ロボット、ドローン、関連技術を実演展示する「ロボテスEXPO2022」が福島県南相馬市の大型研究開発拠点、福島ロボットテストフィールドで9月15、16日に行われた。50haの広大な敷地に点在する各施で展示や実演が行われた。そのうちのいくつかをめぐる見学バスツアーが今回の目玉企画で、満席で運行した回もあった。初日のオープニングセレモニーでは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二所長が「このイベントを通じて未来を感じてほしい」とあいさつした。
今回の目玉企画である見学バスツアーは、展示や実演のいくつかを効率的にめぐる取組。利用者は、案内に従えばプレゼンテーションを受けたり、見学できたりするため、移動の徒歩の労力、実演までの待ち時間の無駄を省ける。実演時間を逃すこともない。また、出展者もバス利用者の到着にあわせて実演ができるため、無観客で実演せざるをえない状況の解消が期待できる。
バスツアーは1日6便ある。各回約1時間の行程で、バス2台で展示会場をめぐる。回ごとにみられる展示は異なる。初日午前10時に本館(開発基盤エリア)前を出発したバスは、ほぼ満席の状態。各シートにヘルメットが用意されていて、実演を見学するさいには着用が求められた。この回ではテトラ・アビエーション株式会社(東京)のAAM「Mk-5」の実機見学、株式会社RoboDex(ロボデックス、横浜市)の水素燃料電池を搭載した次世代ハイブリッドドローンの飛行実演、ciRobotics株式会社(大分市)が大分県産業科学技術センターと共同開発したドローンの動作や耐久性などを確認する性能評価装置「ドローンアナライザー」の運用実演、東北大学ASC(Advanced Science Course)の繊毛を持つ能動スコープカメラのセキュリティーソリューションとしての実演を見学した。
この回には地元の中学生が職場体験として見学に来ていて、その一人は「会場で見たことをレポートにまとめることになっています。ロボットテストフィールドは自分で希望を出しました。日頃みられないものが見られました」と話していた。
会場では、開発、製造、人材育成などを手掛ける各社、各機関がブースを展示していた。「南相馬ベンチャー×連携VCミートアップ-Vol.3」「みちびき(準天頂衛星システム)講演会~ドローン・UGV最前線~」なども行われた。
参加者の一人は、「バスツアーは利用者にとって効率的に見学できた点でとてもよかった。ただ、すべての座席が埋まるほどにまで埋めるのは、機材や荷物を持つ利用者にはきつかったのではないか。ユーザー体験をもっと考慮すると、満足度がさらに高まると思う」と話していた。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は石油化学プラント点検へのドローン活用技能を備えていることを証明する専門ライセンス「JUIDAプラント点検スペシャリスト」の提供を開始した。ライセンスは所定の講習を受け、講習内で行われる試験に合格すると授与される。第1回の講習は12月2日から行われ、3人が受講した。12月3日には、福島ロボットテストフィールド(RTF、福島県南相馬市)で行われた実技講習の様子が公開された。講習はブルーイノベーションが担当した。受講生は3人で、受講者はこのライセンスの初の所有者になる見込みだ。また今回の受講者は、講習の評価、手順の確認も担う。講習はこれらのフィードバックもふまえ、第2回以降に反映される。第2回以降は、広く受講者を募り、プラント点検へのドローンの担い手養成事業が本格化する。
提供が開始されたライセンス「JUIDAプラント点検スペシャリスト」は今後、本格運用に入る。12月下旬に第2回の講習を予定しており、以降、毎月開催される見込みだ。座学、実技のそれぞれが行われ、実技講習はRTFが会場となる。座学は動画が配信されるなどオンライン受講となる見込みだ。
12月3日に公開された実技講習は、RTFの設備のうち、「試験用プラント」「試験用トンネル」などを使って行われた。
「試験用プラント」は、径の異なる配管や模擬ボイラ、ポンプ、計器、表示機、模擬タンク、径の異なる煙突3本、垂直梯子などを備えた5階、高さ30メートルの模擬プラントで、内部にはSGP500A、300A、200A、100A、50Aの配管がはりめぐらされ、プラントで採用されているものと同じ計器、表示機が設置され、溶接部、サビなどが実物のように再現されている。
実技では、試験用プラントを外部、内部からそれぞれドローンを使って確認をすること想定した操作法や注意点を学ぶ。外からの確認では、DJIのMatrice210を使い、サビの有無、ネジのゆるみの確認、ひび割れの有無などを確認する作業を学んだ。そのさい2人1組で、1人が飛行、1人がカメラを操作するオペレータに役割を分担。カメラ担当者が確認したい個所をカメラでとらえるために、ドローンを最適な場所に動かすようパイロットに指示する。パイロットは指示に従って位置をカメラオペレータに確認しながら微妙に位置を調整する。適切な場所にたどりつくと、カメラオペレータがカメラの向きを調整、ズーム使用の適否を判断するなどして、該当箇所をモニターにうつしだされた画像で確認する。
