大阪・関西万博での実現が期待される、いわゆる「空飛ぶクルマ」などのエアモビリティへの関心が高まる中、DroneTribuneは、3月に米LIFT社が開発した1人乗りエアモビリティ、HEXA(ヘクサ)を操縦する様子を公開したGMOインターネットグループの熊谷正寿グループ代表にインタビューした。飛行機やヘリコプターの操縦の資格を持ち、空を飛ぶことに詳しい熊谷氏は、HEXAの操縦体験について不安を感じることは一切なかったと明言し、そのうえで「われわれは空飛ぶクルマをお守りする」と、サイバーセキュリティ、情報セキュリティを手がける企業グループとしての使命感を鮮明にした。また3月に行った飛行の公開も、可視化しにくいセキュリティを、身をもって示す意味があったと明かした。
空飛ぶクルマなどエアモビリティの実現が期待される大阪・関西万博は4月13日に開幕まで2年となる節目を迎え、プレ万博など地元を中心に機運を高める催事が企画されている。GMOの熊谷氏はこれに先立つ3月15日、大阪城公園で丸紅株式会社が主催したHEXAの飛行デモンストレーションに、日本人で初めてライセンスを取得した操縦者として参加し、自身が飛行する様子を公開した。万博開幕まで2年を切り、エアモビリティへの関心がますます高まっていることから、熊谷氏に尋ねる機会を得た。インタビューは、都内のGMO本社で行われた。
――空飛ぶクルマやエアモビリティの現時点での話題には、安全、安心がついてまわります。操縦者の立場としてどう感じますか
熊谷氏 「私は飛行機で双発エンジン航空機の免許を持っており、ヘリコプターでも同じように双発エンジンの免許を持っております。その意味で空飛ぶ乗り物のライセンスは、今回のHEXAで3種類目となり、空の安全は常に意識しています。どの観点から論じるか、による面がありますが、まず申し上げたいのが動力の数の観点です。HEXAはこの点で飛行機やヘリコプターと比べると最も安心できる乗り物と言ってよいと思います。なぜなら、飛行機の動力の数は2つ、ヘリコプターも双発の場合で2つなのに対し、HEXAは小型のプロペラが18基あり、ローターのひとつひとつに動力であるモーターがついています。ひとつの動力が失われた場合も安全性に問題はありません。ここは安全を語るうえでお伝えしたい点です。このほか空域の観点もあります。
――それはどんな?
熊谷氏 「飛ぶ空域が異なるということです。飛行機の場合は3万から4万、5万フィート。プライベート機がより高く、民間機だと3万3000フィートあたり、ヘリなら都内だと2000フィートとか3000フィートといった具合です。それに対し空飛ぶクルマはそれよりずっと低い。陸上交通の場合は電車も自動車もほぼ地上を動きますので、その観点からも議論できるかもしれません。航空管制の整備はこれからですが、日本の場合は特にしっかりしています。議論の最中の型式などルールづくりの中で出てくる論点もあると思います」
――快適性などは
熊谷氏 「HEXAはFAA(米連邦航空局)が『Part103』と呼ぶウルトラライト級に位置付けられています。ものすごく軽くてとにかく飛ぶことを最優先した機体です。小回りがきく分、扉がなくて、夏はいいんでしょうけど、冬は寒いとか。快適性はこれから解決していくことになるかもしれません」
――総合的にはいかがでしょうか
熊谷氏 「飛行そのものでは技術的にはもう全然、問題ないレベルです。あとは規制と市民感情の問題があると思っています」
――熊谷代表はHEXAを操縦したとき上空から手を振っていましたが率直に、こわくないものですか
熊谷氏 「パイロットなのでシートがあってハーネスがあって操縦桿を握っていればこわくないのです。ただ、ギャグみたいな話なんですが、基本的に高所恐怖症でして。いや、ホントです。飛行機の免許をとる前に、ここ(東京・渋谷のセルリアンタワーにあるGMOのオフィス)から外を眺めて、ふと『ここを飛ぶのか』と思ってビビったことがあるんです。子供のころから空を飛びたいと思っていたのですが、ホントに取ろうと思ったときに、やっぱりちょっと高いところはこわいよな、と思ったんです。そのうえで、空飛ぶクルマですが、まったく、こわくない。これは私がパイロットだから、とか、高所恐怖症を克服したから、ということよりも、一番大きいのは機体が安定したから、ということだと思っています。HEXAはパイロットが機体を安定させるためにすることはほとんどなくて、コンピューターがプロペラを制御してくれています。これだけ安定していればなにもこわくない」
