埼玉県の大野元裕知事は5月1日、八潮市内の県道で陥没しトラックが転落した事故で、2月にドローンが発見した通り、地下10m、現場から下流に30mの地点で、残されていたトラックの運転席部分に男性の姿が見られたことを明らかにした。同日、消防隊員らが立ち入って確認した。翌5月2日、午前5時前から消防などが男性を引き上げ、その場で死亡を確認した。
陥没事故は1月28日に発生した。救出作業は二次被害のリスクが想定されたことなどから難航した。陥没から8日後の2月5日に、ブルーイノベーション株式会社(東京)や株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)のドローンが地下の様子を確認することを試みた。その結果、Liberawareの超狭小空間点検ドローンIBIS2が陥没場所から離れた下水管内でトラックの「キャビンのようなもの」を見つけた。これが、その後の救出活動の方針の軸となるなど転機となった。現在、みつかった男性が運転手であるかどうかの確認を進めている。
道路陥没のリスクが高まっていることに関連し、今後、県などによる災害対応の課題や改善点の洗い出しが進められることが期待される。特に、ドローンの活用については、早期の投入要請ができなかったのかどうかなど初期対応を含めた課題、改善点の洗い出しが不可欠とみられる。ドローンに関する基礎知識の共有の是非なども議題になりそうだ。
また陥没事故発生以来、各地で国、地方の担当者などが参加する連絡会議が招集されるなど対応の必要性が高まっており、点検の強化など災害防止対策の見直し、実施が求められることになる。
なお、DroneTribuneは見つかった男性、ご遺族にご冥福をお祈り申し上げます。また、救出、復旧に尽力してこられた関係者、これから復旧にあたられる関係者に敬意を表し、そのために不自由な生活を強いられた地元のみなさまにお見舞い申し上げます。
株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)、JR東日本スタートアップ株式会社(東京)、JR東日本コンサルタンツ株式会社(東京)の合弁会社で、鉄道設備のドローン点検などを手掛けるCalTa株式会社は4月2日、大阪・関西万博に鉄道点検用ドローンのコンセプト模型、鉄道の線路でドローンが飛行する様子を表したジオラマ、VRなどを出展すると発表した。同社の展示は4月15~21日に会場内の「フューチャーライフヴィレッジ」で開催される。
CalTa株式会社はJR東日本のメンテナンスを中心に鉄道・インフラのDX(デジタルトランスフォーメーション)促進事業を進めている。主にLiberawareの開発した小型ドローンを駅の天井裏や鉄道の建設現場などの狭小空間で活用し、取得画像から三次元データを生成させて状況を遠隔確認し、AIを組み合わせ不具合の自動検知などを進めている。
大阪・関西万博では4月15~21日に「未来の鉄道点検」と題して鉄道点検用ドローンのコンセプト模型を展示したり、点検現場の様子をプロジェクションマッピングで演出したりすることを計画している。
プレスリリースは以下の通りだ。
~「未来の鉄道点検」をテーマに「Project SPARROW」を肌で体感できるブースを展示~
1月29日にTOPICS「2025年日本国際博覧会(EXPO 2025 大阪・関西万博)への参加決定!」でご案内の通り、「未来の鉄道点検」をテーマに、現在共同で研究開発を進めている「Project SPARROW」について、2025年日本国際博覧会(EXPO 2025 大阪・関西万博)「フューチャーライフ万博・フューチャーライフエクスペリエンス」に参加します。この度、ブース内におけるコンテンツ内容についてお知らせします。
▼概要
イベント名:2025年日本国際博覧会(EXPO 2025 大阪・関西万博)未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・フューチャーライフエクスペリエンス」
展示場所:フューチャーライフヴィレッジ
展示期間:2025年4月15日(火)~21日(月)
展示テーマ:未来の鉄道点検
▼ブースについて
「肌で感じるProject SPARROW」を展示コンセプトとし、コンセプトドローン展示・ジオラマ展示・VR体験など、来場者の皆様に直観的に「Project SPARROW」が作る未来を理解いただけるコンテンツを提供いたします。従来の鉄道点検業務が抱える課題を解決し、人々が安全・安心に鉄道に乗車できる未来を作り出すドローン※1を是非この機会にご覧ください。
※1 開発段階のものであり、実際に製品化されるものとは異なります
▼ブース内各種コンテンツについて
①コンセプトドローン展示
