ドローン開発、製造の株式会社ACSL(東京)の株価が、急回復している。ACSL株は4月5日の東京株式市場で続伸し、一時、前日終値比147円高の2339円を付けた。3月24日の上場ら安値である1319円から6週間足らずで77%超上昇した。それまでの悪材料の出尽くしや懸念材料の一服に加え、話題の新型機「SOTEN(蒼天)」の出荷開始、ACSL機をベースにした物流専用機「AirTruck」の受注開始などが買い材料になったとみられる。4月4日に東京株式市場の再編に伴ってスタートした東証した東証グロース市場の銘柄として同市場の成長をけん引することになりそうだ。
ACSL株は4月5日、前日K終値比58円高の2250円で寄り付いたあと堅調に推移し、一時2339円をつけた。後場に利益確定売りに押し戻されたものの前日終値比129円高の2321円で取引を終えた。
ACSLは、情報漏洩対策が強化された小型空撮機SOTENの出荷を3月18日に開始した。SOTENは昨年12月7日に受注を開始、3月18日の出荷開始時点で初期ロットの600台を超える受注を抱えていて、追加生産が決まっている。
また3月17日には、新物流専用ドローン「AirTruck」の受注を開始している。AirTruckは、物流専用機ACSLと株式会社エアロネクストが共同開発した機体で、ACSLの機体をベースに、飛行時に荷室が傾かないエアロネクストの重心制御技術「4D GRAVITY」を搭載し、荷物配送に必要な機能を装備させた機体で、山梨県小菅村や新潟県阿賀町など各地の課題解決に寄与する取り組みとともに、機体性能の実証を重ねてきた。ACSLは中期経営計画の中で用途特化型機体に注力することを明言しており、今回、物流特化型機体の量産化実現したことになる。
ACSL株は、ウクライナ危機、欧米の金利引き上げ観測と実施、半導体不足などの地合いの悪さに巻き込まれたうえ、ACSLが2月14日に決算と同時に発表した減資(無償)について悪材料視されたことも重なり、2月以降ほぼ一本銚子で下落。3月24日には一時、2018年に上場して以来の安値である1319円を付けていた。
政府はすでにドローンや空飛ぶクルマ事業を重視する方針を打ち出しているほか、とりわけ日本で生産される機体に期待を寄せていると伝えられていることから、悪材料に見舞われたACSLは、足下では追い風をうけて事業を進めることになりそうだ。
大阪・関西万博で2地点間デモフライトを計画している株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、デモフライトに使う機体「SKYDRIVE」(SD-05型)のフルスケールのモックアップを3月28日、初公開した。快適な飛行を実現させるための上質なシートや、客席から景色を楽しめるように工夫した窓、お皿を逆さまにしたようにドーム状のローターのアームなどが目を引いていた。
「SKYDRIVE」(SD-05型)のフルスケールモックアップが公開されたのは、3月28日に大阪市内でOsaka Metro(株式会社大阪市高速電気軌道株式会社)と大阪市が開催した「大阪港バーティポート」の竣工セレモニーだ。式典会場が設置された格納庫の中に機体が置かれ参加者を出迎えた。これまで図面で見たことがある関係者も、「実物大でみるとさらにかっこいい」「さっそく乗りたくなる」などと声を掛け合っていた。
「SKYDRIVE」(SD-05型)はキャビン上から同心円に広がるアームに12のローターを備える。アームは中央を頂上にするようにやや山なりの、お皿をさかさまにしたようなドーム状で「推進力や安定性を追求した結果としてたどりついた」(SkyDrive広報)という。
シートは前に1席、後ろに2席の3人乗りで、前の1席は操縦席だ。SkyDriveは将来的にパイロットの搭乗が不要な機体を開発して実装することを目指していて、実現すると操縦席は不要になる。
展示機の前面ガラスは広い。操縦席に操縦用のモニターなどが設置されているが、操縦席からの視界をさえるものはほかにない。前面パネルの下にも窓が備えられ、着陸時に路面の確認を助けそうだ。
後部座席の客席から正面展望は前席の背もたれや操縦者で制約は受けるが、両サイドの窓スペースは広くとられている。特に機体前面に近づくほど足元あたりまで深くえぐられていて、視界確保に役立つとみられる。また飛行時は前傾姿勢になると想定されるため、地上の様子が見やすくなりそうだ。
シートも白地で上質さを前面に出していた。旅客運航が想定されていないため、現時点ではシートベルトはないが、実運用されるときにはシートベルトがつく。実運用時には軽量化や機体の強化のため仕様がかわる可能性もある。