――操縦士ががんばらなくても機体が安定しているのですね
熊谷氏 「ふつうならパイロットはいつも風を計算して飛びます。私もスマホにパイロットのアプリをいくつも入れていますが、たえず風向きを気にしています。羽田空港も風向きによって着陸の滑走路が違います。ヘリも飛行機も、正面から風を受けていないといけないのですが空飛ぶクルマは、機体によって多少差はあるかと思いますが、少なくともHEXAは風向きを気にすることはありませんでした。飛行条件が整っていれば、どっちから風が吹いてくるからどっちに向いて飛ぶ、ということはなかったです」
――HEXAや空飛ぶクルマの普及イメージは
熊谷氏 「普及の障害は、住民感情と規制だと思っています。テクノロジーの障害はほぼない、とIT業界に身を置くものとして、思っています。規制は日本では大阪・関西万博をきっかけにずいぶん整備が進んでいますし、これからも進むと思います。経済産業省、国土国交省主導で空飛ぶクルマを普及させようとしていますし、万博終了後も定期航路を残そうとしていますね。非常によい動きです。残る最大級の問題が、離発着場です。空からみるとHマークやRマークがありますが、実際には使われていません。まずはそこをなんとかしないと離発着できません。あとは飛行許可。ヘリですら飛行のたびに国土交通大臣の許可が必要です。それが空飛ぶクルマの離発着についてどうなるのか。いまの日本の状況では都度、国土交通大臣の許可が必要、という話になりやすいので、規制緩和ができるかどうかが普及には重要だと思います。あとは住民感情です」
――乗り越えるための対応が必要だと言われています
熊谷氏 「われわれGMOは空飛ぶクルマをお守りしています。GMOはテクノロジーとしてセキュリティの領域に強みを持っています。情報セキュリティとサイバーセキュリティ、つまり、暗号化で読み取られないようにする部分と、ハッキングされないようにする部分です。空を守ることに貢献するため経済産業省の担当部署にもパートナー(従業員)を派遣しておりますし、空飛ぶクルマの開発企業に技術協力をしております。セキュリティは可視化が難しいので、そのために何ができるかをわれわれはいつも考えております。3月に大阪城公園をHEXAで飛びましたが、あれも私が身をもって安全ですよ、と示すため、という文脈です。ただ空が好きだから飛んだ、というわけではなかったんです。6月に開催されるドローンの展示会『JapanDrone2023』にも出展してご理解いただけるようにアナウンスもするつもりでおります」(注:GMOインターネットグループはJapanDrone2023のメインスポンサーでブースも出展する)
ーー空の産業利用に大きな可能性を感じていることが伝わります
熊谷氏 「空は現時点では最後の産業的なフロンティアです。 だって、地上はいっぱいじゃないですか。それに対して空は、ヘリが飛ぶ高さより下の低空域はガラガラです。そこを安全に産業的に利用すべきだと考えています」
ーーGMOインターネットグループとしての空飛ぶクルマへの取り組みとは
熊谷氏 「強みがないことをやっても仕方がないと思っています 空飛ぶクルマの産業を強みである情報セキュリティ、サイバーセキュリティなどセキュリティの面から応援し、お守りし、普及を支えようと思っています 安心安全の空の利活用を応援して普及をするようにグループを挙げて努めてまいります」
――ありがとうございました
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大阪・関西万博開幕の2025年春までちょうど2年となった2023年4月13日、大阪万博機運を醸成するイベント、「咲洲プレ万博」がアジア太平洋トレードセンター(ATC、大阪市住之江区)で始まり、こけら落としイベントの「ATC OSAKA MIRAI EXPO」では、ドローンやいわゆる空飛ぶクルマに関する展示が中心的な存在感を示した。ATC OSAKA MIRAI EXPOの初日の13日には橋下徹元大阪府知事も行われ、多くに来場者でにぎわった。ATC OSAKA MIRAI EXPOで開幕した咲洲プレ万博は、今後年間50以上の催事を予定している。
