ロボット体感型展示会「ロボテスフェスタ2023」が9月1日、福島県南相馬市の研究開発拠点、福島ロボットテストフィールドで開幕した。前年までの実演展示会「ロボテスEXPO」を衣替えし、展示、実演、講演に加え体験が増え演奏などのパフォーマンス、キッチンカーや屋台などにぎやかさの演出を強化した。初日の開会式には相馬野馬追太鼓の演奏が披露され、中庭にはカレー、焼きそば、たこやきなどの屋台が並んだ。展示では草刈りロボット6台が実演展示された。ミートアップイベントでは堀江貴文氏がオンライン登壇した。前回から取り入れた敷地内の主だった会場をめぐるバスツアーは今回も行われた。期間は9月2日までで、2日にはVRアーティスト、せきぐちあいみさんのパフォーマンスやロボット操縦体験会が会場を盛り上げる。
ロボテスフェスタ2023は、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構、南相馬市の共催イベントで、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、日本人無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構、準天頂衛星システムサービス株式会社、高精度衛星測位サービス利用促進協議会が後援している。公式サイトはこちら。
9月1日に行われた開会式では会場である福島ロボットテストフィールドの鈴木真二所長(JUIDA理事長)がオンラインであいさつに登壇し「試乗体験などロボットに触れ合えるコンテンツを用意しているので日本の未来を感じて頂けたらと思っています」と期待を寄せた。開会式には相馬野馬追太鼓の演奏が披露されたほか、2025年開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)の公式キャラクターミャクミャクも応援にかけつけた。
敷地内のデモ会場をピックアップしてめぐるバスツアーは、2日間に12コース設定。初日の午前10時にスタートするツアーでは、3m×3mの吹き出し口を持つ風洞棟で、ドローンの性能を飛行させずに計測、解析することがきるciRobotics株式会社 (大分県)が開発した分析マシン「ドローンアナライザー」の実演を、担当者の解説をまじえて見学した。バスツアーの参加者からは、計測可能なドローンの機体の種類などについて質問が出た。
ドローンが飛ばせる高さ15メートルにネットをはった「緩衝ネット付飛行場」では株式会社ロボデックス(横浜市)が、水素燃料電池専用ドローン「Aigis One(アイギス・ワン)」を飛ばす前に行う飛行準備の様子を貝應大介代表取締役社長が機体を見せながら解説した。参加者は燃料タンクのバルブの開閉など水素燃料電池特有の作業に関心を寄せた。
「滑走路附属格納庫」では東北大学タフ・サイバーフィジカルAI研究センターが、マルチコプターに垂直着陸させずに、格納できるEAGLE Portの仕組みを解説した。垂直着陸は着陸直前に機体が不安定になるデメリットがあるため、水平飛行の姿勢を保ったままの姿勢で格納あせることを提案したポート。機体を受け止めるポートの開口部にドローンがたどりつけば、ドローンをつりさげて回収できる。また、連続して格納できるため、複数機を着陸させる空中で順番待ちの待機時間が生じにくいという。
バスツアーでは次のデモへの移動のさいに、テストフィールドの設備が窓越しに見られるコースをたどり、参加者からは「住宅地で災害の実証ができそう」などと構想を語り合う様子が見られた。
展示会場では、株式会社人機一体(滋賀県草津市)が、腕や指を持つ作業ロボットが操縦者の動きの通りに動いて遠隔作業をこなす「零式人機(れいしきじんき)」シリーズ(今回は「零式人機ver.1.2」)の実演が見学者の山をつくったほか、8月9日に連続50㎞の航続飛行を果たした株式会社石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)のハイブリッド式ヘキサコプター型ドローン「ハイブリッドフライヤー」の試作機を展示し、来場者がの足を止めていた。
Zip Infrastructure株式会社(神奈川県秦野市)は、次世代交通システム、電動自走型ロープウェイ「Zippar」を映像で紹介(映像はこちら)していて、斬新なビジュアルで多くの来場者が映像に見入って担当者に話を聞いていた。釣り下がったゴンドラ式の乗り物で、ロープとレールをタイヤで自走する。既存技術を組み合わせたプロジェクトで、現在、福島ロボットテストフィールドでも実験運航させるための準備を進めている。