実技講習の中で、煙突を上空から確認する作業を実施したさいには、煙突内にはれれた網に画像の焦点があたり、網の内部が見にくい状況が発生。講師が「マニュアルフォーカスに切り替えて、網の奥に焦点をあたるよう調整してください」などと伝授した。
試験用プラント内部では、Flyability社のELIOS2で点検する運用を学んだ。配管のひび、サビ、傷などの劣化の有無の確認や、計器の読み取り、フランジ、ネジなどの劣化、ゆるみなど不具合の有無の確認をする作業をELIOS2で実施する方法だ。ELIOS2は、機体がガードで覆われ、確認したい個所に接触させて撮影することもできる。受講生は確認したい場所に機体を接近させる運用について指導を受けた。また、プラント内部では操縦者が機体の位置を目視で確認できないことが一般的であるため、講習でもパイロットが後ろ向きになり、機体を見ずに手元の画面をみて操作するFPV操作に慣れる練習も行った。
講習ではこのほか、煙突内での点検や、試験用トンネルの出入り口をふさぎ、光のないところで点検作業などの講習を受けた。
講習は最大4人1組で、1か月に2組まで受け入れる見込み。第2回は12月22、23日に予定している。
「JUIDAプラント点検スペシャリスト」は、JUIDAが9月に創設を明らかにしていた石油化学プラントのドローンによる点検技能を証明するライセンスで、日本の基幹産業である素材産業の生産を支える生産設備の保守、点検に関わる品質確保、効率性向上、作業員の安全性確保などを目的につくられた。創設にあたっては、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と連携した。講習はブルーイノベーション株式会社が担うが、ブルーイノベーションだけが担うものではなく、要件をみたしていれば他の事業者も講習側になれる。発表時には別名称だったが、その当時から提供時の名称変更の可能性を示唆しており、今回、提供を開始するにあたり「JUIDAプラント点検スペシャリスト」に整理した。
講習内容は、JUIDAが公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構・福島ロボットテストフィールドから委託を受けてとりまとめた「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関する実務マニュアル」、 「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関するチェックリスト」 、「ドローンを用いたプラント点検事業者教育カリキュラム」が土台となっている。
背景には総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省で構成する「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」が3月27日に、カメラを搭載したドローンによる点検作業を「目視点検」の一部について代替ができるとガイドラインに明示した経緯があり、新ライセンスは3省の合意に基づいているといえる。
受講には、JUIDA小型無人機操縦技能証明証、安全運航管理者証明証を取得している必要がある。
石油化学設備の維持管理の方法は、高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法、石油コンビナート等災害防止法の「保安4法」で管理されていているが、こうした動きを背景にr-ルの見直しがすすめられていて、高圧ガス保安法ではドローンを目視に代替することが可能となった。
「JUDAプラント点検ライセンス」は、RTFを実技講習の会場に指定している。RTFにとってライセンス授与の指定会場になるのは今回が初めてだ。
RTF技術部技術企画課の持田佳広課長は、「試験や訓練も含めて教育のために役立てて頂けることがありがたいと思っています」という。また、「試験用プラントは実際のプラントを模していて、有事、平時を想定した試験が可能です。経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催するWorld Robot Summit(WRS)では競技会場にもなります。研究開発、性能評価など人に近いものを作るさいに使って頂けるとありがたい。地元福島復興と発展に役立ちたいと思っています」とRTFの担う役割を解説した。
また技術企画課担当の中村泰拓さんはRTFで利用希望の多い施設として滑走路をあげた。敷地内に500mの滑走路がある(ほかに13キロ離れた場所に400mの浪江滑走路がある)。「ドローンや空飛ぶクルマの研究開発などを目的とした利用とみられます。広いエリアを飛ばすことができますので、活用をご検討頂きたいと思います」と話し、ドローンや空飛ぶクルマの開発関係での利用拡大を呼び掛けた。