エアコンは装備されていない。エアコンを搭載するさいには、重量、スペースなどとのバランスをとる工夫が必要になるとみられる。
3月28日に開催された竣工セレモニーでは、Osaka Metroの河井英明社長があいさつの中で「SkyDriveのこの機体は、技術、性能も素晴らしいがデザインも大変すぐれていると思います。この機体が空を飛ぶ姿を想像するとわくわくします」と絶賛した。
機体を開発したSkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOは「SD-05は今回が初公開です」と紹介した。そのうえで「われわれは毎日飛行試験をしていますが、電動なのでヘリコプターに比べて騒音が三分の一かそれ以下とかなり静かです。エンジンでなくモーターなので環境にもやさしい。将来的には新大阪駅からここ(大阪港バーティポート)まで、電車や自動車で40分から60分程度のところを10数分で来られるような形のものを実現したいと思っています(中略)。空飛ぶクルマの会社は世界に多くありますが、我々はコンパクトカテゴリーで一番多くの方に、快適に、安く飛んで頂けるプロダクトになっているかな、と思っていまして、大阪を起点に世界のこの機体を実装したいと思っています」と機体を紹介した。
福澤CEOはさらに「やはりゼロからイチを作るのは難しいもので、想定外や見立て違いが起こりますし、こんなチャンスもあるのか、ということも多くあります。これからも山あり谷ありだと思いますが、大阪、日本、世界にみなさまに『この機体に乗って楽しい』と思って頂くべく取り組んで参ります。この展示しているモックアップにも乗れますので、セレモニー参加のみなさまにもぜひ乗って頂きたいと思います」と開発ストーリーを披露しながら、搭乗体験を促した。
大阪・関西万博でAAMの「会場外ポート事業者」を担う大阪市高速電気軌道株式会社(Osaka Metro=大阪メトロ、大阪市)は、大阪・中央突堤(大阪市港区海岸通)に「大阪港バーティポート」を完成させ、3月28日、土地を所有する大阪市と共同で竣工セレモニーを開催した。テープカットを行った格納庫には、日本のAAM開発事業者、株式会社SkyDrive(スカイドライブ、豊田市<愛知県>)が万博でデモフライトに運用する機体「SKYDRIVE」(SD-05)の実物大模型も公開された。
大阪港バーティポートは、Osaka Metro中央線「大阪港」駅から徒歩10分の中央突堤に整備された。入口には「大阪港バーティポート」の案内板が掲げられていて、足を踏み入れると路面には英字表記で「OSAKAKO Vertiport」と白文字が描かれている。上空からの視認を助けることになる。
敷地は約12,000㎡で、AAMが離着陸する場所を示す「V」マークが施されたポートや、利用者が認証を受けたり待機したりする幅20m、奥行き5mの旅客ターミナルに加え、幅25m、奥行き20m、天井高が最大で9mの格納庫、消火設備、風向指示器、オンデマンドバスやシェアサイクルのためのモビリティポート、駐車場駐車場などが備わる。充電ケーブルが埋設され、近く充電設備として整備される。
万博期間中はデモフライトをするSkyDrive専用だ。しかし万博後も2026年度末までは活用できることになっているため、SkyDrive以外の機体の利用も想定している。万博期間に離着陸するSkyDriveの機体「SKYDRIVE」(SD-05型)は全長11.5m、幅11.3mで、最大離陸重量が1.4トンだが、大阪港バーティポートは15m×15m、5トンまでの機体の運用が可能だ。
大阪港バーティポートのある大阪市港区は、Osaka Metroが今年(2025年)1月27から万博終了までの期間限定で、オンデマンドバスを運航させている。Osaka Metroは将来的に、オンデマンドバスとバーティポートの連結を想定していて、利用者が旅客ターミナルに横付けされたオンデマンドバスを降りると、顔認証でチェックインをすませ、AAMに乗ることができる運用を目指している。
セレモニーではOsaka Metroの河井英明代表取締役社長が「私たちは大阪の交通を格段に進化させていきたいと考えています。交通と社会サービスをかけあわせて大阪をより便利で快適な都市にしていきたいと思っています。大阪港バーティポートを使い、SkyDriveといっしょに二地点間飛行を実現して技術開発を促進し、さらに多くの人に見てもらうことで社会受容性を進展させて、地下、地上に加え将来は空の移動サービスも発展させていきたいと思っております。大阪において、日本初の商業運航を目指して参りたいと思います」と改めて決意を表明した。