ATC OSAKA MIRAI EXPOは、ATC OSAKA MIRAI EXPO実行委員会の主催、咲洲プレ万博実行委員会の共催で行われ、大阪府、大阪市、大阪府教育委員会、大阪市教育委員会、公益社団法人2025年日本国際博覧会が後援した。13~16日の4日間が会期で、平日の13、14日には「Business Day」として、先端技術の社会実装を見据えた展示や商談会、セミナーなどが行われた。
展示の中心はドローンやいわゆる空飛ぶクルマなどの関連技術だ。エアロファシリティ株式会社(東京)は、いわゆる空飛ぶクルマが着陸するためのポートを提案していて、豊富なヘリポート設置実績を生かしてポートの情報や、ヘリポートにも使えるゴム製マット「パズルマット」を告知、来場者にはつなげて使うマットのサンプルを見せたりした。同社は大阪・関西万博でっ会場内離着陸場運営協賛者に選ばれたオリックス株式会社(大阪市)や関西電力株式会社と協定書を締結している。
機体開発のスカイリンクテクノロジーズ株式会社(SLT、神戸市)も会場にブースを設け、同社が開発する6人乗りのチルトウイング型のリフト&クルーズ機の実物の6分の1の模型を展示した。会場では森本高広CEOも来場者を迎え、問い合わせや相談にていねいに応じていた。
販売プラットフォームなどのサービス開発を進めるエアモビリティ株式会社(東京)は機体メーカーと部品メーカーとを結ぶeコマースサイト「AeroMall」(https://aeromall.jp)などを来場者に紹介した。同社は販売プラットフォームの開発を手掛けていて、スイスの機体メーカー、デュフォー社(Dufour Aerospace社、チューリヒ)と日本市場での代理店契約を締結したことを発表している。
大阪府もVRゴーグルを装着して空飛ぶクルマのバーチャル乗車体験ができるブースを設置。多くの来場者がVRゴーグルをかけて歓声をあげていた。
そのほか、公益財団法人新産業創造研究機構(ナイロ、神戸市)が兵庫県と共同でブースを設置しこれまでの取り組みを紹介。過去に41の事業を実現させた実績がありブース内には連携した企業の名前が掲げられている。KDDIスマートドローン株式会社(東京)。TOMPLA株式会社(新潟市)、セブントゥーファイブ株式会社(東京)、日本化薬株式会社(東京)など、ドローンや空飛ぶクルマに関わる企業の名前も多くみられた。
また一般社団法人MASC(岡山県倉敷市)などが、中国EHang(イーハン)社のEHang216を展示し、来場者が写真におさめたり乗り込んだりしていた。
なお講演では橋下徹元大阪府知事が登壇。万博をテーマとしながら、空飛ぶクルマについても「大いに期待していますよ。推進しなきゃいけない立場ですからね」と述べた。
講演では少子高齢化への対応についての危機感を中心に言及し、「高度成長のリニア型の時代はすばらしいものを作ればよかったが、これからは成熟時代でサーキュラー型。すでにあるすばらしいものを、つなげて、まわして、付加価値にすることが大切」「万博はイベントではなくソリューション。今後、世界の各国も高齢化に突入することを考えると、日本は先取りして取り組んでいることになる。日本の取り組みは輸出できる。少子高齢化を強みに。一市民として無責任に言えば、人口減省のドバンテージを実験的につなげてソリューションとして提供していければいいと思う」などと持論を展開し、会場から拍手を浴びた。
いわゆる“空飛ぶクルマ”を開発するドイツのヴォロコプター社(Volocopter)は3月8日、2025年に開催する大阪・関西万博でエアタクシーとしての商用運航を目指す機体「VoloCity」の実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開した。公開されたのは万博での飛行を目指し型式証明の申請をしているVoloCity 第4世代機で、飛行や安全などの性能、デザイン、快適性などで前世代機から全面的に進化した。DroneTribuneのインタビューに応じた同社のクリスチャン・バウアーCCOは「交通手段を拡張する機体で大都市・大阪に最適だと思います」と述べた。一般公開は3月10日から12日まで。
