ドローンの国家資格を満たす知識や技能を受講生に提供する「登録講習機関」が5月20日現在、300機関を超えた。ひとつの機関が複数のスクールを設置しているケースも含めると、スクール数は460校となった。昨年(2022年)12月5日の航空改正法施行によりスタートした国家資格制度は、講習機関の設立が相次いでいる。国家資格制度以前に、国交省のホームページに掲載を認めていた民間スクールである「講習団体」は1000件を超えていたため、今後も従来スクールから講習機関への転換や新規開設が続くとみられる。
国交省が公開している一覧表によると、登録講習機関は5月19日現在で309件。機関によって地域別スクールなどを複数設置しており(一覧表では「事務所」)、スクールは全国で461校を数える。一覧表には各スクールが対応できる8つの項目ごとに「〇」が表示してあり、全項目対応校は96校だ。
今年(2023年)2月までは一定の条件を満たすと認められた民間スクールが「講習団体」として国交省のホームページに掲載されており、それぞれの講習団体が上位組織の策定したカリキュラムに準拠するなど管理を受けている場合もあり、講習団体を管理する「管理団体」も掲載されていた。
国家資格制度に移行後は、講習団体、管理団体の区別はなく、国家資格の知識、技能を提供する機関は「登録講習機関」に統一されている。準拠する講習内容は国が定めている。
一方、ひとつの機関が複数のスクール(一覧表のうえでは「事務所」)を運営するケースはあり、一般社団法人農林水産航空協会は32校、一般社団法人DPCAが31校、日本無人航空機免許センター株式会社(JULC)は28校、日本ドローン機構株式会社は8校、株式会社先端技術無人航空機トレーングセンターは8校、一般社団法人ドローン大学校は6校、株式会社モビリティテクノは6校を展開している。なお旧管理団体が引き続き指導、管理、手ほどきしているケースも多いが、旧管理団体自身が講習を行わない場合には登録講習機関に名を連ねておらず、一覧表には表示されていない。
旧管理団体の中には、傘下のスクールの登録講習機関への登録手続きを支援し、管理団体自身は講習機関には登録ない団体もある。国家資格創設の環境整備を支援するなどいわば裏方業務をこなしてきた団体も多く、中央省庁や民間スクール、産業界の中には、今後も旧管理団体の活動に期待を寄せる声も多い。
12月に制度の運用が始まる国家資格としてのドローンの操縦ライセンスをめぐり、知識・技能を身に着ける講習を担う登録講習機関になるための申請手続きで、申請するスクールを中心に、一部で戸惑いの声が上がっている。背景には、適切な手続きに関する情報が関係者の間で不十分であったり、関係者間で錯綜していたり、誤認していたりする事情があるとみられる。現場で何が起きているのか。適切な対応とは何か。行政手続きの専門家であり、申請者側の事情にも当局側の事情にも精通している黒沢怜央氏(株式会社ジーテック代表取締役・行政書士)に聞いた。(文中敬称略)
ーー登録の申請をめぐり、戸惑いの声を聞いています
黒沢 はい。登録の申請手続き9月5日に始まりましたが、円滑に進んでいるスクールはごく一部です。9月だけで航空局の方に400件 ほど申請があったと聞いておりますが、その8割以上は差し戻しをされたとみられていますので、困られているスクールの方は多いと思います。
ーー登録申請の難易度が高いということでしょうか?
黒沢 はい、そのとおりです。まず、こちらの資料を見ていただきたいのですが、今回、改正航空法やそれに基づく施行規則以外にも、これだけの基準が発表されております。申請にはこれら全てをつないで読み込まないといけません。そして登録申請にあたり、示されている要件に適合するように一つずつ証明をしていかなければなりません。私どもも雛形作成にかなり時間がかかりました。当然のことながらスクールごとに状況が違いますから、お手本を丸写しすれば出来上がるものではなく、一つずつ諸事情に合わせてカスタマイズすることになります。
ーーこれは膨大な作業になりそうです。手引きのようなものはないのでしょうか?
黒沢 そのまま書き写せるような手引きはありません。登録講習機関は、飛行許可申請のように一般個人が申請をするものではなくて、法人限定のいわゆる事業者向けの申請手続きです。そこまで手取り足取り教えなくても自分たちで要件に適合するように書類を用意しなさいというメッセージかと思います。また、雛形を用意しすぎてしまいますと中身を精査せずに穴埋めだけして書類を作成してしまう事業者の方が出てくることが想定されるため、警戒する必要性も生じます。少し前に問題になった補助金申請のように単にコピペして申請書類を作成するようなことが無いように考えた側面もあるかもしれません。
ーー他の行政手続きもこういうものなのですか?