大阪市の高橋徹副市長も「大阪港バーティポートは万博会場とつながる未来社会の実験場の一部になるとともに、万博会場外でも市民のみなさまに未来社会を体験頂き、これまでにない新しい移動手段を目の前で御覧頂ける場所となります。万博終了後も実証実験フィールドとして引き続き活用することを考えております」と大阪が空の移動革命をけん引する意欲と決意を表明した。
また来賓として参列したSkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOは「大阪・関西万博、そしてその後の商用飛行を見据えたポートがこの大阪の地に誕生したことを大変うれしく思っています」と歓迎した。
竣工セレミニーではこのほか、内閣官房内閣審議官で国際博覧会協会事務局次長の西海(にしうみ)重和氏、公益社団法人2025年国際博覧会協会企画局長河本(かわもと)健一氏があいさつをした。
またあいさつ後には、国交省大阪航空局長の石井靖男氏、大阪・関西万博公式キャラクター、ミャクミャクをまじえてテープカットで竣工を祝った。
Osaka MetroとSkyDriveが連名で公表したプレスリリースは以下の通り
~2025 年大阪・関西万博にて SkyDrive のデモフライトの離着陸場に~
(※編集部注:脚注は省略)
大阪市高速電気軌道株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長 河井英明、以下「Osaka Metro」)は、2025 年大阪・関西万博で株式会社 SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役 CEO 福澤知浩、以下「SkyDrive」)が開発した「空飛ぶクルマ」のデモフライト時に使用する夢洲の万博会場外の離着陸場「大阪港バーティポート」が、2025 年 3 月 28 日(金)に完成し、大阪市と共催で竣工セレモニーを開催したことをお知らせします。
■完成までの経緯
Osaka Metro は、地下鉄およびニュートラムを 9 路線運営しており、大阪を各段に便利で快適なまちにしていくことを目的に、都市型 MaaS 構想「e METRO」を推進しています。「e METRO」では、お客さまの多種多様なニーズに対応するため、さまざまなモビリティを一元的に提供することを目指しており、空飛ぶクルマを新たな空の移動手段と位置付けています。SkyDrive の空飛ぶクルマは、短距離~中距離をスピーディに移動できる新たな空の交通手段であり、これまでの陸の移動と組み合わせることで新たなニーズに対応できる点に加え、レジャー性が高い点において、既存のモビリティ(地下鉄、バス、オンデマンドバスなど)と異なる特性を持っており、お客さまに提供するモビリティのベストミックス実現のために有望な交通手段であると考え、2024年8月に両社で業務提携契約を締結しました。
2025年大阪・関西万博を見据え、2024年1月に大阪市が実施した「『空飛ぶクルマ』会場外ポート事業者」の公募にOsaka Metroが選定され、大阪市港区(中央突堤)でバーティポート(空飛ぶクルマの離着陸場)の整備を進めてきました。2025 年大阪・関西万博では、SkyDrive の空飛ぶクルマ「SKYDRIVE(SkyDrive 式 SD-05 型)」が万博会場内ポート「EXPO Vertiport」と「大阪港バーティポート」の二地点間運航等を予定しています。
「大阪港バーティポート」の名称は、最寄り駅となる Osaka Metro 中央線「大阪港」の駅名と、空飛ぶクルマの離着陸場の呼称(バーティポート)を掛け合わせたものです。2025 年大阪・関西万博をきっかけに、バーティポートという名称が広がることに期待を込めています。
■施設概要
バーティポートの施設には、空飛ぶクルマの整備や補給、待機などを行う格納庫、空飛ぶクルマの離着陸面、顔認証チェックインからモックアップへの搭乗までを体験できる旅客施設がある他、オンデマンドバスやシェアサイクルなどのモビリティとの結節点となる機能も備えています。
■3 月 28 日に竣工セレモニーを開催
「大阪港バーティポート」の完成を記念し、2025年3月28 日(金)に竣工セレモニーを開催しました。登壇した皆さまからは、バーティポートへの期待等が語られました。また、2025年大阪・関西万博でデモフライトを行う空飛ぶクルマ「SKYDRIVE(SkyDrive式SD-05 型)」のフルスケールモックアップを初公開し、報道陣の皆さまに搭乗体験いただきました。
■「大阪港バーティポート」の活用方法
2025 年大阪・関西万博で SkyDrive の空飛ぶクルマがデモフライト時に使用する他、一
般のお客さまにもご来場いただけるよう 2025 年 4 月中旬以降からイベントを実施します。
空飛ぶクルマ開発の歴史パネルの展示等で空飛ぶクルマの特徴を紹介する他、顔認証チェ
