全日本空輸株式会社(ANA)の持ち株会社であるANAホールディングス株式会社、コンビニ大手の株式会社セブン-イレブン・ジャパン、ドローン開発を手掛ける株式会社ACSLが、東京都西多摩郡の日の出町で昨年12月に実施したドローンを使った注文商品の配送実験で、利用者の25%がリピーターだったことが分かった。お試し利用の4分の1が再利用しており、一定の需要を見込めそうな結果となった。また、利用者の年齢も30代から70代以上までほぼ等しく利用されていて、ITに不慣れと言われがちな高齢者にも使われたことが分かった。
実験では、セブン-イレブンの商品をスマホで注文すると届けてもらえる「セブン-イレブンネットコンビニ」のサービスを利用した。注文者はスマホで商品を選び、受け取り希望場所、希望時間などを入力し決済する。注文できるのは最低300円(税抜)からと設定され、利用料110円(税抜)が加算される。注文が受け付けられると注文者にショートメッセージで連絡が届く。所定の時間に、届く場所に出向くと、ドローンが商品を納めた箱を運んでくる。ドローンが到着するとお客様自身で箱を受け取り買い物が完了する。
3社によると期間中の利用実績は堅調だった。運用は期間中の午前9時から午後4時までの受け付け分が対象で、荒天などサービスを中止した時間帯を除き、運用が可能だった時間枠は「ほとんどの枠が埋まった」という。
利用者層は男性が6割。年齢は30代から70代以上でほぼ同じ水準。ただし50代が少なかった。繰り返し利用した方も多く、リピーター率は25%だった。特に届け先に指定された公園周辺の住民がよく利用した。このサービスで購入された商品としては、ソフトドリンク、揚げ物、お弁当など「即食品」と呼ばれる商品群が多かったという。
3社は今後、実験結果を分析し、運用方法、価格設定、離発着場を含め社会実装を進めるための要件を洗い出すとみられる。
今回の実験には、ACSL、株式会社エアロネクストが開発した配送専用のドローンをANAが運航した。飛行中に機体が傾いても運搬性能を向上させる、機体構造設計技術4D GRAVITY®︎を搭載していることが機体の特徴だ。関係者への公開時には、注文したおでんがこぼれることも、アイスクリームがくずれることもなく、炭酸飲料が開栓時に噴き出すこともなかった。
実験拠点のセブンイレブン日の出大久野店と、届け先として指定された公園2カ所、商業施設、病院の4カ所に離発着上が設置された。最も遠い商業施設「ひので肝要の里」までの片道距離は約4キロ。住宅地上空を含めた空路が設定された。道路上空の通行に備え、補助員者を配置し、車両通行が途切れるまで道路上空の通行を待機させるなど安全確保策を採用した。ドローンの上空飛行に係るLTEネットワークはNTTドコモが提供した。
今回の実証実検は東京都の「ドローンを活用した物流サービス等のビジネスモデル構築に関するプロジェクト」に採択されており、ANAは2022年度の離島や山間地域での実用化を目指す。
目的地となった4カ所では、期待の声が高まっている。目的地のひとつ、地元産の農産物をジャムなどに加工して販売する「ひので肝要の里」は駐車場の一角をドローンの発着場に提供した。職員の男性(70代)は、近所の住民がネットで注文して受け取っている様子に「続いてくれるとありがたい」という思いを強くしている。
「ひので肝要の里」の周辺は買い物には不便だ。最寄りコンビニまでクルマで15分、ショッピングセンターまで20分かかる。肝要の里自身が土産物を扱ってはいるが、日用品の品ぞろえは多くない。周辺住民の多くは玄関先まで品物が届く生協などのデリバリーサービスを利用している。一方で、がまんする機会も多い。男性も「ペンとか文房具とか、ちょっとしたものが身の回りにないことがあります。そんなときは、クルマで買い物にでかけるか、別の方法で間に合わせてがまんするかどちらかです」と話す。
ドローン配送への期待は高い。「このあたりの人々はたいてい歓迎すると思います。実証実験はよく、社会受容性をどう醸成するかを確認するために行われますが、われわれにはすでに受容性はあると思います。むしろ受容性を理由に実験をしても、期限が来ればその利便性の提供が終わってしまうことのほうが残念です」と訴えた。
