近畿⼤学経営学部(⼤阪府東⼤阪市)は3月の春休み期間中、ドローンの体験会とビジネス創出のワーショップを組み合わせた「ドローン講習会」をキャンパス内で開催した。近畿大学経営学部経営学科の鞆(とも)⼤輔教授との共同研究で交流があるTDCソフト株式会社(東京)が講習を担当した。参加した近畿大学の学生、大学院生の大半がドローンを扱うのは初めてで、講習ではドローンの概要、歴史、操作法、資格などの概要について説明を受けたうえで、手動とプログラムとで飛行する体験し、ドローンを活用するビジネス創出のワークショップに臨んだ。参加者からは質問やアイディアが次々と寄せられるなど、会場は活気にあふれた。
講習会は3月3日、近畿大学東大阪キャンパスで行われた。講師は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が発行する「無人航空機操縦技能証明証」、「無人航空機安全運航管理者証明証」を持つTDCソフトの大澤諒氏が務め、ドローンの基礎知識、操縦体験会、ビジネス創出ワークショップの三部構成で進めた。
講習ではドローンの種類、飛ぶ原理や特徴、開発の歴史、ドローンの語源、関連する法律などの基礎知識を身に着けたのち、中国Ryze Technology社のトイドローンTelloを手動、プログラミングのそれぞれの方法で操作する体験を積んだ。学生からはこの間、「バッテリーの性能向上の可能性はあるのか」、「操縦する資格を取得するための費用や時間はどの程度か」などの質問や、「充電を目的とした補給ドローンがあれば航続時間、距離を実質的にのばせるのでは」などの意見が寄せられた。
また講師の大澤氏が、プログラミング操作をする学生が手元の画面を見ながら飛ばしている様子について、「操縦者は機体ではなく画面を見ています。これが目視外飛行です」などと解説をすると、学生が「遠くまで飛ばして視界から消えることだけを言うわけじゃないんですね」と感想が寄せられた。
ビジネス創出のワークショップでは、学生たちが新しいビジネスのアイディアを出し合うことに挑んだ。大澤氏は「最初にどんどん意見を書き出してください。それを実現する制約に思い当たることがあっても、それはあとで考えることにして、思いついたアイディアをどんどん出してください。生み出し続けることが大事です」、「書き出したアイディアがビジネスになるかどうかを考えるときには、誰の、どんな課題を解決するのか、どんな喜びを生み出すのか、そのビジネスのどこが新しいのかを考えてみてください」と助言した。学生は、2つの班に分かれて班内で意見を付箋に書いて張り出したり、班内で似た意見が出たときにまとめたりして、ビジネスになりそうかどうかを検証した。検証の間には、「ドローンを飛ばせるなら、そもそも家そのものを飛ばせれば便利ではないか」など未来志向の意見が続出。それを聞いた学生が「それならエグいところにも家をつくれる」と盛り上がった。
アイディアの発表では、ディスプレイを取り付けたドローンによる広告表示、種蒔きから収穫までの自動農業ドローン、ドローン同士のサバイバルゲーム、ドローン傘、などが示された。学生たちからは「そのビジネスではお金は誰がはらうのか」といった質問や「ドローン傘にはカバンを持たせられる機能も持たせたい」といった意見が上がった。講師の大澤氏が「実はすでに検討されているものもあります。どこまで進んでいて、どこで壁にぶつかっているのかなどを調べると、そのアイディアを実現させることにつながるかもしれません」と解説を加えた。
すべての意見が出そろったあと鞆教授は「いろいろな意見が出て頼もしかった。ドローン傘のアイディアは雨天時のクルマの乗り降りするときのわずらわしさを解決することに役立ちそう。サバイバルゲームのアイディアは、操作技術の競い合いに加えて、プログラムで自動航行させるドローン同士の競い合いもおもしろそう。磨けばうまくいきそうなアイディアもあり、大変おもしろかった」などと講評した。
この日の講習は、近畿大学の「スマートウエルネス・プログラム・東⼤阪キャンパスにおける社会実証実験を通した学⽣教育」のプロジェクトの⼀環として行われた。近畿大学とTDCソフトは今回の取り組みの成果や課題を洗い出し、今後の展開を検討する方針だ。
通信インフラ大手株式会社ミライト・ワン(東京)のドローン事業を担う子会社、株式会社ミラテクドローン(東京)は1月24日、一般社団法人日本建築ドローン協会(JADA)と一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(JUIDA)が開発した高層ビルなどの外壁点検専門カリキュラム「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」の講習を開始した。このコースの開講の第1号となる。あわせてJUIDAの鈴木真二理事長がミラテクドローンの佐々木康之社長に開講証書を手渡した。コースではドローンを細いケーブルに係留させて飛行する方法などを学ぶ。都市部にある高層ビルなどの外壁点検で頭痛の種となっている時間、コストなどの課題の解決、負担軽減が期待される。修了者は「ドローン建築物調査安全飛行技能者」となる。