ックイン、待合室待機、空飛ぶクルマのモックアップへの搭乗といった一連の流れをシー
ムレスに体験できるイベントです。2025 年 4 月中旬にイベント公式ホームページからご予約が可能となります。さらには、バーティポート近隣地域で開催されるイベントに合わせて、気軽にお楽しみいただける空飛ぶクルマに関するイベントの実施も予定しています。
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本、東京)は3月25日、JR高輪ゲートウェイ駅に直結する一体型大規模開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」の「まちびらき前見学会」を開催し、米ASKA社が開発中のAAM「ASKA A5」のモックアップをお披露目した。報道関係者や株主ら見学会関係者がスタッフから説明を受けたり、写真に収めたりと関心を集めていた。このほかゲキダンイイノ合同会社(大阪市)が開発した、歩く速度で移動する自動走行モビリティも来場者を乗せるなどして会場を盛り上げていて、「未来の実験場」をコンセプトに打ち出している「TAKANAWA GATEWAY CITY」のにぎわいを演出していた。3月27日の「まちびらき」から一般利用者を迎える。
まちびらき前見学会は報道陣や株主ら関係者向けにJR東日本が開催した。ASKA A5はJR東日本が導入の検討を公表した機体で、この日の見学会では実機の実機の3分の1にあたる大きさのモックアップが展示され、主要見学コースのひとつとなっていた。
ASKA A5は米ASKA社が開発中のAAMで、JR東日本は将来的にTAKANAWA GATEWAY CITYを発着する「プレミアム国内観光」を担う機体となることを想定している。報道陣向けの説明会では、JR東日本マーケティング本部まちづくり部門の出川智之氏が、ASKA A5が路上走行と飛行の両方ができる機体であることや、仕様上の航続飛行が250マイル(約400㎞)に及ぶことを紹介した。また出川氏は、JR東日本がASKA A5を中・長距離型のAAMと位置付けていて、ASKA A5とは別の短距離型AAMなどを導入する可能性にも言及した。
AAMに関する取り組みのひとつとしてJR東日本は、TAKANAWA GATEWAY CITYで開催される企画展「未来へつながる鉄道とまちづくり展」で、「空飛ぶクルマと鉄道の未来について」と題した展示を用意している。JR東日本が鉄道とAAMとを連携させた新しい移動のスタイルや、駅へのAAMポート設置による新サービス構築などを模索していることを展示で伝えている。岩手・小岩井農場ではじめる取り組みや、この取り組みで活用することを想定しているAAMが株式会社SkyDriveの機体であることなどもパネルで紹介している。
見学会では、AAM以外の自動運転モビリティに触れる機会も提供された。駅の改札を抜けた広場、ゲートウェイパーク(Gateway Park)では、ゲキダンイイノが開発した乗車用のモビリティ5台が無人運行されていて、訪れた人がひょいと立ち乗りできる。
モビリティは車輪のついた台座に、動力の装置が置かれているであろう場所を木目調の覆いで囲われた構造物が置かれた形だ。座席はなく、立つスペースだけがある。構造物のうえには手すりがあり立ち乗りして移動しているさいにつかまったり、もたれかかったりすることができる。運航速度は最高で時速5㎞。少し早歩きをした程度の速度で、歩行者と同じ場所を進む。ゲキダンイイノは「目的地に到着することより、移動そのものの楽しみを味わうことを目指した」と話していて、まわりをきょろきょろと見渡しながら移動できる楽しみを味わえる。
移動コースは管理者が事前にプログラムしておく。運用時はプログラムした通りのコースをたどる。複数のコースを設定することも可能だ。乗る時は動いているモビリティに近づいてひょい、と乗ればいい。LiDARが搭載されていて、障害物を検知すると止まり、人が近づくと減速する。乗っているときにも手を触れると減速できる仕組みが取り入れられている。降りるときなどに使える。走行を監視、管理するコントロールセンターが「Area Informatiron&Movility」にそわなっていて、モビリティが発着するようになっているので、ここから乗ることもできる。
このコントロールセンターでは冷凍のスティックチーズケーキを販売している(500円)。「これを持ちながら乗ると、移動中にちょうど食べごろの固さになります。これを味わって移動するスタイルを提唱したいと思って、販売しています」と説明を受けたので、実践してみた。コースを1周するころにちょうど食べ終わる。その間、まわりを見渡すこともできて、数分間の移動をエンタメ気分で味わった。
