• 2023.10.13

    RISCON、SEECATにドローン関連展示多数 AileLinX、日本海洋など多彩な有線給電システム

    account_circle村山 繁

     東京・臨海部の大規模展示場、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開催中の展示会「RISCON TOKYO」(危機管理産業展)と併催展「SEECAT」(テロ対策特殊装備展)で、ドローン関連のソリューションが、未発売のものも含めて数多く展示されている。警備や警戒のための長時間飛行を想定した有線給電のドローンが目立つ。開催は13日まで。なおSEECATの入場には事前審査が必要だ。

    防災、警備から偵察、有毒ガス対策まで広範囲をカバー

    有線給電ドローンは、株式会社AileLinX(エールリンクス、広島県府中市)、日本海洋株式会社(東京都足立区東和)、エアロセンス株式会社(東京都北区)などが展示している。

    AileLinXは上空30mから定点監視するための有線給電ドローン「HOVER EYE」を展示している。扱いやすさを追求し、専門家でない不慣れなスタッフでも、操作に困らない工夫をしたことが特徴だ。たとえば運用に使うタブレットの画面で「離陸スタート」をタッチすれば機体が浮かび、高さは画面右端の目盛りで調整できる。監視するためのカメラでみわたすために機体を回転させることもできる。ただし、定点監視が目的なので、昇降以外の前進、後退などの機能は持たない。

    機体はケーブルを通じでポートから電源が供給される。ドローンがとらえた映像はケーブルではなく無線でタブレットに送信される。機体が30mの範囲で係留されている場合、操縦にライセンスは不要だ。

    AileLinXは、ラジコンヘリコプター及び産業用無人航空機を開発してきたヒロボー株式会社(広島県府中市)と建設機械、工作機器、自動車部品を開発する株式会社北川鉄工所(広島県府中市)が2018年6月11日に設立したUAVメーカーだ。HOVER EYEについて上堀高和代表取締役は、「今後地元消防などと実証をしたうえで、近いうちに発売にこぎつけたいと考えています」と話している。AileLinXはRISCONにブースを出展している。

    日本海洋は、フランスの係留ドローンメーカー、ELISTAIR社のドローン、ORIONシリーズや有線給電装置Light-Tv4、スロベニアのドローンメーカー、C-ASTRAL Aerospace社の偵察用eVTOL、SQAを展示している。有線給電装置Light-Tv4は、ドローンに電源を供給しながら通信も担う。1mあたり10.5gと軽いテザーや、DJI M300など20機種以上のドローンと互換性があることも特徴だ。偵察用eVTOL、SQAは連続して2.5時間以上の飛行が可能で最高速度は約100km/h。HD光学/HDサーマルジンバルカメラを搭載し、目標を追尾する機能を備える。日本海洋はSEECATに出展している。

    なお、SQA をeVTOLと紹介したが、いわゆる「空飛ぶクルマ」ではない。乗用でない電動垂直離着陸ドローンだ。DroneTribuneは、「eVTOL」を電動で垂直離着陸する機体として扱っている。乗用か非乗用かといった用途で区別をしていない。今後も、乗用でなくても機体の種類としてeVTOLを用いることがありうる。乗用で用いるときには、「UAM」、「AAM」、「乗用eVTOL」、略語としての「空クル」などを文脈ごとに使い分ける。同様に「空飛ぶクルマ」の用語は電動でないエンジン搭載機や、離着陸に滑走を要する機体も含む。電動でない場合、いわゆる「空飛ぶクルマ」であっても「eVTOL」には含めない。展示会やイベント、シンポジウムで「空飛ぶクルマ」と「eVTOL」を同義で使っている場合が見受けられるが、DroneTribuneではできる限り読者が混乱せずにすむよう、それぞれを区別しながら示す工夫をすることにしている。

    エアロセンスは常時給電で長時間の警備や中継に対応するエアロボオンエア(AS-MC03-W2)を展示している。頭上から吊り下げられた機体とケーブルをつなぐ巻き取り機エアロボリールは、ケーブルの繰り出し、充電、通信の最適化をはかるベースステーション機能を持ち、従来機より小型化されスタイリッシュになり、取り扱い性を強化した。

    このほか帝国繊維株式会社(東京都中央区)も有線給電型のドローンをSEECATの自社ブースでデモ飛行させている。株式会社JDRONE(東京)はRISCONで、衛星通信遠距離自動飛行運用ができる無人ヘリコプター、YAMAHA FAZER R G2の機体を外側のカバーをはずして内部をみせる展示で客足を集めている。民間ドローン団体、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)もブースを出展し、理事長を務める東京大学の鈴木真二名誉教授はRICONのステージで「ドローンのレベル4飛行社会実装、および空飛ぶクルマ運航実現に向けた課題と展望」の演題で講演をし、90人ほど用意された席を聴講者が埋め尽くした。

    ジオサーフ株式会社(東京都大田区)はSEECATで固定翼機関連ソリューション、双日エアロスペース株式会社(東京都千代田区)はSEECATでフランスのProengin社が開発した有毒ガスなどのケミカル脅威検出器AP4Cの携帯型やドローン搭載型、クオリティソフト株式会社(和歌山県白浜町)はRISCONで上空から地上に声を届けるアナウンサードローンを展示するなど、ドローンに関わるソリューションが多く展示されている。ドローン以外でも、米カリフォルニア州を拠点にするソフトウェア開発のButlrが、人物の特定せずに人がいることを検知する小型のプラットフォームを展示注目されている。

    展示会は株式会社東京ビッグサイトが主催し、東京都が特別協力している。開催は13日(金)まで。

    米Butlr社の人検知デバイス。1つで30㎡に対応。マグネットでつけられるため天井に穴をあけるなどのわずらわしさはない
    JDRONEは衛星通信遠隔自動飛行のYAMAHA FAZER R G2を展示
    帝国繊維がブースでデモ飛行
    帝国繊維がデモ飛行させた有線給電機
    「HOVER EYE」の特徴を説明するAileLinXの上堀高和代表取締役社長
    HOVER EYEの機体

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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