このほかJUIDA、JUTM、インターステラテクノロジズ株式会社(北海道広尾郡大樹町)、会津大学、株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー(川崎市)、JapanDrone運営事務局、日鉄テックスエンジ株式会社(東京)、テトラ・アビエーション株式会社(東京)など多くの企業、研究機関、団体がブースで参加者の問い合わせなどに応じた。
屋外ではスウェーデンの造園機器メーカー、Husqvarna(ハスクバーナ)社のロボット芝刈り機Automowe(オートモア)シリーズをはじめ、株式会社アテックス(愛媛県松山市)のハイブリッドラジコン草刈り機、株式会社オーレック(福岡県八女郡広川町)のラジコン型斜面狩り用自走式草刈り機など、6社の芝刈り・草刈りロボットが実演された。ハクスバーナ機はいわゆる清掃ロボットのように、芝が張られた庭などを、あらかじめ決められた範囲で芝の伸びた部分を切り落とす芝刈り機で、「本体価格14万8500円の割安モデルであるAspireR4が発売されてから引き合いが増えています。これから庭の手入れの自動化が進むのではないかと思っています」と話した。
この日は、マッチングイベントとして「南相馬市ベンチャー×地域産業ミートアップ2023」が開催され、堀江貴文氏がインターステラテクノロジズ株式会社のファウンダーとしてオンライン登壇。ロケット開発について「ありとあらゆる高度な技術が必要となる総合格闘技と形容。日本国内での開発について「主要部品の調達が日本国内で完結するんです。これは安全保障上の観点から海外製部品を使わずに完結できるというのは大きなアドバンテージ」と述べた。
9月2日のロボテスフェスタ20232日目は、サイバー空間にアートを生み出すパフォーマンスで知られるVRアーティスト、せきぐちあいみさんのパフォーマンスが彩を添え、ヘラクレスカブトムシ型のロボット「ヘラクレスA-1」の試乗体験や、ロボットの操縦会が来場者お好奇心を刺激することになっている。
独自技術「無振動エンジン」の特許を持つ株式会社石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)は8月9日、無振動エンジンを活用したハイブリッド式のヘキサコプター型ドローン「ハイブリッドフライヤー」の試作機で連続50㎞の飛行実験を実施に挑み、目標を達成させた。風速8m/秒の向かい風の中の飛行を強いられる場面もありながら、1時間10分ほどで50㎞を完走した。石川満社長は着陸後、「風が強かったので、ほっとしました。技術的には熟成してきたと思います。これを軸に商品開発を進めます」と述べた。1年後をめどに今回の飛行を支えたエンジン発電機の商品化を、2年後をめどに機体としての「ハイブリッドフライヤー」の商品化を目指す。
飛行させたドローンは同社が開発中の「ハイブリッドフライヤー」の試作機。6つのローターを備えるヘキサコプターで、バッテリーのかわりに同社の独自開発技術である無振動エンジンで発電するエンジン発電機を搭載している。また軽量で剛性と強度を持つマグネシウム合金を使っていることも同社のドローンの特徴だ。ハイブリッドにはいくかの方式があるが、「ハイブリッドフライヤー」は、ガソリンで動かしたエンジンはプロペラをまわすためには使わず、発電に使う「シリーズ方式」だ。この日は3.5ℓの燃料タンクに約3ℓの燃料をつんで飛行に挑んだ。伝送にはLTEを使った。
飛行ルートは福島県福島県双葉郡浪江町の福島ロボットテストフィールド浪江滑走路・滑走路附属格納庫を起点にした。機体は午前8時5分に離陸し、上空80mまで上昇したのち、400m飛行して海岸に出て方向を変えた。そこからは海岸にそって約10㎞を北上、その後折り返して南下するなどほぼ2往復強で50㎞の飛行コースをつくった。
機体は「ハイブリッドフライヤー」が搭載するフライトコントローラー、アルデュパイロットの地上管制局ミッションプランナーで組んだ飛行ルートの通りに飛行した。安全確保と機体の状況確認のため、飛行ルート上に数人の監視員を配置した。起点に設置した管制局と監視員とはたえず連絡を取り合った。風が強めだったが監視員から「黒煙などの異常は見られません」などと連絡が入ると、安堵の表情が見える。向かい風のときには「機体の速度はだいぶおそめです。向かい風にむかって機体がすごくがんばってくれているようにみえます」と連絡が入り、担当者が応援する表情になる様子がみられた。
約1時間後の午前9時10分ごろ、離陸地点上空に機体が姿を表し、社員ら担当者、見学者が見守る中、予定した地点に着陸するといっせいに拍手があがった。