実装される社会側の変化の必要性も感じている。「離発着場は人々が集まりやすい場所で、しかももっと数が多いほうがよいと思います。離発着場を設置する場合、地主とのルールもまとめておいたほうがよさそうですよね。利用者も、たとえばシャープペンの芯をひとつ届けてほしいなどと言っては、料金が高くなったり、事業者の採算が取れなくなったりするかもしれません。利用者自身が束になって注文するなど工夫をしたほうがいかもしれないし、慣れも必要でしょう」。
25%が繰り返して利用していた今回のドローン配送は、住民や社会も含めて実装に向けて議論が進みそうだ。
ドローンを使った個人宅への食料配送の実験が10月6日、北海道上士幌町で行われた。参加住民がタブレットのアプリで注文して2分後に、自宅の敷地にドローンが注文の品を届けた。山梨県小菅村でのドローン配送に関わる株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)などが実検に名を連ねた。個人宅への配送に加え、グランピング施設への料理のドローン配送サービスを軸とする観光商品開発、牛の検体配送などスマート物流に関わる配送実験が行われた。
実験を実施したのは、エアロネクスト、セイノーホールディングスのほか、イノベーションチャレンジ実行委員会(実行委員長:竹中貢上士幌町長)、株式会社karch(上士幌町)、経済産業省北海道経済産業局だ。
個人宅への配送では、町内上士幌地区の住民が、町から貸与されているタブレットで、食料品の詰め合わせを注文できるアプリで「ごはんセット」を注文する方法で行われた。廃校となった小学校には、あらかじめ地元スーパーの荷物を一時的に集めておき、注文が入るとそこからドローンで注文者まで直接、ドローンで配送する。山梨県小菅村ではエアロネクストとセイノーHDが、ドローン配送と陸上輸送を組み合わせたスマート物流「Skyhub」の実験を実施しており、上士幌町での実験はその取り組みを社会実装するための取り組みとして行われた。
実験について公表されたプレスリリースの内容は以下の通りだ。
イノベーションチャレンジ実行委員会(実行委員長:上士幌町長竹中貢)と、株式会社karch(本社:北海道上士幌町、代表取締役 千葉与四郎、以下karch)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下 セイノーHD)、株式会社エアロネクスト (本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路圭輔、以下エアロネクスト)、経済産業省北海道経済産業局(北海道札幌市、以下経産省)は、10 月 6 日(水)~10 日(日)に、上士幌町の各地において、ドローンを活用した複数の先進的な実証実験を実施し、10月6日(水)にはドローン観光商品開発・ドローン宅配の2つの実証実験を報道関係者に公開しました。ドローン宅配の実証実験は日本初となります。
本実証は、本年 8 月に上士幌町、セイノーHD、株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:五十嵐博)、エアロネクストの4者が締結したドローンを含む次世代高度技術の活用による「持続的な未来のまちづくり」に関する包括連携協定の、農業・観光・産業・経済の振興、カーボンニュートラルと利便性が両立した持続可能な地域交通・物流の確保と住みやすい環境づくりに関すること、株式会社 karch と連携した新たな観光コンテンツ開発の「ナイタイテラスにおけるドローンを活用した観光商品開発」に基づくものです。
10 月 6 日(水)に実施し、報道関係者に公開したのは以下の2つの実証実験です。
広さ約 1,700ha、東京ドーム 358 個分の面積を誇る日本一広い公設牧場のナイタイ高原牧場で、ドローンを活用した新たな観光商品開発の実証実験を実施いたしました。コルソ札幌協力監修のもと、ナイタイテラス内にグランピング特設サイトを設え、利用者がオーダーしたドリンクと十勝ナイタイ和牛ステーキを麓からドローンで配送いたしました。上士幌の食や大自然とテクノロジーが融合した他にはない唯一な観光体験、ナイタイ高原牧場での特別な過ごし方を演出する観光商品として将来的に実施を検討してまいります。
町市街地から離れた農村地域に住む交通弱者への買物支援を想定し、食料品をドローンで個宅へ配送する実証実験を実施いたしました。本実験は、廃校となった小学校に地元スーパーの荷物を一時在庫したうえで、その中から注文のあった商品を購入者の自宅の敷地内にドローンで直接配送いたしました。
