風況観測技術の開発を手掛けるメトロウェザー株式会社(京都府宇治市、古本淳一代表取締役)は4月11日、海運、鉄道、物流、金融など12社から約7億円を調達したと発表した。調達先は既存株主のリアルテックファンド、DRONE FUNDのほかヤマトホールディングス系やJR東日本系のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などが名を連ねる。調達した資金を体制の構築や開発にあてるほか、事業の現場も抱える出資企業と連携を深め、海外も含めた事業展開の加速化を図る。
調達は12社を引受先とした第三者割当増資等でシリーズAラウンドとして実施し。メトロウェザーは京都大学発スタートアップで、風向きや風速を三次元でとらえリアルタイムで可視化する小型・高性能ドップラー・ライダー・システムを持つ。風況観測はドローンや空飛ぶクルマの自律飛行の実装に欠かせない技術で、出資企業と連携し実証実験を重ねる。
発表は以下の通り(以下、引用)
風を3次元に可視化する小型・高性能ドップラー・ライダー・システムを擁するメトロウェザー株式会社(本社:京都府宇治市、代表取締役 古本淳一、以下「メトロウェザー」)は、このたび 既存株主であるリアルテックファンド、DRONE FUND 及び新たにグローバル・ブレインが運営するCVCファンドをはじめとした、VC及び事業会社計12社を引受先とした第三者割当増資等により、シリーズAラウンドにおいて総額約7億円の資金調達を実施したことをお知らせします。
メトロウェザーは、小型高性能ドップラー・ライダーにより空の風況を立体的に把握し、可視化することで「風」の課題を解決し、「エアモビリティー社会」と「安全安心な都市生活」の実現に貢献することを目指しております。シリーズAラウンドの資金調達により、各株主企業様との連携をより一層深め、国内のみならず海外展開を視野に入れた組織体制の構築と、さらなる事業展開を加速させてまいります。
メトロウェザーは、ドップラー・ライダーの活用により、ドローンの運行に必要不可欠となるリアルタイムでの高精細風況情報の提供を実現します。これによりレベル4飛行の大きなハードルとなっている「高度な安全性の確保」を達成し、ドローン前提社会における必須のインフラとなることを目指します。
さらに、独自の気象予測シミュレーションを組み合わせることで、都市防災・風力発電・航空・海運・鉄道領域等、ドローン関連のみならず弊社技術に関連する幅広い分野の市場への参入を進めてまいります。
■ シリーズA資金調達先 計12社
(既存先)
・リアルテックファンド
・DRONE FUND
・株式会社日本政策金融公庫(資本性ローン等)
(新規先)
・JGC MIRAI Innovation Fund(運営:グローバル・ブレイン株式会社)
・KURONEKO Innovation Fund(運営:グローバル・ブレイン株式会社)
・株式会社MOL PLUS(株式会社商船三井100%出資CVC)
・JR東日本スタートアップ株式会社
・ACSL1号有限責任事業組合
・鐘通株式会社
・三菱UFJキャピタル株式会社
・SMBCベンチャーキャピタル株式会社
・京銀リース・キャピタル株式会社
<各社のコメント>
■リアルテックホールディングス株式会社 永田暁彦代表取締役
言語の壁を超えて全世界70億人にイノベーションを提供する、これを実現できるのがリアルテックの価値です。メトロウェザーはこの実現に大きく近づきました。同社のドップラーライダーを活用したユースケースの拡大、そして空のインフラ構築を、今回参画頂いた事業会社等の力強い仲間と共に、今後もリード投資家として全力で支援して参ります。
■DRONE FUND 大前創希共同代表パートナー
ドローン・エアモビリティの社会実装の機運を受け、メトロウェザーの存在感が高まっており、大変頼もしく感じます。人々の頭の上をドローンやエアモビリティが飛び交うレベル4の実現には、メトロウェザーの技術は不可欠なものになっていくと確信しています。本ラウンドでは新たに参画頂いた日本を代表する事業会社の方々と事業を一層加速できるよう、 DRONE FUNDとして全力で支援していきます!
