能登地震対応にドローン事業者が続々と参画している。イームズロボティクス株式会社(南相馬市<福島県>)は中型の「E6106FLMP2」、大型の「E6150TC」をあわせて4機を持ちこみ現地の需要に対応しているほか、石川県庁内に設置されたリエゾン拠点で業務調整にあたっている。ドローンが被災地で活躍するには、現地のニーズ、活躍できる事業者の選定、必要な申請など数々の業務調整が不可欠で、その調整役に経験のあるドローン事業者の知見や経験が役立っている。また株式会社SkyDrive も「SkyLift P300S」1機を含め4機を持ちこみ、ドローンの運用に定評のあるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(NTTコミュニケーションズ、東京)は主に上空の通信環境整備を担う。株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー(横浜市)、日本航空株式会社(東京)、ヤマハ発動機株式会社(磐田市<静岡県>)、日本DMC株式会社(御殿場市<静岡県>)、川崎重工業株式会社(東京、神戸市<兵庫県>)などが現地で被災地の支援の先頭に立っている。
ドローン事業者は主に輪島市、珠洲市で活動をしている。両市は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)に支援を要請していて、要請を受けたJUIDAのもと、ドローン事業者が災害対応に奔走している。
イームズロボティクスは機体の運用のほか、石川県庁DMAT調整本部内に情報連絡のために設置されたリエゾン拠点で輪島市などで活動するJUIDAや、経産省、国交省、事業者との業務調整にあたっている。政府、国内ドローン事業者へのヒアリングシートを作成したり、政府と災害時のドローン飛行などについて定めている航空法138条92項の取り扱いや災害救助法適応についても協議した。事業者との調整では株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー、双葉電子工業株式会社(茂原市<千葉県>)と連絡をとり事前調整にあたった。
また、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研、つくば市<茨城県>)とは、オルソデータをアップロード出来るSIP4Dイームズロボティクスパイロットシステムを準備し、SIP4Dにアップされたオルソデータが災害対応機関が閲覧する災害情報サイト、ISUT-SITEに表示されるようにした。一般財団法人日本気象協会、株式会社ウェザーニューズとは活動支援用の特設サイトの準備を調整した。 ウェザーニューズにはドクターヘリ位置情報を輪島市でも確認出来るように、輪島市のDMAT本部にもシステムが設置されるよう調整した。NTTコミュニケーションズとは輪島市上空の電波状況について再計算を受ける調整をし、輪島市で活動するJUIDAチームとの共有を図った。
ドローンオペレーターとしては、輪島市、珠洲市からの撮影要望のある場所を持ちこんだ機体などを使い空撮し、オルソを作成したうえSIP4Dにアップロード した。佐川急便にも物流ニーズを確認したうえで物流用機体の準備を図った。
SkyDriveは1月8日から14日にかけて現地入り。物流、状況把握を担った。スペースエンターテインメントラボラトリー(横浜市)は水上飛行を調整し、日本DMCは飛行前のロケハンのためにドローンを運用した。
災害対応の現場では、業務調整が不可欠だ。結集した事業者や、それぞれの事業者が持つ知見は、適切に運用が図られてはじめて本領を発揮する。どこで、なんのために飛行することが求められているのか、そのためにどこに、どう申請するのか、飛行環境は整っているのか、など数々の業務調整が果たす役割は大きく、今回は、専門家とのつながりも含めた業務調整の蓄積が一定水準で機能したといえそうだ。災害対応はまだ続くが、ドローン事業者が災害対応のために集結し、それぞれが果たした役割や成果は、今後の検証事例やモデルケースになることは間違いない。