黒沢 私たちが普段関わる手続きはこういった手引きやマニュアルがないものが珍しくありません。雛形を一つずつ作成して、行政の方にも説明してその雛形を採用いただくケースも多いです。
ーードキュメントを作成するうえで作業としての難易度が高いことはわかりました。一方、登録要件を満たすこと自体は厳しくはないのでしょうか?
黒沢 これが・・・・ひとことでは表現できないのですが、登録要件についてもよく調べてみますとハードルが高い部分があります。たとえば、修了審査用の機体についてですが、告示要件を満たすためにはATTIモード対応機体で、かつ、オーバーライドできる送信機が対応しているものでなくてはなりません。
ーー現在販売されている機体で考えると選択肢はそれほど多くなさそうです。
黒沢 そうなんですよね。Phantom 4 Pro V2.0は生産が終了していますし、国内メーカーの製品もありますが、価格面でだいぶ違いがありますから、難しさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ーー修了審査用の機体についても話が出ているので、次の機会に、細かく教えて頂きたいと思います
黒沢 はい、解釈の部分もまだ航空局の方でこれから固める部分があるかと思いますので、論点も含めて細かく次回ご説明いたします。
ーーあらためてお聞きしますが、戸惑いの声が多い理由はどこにあるのでしょうか?
黒沢 はい、これはいくつか考えられるのですが、これまで「HP掲載講習団体」という法令で規定されていない仮の仕組みがありまして、これが一つの戸惑いの原因になっていると考えられます。HP掲載講習団体とはあくまで、一定の書類を提出すると国土交通省のHPに掲載しますよ、というもので、法令に規定されている制度ではありません。今回の「登録」のようには、法的な権限は与えられていないのです。
ーーHPに掲載されたことから「国土交通省認定」と表示しているスクールも見かけるように思います。
黒沢 これはドローンスクール特有のことだと思っております。通常であれば、「許可」とか「認可」とか「登録」、「認定」というのは国から法的な地位を認められて付与されたものということになります。もしもそういった許可や認定を受けていないのにそのように名乗ってしまったとしたら大変なことです。私どもが顧問で入らせていただいているスクールにはそのような表示をしないように指導してまいりました。
ーーHP掲載講習団体になっていれば、登録講習機関にも当然のようになれる、と考えているスクールが多かったかもしれません。
黒沢 はい、そう思います。登録講習機関はHP掲載講習団体と違って、国家ライセンスの講習と修了審査とを行えるようになるのですから、国は、登録にあたり、申請内容が要件を満たしているかしっかりと審査しなければなりません。HP掲載講習団体とは全く別の制度です。HP掲載講習団体は、既存のスクールや、管理団体に配慮した仕組みでもあり、国にとって提出された書類は、実態に沿っているかどうかを法令に則って厳密に審査する対象とはいえません。
ーー戸惑いの理由は、他にもありますか?
黒沢 はい、これは良くも悪くも管理団体の存在だと思います。誤解してほしくないのは管理団体があったからこそ、これだけ国内のドローン市場が伸びてきたと思いますし、登録講習機関のサポートについても現在の管理団体が担う役割は大きいと思います。一方、今回の登録制度は、スクールを運営している一つ一つの法人がそれぞれ国土交通大臣の登録を受けるものになっています。登録手続きの部分は管理団体とは切り離して考えた方がいいと思います。
ーーたとえば管理団体が傘下のスクールに代わって登録申請の手続きをすることはダメだということですね
黒沢 そうです。講習を行う機関がそれぞれ登録をする制度ですから、管理団体がまとめて申請を行うことは出来ません。また、講習に関して業務委託をすることも出来ません。登録をしている法人が講習をすることになります。他の許認可で考えても、名義貸しと見られるような業務委託は普通、 出来ません。当然といえば当然の話なのですが。
ーーやはり制度について情報が錯綜していたり、誤解が生じてしまっていたりすることがありそうですね
黒沢 そうですね。新しい制度が始まるときはある程度は仕方ない部分もあります。制度がスタートしてしばらくすると徐々に慣れてきて、理解も進んでいくと思いますが、正しい理解を広める意味でも今が一番重要ですね。今回のインタビュー記事で少しでもお役に立てば幸いです。
ーーありがとうございました。