上音更地区に住む大道さんは、町が ICT 活用による地域住民の生活サポートとして実施している「予約制福祉バス」の実証に参加しており、町が貸与しているタブレットからバスを予約し、サークル活動などで市街地までの足として利用しています。今回は、大道さんご自身がタブレットから、あらかじめ用意された地元スーパーの食料品の詰め合わせを注文できるアプリを活用し、「ごはんセット」を注文しました。約2分後には自宅前にドローンが着陸し、大道さんの手に届けられました。
本実証実験は、セイノーHD とエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub」の社会実装に向けた実証実験で、ドローン宅配(個宅へのドローン配送)は日本初の試みとなります。その後 10 月 7 日(木)~10 日(日)の期間中には2)のドローン宅配を引き続き上音更地区の複数の個宅へ実施するとともに、以下の実証実験を実施予定です。
株式会社ノベルズ(本社:北海道上士幌町)の協力のもと、牛の乳房炎の検体(乳汁)の配送をテーマに、温度管理・振動・ドローン配送と陸上輸送との連携・配送後の検査品質評価等の一連の実証を行い、配送等の課題の多い畜産業界全般におけるスマート物流の実装可能性を検証します。ドローンを活用した牛の検体の一連配送の実証は、日本初の試みです。
※本実証は経済産業省「地域産業デジタル化支援事業」(実施機関:公益財団法人 北海道科学技術総合振興センター)を活用して実施するものです。
今回の複数の実証実験の内容は、実験だけに終わらせることなく、今後実際に上士幌町において実用化を目指した取組みです。実際に 11 月頃より、物流インフラとしての SkyHub導入の第一歩として荷物を集積し一時保管するドローンデポを市街地に設置し、地上配送と将来のドローン配送を想定した買物代行サービスから開始する予定です。
今後も、包括連携協定に基づき、それぞれが有する資源を有効に活用しながら、相互に連携、協力し、町の課題や町民のニーズに沿って、ドローンを含む次世代高度技術の活用による農業・観光・産業・経済の振興、持続可能な地域雇用および人材教育・人材育成・産業基盤整備、持続可能な地域交通・物流の確保と住みやすい環境づくり、地域防災への貢献および新しい社会インフラの整備を推進することで、上士幌町における「持続的な未来のまちづくり」に貢献してまいります。
ドローンの姿勢制御技術を持つ株式会社エアロネクスト(東京)が、ドローン配送サービスの定着、普及に向けた取り組みを広げている。山梨県小菅村では昨春に開設した定期運航の配送ルートは7月までに5本に拡大した。7月21日には、100フライト達成記念と、協力をしてくれた住民への感謝の意味をこめて、株式会社吉野家(東京)と組んで牛丼をドローンで運んでふるまった。小菅村には吉野家の店はなく、盛り付けたばかりの牛丼を受け取った村の人々は満面の笑みで喜びを表現した。昨年(2020年)11月の小菅村でのドローン配送実験以降、エアロネクストの取り組みは「浮揚普及」を加速している。
「ここでは食べられないんです。温かい牛丼」
小菅村で仕事をしながら幼い子供2人を育てる村に住む酒井江見さん(34)は、青空に映える白い機体のドローンが運んできた牛丼弁当をエアロネクストのスタッフから手渡されると、表情をほころばせた。手にした牛丼弁当は、少し離れた場所に停められたキッチンカー「オレンジドリーム号」で、数分前に盛り付けられたばかりのあつあつだ。小菅村に牛丼チェーンの店はない。食べるとしたら宅配でレトルトを取り寄せ、自宅で温めて食べることになる。「温かさが伝わります」と牛丼を眺めながら喜びをかみしめた。
酒井さんは3年前、夫の仕事の都合で、それまで住んでいたさいたま市から小菅村に移り住んだ。移住前にも小菅村には来たことがある。そのときの印象は、自然が豊かで美しいまちだった。そして、移住して、それは実感となった。人もやさしい。景色もいい。空気がきれいで、野菜も豊富だ。「子供が風邪ひとつひかないのは、そのおかげかもしれません」と酒井さんは目を細めた。
一方で別の実感も頭をもたげた。引っ越すまでに当たり前だったことが、ここでは当たり前ではない。そのひとつに買い物がある。