JUIDAは発災直後から内部で調整を進め、1月4日以降、活動を具体化させ、1月5日にはブルーイノベーション株式会社(東京)、株式会社Liberaware(千葉市)とともに支援を始めた。被災地では1月2日に緊急用務地域に指定され(1月5日に改定)ている。現在の航空法では緊急用務地域では国か地方、または現地災害対策本部の要請を受けていない場合、原則としてドローンの飛行は禁止されている。JUIDAは輪島市、珠洲市の要請を受け活動をしており、ドローン事業者も原則として、JUIDAの統括のもとで運用している。
JUIDAが公表している活動報告
能登地震の災害対応にあたっていた株式会社ACSLは1月16日までに当面の役割を果たして輪島市(石川県)から引き揚げた。輪島市では同社の空撮用ドローンSOTENで、仮設住宅の設置候補地の現状把握や、機能停止に陥っている港湾の被災状況把握を支援した。SOTENはISO15408に基づくセキュリティ対策が施された堅牢な情報漏洩機能が特徴だが、降雪に見舞われた中での活動では、カメラ、ジンバル、バッテリー搭載時の防塵・防水性がIP43だったことが役立ったと振り返る。
ACSLは1月7日から14日まで、輪島市から要請を受けたJUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)の災害対策活動に合流した。現地には同社製のドローンも持ちこんだ。空撮用ドローンSOTENは4機、持参した。また、途中で交代した人員も含め延べ6人が現地で活動した。
現地入りしたときには、土砂災害や家屋倒壊、道路寸断などで周囲の状況把握がままならないことが最大の課題で、「とにかく被災状況を撮影できれば、という状況だった」という。
SOTENは高い情報漏洩防止機能が特徴だが、現場で重宝されたのはまずは「防水性」だったという。災害対策活動中、輪島市では雨や雪が降っていた。その中でも被災状況を急いで把握する必要があったため、「カメラやバッテリーを搭載した状態でIP43の防水性を持つSOTENは問題なく飛行でき」頼られたという。
ACSLと同じタイミングで、株式会社エアロネクスト(東京)と、エアロネクストの物流事業を担うグループ会社株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)がJUIDAの災害活動に合流した。ACSLとエアロネクストが共同開発したAirTruckも2機持ちこまれたため、AirTruck物流・配送をエアロネクストとNEXT DELIVERYが担い、ACSLは空撮を担ったという。
ACSLの現地活動は一週間を超えた。エアロネクスト、NEXT DELIVERYは1月16日現在も現地に滞在し、引き続き活動を続けている。輪島市でもドローンの有効性が改めて見直される機会になっているという。ACSLは今後、被災地の活動の局面が推移に伴い、改めて情報セキュリティの高さが求められる可能性もあるとみている。
狭小空間点検技術開発の株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)は1月11日、輪島市<石川県>での能登半島地震の災害対応活動の様子を報告した。リベラは1月6、7日に輪島市内でJUIDAに合流し、狭小空間点検ドローンIBISを使い、倒壊家屋の内部や床下を調査したと報告している。同社は「今後も必要なタイミングで支援する」と話している。
リベラは、狭くて、暗くて、危険な屋内空間の点検、計測に向けた小型ドローンIBISシリーズの開発で知られる。今回もIBISの、GPSの届かない空間への進入が可能な特徴を活用し、輪島市内の倒壊家屋内部や、倒壊リスクがあるため人が立ち入れない設備の内部を調査した。これによりドローンがなければ確認できなかったり、危険を冒して分け入るしか状況把握の手段がなかったりする屋内の様子を把握でき、作業に貢献した。
リベラは活動を以下のように報告している。
(以下発表より引用)
■支援活動について
期間:2024年1月6日(土)~2024年1月7日(日)
場所:石川県輪島市内各所
内容:・倒壊した家屋内部の現状調査
・家屋床下の現状調査
・倒壊リスクのある大型商業施設内部の現状調査
(引用以上)
リベラは「この度の令和6年能登半島地震により、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。今後も、2次災害抑止のための被災地域の建造物内部調査など必要なタイミングでの支援を継続し、当社のミッションである『誰もが安全な社会を作る』ことに向け邁進してまいります」と話している。