モビリティを開発したゲキダンイイノは関西電力株式会社(大阪市)発のスタートアップだ。すでに羽田空港には荷物を載せて、座れるシートもついた、高輪とは異なるタイプのモビリティを導入して済みであるほか、丸の内、神戸など各地で試運転が行われ、利用者の反響を集めている。
TAKANAWA GATEWAY CITYではほかにも、株式会社ZMP(東京)が開発したデリバリーロボや、清掃ロボ、警備ロボなどが自動運転で運用され、見学会でも稼働する様子を公開した。TAKANAWA GATEWAY CITYがコンセプトに掲げる創造拠点LiSH「未来の実験場」としての役割を果たす。
TAKANAWA GATEWAY CITYにはビジネス創造拠点LiSH(リッシュ、TAKANAWA GATEWAY Link Scholoers’ Hub)が設けられ、100社以上のスタートアップが入居する。この日の見学会では、いくつかのスタートアップがブースを構えた。自動走行モビリティを開発したゲキダンイイノのほかにも、睡眠の質を測定するウェアラブルデバイスを開発した株式会社ACCEL Stars、下剤も内視鏡もいらないバーチャル内視鏡検査システム 「AIM4CRC」を開発したBoston Medical Sciences株式会社、100%菌糸由来“キノコの皮”とも呼ぶべき素材「KINOLI(キノリ)」やその素材を使った製品を展示したMYCLJapan(マイセルジャパン)、植物内部に共生する微生物(植物共生菌)を活用し通常なら栽培困難な条件下で有機農業を可能にする技術を開発した茨城大学・筑波大学発のスタートアップ、株式会社エンドファイト、おコメを原料にバイオプラスチックを開発する株式会社ライスレジンなどが来場者に自社技術や製品をアピールしていた。
この日の夜には27日のまちびらきを祝うドローンショーも行われた。JR東日本は報道陣向けに「地元のみなさま向けに開催する」とシークレットの開催であることを伝え、特別感を演出した。
・関連記事
JR東、米ASKA社のAAM導入を検討:https://dronetribune.jp/articles/24535/
JR東日本、ASKAを中距離、別に短距離も:https://dronetribune.jp/articles/24577/
東京都内で3月18日、日の出前後に、ドローンを使って空中の二酸化炭素(CO2)濃度を測定する実験飛行が行われた。東京都内、夜間、目視外、高高度と多くの許可・承認申請の対象条件を整えた飛行は珍しい。実験は東京大学大気海洋研究所気候システム研究所気候モデリング研究部門の部門長、今須良一教授を中心に、秋田県立大学、東京都立大学、東北大学、合同会社ソラビジョン、株式会社東北ドローン、矢野法律事務所などの専門家チームが実施し、地上700m超までの高さから地上までの間を測定した。実験結果は分析したうえ学会で公表する方針だ。
実験は東京都内の河川のそばで、3月18日午前5時過ぎから行われた。
専門家チームは市販の回転翼ドローンに、秋田県立大学生物資源科学部生物環境科学科の井上誠准教授が開発したドローン用の温室効果ガス測定システムを搭載して飛行させた。複数回の飛行をさせたうち、2度、700メートルを超える高さに到達させた。井上准教授によると、この温室効果ガス測定システムで地上500mを超える上空を観測したのは初めてだという。
計測は最高到達点から降下するさい、100m単位の高度で30秒間ホバリングさせて行われた。ホバリングさせた時刻は秒単位で記録した。上空700m、600m、500mと同様の作業を繰り返し、上空100m以降は着陸までの間に、何度かきりのいい高度でデータ取得のホバリングを行った。データ取得は、日の出前、日の出直後にも行われた。
東大の今須教授によると、CO2濃度は地表に近いほど高いが、実際には日が昇ると大気の対流が生じるなどの影響を受け、濃度の状況に変化が起こることが想定されるという。今回の実験でCO2の濃度の分布や時間による状況の変化を仮説と比較できる可能性がある。実際、今回の測定した数値をグラフ表示すると、日の出前には地表周辺に密集していた高濃度空域が、日の出直後でやや上空域にまで広がっている様子が伺えた。今後詳しく分析する。
CO2の測定は温暖化対策の検討に欠かせず、日本では東京都立大学がCO2濃度と風・気温の鉛直分布同時測定ライダーを開発したことで測定精度が飛躍期に高まり、気球、商用航空機が主流の観測関係者から注目されている。ここにドローン測定を組み合わせることでさらなる精度の向上や、特定座標の濃度の取得、時間ごとの濃度変化の正確な把握をさらに進められる可能性がある。今回のドローン測定の実験は、都立大のデータなどと照合する性能評価も含む。