3年前までは、スーパーもコンビニも外食も身近だった。仕事帰りに思い立ったら外食も、弁当を持ち帰ることもできた。いまは自宅で料理をすることが基本だ。その料理に必要な食材や日用品の調達の方法も限られる。宅配サービスか、引き売りか、買い出しだ。買い物にはクルマで30分ほどの、最寄りの中心的な市街地である大月市まで出かける。未就学の子供を連れて、ほぼ1日がかりのお出かけだ。毎日はできないし、仕事帰りにもいけない。以前と比較すると、たぶん不便だ。
そんな中、エアロネクストがドローンで牛丼を運ぶと耳にした。楽しみにならないはずがない。
「温かいものが温かいままで届けられることはまずありません。今日はこうして温かい牛丼が届きました。特別なありがたさを感じます」
牛丼を受け取った笑顔の酒井さんの傍らで、娘のふみちゃんも終始、笑顔をたやさない。酒井さんは「笑顔なのは、ドローンを待ち受けるスタッフの方がいたり、取材の方がいたりと、いつもと違う光景が楽しいのだと思います。豊かな自然が豊富なかわりに、変化が少なめな生活をおくっているので、こんなことが刺激になっているのかもしれません」と分析した。
小菅村では昨年11月に実験を開始して以来、ドローンが飛ぶ様子も、酒井さんにとってはちょっとした「刺激」だ。子供たちと指をさしたりする。「怖いと思ったことですか? いいえ一度もありません」(酒井さん)。
小菅村は、全国に820ある過疎関係市町村のひとつだ。人口は約700人。高齢化が進み、過疎に起因する課題は多い。その課題のひとつである買い物の問題を、エアロネクストはドローンを組み込むことで解決しようと奮闘している。「こうした取り組みは心強いです」と酒井さんはその成果を楽しみにしている。
小菅村でドローンを使った牛丼配送の取り組みは、7月21日、エアロネクストと吉野家が、ドローン配送の社会実装を進める山梨県小菅村でスマート物流を確立する取り組みの一環として行った。エアロネクストが次世代物流ソリューションを提供するために設立した子会社、株式会社NEXT DELIVERYの拠点を構えた小菅村橋立地区に、吉野家のキッチンカー「オレンジドリーム号」が乗り入れ、調理した牛丼を、そのまま村内にドローンに積んで配送した。
ドローン配送は、エアロネクストが物流大手、セイノーホールディングス株式会社と業務提携をして進めている既存物流とドローン物流を融合させる新スマート物流「SkyHub」推進活動のひとつだ。橋立地区に拠点倉庫となる「ドローンデポ」を構え、今年4月に600メートル離れた川池地区に離発着場である「ドローンスタンド」を設置することが認められた。4月24日からはデポとスタンドの間を定期航路として試験配送を始めた。その後定期航路は5本に拡大。試験配送は7月1日に100回を数えた。飛行には目視外飛行も取り入れた。2021年中には小菅村の8つの集落すべてにスタンドを設置する方向だ。
7月21日に行われた牛丼配送は、このうちの4航路で行われた。配送は定期航路開設や運用に協力した村の人々への感謝を込め「ドローン配送100回達成記念」と位置付けた。
この日は午前中から、デポに近いスペースにテーブル、イスを並べ、吉野家ののぼりもたてて、仮説の食事処を準備した。集まった村の人たちはその場で食べられる。キッチンカー「オレンジドリーム号」は、デポ最寄りのスタンドスペースで待機し、その目の前でエアロネクストが株式会社ACSL、株式会社ACCESSと共同開発した配送専用の機体の調整が進められた。
機体には牛丼弁当4つを載せられる。ドローンは離陸後、目的地に進むために前傾姿勢を取る。その傾きを荷室に影響させないための技術「4D GRAVITY」がエアロネクストの強みだ。
準備が進み、首都圏や地元のメディアも集まった午前10時半すぎ、エアロネクストの田路圭輔代表取締役CEOがあいさつに立った。セイノーホールディングス株式会社と物流に関わる課題解決に向けた取り組みを進めていることを紹介したうえで、「全国の過疎地では、商店が失われるなど人々が買い物に不便な思いをしている。このため宅配やECに頼ることが増え運ぶ荷物が増えているが、ドライバーのなり手不足の問題もある。毎日荷物が届かないこともある。小さなお子さんを抱えているご家庭では夜間の救急診療への不安は大きい。これをドローンで解決できないかというのがわれわれの取り組みです」と配送実験の先に、社会課題の解決を見据えていることを伝えた。