DJI JAPAN株式会社(東京)、豊橋市(愛知県)、中京テレビ放送株式会社(名古屋市)は2月28日、「ドローンの活用促進に関する協定」を締結した。具体策は今後詰める。DJI JAPANが自治体をまじえて包括的な協定を締結するのは今回が初めてで、締結式に出席した呉韜代表取締役は「地域の課題や機体への要望を、製品の改善に生かし、地域に貢献したい」と述べた。豊橋市はドローンの活用に積極的な自治体として知られ、市職員で構成する運航部隊「豊橋市ドローン飛行隊『RED GOBLINS』」も持つ。中京テレビは放送事業以外の事業創出に力を入れる中でドローンに注目しており、1月にドローンスクールを発足させている。
豊橋市役所で行われた締結式にはDJI JAPANの呉韜代表取締役、豊橋市の浅井由崇市長、中京テレビ放送の村井清隆ビジネスプロデュース局長が出席し協定書に署名した。
浅井市長は「本市のRED GOBLINSのメンバーは日々ドローン技術の向上に努め、『ぼうさいこくたい(防災推進国民大会)』への出場も目指しています。災害対応から物流、農業、測量、調査にも幅を広げたい。どういかすかにチャレンジし、市民が安心安全に暮らせる行政サービスにまでレベルをあげていきたいと思っています。昨年12月に『とよはし産業人材育成センター』がドローンの国家資格の実地試験会場に選定されたこともあり、手探りをしながら活用し、ドローンなら豊橋、といわれるように取り組んで参ります」とあいさつした。
中京テレビの村井ビジネスプロデュース局長は「テレビメディアの使命に大規模災害発生時の迅速な情報提供を通じた地域の生活者の生命、財産を守ることがあります。陸路での被災地へのアクセスが困難な場合に、ドローンが迅速で正確な情報提供を可能にすることがあると思っています。豊橋市のRED GOBLINSのようなチームを多くの行政機関が編成することを期待しておりますが、そのためには人材育成が欠かせず、われわれも1月下旬にドローンスクールドローンスクール『そらメディア』を発足させました。国家ライセンスのほか、農業用、産業用などに対応するほか、今後、撮影用のカリキュラムも構築し、すそ野の拡大に貢献しようと考えています」と事業を紹介した。
DJI JAPANの呉代表取締役は「地域の安全、安心のツールとしてわれわれのドローンが活用されることはメーカーとして光栄です。ドローンの技術や人材育成のノウハウを提供しながら、地域に貢献して参りたいと思います」と述べた。また、締結式後に行われた対談の中では呉代表取締役は「ちょうど5年ほど前、はじめて災害に使えるドローン『MATRICE 200』シリーズを発表しました。この5年間で、現場の声を頂いて改善したり、新機種を開発したりと、現場に鍛えられてきました。使い方の話を伺うと、そこには我々も知らないこともありました。DJI JAPANにも多くの開発陣がいます。今後、ドローンをどうしてほしい、といったアドバイスを頂ければ、それを開発にいかしたいと思っています」と話した。
豊橋市のRED GOBLINSはDJIがMATRICE 200シリーズを発売した2017年に発足させたドローンパイロットのチームで豊橋市の職員31人で構成する。消防のほか、道路、水道など部局をまたいだ職員が兼務しており、人事異動があっても原則、兼務が続く。大規模災害が発生したさいには、自動で参集し、災害対策本部のもとで活動するため、発災と同時に出動が可能な体制を整えている。DJI JAPANにとって、特定目的を掲げない包括的な協定を結ぶのは今回が初めてで、製品の改善ポイントや開発の重要なヒントを得る協定になる可能性がある。
衛星ブロードバンド「Starlink」を活用したモバイル通信のドローン配送が1月26日、埼玉県秩父市で始まった。場所はモバイル通信が困難な奥秩父・中津川のエリア。昨年(2022年)9月の土砂崩れ以降、通れなくなっている埼玉県道210号線の崩落現場を挟んで中津川の上流側に住む6世帯に、日用品などを毎週1回、Starlinkで通信環境を確保してドローンで定期配送する。ドローンは崩落場所の手前から向こう側の着陸地点まで2.8㎞を5~7分で飛ぶ。初日のこの日は7分で飛び、荷物をおろして帰還した。生活に不便をきたした住民を支える災害対応の重要なモデルケースになる。秩父市の北堀篤市長は「通信環境に恵まれない山間地域のみなさんに希望を与える日本初のハードル高きミッションに取り組んでいただいきました。期待大です」と述べた。当面う回路の凍結リスクがなくなる3月末まで行う予定だ。