「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」が開講したのは、ミライト・ワンの人材育成拠点、みらいカレッジ市川キャンパス(千葉県市川市)。受講生3人が3日間のカリキュラムの初日の講座に臨んだ。2日目、3日目には実技講習が行われ、最後に確認テストが行われる。修了を認められた受講生には、手続きのうえJADA、JUIDAが「ドローン建築物調査安全飛行技能者証明証」を交付する。
ミラテクドローンは開講にあわせて報告とカリキュラムの説明会を実施した。佐々木社長は「人材育成に力を入れている中で、近年は応用コースの要望が増えており、特に建築関連の問い合わせが多い。開講したコースで貢献したい」とあいさつした。JADAの本橋健司会長は「昨年4月に施行された建築基準法12条の定期報告制度のガイドラインで、ドローンの活用が盛り込まれたが、従来の打診と同等の精度が求められる。このコースで、都市部でも外壁にドローンを接近させて、安全を確保しながら飛ばす方法を身に着けて頂くことで、外壁点検のコスト削減、合理化が図られたらいいと思っている」と述べた。
JUIDAの鈴木理事長は「2022年12月の改正航空法の施行でレベル4飛行を可能とする制度がスタートしたが、実際には都市部での飛行はハードルが高い。このコースは係留飛行させる技能を身につけることで都市部での点検にドローンを使うことに道を開く」と、都市部でのタワーマンションなどの外壁点検が抱える課題の解決を期待した。
コースの中心となる技術は、機体と地上の固定点とを細いケーブルでつなぐ「1点係留」と、ビル屋上からはりだしたつり竿と、地上の固定点との間にはったケーブルを、ドローンに取り付けたストロー状の中空のアタッチメントを通すことで、機体の暴走リスクを管理する「2点係留」を用いる方法。
JADAの宮内博之副会長は、「これにより安全技術を構築し、発注者の心配を抑える第三者視点の安全を両立できる」と説明した。コースでは機体操縦、安全管理責任者、係留操作者、補助者の4つの役割と、それぞれが協力しあうチームビルディングについても伝える。ドローンやカメラについて、要求される要件について伝えるものの、機体の具体的な制約はないという。
ミラテクドローンの谷村貴司取締役教育事業部長は、「座学で安全管理、撮影の知識、係留の知識、飛行計画書などを学び、実技で安全管理、筆耕技術、撮影技術、係留技術などを学ぶ。参加者は役割を交代しながらぞれぞれの責任を身に着けることになる」と説明した。
JUIDAの操縦技能証明証と安全運航管理者証明証を取得していて、JADAの建築ドローン安全教育講習を修了していることが受講条件。2022年12月に運用が始まった操縦ライセンスを取得している場合、JUIDAの操縦技能証明証にかえることが可能という。受講料はミラテクの場合、1人あたり39万6000円だ。
ドローンで外壁点検をする場合、建築基準法の要件を満たし「12条点検」であることが必要だ。要件を自力で満たす選択もあるが、ドローン建築物調査安全飛行技能者コースは12条の要件を身に着けられるようカリキュラムが組まれており、証明証の取得は、12条点検と認められる近道となる可能性がある。
発電設備の運営、管理を手掛ける株式会社関電パワーテック(大阪市)と一般社団法人DPCA(ディピカ、京都市)は、ドローン操縦士養成の講習事業を行う新会社、合同会社Kanden DOTs(カンデン ドッツ)」を設立したと発表した。送電線や鉄塔などがそろう関電の研修施設、茨木研修センターで点検を想定した講習を提供する。講習は5月に開始し、受講者の募集を進めている。関電とDPCAは2017年に業務提携し、電力設備の点検を見据えた講習で豊富な実績がある。新会社はこうした実績を踏まえ、レベル4解禁も視野に、実践的な講習を展開する。
新会社は4月1日に設立したDPCA、関電パワーテックの出資比率は50:50(金額は非公表)だ。関電パワーテックは、発送電設備のマネジメントを担う株式会社関西電力の100%出資子会社で、新会社Kanden DOTsも関電グループと位置づけている。
新会社DOTsの特徴について、説明会では送電線や鉄塔など発送電設備の整う関電の茨木研修センターを屋外飛行講習場とした操縦士養成講習事業を提供することが挙げられた。関電とDPCAは2017年にドローン操縦士の養成で業務提携をしており、すでに実績を積み重ねている。新会社では、DPCA、関電パワーテックの持つ資源を持ちより、必要性が急速に高まると予想されるドローン操縦士を「効果的、実践的に養成することを目指す」という。