公開されたのはVoloCityの最新世代機の実物大モデル。利用者が乗る搭乗部は伸びやかな流線形で、天井から直径11.3メートルの大きな円形の輪が“天使の輪”のように広がり、18個の小型固定ピッチプロペラが取り付けられている。内装は大きな局面ガラスで覆われ視界が広がる。シートや、自動車でいうダッシュボードもツートーンでまとめられていて高級車の運転席に近い。ペダルもなく足元も広い。2つのシートの間にあるひとつのタブレットが唯一の機器だ。ただし公開機は、自動航行バージョンで、万博で飛行を予定している機体は、パイロットが乗るバージョンのため、操縦席にはジョイスティックのような操縦桿がつき、頭上の天井にスイッチ類が並ぶ。万博機と公開機とでは、そこだけが違う。
第4世代では飛行性、安全性、快適性など全面的に改善が施された。ドアの開き方や、乗る時のステップなど、利用者が乗る動作にも工夫が凝らされた。
VoloCityは電気で動き真上に浮き真下に降りられる滑走路を必要としないeVTOL型のマルチコプター機で、バッテリー9本を本体に積む。航続距離は35㎞で、混雑しがちな都市内での速やかな移動需要を見込み、エアタクシーとして運用するUAM(アーバン・エア・モビリティ)だ。離発着場で離着陸をすることを想定していて、大勢の来場が見込まれる万博会場と大阪中心部や主要観光拠点などに離発着場が整備され、航路が作られることが期待されている。
2011年に世界で初めて人を乗せて飛ぶことに成功した電動機で、現在は4世代目。最新機体は現在ドイツ国内で試験飛行を繰り返していて、2024年にシンガポールやフランスのパリで商用運航を始める計画で、その他にも多くの国で飛行が見込まれている。消費者への直接の販売はしない方針だ。
公開初日に行われたオープニングセレモニーでは、大阪府の山口信彦副知事が「2025年に万博が開催されます。商用運航をめざして実現に向けて一歩が進んでいると感じています。その折にこのお披露目会を開催して頂けて大きな意義があると思いました。われわれの空をこのVoloCityが飛ぶことをイメージできると思います。実現にはまだ課題がありますが、デモンストレーションではなく、定着をさせるつもりです」とあいさつした。
またヴォロコプターのクリスチャン・バウアーCCOが「日本とドイツにはものづくりに強みがある点や革新性などさまざまな共通点があると思っています。この公開の機会に、大阪の皆さまにわれわれのUAM、VoloCityを感じ、体験して頂けることはそれぞれにとってとても喜ばしいことです。企業紹介の動画をご覧頂きますが、次にPR動画を作る時には大阪を舞台にしたものになると思っています」などとあいさつした。
ヴォロコプターは「VoloCity」のほか、固定翼を備えたeVTOL型リフト&クルーズ機で100㎞の航行ができる「VoloRegion」も2026年ごろの完成を目指して開発中だ。ペイロード200㎏の物流ドローン「VoloDrone」や、運航管理を司るデジタルインフラ「VoloIQ」、UAMの離発着場である「VoloPort」などを含むUAMのエコシステム整備を進めている。2011年にドイツのブルッフザールで起業したスタートアップで、3月6日には積水化学工業株式会社が資本業務提携の契約を締結したと発表した。2月には住友商事株式会社が出資を発表している。2020年2月にMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社傘下の三井住友海上火災保険株式会社が業務提携をして以降、日本航空株式会社がCVCを通じた出資や業務提携したほか、東京センチュリーが出資やグループ会社を通じた業務提携するなど、日本経済界との関係が強まっている。
公開初日に会場のグランフロント大阪北館では、仕事や買い物でたまたま来た通行人が足をとめ、写真に収める様子が見られた。
DroneTribuneはヴォロコプターのクリスチャン・バウアーCCO兼CFOにインタビューをした。
――VoloCityを通じ、利用者にどんな価値を提供しますか?