取り組みは秩父市、株式会社ゼンリン(福岡県北九州市)が2022年10月25日に締結した「緊急物資輸送に関する連携協定」を軸に、KDDI株式会社(東京)、KDDIスマートドローン株式会社(東京)、株式会社エアロネクスト(東京)、生活協同組合コープみらい(埼玉県さいたま市)、株式会社ちちぶ観光機構(埼玉県秩父市)、ウエルシア薬局株式会社(東京)の6社が参加して「&(あんど)プロジェクト」を発足させ、遂行している。プロジェクト名には「地域に安堵を届ける」の願いを込めた。ほかにドローンへの電源供給などでサンセイ磯田建設株式会社(秩父市)が協力企業として名を連ね、秩父市大滝国民健康保険診療所(秩父市)も、オンライン診療や服薬指導に対応する。
ドローンは、現在通行止めになっている埼玉県道210号線の崩落場所の近くから離陸する。道路を落石から守る半トンネル状の覆い「大滑(おおなめ)ロックシェッド」の手前に離発着点と、Starlinkを通信網のバックホール回線として利用するau基地局を設置して環境を整えた。機体には重心制御技術を持つ株式会社エアロネクスト(東京)が自律ドローン開発の株式会社ACSL(東京)と共同開発し、日本各地で配送の実用に使われているAirtruckを採用。機体にKDDIスマートドローンが開発したドローン専用のノイズ耐性運航の高い通信モジュール「Corewing01」を搭載し、機体制御にKDDIスマートドローンの運航管理システムを用いることにした。
KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長は「林道が閉鎖の可能性もあり飛行先に作業員を配置しない前提で、離発着、荷下ろしを遠隔で行える機体、システムを使う必要がありました。またStarlink導入のau基地局設置で、山間部でも島嶼部でもモバイル通信の提供が可能な環境も整えました。被災地域に導入する初の事例です。被災地のみなさまの生活に安堵を届けたいという関係者のみなさまの思いにこたえる貢献したいという思いです」とあいさつした。
プロジェクトを先導してきたゼンリンの古屋貴雄執行役員も「秩父市とは2018年から協定を結んで取り組んできました。ドローン配送はそのひとつです。9月13日に崩落が起き、住民の日常生活の支援、安全対応として通信確保、安全に飛べるドローンの確保のために各社の参画を頂いた経緯があります。社会的意義の高い取り組みでもあると思います。社会に貢献すべく、しっかり進めて参ります」と述べた。
土砂が崩落した現場は、国道140号線から埼玉県道210号に分岐して約3.5㎞進んだ場所だ。中津川と急峻な斜面との間を縫うように走る道路だが、中津峡にさしかかる手前で土砂崩落があり、道路を約20mにわたってふさいだ。2022年9月13日に崩落が見つかって以降、県道は通行止めとなっている。通行止めの向こう側にいまも住み続けている6世帯の必需品は、大回りする林道が頼りだが「片道2時間半から3時間かかる」うえ、冬季は凍結し閉鎖される可能性がある。
冬になるまでは、地元の宅配業者など事業者が各社個別に大回りをして届けてきた。頭の下がる努力だが、冬の凍結期を乗り越え、さらに持続可能性を高めるために、代案の構築が急務だった事情がある。今回の取り組みでは、地元商店の配達品をひとまとめにする、という工程をはさむ。これにより各事業者がそれぞれで配送していた手間を軽減することができ、持続可能性が高まる。これは配送の枠を超え、注文を受けてから、注文者の手元に届くまでの一連の流れを集約、整理、最適化した取り組みでもあり、被災地の生活支援の側面と、それを支える側である事業者の支援との両面がある。
現地では土砂崩落の復旧作業が続いていた。道路に積もった土砂を取り除けばよいのだが、実は積もった土砂の上にさらに土砂が積み重なっている。現時点ではざっと1万8000立方メートルの土砂が積もっているとみられている。狭い場所での作業で選択肢も限られる。現在は、斜面の土砂崩落やその可能性のありそうな場所に網をかける作業が進んでいる。そのための工事用モノレールが建設され、作業員が昇っていく様子も見られた。網をかけ、落石被害の危険を減らす。その後、路面に近い土砂を撤去する。上から流れ落ちてくる土砂も撤去する。当面、片側一車線の開通を目指しており、完全復旧のめどはたっていない。