ドローン議連(無人航空機普及利用促進議員連盟)会長代理の田中和徳前復興相は9月30日、開催中のJapan Drone 2020に登壇し福島ロボットテストフィールドの状況などについて講演した。田中氏は「地方物流網の維持に強く期待されている」などと指摘した。
福島イノベーション・コースト構想推進機構・福島ロボットテストフィールド(福島県)は5月15日、ドローンの活用が期待される分野での事業者認定や安全運用のためのガイドライン、教育カリキュラムを策定し、機体認定事業を実施したと発表した。今回策定したのは4分野で、4月に公表したプラント点検のガイドラインなどとあわせて、5分野が策定されたことになる。その一部は公開された。それぞれ運用事業者認定のさいの標準化を視野に入れており、今後テキストや育成コースの開発、認定スキームの策定を検討する。
新たに策定したのは①警備関連(福島浜通り地域における無人航空機による警備)②催事での空撮とAED搬送関国際イベント等の催し物等における小型無人機による空撮やAED 搬送)③催事保安関連(国際イベント等の催し物等におけるパブリックセーフティ確保)④機体認定(RTFにおけるJUAV機体認定事業第1号)の4分野。それぞれガイドライン、チェックリストなどで構成されている。すでにプラント点検関連(小型無人機を用いたプラント点検分野)については4月にマニュアル、ガイドライン、チェックリストを4月に公表済みだ。
策定されたガイドラインは関連業務でドローンを運用する事業者を認定するさいの指針となることを見込んでいる。公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構・福島ロボットテストフィールドが、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)、一般社団法人日本産業用無人航空機工業会(JUAV)と協力して策定した。
警備分野については、「警備分野における無人航空機の安全な運用方法に関するガイドライン」が策定された。策定の目的はドローンの導入による警備事業の省人化、効率化が期待される中で、「警備サービスにおける無人航空機活用を健全に推進すること」で、「無人航空機運用にあたり留意すべき事項を整理し」てある。
その中の「概要」では、航空法、小型無人機等飛行禁止法、電波法などのほか、警備業法の適用範囲の適用範囲について言及していて、ドローンの活用に関わる規定がないことや、警備業が扱う施設警備、雑踏警備、警備輸送、身辺警護の4業務のうち、ドローンの活用が可能と考えられる範囲はその一部であることなどを説明している。またそれをふまえ、ガイドラインでは施設警備だけを扱っていることを断っている。そのうえで「第43条では機械警備業務における即応体制の整備について規定されているが、『現場における警備員による事実の確認』を無人航空機単独で代替することはできない」などと注意が記されている。ドローンを活用するさいのフローも図解されている。
また活用方法として「常駐警備業務」と「機械警備業務」に分けて説明がつけられている。ここでは常駐警備での飛行前、飛行時、飛行後の作業を列挙してあるほか、警備業務に活用する機体に求められる要件や、ドローン、関連機材の選定についての記述もある。「無人航空機、搭載カメラ等の機材選定にあたっては、RTF を活用し性能試験および運用テストを行うことが望ましい」などの表現もみられる。「機械警備業務」については「基本的な考え方は常駐警備業務での無人航空機活用と同じ」としたうえで、「人的リソースが制限される」など常駐警備との違いを指摘するにとどめている。
警備分野については、ドローン警備事業者育成カリキュラムも公表された。座学は19項目あり、「警備運用におけるリスク」「対策方法」「緊急時対処方針の策定」などリスクに関連する3項目などが含まれている。実技も警備の現場に基づき7項目が設定されている。あわせて、「警備分野における無人航空機の安全な運用方法に関するチェックリスト」も策定、公表された。
国際イベントなどを想定した催事空撮やAED搬送については、「国際イベント等の催し物における空撮・救急医療分野での無人航空機の安全な運用方法に関するガイドライン」、「国際イベント等の催し物における空撮・救急医療分野での無人航空機の安全な運用方法に関するチェックリスト」「国際イベント等の催し物における空撮・AED搬送事業者教育カリキュラム」が公表された。
このほか、「国際イベント等の施設周辺に飛来する無人航空機の識別を含めたパブリックセーフティの確保のための無人航空機の安全な運用ガイドラインとチェックリスト」と「無人航空機の安全性に係る機体認定試験のあり方を検討するための、RTFの施設・設備を用いた飛行審査の実証実験」が策定、実施され、「ガイドライン」が公開された。「チェックリスト」と、機体認定試験関連の資料は非公開扱いとなっている。
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