また、今後の展開についても言及した。「本日使う機体は共同開発した試作機で年内に量産試作にたどりつき、来年には量産化を始める予定です。また、小菅村の物流拠点をここ、ドローンデポに設置していて、原則として首都圏や他のエリアから村内への荷物はここに集まります。そして、ここから各家庭に配達します。現時点では原則、クルマで配達していますが、それを将来的にドローンに置き換えていきます。年内に村内8つの集落すべてにドローンスタンドを開設しようと思っています。ほかにも村にお住まいの方から、自分の家の庭をドローンスタンドとして提供したい、という声も頂いています」。
現在、実験として実施しているサービスを有償サービス化する取り組みも始める。買い物代行や、オンライン診療の一環として医師の処方箋が必要な医療用医薬品の配達も実現させていく。
「こうした小菅の取り組みがさまざまなメディアを通じて他の自治体にも知られるようになりました。すでに全国から多くの自治体が視察に訪れています。来年(2022年)以降、このドローンデポ、ドローンスタンド、SkyHubのモデルが、他の自治体でも導入される見込みです。村のひとに感謝を伝えるという意味でも本日の企画を成功させたいと思っています」。田路CEOは、他自治体への展開の展望に触れてあいさつを結ぶと、集まった村の人々から拍手があがった。
小菅村の船木直美村長もかけつけてマイクを持ち、「今回の企画は吉野家さんとのコラボと伺いました。小菅で牛丼を食べるのは初めてなので楽しみです」とあいさつ。あいさつのあとに、キッチンカーにむかって「つゆだくで~」と声をかけて場を沸かせる場面もあった。
午前11時過ぎ、キッチンカーで盛り付けられた牛丼弁当4つが、ドローンに収められた。ドローンが離陸すると、見守っていた村の人々が立ち上がって期待を見上げた。機体が小さくなるまで指で動きを追い、目の前で繰り広げられている様子を焼き付けた。
キッチンカーは、周辺で見守っていた人にも牛丼弁当をふるまった。キッチンカーから直接、牛丼とみそ汁を手に取った利用者は、感染対策のマスクを器用にはずしながら牛丼を口に運び、口々に「あったかい」「おいしい」と笑みをたたえながら話していた。
エアロネクストはこれからも、小菅村に住む人々と二人三脚で新スマート物流「SkyHub」の開発を進め、村の物流の課題解決に取り組む。
※【DF】エアロネクストはDRONE FUNDの投資先企業です)
西濃運輸株式会社を傘下に持つ物流大手、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)と、次世代ドローンの研究開発型テクノロジースタートアップである株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区)は1月22日、無在庫化、無人化が特徴の“新スマート物流”を事業化する業務提携契約を締結したと発表した。相互の資産、知見、技術を持ち寄り、既存物流とドローン物流を組み合わせたスマートサプライチェーン「SkyHub」の開発や、SkyHubを組み込んだ新スマート物流システムを開発する。当面はエアロネクストが1月20日に設立を発表した配送サービス子会社、株式会社NEXT DELIVERYが拠点を構える山梨県小菅村をベースに活動する。セイノーは佐川急便株式会社を傘下に持つSGホールディングス(京都市)などと提携関係にあり、スマート物流の裾野がさらに広がる可能性がある。
提携の柱は既存物流とドローン物流を接続させた新スマート物流サービスの確立だ。セイノーは、開放的(オープン)で誰もが使える(パブリック)なプラットフォームである「オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P.)」の構築を提唱していて、新スマート物流サービスもO.P.P.型を目指す。両社でプロジェクトチームを組成し、スマートサプライチェーン「SkyHub」の開発や、SkyHubを組み込んだ新スマート物流システムを開発する。
取り組みは当面、エアロネクストが連携協定を締結し、同社が株式会社NEXT DELIVERYが拠点を構える山梨県小菅村で進める。小菅村で新スマート物流システムの運用実績を積み上げ、その後、小菅村をモデルに全国展開を目指す。
スマートサプライチェーン「SkyHub」は、無在庫化と無人化が特徴だ。最適な輸送モード、輸送ルート、配送プレイヤーの選択、多彩な受取方法が円滑につながり、異なる物流会社が輸送する荷物を、ドローンなどで共同配送するシステムやサービスモデルなどを含む。構築したモデルを、人口減少、特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対策、物流弱者対策など地域の社会課題の解決に生かす。これらを通じてコミュニティの質の向上を促し、地域全体の活性化を目指す。