同社はすでに22㎞の連続飛行を果たしており、昨年30㎞の連続飛行に挑戦したが断念。今年6月には目標を引き上げ40㎞に挑んだが悪天候に阻まれた。今回の再挑戦は前回の目標をさらに引き上げて行われ、前日の8月8日のリハーサルで50㎞飛行を達成していた。試験飛行本番の8月9日は風が強い予想があり、担当者は「前日は着陸時にガソリンが1ℓあまっていたので大丈夫です」と自信を示しながら、制御しきれない天候の行方に気をもみながらの実験となった。
着陸後、石川満社長は「なんとか飛びました」と胸をなでおろしながら「風が強かったので、ほっとしました。技術的には熟成してきたと思います。これを軸に商品開発を進めます」と述べた。同社は今後も改善を加え、1年後をめどに今回の飛行を支えたエンジン発電機の商品化を、2年後をめどに機体としての「ハイブリッドフライヤー」の商品化を目指す。エンジン発電機について石川社長は、「多くの可能性を秘めていると思います。一例ですがたとえばVTOL機に搭載すれば、いまでも長い飛行距離がさらに伸びる可能性があります。数百キロ飛ぶ機体なら1000㎞の飛行も視野に入るので選択肢として有力だと思います」と展望を見せていた。
ドローンに対しては、国や地方自治体などを中心に、長距離、長時間飛行への機体が高まっている。災害対応や広域測量などの需要が高まっているためだ。細かな動きが得意なマルチコプターが長時間、長距離飛行の可能性を身に着ける方法としてハイブリッド技術が注目されていて、国土交通省が5月20、21日に埼玉県さいたま市で実施した長時間飛行実験では株式会社アミューズワンセルフ(大阪府大阪市)のハイブリッドクアッドコプター「GLOW.H」で3時間の連続飛行を確認した。ハイブリッドドローン開発の株式会社エアロジーラボ(大阪府箕面市)は6月、200分飛行できるハイブリッドのクアッドコプター「AeroRangeG4-S」を開発したと発表した。ハイブリッドがVTOLに転用される可能性も含め、今後ハイブリッドへの関心はさらに高まりそうだ。
ロボット、ドローン、関連技術を実演展示する「ロボテスEXPO2022」が福島県南相馬市の大型研究開発拠点、福島ロボットテストフィールドで9月15、16日に行われた。50haの広大な敷地に点在する各施で展示や実演が行われた。そのうちのいくつかをめぐる見学バスツアーが今回の目玉企画で、満席で運行した回もあった。初日のオープニングセレモニーでは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二所長が「このイベントを通じて未来を感じてほしい」とあいさつした。
今回の目玉企画である見学バスツアーは、展示や実演のいくつかを効率的にめぐる取組。利用者は、案内に従えばプレゼンテーションを受けたり、見学できたりするため、移動の徒歩の労力、実演までの待ち時間の無駄を省ける。実演時間を逃すこともない。また、出展者もバス利用者の到着にあわせて実演ができるため、無観客で実演せざるをえない状況の解消が期待できる。
バスツアーは1日6便ある。各回約1時間の行程で、バス2台で展示会場をめぐる。回ごとにみられる展示は異なる。初日午前10時に本館(開発基盤エリア)前を出発したバスは、ほぼ満席の状態。各シートにヘルメットが用意されていて、実演を見学するさいには着用が求められた。この回ではテトラ・アビエーション株式会社(東京)のAAM「Mk-5」の実機見学、株式会社RoboDex(ロボデックス、横浜市)の水素燃料電池を搭載した次世代ハイブリッドドローンの飛行実演、ciRobotics株式会社(大分市)が大分県産業科学技術センターと共同開発したドローンの動作や耐久性などを確認する性能評価装置「ドローンアナライザー」の運用実演、東北大学ASC(Advanced Science Course)の繊毛を持つ能動スコープカメラのセキュリティーソリューションとしての実演を見学した。
この回には地元の中学生が職場体験として見学に来ていて、その一人は「会場で見たことをレポートにまとめることになっています。ロボットテストフィールドは自分で希望を出しました。日頃みられないものが見られました」と話していた。
会場では、開発、製造、人材育成などを手掛ける各社、各機関がブースを展示していた。「南相馬ベンチャー×連携VCミートアップ-Vol.3」「みちびき(準天頂衛星システム)講演会~ドローン・UGV最前線~」なども行われた。
参加者の一人は、「バスツアーは利用者にとって効率的に見学できた点でとてもよかった。ただ、すべての座席が埋まるほどにまで埋めるのは、機材や荷物を持つ利用者にはきつかったのではないか。ユーザー体験をもっと考慮すると、満足度がさらに高まると思う」と話していた。
