなりません。それを繰り返していくことが大事なのだろうと思っています。いま巨大企業になっているメーカーもそこからはじまって、やがて強いブランドになっています。わたしたちもそこを通っていかなければいけないと感じています。社内でもお客さまからの声に、現現も組織も対応する。会社としてちゃんと向き合おうという話をしています。営業、開発、保守などすべてです」
――ありがとうございました。

「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」は11月27日閉幕し、二日間の合計で3006人が会場を訪れた。事前に公開していた来場者目標の3200人には届かなかったが、期間中は来場者、出展者の笑顔がはじけた。機体メーカーなど主要プレイヤーの出展の上積みなどが、来場者拡大のカギとなりそうだ。
Japan Drone関西は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の主催、株式会社コングレの共催で11月26、27日の2日間、JR大阪駅直結の「ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター」を会場に開催され、26日に1604人、27日に1402人が足を運んだ。講演、パネルディスカッションなどのステージには2日間で1131人が参加した。来場者の中には出展者ではないドローン事業の経営者、関係者も見られ、会場内で知人を見つけてはあいさつをかわす光景や談笑する様子が多くみられた。
関係者や愛好家の間で話題になったのは初出展、初公開プロダクトだ。360度カメラの開発で知られる中国のテクノロジー企業Insta360がパートナー企業と設立したドローンブランド「Antigravity」が、日本の展示会に初出展し、機体やコントローラー、ゴーグルを紹介した。日本での発売計画は未確定だが、来場者の多くが足を止め、製品の仕様や今後の計画を担当者にたずねていた。
台湾の電気機器メーカーWistronも、系列のドローンメーカーGEOSATとブースを共同出展し、GEOSATの機体3種が初公開された。イタリアのモニタリングソリューションを展開するTAKE OVERも老朽インフラの課題と向き合う日本市場の調査をかねて初出展し、来場者と意見交換をしていた。米Skydioが9月に発表したふたつの新型ドローンについて、日本市場向けの公式アナウンスが出ていない中、JapanDrone関西に出展したジャパン・インフラ・ウェイマークは、二機種のうちの屋内向けドローン「R10」について独自のポスターを張り出したほか、チラシも用意し来場者に配布するなど関心を集めた。
会場では多くのブースで来場者と出展者が意見交換をしたり、説明を求めたりしている様子がみられ、あちこちで笑顔がはじけていた。ジュンテクノサービスやMizubiyoriは会場内に設置されたプールで水中ドローンを実演し、来場者に囲まれていた。
自治体の取り組みなどを紹介するパネルも多く設置され、じっくりと観察する来場者がいた一方、説明員のいるところは限られ、見学者が途切れる時間帯もあった。自治体の取り組みについては、「主催者テーマ展示ゾーン」と「ドローン×地方創生:自治自治体PRゾーン」とに分かれて展示されていて、来場者の利便性に合致していたかどうかの検討が加えられる可能性がある。
Japan Drone関西はJUIDAが10年前から毎年、千葉・幕張メッセで開催しているドローンの大規模展示会「Japan Drone」の地方開催版で、大阪で開催するのは2度目。一度開催した地域で二度目を開催したのは今回が初めてだ。JUIDAの鈴木真二理事長は初日の講演の中で、「アンケートで大阪での開催を求める声が大きかったことが今回の開催につながりました」と話している。今後も来場者の声が開催方針に反映されることになりそうだ。








11月26日に開幕した「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」では初公開、初出展を含め、多くの取り組みが披露されている。イタリアの保守、モニタリングソリューションを提供するTake Over社はFranz Lami CEO自身が来日して初出展。株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(東京)は、日本市場向けには公式発表がない米Skydioの屋内用ドローン「Skydio R10」について独自のポスターを作成し公開している。セントラル警備保障は不審ドローン対策ソリューションを提案している。
イタリアのTake Over社は日本の老朽インフラが抱える課題に対しイタリア仕込みのソリューションを提案している。同社はイタリア国内で橋梁、鉄道、高速道路、ダムなどの保守点検などで実績を積んでいる。イタリアは歴史的な建造物から近代的な道路まで公共構造物の時代背景が幅広く、その知見が老朽インフラを多く抱える日本での需要を見込む。
来日し会場のブースにも立ったFranz Lami CEOによると、イタリアのインフラは近代のコンクリートと中世からの石でできたものなどとがある。課題の緊急性が高いのは重量のあるトラックなどを支える道路などコンクリート製のインフラで、内部の亀裂などをいち早く察知し対処する必要がある。同社はその点検やモニタリングなどで実績を積んできた。
データ取得のためDJIを中心としたドローン、3Dレーザースキャナ、モバイルマッピングシステムなどを機材として使っている。JapanDroneのブースではFranz Lami CEO自身が来場者に実績、技術などをアピールし、情報収集、市場調査を進める。来場者には。同社のロゴの入ったキャップを渡している。最近東京に開設したオフィスの人員の増強にもつとめていて、リクルートにも積極的だ。
JIW、日本向けアナウンスがされていないSkydio「R10」のポスター独自作成
ジャパン・インフラ・ウェイマークは米SkydioのAIドローン「Skydio X10」や、専用の格納庫「Dock for X10」など点検ソリューションを展示しているが、ブースにはもうひとつ、日本市場向けには正式なアナウンスがない機体のポスターがある。屋内向けドローン「Skydio R10」だ。
9月17日と18日に米国で開催されたSkydioの毎年恒例の発表会「Skydio Ascend 2025」では、「Skydio R10」が屋内向けドローンとして発表された。もうひとつ。長距離飛行に対応した固定翼ドローンのプロトタイプ「Skydio F10」も発表されているが、いずれも日本市場向けには公式の見解はない。
屋内の点検ソリューションを展開するJIWはR10について独自にチラシを作成し、ブースではポスターとして来場者に見せている。それによると、R10は785gでX10の2140gから大幅な軽量化が図られる。暗所飛行用の補助ライトを備え、自律飛行し、ライブ映像を配信し、点検を支援するという。市場導入の時期は公式発表を待つ必要があるが、関係者や愛好家の間で関心を喚起しそうだ。
セントラル警備保障が不審ドローン対策展示
セントラル警備保障株式会社(東京)は、不審ドローン対応のためのソリューションなどを展示している。会場にはカウンタードローンシステムのほかいくつもの緊急対応機能を備えた移動指揮所車両「CSP Drone Base Car」を車両ごと持ちこみ、中に搭載している映像監視システムや、電源機能、車内で指揮がとれる機能などを公開している。屋根にはドローンポートを備え、ここから離陸させることもできる。
また、不審ドローンを検知するためのソリューション「DS_005D」も展示してある。ブースではその機能や上位モデルの説明を求めて来場者が足を止めていた。
レッドクリフ、ジュンテクノ、ROBOZが存在感
このほか、開場では大阪・関西万博の協会企画催事プラチナパートナーとして連日ドローンショーを繰り広げた株式会社レッドクリフ(東京)が前面を赤、黒でペイントしたブースで来場者にドローンショーの特徴や効果を説明していた。また屋内ドローンショーを手がける株式会社ROBOZ(名古屋市)は、ドローンショーに使う機体の特徴や通信、飛行の安定性などについて石田宏樹代表取締役が率先して説明していた。会場の隣室でデモンストレーションも行い、手軽に運用できることを実践した。
ジュンテクノサービス(埼玉県川越市)も水中ドローンを中心に展示。ダム堤体、取水口、吐口撮影からポンプ場撮影、流域下水道点検など多くの現場での点検実績などのノウハウをブースで展示しているほか、会場内のプールでデモンストレーションも実施し、来場者がその様子をみるために取り囲む様子もみられた。