鉄道点検用ドローンのコンセプト模型を展示します。鉄道インフラの安全を守るだけでなく、地域との調和を大切にし、社会に寄り添いながら未来を切り拓く、先進的なデザインです。模型とともに現場の風景をプロジェクションマッピングや映像で演出し、未来の鉄道点検シーンをドローン視点でわかりやすく展示しています。
②ジオラマ展示
鉄道点検用ドローンが線路の上を飛行している様子をジオラマで表現します。日本の古き良き鉄道沿線の風景と、未来の鉄道点検の全景を再現します。 ジオラマ内を飛行するドローン視点の映像は、コンセプトドローン展示でご覧いただくことができ、未来の鉄道点検イメージを体験いただけます。
③VR体験
「Project SPARROW」が描く未来の鉄道点検を没入体験いただけるVRコンテンツです。ドローン視点に加え、遠隔で操縦するオペレーターの視点も体験でき、未来の鉄道点検の全体像を、迫力ある視点で体感できます。 コンセプトドローン展示やジオラマ展示で描かれた点検シーンを、VRでは内側から体験することで、鉄道点検の未来像を多角的に理解いただけます。
従来の鉄道点検業務が抱える課題を解決し、人々が安全・安心に鉄道に乗車できる未来を作り出すドローンを是非この機会にご覧ください。
参考1:「万博参加決定」の発表文
参考2:プロジェクトsparrow動画
東京ビッグサイト(東京)で開催中の商談向け展示会「スマートエネルギーWEEK」で、ドローン関連技術が多く展示されている。埼玉・八潮の道路陥没で下水道内に入った株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)の超狭小空間用小型点検ドローン「IBIS2(アイビスツー)」や、ブルーイノベーション株式会社(東京)のリアルタイム3Dモデリングが可能な球体ドローン「ELIOIS3(エリオススリー)」などのデモンストレーションも来場者の視線を集めている。 2月21日まで。入場無料で事前登録が必要。
スマートエネルギーWEEKは、エネルギー関連技術の総合展で、H2 & FC EXPO(水素燃料電池展)、PV EXPO(太陽光発電展)、BATTERY JAPAN(二次電池展)、SMART GRID EXPO(スマートグリッド展)、WIND EXPO(風力発電展)、BIOMASS EXPO(バイオマス展)、ZERO-E THERMAL EXPO(ゼロエミッション火力発電EXPO)、CCUS EXPO(CO₂分離回収・利用・貯蔵 技術展)の8つの展示会をまとめた総称だ。いずれも業界関係者の商談を促すことを目的とした展示会だ。これに脱炭素経営EXPO、サーキュラー・エコノミーEXPOのふたつが「GX経営WEEK」として同時開催している。
ドローン関連技術は多くの展示でみられる。リベラウェア、ブルーイノベーションはゼロエミッション火力発電EXPOに出展していて、それぞれのブースともフライトエリアを設置し、適宜デモフライトを公開して、機能を説明している。
リベラウェアのIBIS2は20cm四方でありながら産業用の機能を備える小型機で、管路内、屋根裏などを飛行するさいに障害となる粉塵対策が施されていて安定して飛行できる。ブースでは協力なライトを装着してブース内を難なく飛行する様子が確認できる。八潮(埼玉県)の道路陥没事故では埼玉県がキャビンらしきものを発見した2月5日に「超狭小空間ドローン」として機体の画像を公開した。またブルーイノベーションのELIOS3は機体に搭載したLiDARセンサーでスキャンした空間情報を高精度3Dマップとしてリアルタイムで表示する。SLAM搭載で飛行が安定している様子も確認できる。
WIND EXPO風力発電展には株式会社渋谷潜水工業(本社:平塚市<神奈川県>、本店:藤沢市(同))などが出展。同社は水中ドローンなどを展示し、リアルタイムで水中の構造物を3次元データとして表示する機能を紹介している。ジオグループの株式会社ジオシステム(大阪市)も、3本アームの旧型ドローンにリーグルのレーザースキャナーを搭載する測量ソリューションを紹介している。
株式会社小笠原工業所(松山市<愛媛県>)は、風力発電などを空から確認するために開発中の最大75分の航続飛行が可能なドローンを展示している。今後、現場での実証を進める計画だ。ドローン関連技術や業務用カメラなどの研究開発を手掛ける株式会社D-eyes(ディ・アイ、堺市<大阪府>)と株式会社APES(エイプス、東京)は風力発電所落雷監視システムLightning-eyes」を紹介している。風力発電に落雷した場合に、落雷したブレードとその位置を特定することをアピールしている。