ドローン測定の場所、時刻の設定、技術的な方針策定を担ったソラビジョンの代表社員で京都大学の連携准教授を務める渡辺一生(かずお)氏は「今回の実験は東京都内で夜間、目視外、高高度での観測飛行で行っていて、初めてだらけの実験だったと思います。気球などに比べて装置が軽量でコストパフォーマンスにすぐれ、狙った座標のデータが取得できるなど、今までにないデータが取れることになりCO2観測にとって大きなインパクトがあります、今後、ドローン観測が全国で展開できるとデータの集積が加速し、温暖化対策に役立つと期待しています」と話している。
首都高速道路株式会社(東京)、株式会社JDRONE(東京)など5社は、2月にレインボーブリッジとその周辺の首都高で、往復約2.8kmの夜間自動飛行など複数の実証実験と検証を行ったと発表した。実験は2月14日に行われ、VTOL、無人ヘリを含む複数種類の機体を使い、ドローンポートも活用した。
実験を実施したのは、首都高速道路、JDRONEのほか、首都高技術株式会社(東京)、エアロセンス株式会社(東京)、KDDIスマートドローン株式会社(東京)、NTTコミュニケーションズ株式会社(東京)の5社。
発表は以下の通り。
~ 災害時等における遠隔地からの迅速な点検手法の確立に向けた取り組み ~
首都高速道路株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:寺山 徹)、首都高技術株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:加古 聡一郎)、株式会社JDRONE(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:大橋 卓也)、エアロセンス株式会社(本社:東京都北区、代表取締役社長:佐部 浩太郎)、KDDIスマートドローン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:博野 雅文)、NTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小島 克重)は、災害時等における迅速で確実な点検手法の確立を目的に、ドローンを活用した往復約2.8kmの自動飛行等の実証実験(以下、本実証)を首都高速道路の長大橋であるレインボーブリッジにて 2月14日(金)に実施しました。
本実証では、夜間の災害発生を考慮し、「夜間飛行時における映像視認性確認の実証」や「自動でドローンの離着陸・充電ができるドローンポートを複数使用し、ポート間を往復する長距離飛行の実証」を行い、ドローンで撮影した映像を用いた災害時等における点検手法の有用性を確認しました。
首都高速道路では大規模災害発生時における迅速な点検による早期の道路啓開を目指し、これまでドローンを活用した点検手法を実証(注1、注2)してまいりました。そして今般、災害は昼夜関係なく発生する可能性があることから、夜間に災害が発生したことを想定し、本実証を実施しました。
・VTOL型(注3)ドローンにより夜間の高速道路上空付近を飛行撮影(エアロセンス)
・暗所での自律飛行を得意とするドローンを活用し、高速道路上空付近を飛行撮影(JDRONE・KDDIスマートドローン・NTTコミュニケーションズ)
・目視点検が困難な高架下での暗所点検飛行(NTTコミュニケーションズ)
・ドローンは通信とバッテリーの関係で飛行距離が限られるため、複数のドローンポートを使用することによる飛行距離の長距離化(KDDIスマートドローン)
本実証の結果、夜間災害発生時の暗所での飛行における機体選定や点検手法および複数のドローンポートを使用する点検手法の確立に向けて有益な検証結果を得ることが出来ました。
一方で、安定した飛行制御・映像配信を目的とした、災害時の即時点検候補エリアの電波環境の調査および使用電波の選定等、より実践的な運用に向けた課題を確認しています。
今後も、本実証結果を踏まえ、迅速かつ確実に点検を行うために多様な点検手法の確立と体制構築に取組んでまいります。
注1:VTOL(垂直離着陸型固定翼)型ドローンと無人ヘリを用いて中央環状線(葛西JCT~小松川JCT)の往復14kmの長距離自動飛行による高速上点検の実証実験(2023年1月)などを継続的に実施
注2:ドローンポートを使用した自動飛行による高速上点検の実証実験(2024年1月)
注3:VTOL(垂直離着陸型固定翼)型ドローンは回転翼機のようにホバリングしながら垂直に離着陸し、上空では固定翼機として水平飛行を行うため、滑走路を使わずに長距離の飛行が可能
実証実験の概要
【概要】
日時:2025年 2月14日(金) 午前11時~翌午前2時