アメリカのドローンメーカー、Inspired Flight Technologies社の産業用ドローン「IF800 TOMCAT」「IF1200」が、「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」で公開されている。展示したのは株式会社栄光エンジニアリング(茨城県つくば市)だ。リスクを回避するオペレーターへの提案として出展した。いずれのモデルも日本のドローンの展示会での出展は初めてだ。
栄光エンジニアリングが展示しているのはアメリカInspired Flight Technologies社のクワッドコプター「IF800 TOMCAT」とヘキサコプター「IF1200」だ。
IF800 TOMCATはバッテリーなし重量が4.2㎏、バッテリー搭載時で8.5㎏で、最大54分飛行する。インフラ点検、LiDAR調査などの用途を想定している。また「IF1200」は最大43分飛行、最大積載量8.6㎏だ。栄光エンジニアリングの大島健一社長は、取引先からよりリスクの低い機体を求める声を聞き、Inspired Flight社にゆきあたった。「IF800 TOMCAT」「IF1200」とも米国防省のサイバーセキュリティやサプライチェーンの健全性基準を見た居た場合に認定を与えるプログラム「Blue UAS」に認定されている。栄光は現在、Inspired Flight社の日本国内代理店だ。
ブースでは大島社長らが機体の特徴などを来場者に説明していた。ブースではそのほかExyn Technologies社の自律飛行型3Dマッピングシステム「Nexys」「Nexys Pro」、Teledyne Optech社の軽量LiDARシステム「EchoONE」も展示している。




台湾の電子機器大手ウィストロン(Wistron)は、同社系のドローンメーカー、GEOSAT Aerospace & Technology Inc.(経緯航太科技)と共同でブースを構えた。GEOSATのドローンが日本の展示会で一般公開されるのは初めてだ。
初公開されたGEOSATのドローンは3機で、日本での展開は今回の反応をふまえるなどして今後検討するという。3機はいずれもスタイリッシュで、「スタイルは重視して作った」という。
ブースにはウィストロンでドローン部門を統括するAnn Liu氏も訪れ、来場者の反応などを確認していた。
展示会で製品を見る機会はそう多くなく、ブースを訪れた来場者の中にはこのブースに立ち寄ることを来場理由にあげる人もいた。
ブースの壁面にかけられていた薄型ディスプレイはウィストロンの製品で、その薄さに来場者が指をさしている様子もみられた。ディスプレイは投影する映像の切り替えや明るさの調整は遠隔で可能だという。




中国Insta360系のANTIGRAVITYが「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」に出展している。同社は8月に8Kで360度の映像が撮影できるドローン「Antigravity A1」の発表をし、話題を集めた。日本の展示会に出展するのは今回が初めてで、ブースのAntigravity A1にも多くの来場者が見入っている。
Antigravity 社は日本の展示会の出展は今回が初めてだ。出入口に近い場所に構えたブースにはひっきりなしに来場者が訪れた。8K360度全景ドローン「Antigravity A1」が今年8月に初の製品として発表され、ドローン愛好家や関係者に間で一気に話題が広がった。
全方位を捉える「デュアルレンズ設計」でドローン周囲のすべてを360度で記録し、ライブ映像や最終映像からはドローン本体を消すことができる。操作はレバー状のコントローラーで直感的な操作が特徴だ。
ブースでは機体重量がバッテリー含めて249gであることや、2026年1月に世界同時発売を目指していることなどが説明されていた。ただし日本での発売は、諸手続きの進み具合にもよるため未定で、今後正式に公表される見込みだ。
操作はゴーグルを装着して行うため、いわゆる目視外飛行の扱いとなる。価格は今後決まるが、現時点では標準型のセットで30万円台、最も基本的なセットで20万円台を想定しているという。
JapanDrone関西ではデモフライトを実施。開催2日目も行う予定だ。