埼玉県八潮市の道路陥没で、対応にあたっていたドローン運航業務のチームが2月5日、下水管内でドローンを飛行させた。このうち株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)が開発した超狭小空間点検ドローンIBIS2(アイビスツー)が「キャビンらしきもの」を発見した。埼玉県が発見した事実を公表した。埼玉県によるとこの飛行で、下水管内には事前に推測されていた堆積物があり、管内をふさいでいることも分かったという。現場では一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が統括し、屋内空間の点検に使われるドローンが運用された。IBIS2のほかブルーイノベーション株式会社(東京)が運用するスイス、Fliabirity社の屋内点検用球体ドローンELIOS3も運用されている。埼玉県は2月6日以降も、ドローンで状況の確認を進める。
埼玉県によると、IBIS2が埼玉・八潮の陥没対策として飛んだのは2月5日午前10時25分から45分の20分間。陥没現場より下流方向に600mほどのところにあるマンホールから機体を投入した。もともとは、下水管の流れをせき止めているものがあると推測されていたため、この下水管内の捜索を邪魔している堆積物の有無や状況を確認するための飛行だった。IBIS2はマンホールから陥没現場方向に400~500mのところに、金属製の白っぽい構造物が、下水管の水につかり一部が水面に出ているのを見つけた。
埼玉県はIBIS2が飛行後に撮影した映像を確認し、同日午前11時34分に「キャビンらしきもの」と判断した。「らしきもの」と含みを残しているのは、「原型をとどめておらず正確な判断ができないこと、該当するクルマであると断定できないこと」によるという。
またIBIS2はこの「キャビンらしきもの」からさらに陥没地点近くまで進んだ場所で、下水管をふさぐ堆積物も確認した。ただし堆積物そのもがなにかはわかっていない。また人の姿もこの時点では確認できていない。
埼玉県の大野元裕知事は2月5日夕方の会議や記者会見で「これまでも何度かドローンを挑戦してうまくいかなかった。今回、下水管の水位が下がり下流側から飛行ドローンを投入することができた。これは支障となっているものを確認するためだった」「われわれとして力を尽くし、また多くのみなさまの協力を頂きながら、これまでの事故から一週間で手がかりがほぼなかった。今回ようやくの一歩前進。奇跡を信じる」「今回超狭小空間点検ドローンによる管渠(かんきょ)内の確認ができ、キャビンらしきものを発見した。引き続きドローンを使用してまきこまれた方の消息などの確認をお願いしたい」などと述べた。
複数の情報を総合すると、現地には能登半島地震の被災現場でも状況確認、物資搬送などで活躍したJUIDAのドローンチームが八潮の現場にかけつけている。JUIDAの統括のもと、IBIS2のLiberawareのほか、内部に損傷を及ぼさないよう機体を球体ガードで覆った屋内点検用ドローン「ELIOS3(エリオススリー)」も満ち込まれ、ブルーイノベーションが飛行させているとみられる。
現地では、「速い水流、土砂、人が活動できる濃度を超えた硫化水素」が作業を阻んでいる。堆積物により下水管内の水流がせき止められていることは、下水管内で鉄砲水が起きるリスクと背中あわせで、人が立ち入れない危険の要因となる。今回、堆積物や「キャビンらしき」ものの場所の特定ができたことで、今後は肝心の人の確認や下水道機能の確保、周辺住民の生活確保などへの手順策定などの対応を加速させることになる。
超狭小空間点検ドローンの開発を手掛ける株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)は7月29日、東京証券取引市場グロース市場に上場した。東京・日本橋兜町の東京証券取引所内にある情報提供スペース、東証Arrows(アローズ)で新規上場を祝うセレモニーが行われ、閔弘圭(みん・ほんきゅ)代表取締役が上場通知書を受け取ったほか、役員も加わり上場祝いの鐘を鳴らした。上場初日は公開価格の310円より144円(46.4%)高い454円で初値をつけ、401円で取引を終えた。ドローン開発を本業の上場で精密機械に分類される企業はLiberaware初めてで、閔代表取締役は「我々がつくる小型のドローンはまさに精密。日本(経済)の強みである精密でしっかり実績を作っていきたい」と抱負を述べた。
Liberaware株はこの日、午前9時の取引開始直後は買い気配のまま値が付かずに推移し、午前10時26分に454円の初値が付いた。10時42分には一時、この日の最高値である465円を付けるなど終日、公開価格の310円を上回る水準で取引が続き、午後3時に公開価格より91円高い401円で取引を終えた。
取引時間中の午前11時にはセレモニーが行われた。東証Arrowsのマーケットの状況を映し出すパネルは赤を基調にした背景に白抜きで「日本取引所グループ 祝上場 株式会社Liberaware 2024年7月29日 東京証券取引所」とメッセージが投影され、株式会社東京証券取引所の青克美常務執行役員がLiberawareの閔代表に上場通知書を手渡し、社員らがその様子を見守った。このあとパネルわきに用意された鐘を打ち鳴らす「打鐘」が行われた。打鐘は社名の入った木槌で、「五穀豊穣」にちなんで5度、鳴らすことが慣例で、閔代表ら集まった社員の中から幹部が2人一組で5組が一回ずつ鳴らした。儀式が終了したあとは、Liberawareを投資などで応援してきた関係者らも加わって記念撮影などが行われた。