黒沢 怜央 Kurosawa Reo 株式会社ジーテック 代表取締役 Academic works 行政書士事務所 代表行政書士 ドローンやシェアリングエコノミー、FinTech、スマートシティといった先端領域の法規制を専門とする。2018年1月、行政領域におけるITソリューションを軸とした(株)ジーテックを設立、代表取締役に就任。民泊許可・届出手続のクラウドサービス「MIRANOVA(ミラノバ)」やドローンの飛行許可・承認手続のクラウドサービス「DIPSコネクト」等を展開。現在、行政手続のデジタル化に向けて、デジタル庁、デジタル臨時行政調査会への提言や地方公共団体におけるDX推進アドバイザー等も行う。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は4月25日、「ドローン官民協議会(=小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)」がとりまとめた国家資格化に伴う制度変更の方針について、加盟する認定スクール向けに説明会を開いた。協議会の資料や、JUIDAが独自に整理した資料を示しながら、国家資格である「技能証明」を取得するメリットや、取得方法、JUIDA資格保持者の取り扱い、JUIDAのカリキュラムで捕捉が必要な部分などを説明した。国家資格の講習を提供する登録講習機関に転じるスクールの動きが加速しそうだ。
説明会ではJUIDAの鈴木真二理事長は4月20日のドローン官民協議会で制度変更の方針が示されたことや、引き続き検討すべき点が残っていることなどを説明し「みなさまにも引き続きご協力をお願いします」と参加したスクール関係者に呼びかけた。
また国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の梅澤大輔課長が登壇し、制度の概要を説明した。国家資格は「技能証明」と呼び、レベル4飛行に必用となる「一等」と、それ以外の「二等」とがあり、取得には認定を受けた試験機関で学科試験、実地試験を受けて合格することが必要であること、ただし登録を受けた講習機関の講習を受ければ試験機関で実地試験が免除されることなどが説明された。
梅澤課長は「より多くの講習団体が登録講習機関となって質の高い講習を提供頂き、よい操縦士を輩出して頂きたいと思っています」と期待した。
このほか、機体認証、ライセンス、運航管理について説明。機体認証ではレベル4飛行の機体は機体認証を受ける必要があることや、量産機で型式認証を受ければ設計、製造の検査を省略できることなどが説明された。
JUIDAの田口直樹経営企画室長は、JUIDAのスクールに関わる横目について説明した。「技能証明」の取得が、試験機関での受験と、講習機関を通じて実地試験が免除された状態で受験する方法と2通りあることを紹介し、受講希望者に対する説明に誤りがないよう注意を促した。また技能証明を取得するメリットについて、一等は所持しないとレベル4飛行が認められない、二等は、レベル4飛行は認められないものの、特定飛行のうち上空150m以上の飛行やイベント上空などリスクが高い飛行を除き、DID上空、夜間飛行などの飛行の場合には、許可・承認の取得が不要になることなどを説明した。
既存のJUIDAのカリキュラムは、二等の試験に必用なCRMや地上基地などがカバーできていないため、今後対応を検討することが説明されたほか、スクールが講習機関になる場合に備えるべき要件には設備、講師の両面で整える要件があることも説明された。そのうち設備では空域、機体、建物、教則本などの書籍が該当し、講師にも一定の要件を満たすことが求められるなどの説明が行われた。
このほか、具体的な取り組みや今後の方針なども示された。JUIDAによるスクールへの説明会は4月27日にも開催される。
ドローンの「レベル4」飛行の解禁に向けた制度整備や利活用推進策について、官民の有識者が協議する「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は4月20日、東京・霞が関で第17回の会合を開き、これまでの協議をとりまとめ、資料を公表した。操縦の知識、能力を身に着けていることを証明する「技能証明」として「一等操縦ライセンス」、「二等操縦ライセンス」の創設を改めて明記した。学科試験は「一等」、「二等」とも三肢択一式で問題数は一等が70問、二等が50問となる。一等試験の「2023年早期」に実施することを目指し、今年(2022年)7月までに講習を実施する登録講習機関などを策定し、9月に登録申請を始めることを目指す。このほか各地での取組事例が示され、利活用促進として全国でドローンサミットを開催する方針や、国のドローン施策、自治体のドローン活用例をまとめた情報共有プラットフォームの構築を示した。
協議会は東京・霞が関の中央合同庁舎4号館で午前10時から非公開で行われた。
レベル4実現に向けた制度整備のうち、操縦ライセンス制度については「技能証明」とすることを改めて明記。試験は国が指定する「指定試験機関」が行い、国の登録を受けた講習機関の講習を終了した場合、試験のうちの実地試験が免除される。
