「第2回ドローンサミット」が9月7日、長崎県長崎市の大規模展示場、出島メッセ長崎で開幕した。共同出展を含め約85の展示ブースでは、来場者が出展者に説明を求めたり、機体を撮影したりと交流がはかられ、3つの講演会場では企業や研究危難などの講演やパネルディスカッションが繰り広げられている。初日の7日には、長崎県五島市を主な舞台としたドラマ『舞い上がれ!』をイメージしたいわゆる空飛ぶクルマに関連したトークセッションが行われ、モデルになった企業2社が登壇した。会場近隣の公園では株式会社ACSL(東京)が災害対策を想定した飛行デモンストレーションを実施した。サミットは9月8日まで行われる。
会場は初日から多くの来場者でにぎわった。長崎での開催をふまえた地域色も特徴のひとつだ。
ドラマ『舞い上がれ!』のモデルとなった空飛ぶクルマ開発の企業のひとつ、テトラ・アビエーション株式会社(東京)の実機が展示され、多くの来場者が足を止めて写真を撮影していた。五島列島で医薬品配送などを手掛ける豊田通商株式会社(愛知県名古屋市)とそらいいな株式会社(長崎県五島市)は、配送に使っている米国のドローン配送スタートアップのジップライン(Zipline、カリフォルニア州サンフランシスコ)の機体などのシステムを展示し、来場者が関係者の説明を求めていた。
一方、体験型のブースも多い。パーソルプロセス&テクノロジー株式会社(東京)、株式会社Dron é motion(ドローンエモーション)などが共同出展するブースには、株式会社ORSO(東京)が開発した屋内用小型ドローン「DRONE STAR PARTY」の操縦体験コーナーが設置されている。DRONE STAR PARTYはプログラミングモードに対応させたばかりで、来場者は操縦とともに、プログラミングの体験もできる。DRONE STAR PARTYは株式会社オーイーシー(大分県)も、同社が共同出展する大分ドローン協議会のブース内で展示している。
ブルーイノベーション株式会社のブースでは、配管内の点検など人が立ち入れない場所の点検で活躍するスイスFlyability 社の球体ガードに覆われたELIOS3の操縦体験ができる。ブースにネットを設置し、飛行ルートに仕立てたたて、よこのコースを、来場者が直感的に操作する。初日も来場者が操縦に挑戦し「初めて操作したけど思ったより難しくなかった」などと話しながら飛ばしていた。一般社団法人日本水中ドローン協会(東京)は、ブースに水槽をおき、水中ドローンの操作体験ができるようにした。
ステージでは講演会、パネルディスカッションなどが繰り広げられた。展示会場内のステージでは、開幕にあわせて長崎県の大石賢吾知事があいさつをしたあと、展示機関がそれぞれの取り組みを説明した。JUIDAの熊田知之事務局長はドローンを飛行させるための国家資格創設に尽力した経緯や、JUIDA認定スクールでも国家資格対応のスクールが増えている現状を紹介した。あわせて従来のJUIDAの独自民間資格である「無人航空機操縦技能証明証」などの需要も旺盛であることから今後も継続することや、産業活用を想定した資格を充実させていく方針を説明した。
展示会場とは別にふたつのホールが準備され、それぞれドローン関連のセッション、いわゆる空飛ぶクルマ関連のセッションが繰り広げられている。この中ではドラマ『舞い上がれ!』のモデルとなった株式会社SkyDrive(スカイドライブ、愛知県豊田市)エアモビリティ事業部事業開発チームリーダー金子岳史氏、teTra aviation(テトラ・アビエーション)株式会社の新井秀美取締役が、ドラマの裏話や今後の可能性について話した。
SkyDriveの金子氏はドラマで描かれた出資決定場面を引き合いに「われわれでも投資家に来ていただいて出資が決まった思い出があります。ドラマをそれと重ね合わせて見ていて、ドラマの中で出資が決まるかどうかドキドキしていました」と振り返った。テトラの新井氏はドラマの女性主人公の活躍と自身を重ねてみていたことを振り返りながら「ドラマの主人公も執行役員として活躍します。これからは女性もいろんな人種の方も活躍する社会です。この会場にも女性がいらっしゃいます。どの産業であるかにかかわらずキャリアを目指して役職に取り組んで頂きたいと思っています」と呼びかけた。長崎県五島市総務企画部未来創造課⾧の村井靖孝氏がモデレーターとして進行した。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科空飛ぶクルマラボの中本亜紀特任助教は、長崎県での空飛ぶクルマの導入メリットや課題解決の展望について実施した調査結果を報告。その後、⾧崎県企画部デジタル戦略課⾧の井手潤也氏、双日五島開発株式会社代表取締役社⾧の池田尚真氏、オリエンタルエアブリッジ株式会社防災ヘリ運航部飛行課課⾧の酒井翼氏と意見交換した。
「空飛ぶクルマ自治体連携最前線!~広域ベネフィットを見据えた実装に向けて~」では、自治体の幹部ではなく、担当セクションの担当職員が登壇し機関決定をしていない担当者の個人的な考えや“妄想”を披露する意欲的なセッションだった。経済産業省次世代空モビリティ政策室の山本健一氏がモデレーターをつとめ。三重県デジタル社会推進局デジタル事業推進課、兵庫県産業労働部新産業課新産業創造班、大分県商工観光労働部先端技術挑戦課先端技術挑戦班、四国経済産業局地域経済部製造産業・情報政策課からの登壇者が次々と見解を披露。DRONE FUND株式会社最高公共政策責任者の高橋伸太郎氏がコメントした。