ドローンを活用した災害対応事業を手掛ける株式会社テラ・ラボ(愛知県春日井市)は11月18日、福島県南相馬市の復興工業団地内に、新拠点TERRA LABO Fukushimaを竣工させた。新拠点は、福島ロボットテストフィールド(RTF)に隣接し、RTFの滑走路に直接のアクセスが可能だ。1万㎡超の敷地に建つ延べ床面積1320㎡の社屋は、製造格納庫、管制室、危機管理対策室を備える。この日行われた竣工式で松浦孝英代表は「地域の雇用創出や産業集積に貢献したい」とあいさつした。
新拠点TERRA LABO Fukushimaは800平方mの製造格納庫と管制室、危機管理対策室が整う、「世界でも類を見ない民間試験研究施設」(松浦代表)だ。事業としての正式名称は「長距離無人航空機の生産拡張に伴う製造・整備工場、及びデータ解析試験研究施設整備事業」で、整備に合計2億7千万円強が投じられた。
製造格納庫は工場としての機能を持ち、翌長4mの機体を40機格納できる。この日はアンテナ、発電機能を持つ中継、翼長8m機のモックアップなどが並べられた。管理室は送られたデータを解析する機能を備える。114パターンの映像レイアウトが可能。3次元データ解析システムを導入した。危機管理対策は解析したデータを踏まえ災害対策本部など外部と連携しながら迅速で適切な意思決定に導く。
現在はここを中心に、翼長4mの試験機で繰り返し飛行実験を進めている。松浦代表は「長距離高高度化が目標で、2万メートルの上空まで飛行の高さを引き上げて成層圏の近くまで情報を取りに行きたい」と話している。
この日の竣工式にはDRONE FUNDの大前創希共同代表パートナーら関係者、来賓などざっと200人が竣工祝に駆け付け、神事に参列し今後の発展を祈願した。竣工式では神事のあと関係者があいさつし、松浦代表の案内で施設の内覧会が行われた。
松浦代表はあいさつの中で「浜通り地域の課題はさまざまあります。この地域をイノベーションで活性化させたいし、南相馬というまちがロボットのまちであることを広く発信したい。そのためにも、地域の雇用創出や産業集積に貢献したい。この南相馬で、ベンチャーがメガベンチャーに変貌を遂げていきたいと思います」と力強くあいさつした。
南相馬市の門馬和夫市長は、「令和元年10月の台風19号の災害発生直後に、テラ・ラボ様はほかの機関とともに調査チームをつくり、画像情報収集で大変なご尽力を頂きました。そのおかげで復旧に役立てることができました。今回の竣工は、正確で迅速な情報把握、分析で防災、減災の実現に向けた大きな一歩と感じています。テラ・ラボ様がこの地で事業を拡大され、新工場を竣工されたことを大変喜ばしく、心強く思っています。これからも地元企業として、お手伝いをさせて頂きますので、末永いお付き合いをお願いします」と竣工を歓迎した。
竣工式終了後、松浦代表はドローントリビューンの取材に「防災はこれまで公共セクターが担ってきました。しかしこれからは民間のテクノロジーが重要になります。事業の整備には多くの補助金もつか和得て頂いていて、株式会社の役割そのものの見直しにもつながる可能性があると思っています。まずはここで事業を拡大させ、多くの人がこの工場で働き始め、ここに住みたいと思う人が増えればいいなと考えています」と話した。
施設概要 ◎事業名:長距離無人航空機の生産拡張に伴う製造、整備工場及びデータ解析試験研究施設整備事業 ◎所在地:福島県南相馬市原町区萱浜 南相馬市復興工業団地内 ◎敷地面積:10,754.18㎡(約3,259坪) ◎延床面積:1,320.00㎡(約400坪) ◎投資額:2億7700万円 ※自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金制度を活用
福島県は7月30日、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールド(RTF)で消防担当者向けに水中ドローン講習を行った。会津若松消防本部、須賀川消防本部、喜多方消防本部など福島県内の担当者らが知識と技能を身に着けた。講習は一般社団法人日本水中ドローン協会を運営する株式会社スペースワン(郡山市)が担った。参加した消防職員は所属先で身に着けた技能を活用する方策を探る方針だ。自治体が主導した水中ドローンの講習は珍しく、激甚災害が増える中でこうした講習需要が拡大する可能性がある。
講習は、水中ドローンの機体や運用に関する知識を身に着ける座学と、目的に応じた運用方法を学ぶ実技に分けて行われた。座学ではスペースワンのインストラクター、井東恭彦さんが講師を務め、水中ドローンの種類、歴史、ルール、用途、整備、今に水中ドローンにできること、できないこと、開発の状況などを体系的に整理して伝えた。
水中ドローンは空を飛ぶドローンと異なり、運用にかかわる法律は存在しないが、海上衝突予防法、河川法など運用場所に応じた法律があり、運用者はそれを確認、遵守しないといけないことが伝えられると、参加者はさっそくメモをとったり、配布された資料に線をひいたりした。