Liberawareは高性能小型ドローンIBIS(アイビス)シリーズの開発と機体を活用した事業で知名度を広げ、ゼネコン、電力などエネルギー、インフラなどでの産業で導入が広がっている。廃炉作業が進む東京電力福島第一原発の格納容器内の点検作業では、東京電力が作業で活用したデバイスがLiberaware製であることを2024年2月の記者会見で認め認知が広がった。2021年にはJR東日本スタートアップ株式会社、JR東日本コンサルタンツ株式会社と点群データ取得や鉄道・インフラ業界のデジタル化事業を展開する合弁会社、CalTa株式会社(東京)を設立し、現在、デジタル化ソフトウェアTRANCITYを提供していることでも知られる。
2024年元日に発生した能登半島地震では一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の呼びかけに応じて輪島市などでの災害支援対策に対応して現地に出向き、倒壊家屋内の点検に同社の技術を活用した。
上場初日を迎えた閔代表は「実感はまだありません。これまでしっかりとものづくりをしてきました。ドローン事業の盛り上がりを証明したい。(精密機械に分類されているのは)われわれがつくる小型のドローンはまさに精密。精密っというこの分野が日本としての強みだと思いますし、だからこそここでしっかり実績を作っていきたい」などと抱負を述べた。同社は今後も豊富な屋内狭小空間の点検実績を土台に事業拡大を図ることになる。
ドローン関連事業を本業の柱に位置付ける企業の上場は、株式会社ACSL(東京、2018年12月21日、分類:機会)、ブルーイノベーション株式会社(東京、2023年12月12日、分類:情報・通信)以来となる。
経産省は、能登半島地震の災害支援対応にあたった企業、団体などに感謝状を贈った。贈呈先が明らかにされている207組の中には、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、ブルーイノベーション株式会社、株式会社Liberaware、株式会社エアロネクストなどドローンに関わる企業・団体28組が含まれる。6月17日に行われた式典ではJUIDAの鈴木真二理事長が齋藤健経産相から感謝状を受け取った。
JUIDAが受け取った感謝状には、「貴団体は令和六年能登半島地震への対応において格別な支援を行い復旧復興活動に大きく貢献されました。その支援活動に敬意を表し心から感謝申し上げます」と記されている。
能登半島地震にあたりJUIDAは発災直後の1月1日夕刻から幹部間で調整を開始。被災地上空が原則としてドローンの飛行が禁止される「緊急用務空域」に指定される中、JUIDA の嶋本学参与が被災地入りし、現地自治体にドローンの有効性を説明するなどして飛行要請の発出を掛け合った。輪島市が1月4日に被災地として最初の要請を出したことから、JUIDAがドローン関連各社にも応援を呼びかけ、倒壊家屋内点検、橋梁点検、緊急物資輸送、土砂ダム警戒などにドローンが使われた。ドローンでの対応は復興局面により形をかえているものの、6月に入ってもJUIDAは現地と定期的に情報交換を続けている。
感謝状の対象のドローン関連企業、団体は以下の通り。(順不同)
株式会社Liberaware
ブルーイノベーション株式会社
株式会社ACSL
株式会社ドローンオペレーション
株式会社エアロネクスト
株式会社NEXT DELIVERY
川崎重工業株式会社
イームズロボティクス株式会社
日本DMC株式会社
株式会社やさか創研
株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー
エアロセンス株式会社
合同会社SKYTRYING
日本システムバンク株式会社
五光物流株式会社
佐川急便株式会社
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
株式会社ウェザーニューズ
双葉電子工業株式会社
ANAホールディングス株式会社
伊藤忠商事株式会社
日本航空株式会社
KDDIスマートドローン株式会社
埼玉ドローンサービス株式会社
株式会社チェンジ
一般財団法人日本気象協会
Drone Quest(株式会社Phoegend)
なお能登半島地震の災害対応として現地で支援にあたったドローン関連事業者、運航者が上記のほかにも複数存在することをDroneTribuneは把握している。上記の表彰された企業、団体とかわらぬ敬意を表したい。