屋外でのデモンストレーションも行われた。会場近隣の防災緑地では、ACSLが災害の発生を想定してドローンを飛ばした。撮影用の機体SOTENに装着した赤外線カメラで救難者を発見し、物流用のPF-2で救援物資を届けるミッションを公開した。この様子は自民党参院議員鶴保庸介氏(無人航空機普及・利用促進議員連盟幹事長)氏らが視察。視察した鶴保氏は「ドローンの普及を急ぐべきであることは改めて確認できました」と話しながら「ただ性能のいいものは、高いな」と問題意識も提示した。
サミットは8日も、展示、講演、デモンストレーションが行われる。
AAM(アドヴァンスト・エア・モビリティ)運航事業を手掛け、大阪・関西万博の運航事業者にも名を連ねる株式会社Soracle(ソラクル、東京)が、2027年中にも大阪・関西エリアで旅客運航を目指す計画を明らかにした。9月10日に大阪府、大阪市と連携協定を結んでおり、その席で計画を明らかにした。米Archer Aviation(アーチャー・アヴィエーション)のパイロット1人を含めた5人乗りのeVTOL型AAM、Midnight(ミッドナイト)を使うことを想定しているという。
Soracleは2026年にも大阪府内で実証飛行を実施し、必要な審査をふまえ27年にも大阪ベイエリアでの遊覧飛行などを始める。周回して出発点に戻る運航のほか、離陸地点から別の場所に移動する二地点間飛行も想定する。
大阪府と大阪市との連携協定は、ソラクルの事業環境を整えることや、運航網整備に必要なインフラ整備に向けた調査、制度の整備、関連ビジネスの展開支援などの事業環境整備に向けた取り組みを進める。締結式では太田幸宏CEOが、大阪に来れば全国に先駆けて空飛ぶクルマに乗ることができる未来を実現し、中長期的には関西・瀬戸内海地点を結ぶ観光体験を創ると抱負を述べた。
吉村洋文知事は「さまざまな課題はあろうかと思いますが、Soracleさんと協力し、大阪府・市も全面的に当事者として取り組むことで、2027年に商用運航を、そして大阪に来れば空飛ぶクルマに乗ることができるということをめざしていきたいと思います。大阪・関西から、空の移動革命を実現していきましょう」と述べた。
Soracleの公式発表はこちらにあります
スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
参考:GMO熊谷氏、HEXA搭乗し飛行を公開
参考:GMO熊谷氏にHEXA公開搭乗の理由を聞く
参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始
ドローンショーの株式会社レッドクリフ(東京)が、フィンテックのフリー株式会社(freee株式会社)の活用事例に登場した。レッドクリフが搭乗したのはfreeeが提供しているプロダクト「freee販売」の活用事例で、ビジネスの急拡大に伴う業務管理の効率化に役立てていることが紹介されている。取引先の業務効率化をアピールすることが多いドローン事業者にとって、freeeの活用事例はモデルになりそうだ。またドローン事業者が他の事業者の活用事例に取り上げられることも今後、増えそうだ。
フリーが公表したレッドクリフの活用事例はこちらからみられる。
それによると、事業の急拡大で案件別の収支管理や、全体の把握、属人依存の管理に限界が見えてきた中で、それまでスプレッドシートに頼ってきた業務フローを見直しに着手した。freee販売の導入で、受発注データと原価情報を集約し案件ごとの収支把握が容易になり、部門を越えたデータ共有や、各部門がそれぞれの業務に集中できる態勢が整ったという。チェック漏れリスクの軽減と業務負担の軽減が同時に果たせ、人件費、立替経費、ドローンの減価償却費を案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が実現し、経営判断の精度向上にも繋がっている。
結果として、IPO準備に不可欠な「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」をデータに基づいて説明できる環境ができたという。
ドローンの事業者も、取引先の効率化をソリューションとしてアピールする事例が多く、活用事例でも導入先の作業の時間短縮効果などが掲載されることが多い。一方で、導入先にとっては、その事例が解決したい課題の一部にすぎないことや、導入による新たな負担などが発生するケースもあり、活用事例のアピールの方法について、各者が試行錯誤している。
freee販売の活用事例では、汎用性の高い困りごとを取り上げていて、freee販売の商品性のアピールになるとともに、多くの企業にそのアピールの手法そのものが参考になりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンによるマンション外壁点検の仕事を請け負うための力を養う講座「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」の内容を解説する「講座ご案内ウェビナー」をJUIDAの公式ページ上で公開した。ウェビナーは7月に視聴者を募って行われ、講座は8月に開講した。現在も受講生を募集している。