バウアー氏 「新たな交通手段を提供します。これはメトロ、鉄道、乗用車の代用ではなく、新しい交通手段として、既存の交通手段とともに交通分野の可能性を拡張したいと考えています。一例ですが、私の場合は出張でパリに行くと、中心街にたどりつくまで既存の追う通手段使うで多くの時間を費やします。時間に余裕があるときにはそれもよいのですが、会議が立て込んでいるときの移動にはVolocityを使えば時間に苦しまずに済みます。使い分けができる選択肢を提供できることが第一の提供価値です。東京、大阪などベイエリアのダ都市の場合、湾を周る移動には時間がかかります。直接に進めれば時間が節約できます」
――そのほかの価値とは?
バウアー氏 「遊覧飛行です。日本には多くの旅行者がいますが、一部でヘリコプターによるサービスがありますが、ほとんどの旅行者は、都市部上空を空から遊覧することを体験していません。街を眺めるという新たな観点を、手ごろな価格で提供できることがふたつめの価値になると考えています。3点目はサステナビリティの観点から主にふたつの価値を提供します。ひとつが電動のためCO2を出さない飛行です。お客さまには環境負荷の低減に貢献する体験を提供します。そしてもうひとつが騒音です。ヘリコプターの離着陸の音を聞いたことがある方であれば、比較するとその違いがわかると思います。そして4点面が緊急対応です。医師が現場に急行する必要があるときの移動手段を提供することができます」
――大阪はVoloCityが活躍するのに適していると感じますか?
バウアー氏 「最適だと思います。人口が約877万人ととても多く、人の移動も盛んです。空港から中心街までのアクセスにはやや時間がかかり、VoloCityはスケジュールがみっちりつまったビジネスマンの移動に対する期待に応えられると考えています。また大阪府や此花区(大阪市、編集部注:空飛ぶクルマの推進に関わる覚書を2022年5月に交わした)など行政の後押しが強力で、ものごとを進めるうえで大きな支えになっています」
――日本の知恵や技術が生かされているところは?
バウアー氏 「さまざまなところで多くの知恵や技術が生かされています。一例をあげますと機体本体のカーボンファイバーは東レの製品です。業務提携した積水化学の知見も大きく期待しています」
奈良エリアの大型コンベンション施設「奈良県コンベンションセンター」(奈良市)で7月22日(金)の午後に開催される『第一回京阪奈ドローンフォーラム』(主催:京阪奈ドローンプロジェクト実行委員会:実行委員長・増尾朗)の概要が判明した。ドローンやエアモビリティ関連の製造、技術開発、サービス、研究に関わる22の企業・団体が出展する。講演会場ではドローンやエアモビリティのキーパーソン11人が次々と登壇し、テンポよく講演する濃密な時間となる。また当日は若宮健嗣万博担当大臣が視察することも決まった。フォーラムの参加には申し込みが必要だが、現在申し込みが急増しており、定員に達した場合、そこでいったん申し込みを締め切ることも検討している。
第一回京阪奈ドローンフォーラムは、京阪奈エリアでドローン前提社会の実現を推進する「京阪奈ドローンプロジェクト」のキックオフイベントとして開催する展示と講演で構成する大型イベント。プロジェクトを通じ、ドローン、エアモビリティの活躍が展望される大阪・関西万博の開催年、2025年をターゲットに、地域でドローン・エアモビリティ前提社会を推進し、大阪・監査万博の機運醸成やその後の地域活性化、デジタル田園都市国家構想の一端としてのデジタル田園地域・京阪奈の実現を目指す。
奈良県コンベンションセンターで正午にホールCの展示会場がオープンし、その後13時からホールA、Bでステージでの講演などが行われる。講演などは16時まで行われ、展示は17時まで行われる。
展示会場には、各種ドローンの機体のほか、農業、測量、障害者支援、運用やデジタル人材などの人材育成サービスの取組、ドローンの飛行環境を感知するセンサー技術の展示などが予定されている。機体には国産VTOL、ハイブリッド機など幅広い種類の機体が展示される。展示のうち9件が関西地域、または関西に親会社がある企業だ。
またステージにはいずれもドローン産業のキーパーソンがずらりと登場する。日本でドローンの産業振興をいち早く唱え、政府とも連携を図る一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長、ドローン研究、人材育成、社会実装に力を入れていることで知られる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの古谷知之代表、都市部上空での目視外飛行をさす「レベル4」の解禁にあわせて導入される国家資格などのルールをとりまとめる政府の調整役、内閣官房ドローン室(小型無人機等対対策推進室)の小熊弘明内閣参事官らが、ドローンの作業、生活、活用、ルールなどの全体像を描く。