準備に奔走したゼンリンの深田雅之スマートシティ推進部長も「昨年9月13日の朝に秩父市から土砂崩落の連絡があり、その日の午後に現地に入りました。それからドローン配送の検討を進めてきました。当初12月に開始の目標をたてていましたが実際には想定していたより過酷な状況で、今日まで検討を続け、やっと先週、今週になって可能な状況ができました。私たちは2018年に秩父市と提携してドローン配送の取り組みをしてまいりました。2019年には国内2例目のレベル3と呼ばれる飛行も実現し、その後も経験を重ねてきました。今回の取り組みはこれまでの経験で蓄積したノウハウを毛州させました。『&プロジェクト』は『地域に安堵を』がコンセプト。あきらめずに中津川のドローン配送実現を推進し、安堵に貢献したい。安堵とは、安全、安全がすべて確保し終えたあとにたどり着くものだと思っています。冬を乗り越え、林道閉鎖のリスクがなくなる春が来るまでやりきります」と宣言した。
秩父市産業観光部産業支援課の笠井知洋主席主幹は「(中津川の)みなさんが寂しい思いをされてきました。ところが(中津川の)みなさんにドローン配送がはじまると説明をしてから明るい気持ちになっています。この『&プロジェクト』をほかの地域にも展開できるよう願っています」と切望した。関係者によると、中津川の人々に説明を開いたさい、ドローン配送が可能になった場合に注文したいものは何か、という話題をふると、はじめのうちは買い置きでだいぶ我慢できる、という様子だったみなさんが、そのうち「たばこはほしいかな」「ビールもいいのかな」などと嗜好品をあげるようになり、表情がやわらかくなったという。
発表会や登壇の様子を見守っていたエアロネクストの田路圭輔代表取締役CEOは「このプロジェクトに参加しているみなさんはあたたかくて本気のいい人ばかり。取り組むみなさんの思いが結実し、多くのみなさんに届けば素晴らしいと思っています。われわれも全力で貢献したいと思っています」と話した。
発表は以下の通り
秩父市、株式会社ゼンリン(以下、ゼンリン)、KDDI株式会社(以下、KDDI)、KDDIスマートドローン株式会社(以下、KDDIスマートドローン)は、株式会社エアロネクスト(以下、エアロネクスト)、生活協同組合コープみらい(以下、コープみらい)、株式会社ちちぶ観光機構(以下、ちちぶ観光機構)、ウエルシア薬局株式会社(以下、ウエルシア)らとともに、2023年1月26日から、土砂崩落の影響が続く秩父市中津川地内で、Starlinkを活用したモバイル通信のもと、ドローンによる物資の定期配送(以下、本取り組み)を開始します。
本取り組みは、2022年9月に土砂崩落が発生し、物流が寸断された秩父市中津川地内の地域住民への冬季期間の生活支援を目的としています。2022年10月25日に秩父市とゼンリンが締結した「緊急物資輸送に関する連携協定」をもとに、賛同企業6社が加わり「&(アンド)プロジェクト」として連携・実施します。 ドローン定期配送の実現により、中津川地内へ食品や日用品、医薬品などを短時間で配送することが可能となります。
現在、ドローンによる物資の配送先となる中津川地内へアクセスするには、一部の緊急車両などの通行のみ許可されている森林管理道金山志賀坂線(※1)を通行する必要がありますが、冬季は降雪や凍結のため通行が非常に困難となります。また、当該地域の地形の特性上、モバイル通信が不安定な環境であるため、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を活用してauのモバイル通信環境を確保し、ドローンの遠隔自律飛行による物資の配送を実施します。食品や日用品など最大約5kgの物資をドローンで複数回配送し、中津川地内の住民のみなさまの冬季期間の暮らしに貢献します。
■ドローン定期配送の概要
■関係者・体制図
全国各地でドローン物流の実証・サービス実装を行うゼンリンが、プロジェクトの全体統括を担当し、技術面・配送面のノウハウを持つ各社と共に、体制を構築しました。
■配送フロー
(1)住民は、電話などで事前に商品を注文。
(2)コープみらい・ウエルシア秩父影森店、ファミリーマート道の駅大滝温泉店が、注文商品をピックアップ。
(3)各社トラックで道の駅大滝温泉まで配送。
(4)ちちぶ観光機構が、各社の注文品を個人ボックスごとに箱詰め。