場所:レインボーブリッジ(高速11号台場線)
項目:
①高速道路上空を夜間に自律飛行しながら安定した映像をリアルタイムで配信
②高架下を昼間・夜間に飛行しながら安定した映像をリアルタイムで配信
③ドローンポートから異なるドローンポートを往復する自動離陸、自律飛行、自動着陸(昼間実施)
④同時に飛行している機体の飛行情報、映像をリアルタイムに取得及び一元管理
※試行検証として、夜間の捜索を想定したドローンに搭載したスポットライト、スピーカからの拡声放送、対象物のリアルタイム位置特定(NTTコミュニケーションズ)、ドローン映像からのリアルタイム人物検出(KDDIスマートドローン)を実施
経営再建中のドイツのAAMメーカー、ヴォロコプターは3月14日、オーストリアの軽飛行機メーカー、ダイヤモンド・エアクラフト・インダストリーズが統合すると発表した。ダイヤモンドはオーストリアの企業だが、中国の自動車部品・機器製造で航空部門も持つ浙江万豊汽車有限公司(ワンフェン・オート・ホイール)のグループ会社だ。ワンフェングループは3月5日、ヴォロコプターの有形資産と特許、商標などの知的財産を1000万ユーロ(約1100万ドル)で買い取る契約を、ヴォロコプターの破産管財人であるトビアス・ワール氏と交わしている。これにより昨年(2024年)12月26日に破産申請をしたヴォロコプターは中国資本傘下で経営再建とAAMのTC取得、市場投入を目指すことになる。
ヴォロコプターは3月14日、「Diamond Aircraft Reorganized Volocopter Securing its Future in Germany」と見出しを付けたプレスリリースを公表した。「ダイヤモンド・エアクラフトが、ヴォロコプターのドイツでの将来を保証しつつ再編した」と読める。「Reorganized」と過去形だが、再編そのものは今後、具体化すると見込まれ、過去形になっているのは、再編の土台となる契約がすでに交わされたことを示すとみられる。
またプレスリリースは、見出しに続いて「ダイヤモンド・エアクラフトは、本社をドイツのブルッフザールに置いたまま、ヴォロコプター社を統合した」と言及したうえ、再編が経営統合になることや、本社が再編後も現在地に置かれることなどを示している。
プレスリリースは、ダイヤモンド・エアクラフトが中国のワンフェングループを構成する企業であることや、国際的な航空事業年で40以上の実績があることなどを紹介している。そのうえで、今回の再編がもたらす効果について、ダイヤモンド・エアクラフトの業容拡大、ヴォロコプターのコスト削減、雇用維持、2025年までの認証マイルストーン達成に向けて注力する体制の確立などを列挙している。
さらにダイヤモンド・エアクラフト、ヴォロコプターそれぞれの代表者の談話も紹介している。
それによるとダイモンド・エアクラフト・グループのビン・チェン(Bin Chen)会長は「航空の未来は先見の明の持ち主によってつくられます。ダイヤモンド・エアクラフトの幅広いポートフォリオは、ヴォロコプター、VoloCity、将来のモデルによりさらに拡充されます。われわれは共に持続可能な航空モビリティを発展させ、航空分野のイノベーション・ハブとしてヨーロッパを強化する基盤を作り上げます」と述べている。
またヴォロコプターの破産管財人で、ドイツの法律事務所アンカーのパートナーでもあるトビアス・ワール(Tobias Wahl)氏は「ヴォロコプターの高い専門性と意欲を持つチームは、eVTOL業界で常にベンチマークを設定してきました。われわれはこの基盤に立つ強力な戦略的パートナーを見つけました。従業員の精神と献身に感謝します。このチームが欧州経済でインパクトのある仕事を継続できることに感謝しています」とコメントしている。
今回の再編発表は、ヴォロコプターとワンフェンとの間で交わされた資産取引契約が土台となっている。
この契約は、中国の証券取引所が発表したものを、一部の現地メディアが報じた。
それによると契約を交わした当事者は、ヴォロコプター側が、ヴォロコプターの破産管財人であるトビアス・ワール氏で、ワンフェン側が今年(2025年)1月17日にワンフェンの間接的な完全子会社として設立したヘプタス591(Heptus591、本社・ベルリン)だ。
ヘプタス591とワール氏は3月5日(中央ヨーロッパ時間3月6日)、ヘプタス591がヴォロコプターの社屋、工場、在庫などの有形資産と、エアクラフトやドローンシステムに関する特許、Volodrone、VoloCityなどの商標、airtaxi-volocopter.comなどのドメイン名といった知的財産を買い取り、契約上の権利・義務を引き継ぐ取引契約を結んだ。