また、埋もれた絶景の発掘を提唱し観光による地域活性化に取り組む株式会社ドローンエモーションの田口厚代表が「観光と地域活性化」をテーマに、牛丼やラーメンなどをドローンも組み合わせて運ぶスマート物流の取組を加速させている株式会社エアロネクストの田路圭輔CEOが「物流と地域活性化」をテーマに話す。
さらに空飛ぶクルマ開発で知られカーゴドローンの開発や運用代行を手掛ける株式会社SkyDriveの羽賀雄介アカウントプランナー、産業や生活の基盤となるインフラ点検でドローンの活用を推進しAIドローン米Skydio社の機体も運用する株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークの柴田巧代表、空飛ぶバイク開発や空の交通整理に必要な運航管理システムの運用を手掛けるA.L.I,Technologiesの片野大輔代表が最新の取り組みを報告しながら、来場者にドローン前提社会の青写真を示す。東南アジアを中心に急速にドローンの運用を拡大しているマレーシアノエアロダイン社の日本法人、株式会社エアロダインジャパンの伊藤英代表もA.L.I.片野氏とともに登壇する。
ステージの最後は、奈良市観光協会の乾昌弘会長、公益財団法人大阪産業局の手嶋耕平氏と、数人の登壇者とでパネルディスカッションをたたみかけ、京阪奈エリアでのドローン前提社会推進の意義などについて、目の前の課題を題材にしながら意見を交換する。
来場が決まった若宮健嗣万博担当大臣は、デジタル田園都市国家構想担当、共生社会担当のほか、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全、クールジャパン戦略、知的財産戦略)も兼ねる。フォーラムでの発現が注目されるとともに、フォーラムでの視察がどういかされるかにも期待が寄せられる。
実行委員会は、5時間の展示、3時間の講演と、実質的に半日のスケジュールに要素を詰め込んだ濃密なイベントで、京阪奈エリアでのドローンの取り組みを加速させる方針だ。
なおフォーラムの参加には原則、事前の申し込みが必要(https://www.keihanna-drone.com/)で、現在参加申し込みを受け付けている。ただし現在、申し込みが急増しているため、定員に達した場合にはいったん、受付を修了する方針だ。展示会場の見学者も想定し、当日受付の窓口を設置するかどうかを検討している。また、ステージでの講演の様子は、リアルタイムで配信する予定だ。アーカイブ配信は予定していないという。
■出展企業・団体は以下の通り
㈱エアロジーラボ/エアロセンス㈱/㈱エアロネクスト/NTTコミュニケーションズ㈱/大阪産業局・ソフト産業プラザTEQS/㈱キッズプロジェクト/慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム/㈱国際電気通信基礎技術研究所/ジオサーフ㈱/セブントゥーファイブ㈱/D-wings/dig-it-works㈱/合同会社DPMSs/一般社団法人DPCA(ドローン撮影クリエイターズ協会)/ドローンジャパン㈱/ドローン アクセシビリティ プロジェクト(㈱シアン/テクノツール㈱)/奈良自動車学校/菱田技研工業㈱/明新社/(有)森山環境科学研究所/㈱WorldLink & Company(五十音順)
空飛ぶクルマ開発の株式会社SkyDrive(愛知県豊田氏)は6月7日、航空機用内装品メーカーの株式会社ジャムコ(東京都立川市)と「サポーター契約」を締結したと発表した。ジャムコも同日、同じ内容を発表した。ジャムコの航空機客室内装品開発のスペシャリストがSkyDriveに出向する。ジャムコはグループとしてFAA(米国連邦航空局)からの委任を受けて型式証明などの認証業務を代行する米国拠点を持ち、機体改造設計などで豊富な知識、経験を持つ。ジャムコの知見を空飛ぶクルマ開発に提供することなどを通じ、両者で2025年の大阪ベイエリアでのサービス開始と産業創出を目指す。
ジャムコは、旅客機の座駅、客室内装、厨房設備や航空機用炭素繊維構造部材のメーカーで、航空機の整備事業も行っている。グループでは、FAAの委任を受けて型式証明などの認証業務を代行する米国拠点も持つ。ジャムコは今回の協業を土台に、こうしたノウハウをSkyDriveに提供し、空飛ぶクルマの産業創造に力を合わせる。