(5)注文商品をドローン離陸地点まで配送。
(6)注文商品をドローンで配送。
(7)中津川地内の区長が注文商品を受け取り、各世帯まで商品を配送。
■「&プロジェクト」の命名に込めた想い
プロジェクト名には、“決して(A)あきらめずに、(N)中津川地内の(D)ドローン配送の実現を推進し、住民生活の安全・安心の確保を支援し、地域の安堵(AND)に貢献する”という想いを込めています。今回、このビジョンに賛同する8者が連携し取り組みをスタートすることになりました。
■Starlinkを活用したモバイル通信とドローン配送のシステム構成
中津川地内のドローン離発着地点には、操作者などの作業者を配置できず、また、崩落地手前の地点からは中津川地内の離発着地点を目視で確認することが出来ません。そのため、中津川地内までの飛行、機体の離発着、荷下ろしのすべてを遠隔操作で実施する必要があります。
そこで、本取り組みでは、以下の製品・サービスを組み合わせたシステムの構築を行いました。
1.Starlinkの活用
衛星ブロードバンドの「Starlink」を活用した、「どこでも、素早く、広い範囲」にauエリアを構築するソリューション「Satellite Mobile Link」により、映像を用いたドローンの遠隔制御も可能にするauのモバイル通信環境を確保しました。
2.スマートドローンツールズとAirTruckの活用
「スマートドローンツールズ」の運航管理システムと物流専用ドローン「AirTruck」を組み合わせることにより、遠隔制御による機体の飛行、離発着、荷下ろしを可能としました。
・スマートドローンツールズ
KDDIスマートドローンが開発した、ドローンの遠隔制御や自律飛行、映像のリアルタイム共有を可能とするシステム。
・AirTruck
エアロネクストがACSL社と共同開発し、ペイロード5kgに対応した日本発の量産型物流専用ドローン。物流用途に特化してゼロから開発した「より速く、より遠く、より安定した」機体。エアロネクストの空力特性を最適化する独自の機体構造設計技術4D GRAVITY®により、荷物の揺れを抑え安定した飛行を実現。遠隔操作による荷物の切り離し、荷物の上入れ下置きの機構など、オペレーション性にも優れる。日本経済新聞社主催の「2022年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞」を受賞。
■今後の展望
通信不感地域におけるドローン定期配送の運用ノウハウを蓄積し、中山間地域や災害時などの通信環境が不安定な状況においても、ドローン配送を実現可能とするソリューション構築を検討していきます。これにより、全国の様々な地域・環境下でのドローン配送の社会実装を目指します。
株式会社自律制御システム研究所(ACSL、本社・東京都江戸川区、鷲谷聡之代表取締役社長)は、農薬散布機、災害対応機などの開発を手掛ける東光鉄工株式会社(本社・秋田県大館市、虻川東雄代表取締役会長)と、防災・減災対策ドローンの開発・販売に向けた協業を開始したと発表した。東光鉄工は主要技術、主要部品を日本製でそろえた災害対応のレスキュードローン「TSV-RQ1」を開発しており、ACSL製のフライトコントローラーの搭載することは既定路線。今年2月の展示会でも注目されており、今回の協業で実装にはずみがつくことになりそうだ。
東光鉄工の災害対応ドローン「TSV-RQ1」は、ローター間1100ミリのクアッドコプター。折りたたむと520ミリ×570ミリになる。水を浴びても影響を受けないIPX5の防水性能、秒速15メートル以上の風速に耐える耐風性能を備える。スピーカー、投下装置、8000lmのサーチライト、高感度カメラを備え、状況確認、避難勧告、救援物資の投下、捜索など災害現場に必要な作業に対応することを視野に入れている。今年2月に東京ビッグサイトで開催された展示会「ロボデックス」では同社のブースの中央に展示され、多くの来場者が足を止めていた。
同社は「TSV-RQ1」について、災害対応の前線で活躍する官公庁や、消防、海上保安庁、自治体などの利用を見込んでおり、厳格な要求にこたえるため、フライトコントローラーをはじめ、主要技術、部品の大半を国産でそろえる。フライトコントローラーにはACSL製を搭載する。
両社は、国産の防災・減災対策ドローンの実装に向けて、開発・販売面の協力を緊密にしていく。