講習機関については、第三者上空で補助者無しの目視外飛行ができる一等操縦ライセンスの講習ができる機関、二等のみの講習ができる機関、更新講習の期間の3タイプが存在することになると位置付け、それぞれの登録に必用な要件については7月までに策定する。要件は実習空域、実習機、設備、教材、講師が対象になる。登録の申請は9月開始を目指す。各ドローンスクールは各校が要件の満たし具合などから登録する機関を選択する。
また講習機関が適切に運営されているかどうかを監査するために、一定の基準を満たす管理団体の枠組みを活用する。管理団体にはそのほか、教材作成、研修などの提供が期待される。
既存のドローンスクールが発行した技能認証を取得したオペレーターなどの経験者に向けた講習要件も策定し、初学者とは異なる基準で二等操縦ライセンスの取得を促す方針だ。
このほか機体認証制度や運航管理要件なども整理。今後は機体認証制度、操縦ライセンス制度、運航管理要件のそれぞれでワーキンググループを開催するなどして制度の具体化を進める。
協議会ではこのほか、ドローンの利活用促進に向けた技術開発や取組がまとめられた。
国土交通省が力を入れている行政ニーズに対応する仕様の規定化に向けた取り組みや、慶應義塾大学が小田原のみかん農園で行った配送実験、株式会社エアロネクストが山梨県など各地で実施しているスマート物流の実験なども整理された。
ドローンの利活用促進で重要な役割を果たす自治体と連携し、講演や事例紹介のための「ドローンサミット」を9月以降、地域持ち回りで開催する方針も表明した。第1回は9月に神戸市で開催し、内閣官房小型無人機等対策推進室と兵庫県が主催する。
各省庁で分かれているドローン施策や各自治体の取り組みを集約した情報共有プラットフォームを、内閣官房のサイトの上で構築する。
国土交通省航空局はホームページ上の「飛行許可を受ける際の申請書類の一部を省略することができる講習団体等」に関する記載内容を4月1日現在の情報に更新した。講習団体は1003と、2017年6月1日の初公表以来、初めて1000の大台を超えた。大分県のciRobotics株式会社などが新たに名前を連ねた。
4月1日の更新で講習団体として掲載されている団体は1003校で、前回3月1日時点の975校から28増加した。
ただし4月1日付けで初掲載となった講習団体は32校を数え、3月1日付で掲載されていた講習団体のうち3校は姿を消したことになる。初掲載32校のうち2校が、複数の講習を提供する。また6校はDJI JAPAN株式会社が管理団体。4校は管理団体を持たず、独自に講習を提供する。
一方、講習団体を束ねる管理団体は60となり3月1日と比べ3つの増加となった。株式会社クリエイトジャパン(沖縄県那覇市)、一般社団法人農業ドローン協会(福岡県大牟田市)、一般財団法人熊本県ドローン技術振興協会(熊本市)が加わった。
4月1日付で講習団体となったciRobotics(シーアイロボティクス)は制御技術開発などで知られ、展示会などに出展すると多くの人が足を止めるなど知名度がある。今回は農業ドローン協会を管理団体として講習団体に名を連ねた。
なお、管理団体を、傘下に抱える講習団体数で並べ替えた場合、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の182、一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)の165、株式会社DJI JAPANの155の上位陣の顔ぶれに変動はなかった。
国土交通省航空局はホームページ上の「飛行許可を受ける際の申請書類の一部を省略することができる講習団体等」に関する記載内容を3月1日現在の情報に更新した。講習団体は975で、前月(2月1日時点)と比べ総数として31増えた。講習団体を束ねる管理団体は57と先月と比べ2増えた。講習実績が豊富な一般社団法人ドローン大学校(東京)が管理団体として名を連ねたほか、ドローン開発で定評のある株式会社丸山製作所の名前が講習団体に登場した。
管理団体にはドローン大学校のほか、北海道ドローン協会の2団体が加わった。管理団体が増えたのは2021年になって初めてだ。
また3月1日付で講習団体として掲載されたのは36団体。2月1日時点で掲載されていた団体のうち5団体が姿を消し、全体では差し引きして2月1日時点より31増加となった。初登場組では株式会社FlightPilotを管理団体とする団体が8件と最多だった。
なお、管理団体を抱える講習団体で見た場合、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の181、一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)の165、株式会社DJI JAPANの149の上位陣の顔ぶれに変動はなかった。