提供する講習はDPCAが提供する「DRONEフライトオペレーター」をベースに、BASICコース(税別50,000円、技能認定証発行費税別15,000円)と、目視外飛行や夜間飛行など応用技術を含むADVANCEコース(税別90,000円、技能認定証発行費税別15,000円)を設けている。
またレベル4解禁後も見据えている。説明会に登壇したDPCAの上田雄太代表理事は、レベル4解禁に向けて制度整備が進む免許制度への対応について、「(ゆくゆくは)講習機関のライセンスに切り替えたい。まずは(航空局のHPに掲載される)講習団体となり、導入が示されている「登録講習機関」の要件が判明したら、それを目指すことになる」と表明した。
新会社Kanden DOTsは、講習事業を含め、以下を事業の柱に据えている。
■ドローン操縦・撮影技能等のスキル向上を図る人材育成事業 ■ドローンによる特殊点検及び計測撮影事業 ■ドローン産業関連機器の販売・点検整備事業 ■ドローンによる撮影及び映像製作事業 ■災害時におけるドローン運用の在り方について研究・実証 ■ドローン専用保険及びリース・レンタルサービス
Kanden DOTsの講習は、DPCAホームページから申し込める。
Kanden DOTsのホームページはこちら。
国交省航空局がドローン情報基盤システムDIPSで公表しているドローンの技能認証を提供する講習団体と、講習団体を管理する管理団体情報は、5月1日時点で更新されていて、講習団体は765件と、4月1日時点の735件から30件増加した。31件が5月1日に新規に登場し、1件が姿を消した。また、管理団体は前月と変わらず変わらず48だった。
管理団体を管理する講習団体数で整理すると、上位は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の160、一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)の135、DJI JAPAN株式会社の114だった。これに続く一般社団法人農林水産航空協会は、講習団体のうち農業関連講習を2体系持っていた団体について1体系に整理したため、前月の111から37減って74となっている。。
また複数の技能認証を掛け持ちしている講習団体の中では、株式会社スペースワン(福島県)、日本ドローンビジネスサポート協会(岡山市)、株式会社ビットモーターズジャパン(さいたま市など)の3団体が、4つの技能認証を提供する“4刀流”となっている。
国交省航空局による講習団体、管理団体のホームページでの公表は2017年6月1日に開始した。このときの公表内容は、「所要の要件を満たすことが確認できた『無人航空機の操縦技能講習を行う民間講習団体(43団体)』及び『講習団体を指導し管理する団体(4団体)』を航空局ホームページに掲載しました」だった。
一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)の独自技能認証「DPCA DRONEフライトオペレーター操縦技能証明証」の講習がこのほど、埼玉県嵐山町で開催された。経験あるインストラクターが知識、技能の基本を丁寧に教えていた様子を見学した。
講習が行われた会場は、埼玉県嵐山町にある広大な敷地を誇る国立女性教育会館。センター合宿、セミナー、トレーニングなど幅広い用途に対応する設備が整っていて、フライトオペレーター操縦技能講習は研修棟の教室で座学、体育館で実技が、2日間の日程で行われた。座学は上原陽一DPCA代表理事が直接担当。実技はDPCA認定インストラクターの森英昭さん、中島尚子さんが担当した。
講習を受けたのは男性3人。初日の座学でドローンが飛ぶ仕組みやルールなどの基本が伝えられたあと、同日午後3時過ぎに体育館に移動し、実機をつかって電源の入れ方、プロペラの取り付け方、確認の仕方、タブレットでGPS信号が十分に届いているかどうかの確認、などが基本作業についてを手際よく、丁寧に伝えられた。
ドローン事業を手掛けるアイエイチプランニング(東京)の代表として、空撮や橋梁点検、ソーラーパネル点検など数多くの実績がある森さんは講習の間に、「バッテリーは余裕をもっておくことが重要。100メートルの高さから着陸させるのに10%消費することも覚えておく必要がある。自分が運用するときには、バッテリー残量が40%を切ったら機体を地面に降ろすことにしている」などと、経験をふまえた実践的なアドバイスもしていて、参加者の興味をかきたてていたようだ。
受講生3人に対し、3人の講師がつきっきりで指導するぜいたくな態勢で、受講生は疑問がわいたらその場ですぐに質問ができる環境の中、カリキュラムをこなしていた。
DPCAは今後も各地で講習を実施。5月16、17日(残り僅か)、6月16、17日の京都、6月27、28日の大阪、6月24、25日の埼玉での講習について、現在受講生を募集している。