セイノーは物流のDX化による生産・在庫・配送の最適化、自動化、無人化によるスマートサプライチェーンの実現をグループの全体戦略に掲げている。荷物の受け渡しポイントへの配送である「ラストワンマイル」についても、物流弱者対策、貧困家庭対策などの課題の解決を目指し、ソリューションの構築に取り組んでいる。エアロネクストも社会課題の解決のため、空の社会インフラ化を提言し、独自テクノロジーを踏まえた取り組みを強化。昨年11月に山梨県小菅村で定期運航を視野に入れた配送実験を実施し、今年1月20日はドローン配送サービスを主事業とする子会社、株式会社 NEXT DELIVERYを山梨県小菅村に設立したことを発表している。
ロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」を提供する、Rapyuta Robotics株式会社(東京都江東区)が、株式会社みずほ銀行が四半期ごとにスタートアップなど有望なイノベーション企業を表彰する「Mizuho Innovation Award」に選ばれた。ドローン関連では株式会社エアロネクスト(2019年1-3月期)、株式会社FLIGHTS(2019年10-12月期)、株式会社スカイマティクス(2020年4-6月期)などが選ばれている。
「Mizuho Innovation Award」は、ビジネスモデルの優位性、チーム力、成長可能性などを評価して四半期に1回、10社前後の企業を選んで表彰する。受賞企業には、みずほ銀行が大企業とのビジネスマッチングなどのサポートを提供し成長を支援する。
このAWARDではドローン事業ではないものの多くの事業者に馴染みのあるAI事業を展開する株式会社シナモン、ディープラーニングの株式会社Ridgi-iも過去に選ばれている。
Rapyutaの受賞について、みずほ銀行は①ロボットの群制御において世界をリードする技術力とグローバルなチームを有している点②既存の設備、オペレーション、ロボットを活かす事ができる、物流現場の目線に沿ったロボティクス・プラットフォームを開発している点③人手不足、DX化といった社会の課題解決につながる、意義のある事業にチャレンジしている点―を挙げているという。
受賞を受けてRapyuta Roboticsは「今後も、コア技術であるロボットの群制御技術を磨きロボティクスの普及をサポートできるよう事業を加速させてまいります」とコメントしている。
株式会社エアロネクスト(東京都)は、今年5月にANAホールディングスとの業務提携を発表したさいに同時発表した物流専用ドローン「NextDELIVERY」を公開する。
公開するのは、2020年9月18日(金)から22日(火・祝)に開催される、先端産業と文化産業の融合をコンセプトとする大規模複合施設「HANEDAINNOVATION CITY」のオープニングイベント。2020年7月に開業し、9月18 日から本格稼働するのにあわせて5日間限定で開催される。
今後、自律走行バス、自動運転車いすなどの先端モビリティ、遠隔での操作とコミュニケーションが可能なアバターロボットなどの導入が予定され、スマートシティに関する取り組みが行われる。
エアロネクストは、5月にANAとの物流ドローンの共同開発に向けた業務提携、8月には株式会社自律制御システム研究所(ACSL)との用途特化型ドローンの共同開発と量産に向けたライセンス契約締結を発表するなど、ドローン物流の実現に向けた動きを加速させている。今後、陸上での先端モビリティやロボティクスとの連携も視野に入れている経緯から、今回のオープンニングイベントに参加することになった。
■「HANEDA INNOVATION CITY」オープニングイベント出展概要 •日時:2020年9月18日(金)~ 9月22日(火・祝)10:00~16:00 •出展場所:HANEDA INNOVATION CITY (羽田イノベーションシティ) 2F Zone I 「昔ばなし横丁」内 •住所:東京都大田区羽田空港一丁目1番4号 東京モノレール/ 京浜急行電鉄「天空橋駅」徒歩1分(直結) •HI City URL: https://haneda-innovation-city.com/news/2020/09/10/1082/