また参加者が消防職員であることから、運用現場を想定して、水面より上の空間で使えるGPSと、水中で機能するソナーを組み合わせて水中の対象物の位置を座標で推測する方法や、水中ドローンに備わっている機能をそのほかの通信技術と組み合わせることで、操縦者と他の地点とで映像を共有することが可能になる事例などが紹介された。
水中ドローンの動きについても実践を想定。「新しく開発された機種の多くは、機体の動きを6軸で制御できることをため、どの方向にも向けることができます。たとえば要救助者を確認するために機体を対象物に向けたまま維持することもできますし、海底の捜索をするため機体のカメラを真下に向けたまま移動をさせることもできます」と話すと、受講者が大きく首をたてにふるなど可能性を感じた場面も見られた。
さらに運用については原則3人体制であることを推奨していると説明。3人は操縦、補助、監視で、「補助者が非常に重要、ケーブルの出し入れ次第でトラブルの原因になりえます。ケーブルさばきが運用の巧拙が決まるといっても過言ではありません」とその理由が説明された。
また運用時に必要な準備も紹介した。そのうちのひとつがレジャーシートで井東さんが「機体は砂鉄をまきこんで錆びるとモーターがあっというまにダメになります。機体は砂浜におくとそれだけで砂鉄を巻き込みます。レジャーシートがあると、それを防げます。私も壊したことがあるので、利用をお勧めします」と体験談をまじえて分かりやすく説明した。
トラブル事例として、水槽の点検で、水槽内の突起物にケーブルがまきついてしまったことなどを紹介。具体例として映像で水中ドローンが航行中に海底の障害物にケーブルがからまったときの映像を投影した。映像では、別のドローンがアームを搭載して遭難ドローンに向かわせ、ひっかかっていたケーブルをとりはずして、救出に成功した。このほか養殖場で沈んだ魚を取り除く作業にも活躍する様子が紹介された。
また後半はRTFの屋内水槽試験棟に移動し、30m×12m×水深7mの大水槽で水中ドローンの操作を体験した。参加者は3班に分かれ、各班にスペースワンのインストラクターがつき、電源の入れ方、コントローラーの扱い方などのほか、空を飛ぶドローンと異なり、水中ドローンはケーブルにつながれた機体として操ることになるため、ケーブルの出し入れを管理する補助者が、操船の巧拙や、目的の遂行を大きく左右することなどの説明がされた。
ひととおりの扱い方を学んだあと、機体を進水。水槽の底に向かって沈ませる潜行をし、一定の深さに到達したらその姿勢を維持したままスライドするように横移動、その後右旋回をしたり、船の底を潜り込んで点検するように機首を水面にむけて仰がせたり、また、その姿勢を維持して移動をさせるなど、実践を想定した操作を体験した。その間、機体の深さを読み取るなど補助作業の重要性も体験した。
電波を通しにくい水中で、障害物や対象物を探り当てるときに役立つソナーの使い方も体験。ソナーの特性として、表面の固いものと柔らかいものとで反応が異なることを学んだ。
参加者の一人は「河川や湖沼などの水難事故で捜索などに役立つのではないかと感じた。所属先に戻ったあと活用法などを検討したい」と話した。スペースワンは「日本は海洋国家でもあり海を含む水中移動は災害対策、産業振興などに重要度が高まる見通しです。水中ドローンの普及や、運用できる人材の育成を通じて課題解決などに貢献していきたいと考えています」と話している。
国土交通省は4月1日付でドローンや空飛ぶクルマなどの事務を担う「次世代航空モビリティ企画室」を航空局安全部に設置すると発表した。活用ニーズを踏まえた安全基準の整備などの制度構築を推進する。大臣官房参事官の次世代航空モビリティ担当を新設し、22人の専従職員を配置する。安全基準の検討、登録制度の導入準備と運用、関連システムの整備と運用などを業務とする。
業務にあたり福島ロボットテストフィールド(RTF、福島県南相馬市、浪江町)や航空機技術審査センター(TCセンター、愛知県西春日井郡豊山町)との連携を図る。RTFには4月に職員を派遣し、飛行試験などでの規制面のサポートをし、技術開発の促進を支援する。TCセンターとは安全審査の円滑な遂行や、製造事業者などへの助言で連携する。
ドローンについては2022年度を目途にレベル4飛行実現に向けて、機体認証制度や操縦ライセンスの導入を柱とした航空法の改正案が閣議決定された。空飛ぶクルマも2023年の事業開始を目標とするロードマップが定められていて、実現のための取組が進んでいる。次世代航空モビリティ企画室」はこれらに向けて制度設計、運用などを担う。