「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」は、JUIDA、マンション管理など不動産管理大手の株式会社東急コミュニティー、ドローンスクール運営の株式会社ハミングバードの3者が作った講座で、5月に公表し、6月に開催された展示会「JapanDrone」で3者そろって発表会に臨んでいた。3者は新たな講座のマンション外壁点検の現場で求められる実務を盛り込んだことと位置付けている。
マンション外壁点検でのドローン導入期待は高いものの、外壁点検の現場や実務を知るドローン事業者は多くない。マンションの管理組合などから点検業務を請け負うマンション管理事業者側にとっては、現場知識の乏しいドローン事業者にドローンでの点検を依頼すると、ドローン事業者が担うべき実務を一から伝えなければならず、手間、時間、コストの負担が大きい。これがドローンの導入を阻む要因になっていると言われている。このため講座を通じてマンション外壁点検に求められる実務の知識を習得することで、マンションの外壁点検現場へのドローン導入を後押ししようとする狙いがある。
公開された動画は、全体で50分弱。事務局のあいさつ、カリキュラム概要、受講料、受講会場など講座に関わる説明が27分ごろまで行われる。この中では、点検作業後に作成し、依頼主に納める報告書の重要性が強調されている。ドローン作業者には、報告書の重要性や、報告書に掲載するための画像の要件が講座で解説されることなどが伝えられている。
その後、事務局が設定した想定質問に、担当者が回答する一問一答が行われる。一問一答の中では、講座の修了生には必ず外壁点検の仕事があっせんされるのか、タワーマンションにも対応可能なのか、など受講判断に関わりそうな質問がいくつも盛り込まれていて、担当者の回答は、受講を検討者の参考になりそうだ。
高校生FPVドローンレーサー・山本悠貴選手が、9月13日にドイツで開幕する国際レース出場に向けてクラウドファンディングを実施中だ。山本選手をスポンサーとして応援している株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)がプレスリリースで山本選手の活躍を紹介している。
山本選手は今年7月12日~13日にイタリア・アルビッツァーテで開催された「World Drone Cup Italy 2025」で予選を総合3位で通過してジュニア部門の決勝に進出した。山本選手としては初の決勝進出で、決勝でも4位入賞に食い込む活躍を見せた。なお、ジュニア部門ではすでに数々の大会で優勝経験を持つ日本の橋本勇希選手が優勝している。
山本選手は、2024年10月30日から11月3日まで中国杭州市のShangcheng Sports Centre Stadiumで開催されたドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(WDRC)」で、橋本選手とともに日本からの5人の選手の一人として出場し、各選手の成績を集計した国別順位で日本代表チームが3位に導く立役者の一人となっている。 なお、イタリア大会で優勝した橋本選手は、中国杭州市の大会でも個人総合、ジュニア部門の2部門で優勝している。
ドローンショー・ジャパンのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000080729.html?fbclid
イタリア大会結果詳細: https://fpvscores.com/events/0DNj73gpMX/results
山本選手の動画:https://youtu.be/1auUXebjYTc
<参考>中国大会で日本総合3位、橋本選手は個人総合、ジュニア部門の二冠:https://dronetribune.jp/articles/24276/
山本選手のクラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/876711/view?utm_campaign=cp_share_c_msg_projects_show
ブルーイノベーション株式会社は9月3日、沿岸防災ドローンとして注目されている「BEPポート|防災システム」の解説動画を公開した。仙台市と千葉・一宮町に配備されたシステムは津波警報のさいに初出動したことをきっかけに、自治体からの注目度がさらに高まっている。
動画は7分弱。「BEPポート|防災システム」について、「災害発生時の初動を支援する次世代型ソリューション」と説明していて、主に自治体の防災担当者や関係者、協力事業者らを対象としているとみられる。
開発したブルーイノベーションの紹介、災害時の初動対応に求められる3要素などの説明があり、それらの説明をうけて、2分50秒ごろから具体的な説明に入る。Jアラートを受けてBEPポートが自動的にドローンに離陸を指示する仕組みなどが説明されている。
また終盤の5分ごろからは、7月30日の津波注意報、津波警報を受けて一宮町<千葉県>のシステムが初出動した模様を紹介している。
システムは一宮町と仙台市<宮城県>に設置していて、7月30日の津波注意報、津波警報を受けてそれぞれ出動した。
なおブルーイノベーションは、東京都立産業技術研究センターの「クラウドと連携した5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業 公募型共同研究」に、同社が「BEPポート|防災システム」の活用を前提に提案した「自動離発着型ドローン多目的災害支援システムの研究開発」が採択されたことを9月1日付で発表している。孤立地域の状況調査、倒壊家屋の監視など災害現場で求められる機能を新規開発する計画だという。