SkyDriveは4月27日、型式証明審査の適用基準(Certification Basis)を「耐空性審査要領第 II 部(第61改正)」ベースで構築することについて、2022年3月に国土交通省航空局と合意したことを発表し、認証工程がひとつ進んだことを公表した。審査対象は2025年の事業開始を目指す2人乗り機体「SD-05型機」で、2025年の実装に向けた取り組みを強化している。
4月28日にはボーイング、ボンバルディア、三菱航空機などで活躍したPhillip Sheen氏、Amar Ridha氏が開発に参画したことも公表しており、今回の競合も、2025年の実装を見据えた取組の一環と位置付けられる。
SkkyDriveによる発表は以下のとおり
「空飛ぶクルマ」(※1)および「物流ドローン」を開発する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO 福澤知浩、以下「当社」)は、株式会社ジャムコ(本社:東京都立川市、代表取締役会長 大喜多治年、以下「ジャムコ」)とサポーター契約(※2)を締結し、ジャムコの航空機客室内装品開発のスペシャリストが当社に出向する形で、協業を開始する事をお知らせします。
■ 契約提携の背景
当社は、「100 年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに、「日常の移動 に空を活用する」未来を実現するべく、「空飛ぶクルマ」と 30kg 以上の重量物を運搬で きる「物流ドローン」を開発しております。2019年に日本で初めて『空飛ぶクルマ』の有人飛行に成功し、現在2人乗りの機体を開発しています。2025年に大阪ベイエリアにおいて『空飛ぶクルマ』を利用したサービスの開始を目指しています。
ジャムコは、旅客機の客室内装品(厨房設備、化粧室、座席等)の製造、航空機用炭素繊維構造部材の製造、各種航空機の整備事業を行っています。また、グループでは、FAA(米国連邦航空局)からの委任を受けて型式証明等の認証業務を代行する米国拠点を保有され、機体改造設計等の業務に関する豊富な知識、経験を有しています。
今後、ジャムコは航空機業界での実績を契機に、空飛ぶクルマの産業創造、モビリティの進化を応援するという意向の元、当社と「サポーター契約」を結ぶ運びとなりました。
当社が開発中の『空飛ぶクルマ』の実用化に向けて、ジャムコからは機体構造・内装設計業務、認証取得業務に資する航空機内装の設計開発技術、認証技術、航空機の運航・整備等に関する技術を当社へ提供いただき、エアモビリティ社会の実現を共に目指してまいります。
■ 株式会社ジャムコについて
「技術のジャムコは、士魂の気概をもって」の理念を基に、『航空機内装品製造事業』、『航空機シート製造事業』、『航空機器製造事業』、『航空機整備事業』の4つの事業を柱として、それぞれの領域・分野で”No1”を常に目指し、お客様に快適でラグジュアリーな空の旅を提供されています。
コーポレートサイト:https://www.jamco.co.jp/ja/index.html
※1 空飛ぶクルマとは:明確な定義はないが、「電動」「自動(操縦)」「垂直離着陸」が一つのイメージ。諸外国では、eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)や UAM(Urban Air Mobility)とも呼ばれ、新たなモビリティとして世界各国で機体開発の取組がなされている。モビリティ分野の新たな動きとして、世界各国で空飛ぶクルマの開発が進んでおり、日本においても 2018 年から「空の移動革命に向けた官民協議会」が開催され、2030 年代の本格普及に向けたロードマップ(経済産業省・国土交通省)が制定されている。
引用元:国土交通省(令和 3 年 3 月付)
https://www.mlit.go.jp/common/001400794.pdf
引用元:経済産業省(令和 4 年 3 月付)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/air_mobility/pdf/008_01_02.pdf
※2 サポーター契約とは:株式会社 SkyDrive におけるサポーター契約とは、契約締結企業から部品割引や工数提供という形で支援をいただきながら、空の産業革命をともに創造していくプログラム。