これらの資産について、ヘプタス591による購入額は1000万ユーロ(約1100万ドル)だ。ヘプタスは全額を手元資金か自己調達資金で賄う。ヘプタス591は共同管理口座を通じて一括して支払う。また購入する資産の価値は4200万ユーロ(約4570万ドル)と算定した。資産の引き渡しにあたって、抵当権や質権が設定されている場合には、権利者が放棄していることや、ワール氏側が、ヘプタス591の雇用計画を実施することが条件となっている。
さらに資産を引き渡したあと、ヘプタス591はヴォロコプター名義の工場、オフィスビルを最長5カ月間、ひと月あたり40000ユーロの家賃を支払う不動産賃貸借の契約を結ぶことや、従業員の労務関係を引き受け、法に基づき、ヘプタス側の雇用計画に沿った配置が行われることなども盛り込んだ。
ワンフェンはヘプタス591を通じたヴォロコプターの資産購入の目的について、「電動垂直離着陸機(eVTOL)は、低高度分野の重要なキャリアとして、安全性、知能性、経済性、環境保護面で大きな優位性を持っています。将来の都市・都市間総合三次元輸送システムの重要な一部で、低高度産業の発展をリードします。当社(=ワンフェン)は、今回のヴォロコプター名での関連有形資産、知的財産権の取得を通じて、低高度分野の世界的な発展と応用を加速させ、先進的なeVTOL製品を開発し、当社の新たな成長エンジンを創出することを目指します」と述べている。
複数の社名が登場するので整理する。
ヴォロコプターが再編相手と公表した企業は、オーストリアのダイヤモンド・エアクラフトだ。ダイヤモンド・エアクラフトは2017年からワンフェングループだ。
一方、ヴォロコプターの契約相手はヘプタス591だ。ヘプタス591は、ダイヤモンド・ヴェルヴァルトゥングスという会社が100%出資して、ミュンヘンの地方裁判所に提出し、ベルリンを本社に設立された。ヘプタス591を設立したダイヤモンド・ヴェルヴァルトゥングスは、軽飛行機メーカー、ワンフェン・アビエーション(万豊航空)の間接的な100%子会社だ。そして、ワンフェン・アビエーションは、ワンフェン・オート・ホイールが55%出資するグループ会社だ。
これにより、ヴォロコプターが昨年12月26日に破産の申請をして以降、不透明だった経営基盤に展望が開けたことになる。同社は2007年9月、ドイツのマンハイム地方裁判所に登記され発足した。eVTOL型AAM開発の代表的な企業の一つとして知られ、飛行試験、機体製造、メンテナンス、販売、エアタクシー運用ソリューションに取り組んできた。EASA(European Aviation Safety Agency、欧州航空安全機関)の最難関基準を満たすことを目指していて、DOA(Design Organization Approval、設計期間承認)POA(Production Organization Approval、生産機関承認)をすでに取得していて、市場投入を目指す2人乗りのVoloCityは型式証明の段階にある。
ヴォロコプターは日本にもっともなじみ深いAAMメーカーでもある。2023年2月21日に国土交通省航空局がヴォロコプターからVoloCityの型式証明の申請を受理したことを発表。申請受理の翌月にあたる2023年3月8日には、当時、大阪・関西万博でエアタクシーとして運航を目指す機体として、VoloCityの実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開していた。12月には大阪・北港緑地では大阪市内、兵庫県尼崎市内の中学生も招いて「2X」のデモ飛行も実施していた。
2024年夏のパリ五輪会場でVoloCityの飛行を計画していたがEASAから基準を満たさない個所があると指摘を受けたことなどから、VoloCityではなく2Xを飛行させるなど計画変更を余儀なくされていた。その後、大阪・関西万博でVoloCityを飛行することになっていた日本航空、住友商事のチームが2024年9月に運用機体を変更することを表明していて、VoloCityは万博での飛行計画からはずれていた。
一方、市場投入を目指す姿勢は維持し続けていて、万博の飛行計画からはずれたさいも、引き続き商用運航を目指す意欲を示していた。2024年12月26日に破産申請したことを、12月30日に公表したが、これも開発を継続するための選択肢だった。破産申請によって2025年3月1日以降、ドイツの破産法に基づいてほぼすべての従業員が職場にはいらないガーデニングリーブを習得しているが、今回の契約締結により、ヴォロコプターに戻る従業員も出てくる可能性がある。ワンフェンも「対象航空機の取得後も、当該機種の型式証明(TC)取得を推進していく予定です」と表明している。