■グローバル・ブレイン株式会社(JGC MIRAI Innovation Fund・KURONEKO Innovation Fundを運営) 百合本安彦代表取締役社長
メトロウェザー社のドップラーライダーは、海外含めた競合他社と比較して高スペックであり、また圧倒的な小型サイズと低製造コストを実現しています。風力発電量予測等いくつかの用途での活用が期待されておりますが、特にドローン自動運行への風況予測データ提供において高いポテンシャルを見ています。ドローン自動運行で不可欠となる高い時空間解像度のデータを提供する上で、メトロウェザー社の技術が唯一無二のソリューションとなりうると考えています。グローバル市場を取れるポテンシャルを持つ当社の今後の事業成長に貢献すべく、弊社としてもしっかり支援してまいります。
■日揮株式会社 未来戦略室 / JGC MIRAI Innovation Fund CVCフロントチームリーダー 坂本惇氏
日揮グループは安全・安心で持続可能な社会システムの実現に向けて、革新的な技術やビジネスモデルを有するスタートアップ企業への投資を行っています。今回の出資に際して、メトロウェザーが目指すビジョンに強く共感し、また、下支えとなる優れた信号処理、風況観測・予測シミュレーション技術を高く評価致しました。今後、日揮グループが培ってきたエンジニアリング技術や各領域の知見を融合させる事で、産業プラント、風力発電領域に加え、新たな社会インフラ構築に向けたイノベーションを起こす事を期待しています。
■ヤマトホールディングス株式会社イノベーション推進機能/KURONEKO Innovation Fundシニアマネージャー足立崇彰氏
風況計測は、 安全なドローン運行にとって重要な要素です。メトロウェザー社のドップラー・ライダーは、観測技術の高さとコスト面で高い優位性を持っています。ヤマトグループは、ドローンを活用した「新たな空の輸送モード」を現在構築しており、そのなかでドップラー・ライダーは、必要不可欠なテクノロジーです。今後、協業を通じて、両社がより事業成長できるよう取り組んでまいります。
■株式会社MOL PLUS 阪本拓也代表
メトロウェザー社の事業ビジョンに共感し、また直近1年間で多様な産業へのソリューション展開をスピーディーに推進されていることに可能性を感じ、この度他の多くの出資者の皆様とともに、ご一緒させていただくことになりました。MOL PLUS はメトロウェザー社が実現を目指す風況予測ソリューションの各産業への社会実装に貢献します。とりわけ海運や海洋事業領域での社会実装について推進させていただきます。具体事例として、今回の出資に際し商船三井の『ウインドハンタープロジェクト』においてドップラー・ライダーを用いた風況予測の実証実験を共同で取り組みます。今後の取り組みを楽しみにしております。
■JR東日本スタートアップ株式会社 柴田裕代表取締役社長
ドップラーライダーのテクノロジーを応用して、鉄道工事の課題を解決する…。 そんな無謀…否、果敢なチャレンジをいま、メトロウェザー社と一緒に進めています。場所はリアルの鉄道路線(休止線)。そこにドップラー・ライダーを持ち込んで支障物を検知する実証実験は、なんともダイナミックで斬新なものでした。まだ課題は山積ですが、この技術は未来の鉄道現場に広く活用できると思っています。共創パートナーのメトロウェザー社を、私たちはこれからも応援していきます。
■株式会社ACSL 早川研介取締役CFO
株式会社ACSLはドローンメーカーとして、ドローンを活用した社会課題の解決に向けた取り組みを進めております。レベル4の法規制整備やデジタル田園都市国家構想の推進、脱炭素化に向けた動きの加速などによりドローンが活用される場面が増えていくことが想定されるなかで、空の風況を適時かつ正確に把握することは、ドローンが安全に飛行するうえで無くてはならないものであると考えております。今後もメトロウェザー社と連携し、ドローンの社会実装に向けた取り組みを進めてまいります。
■鐘通株式会社 松井宏記代表取締役社長
地球温暖化等による様々な自然災害に対し、現在の技術力をもってしても人類は無力です。そのような得体の知れない巨大な敵に対し立ち向かうメトロウェザー株式会社。様々な視点から自然の可視化に挑む産まれたての企業に無限の可能性を感じ出資させて頂きました。同じ京都の企業という事もありますので弊社としても部材調達や最新の製品情報提供等のサポートを全力でさせて頂きます。共に京都から世界へ、これまでに無かった新たな価値を提供して参りましょう。
■三菱UFJキャピタル株式会社 矢野潤大阪投資部次長
「風を制し空の安全を守る」を企業Visionとして2015年に設立された京都大学発スタートアップ企業です。これまで培ってきた独自のリモートセンシング技術と信号処理技術に気象情報を組み合せ、高精度の風況観測を実現する小型ドップラー・ライダーを開発しました。ドローン運行のための風況情報提供に加え、都市防災、風力発電など、幅広い分野への展開を目指します。当社の技術が、未来社会における大事なインフラになっていく事を期待して、全力で支援してまいります。
■SMBCベンチャーキャピタル株式会社 池田一生関西投資営業部副部長
空を見上げれば物を運んだり測量をしたりしているドローンが当たり前に見える未来、メトロウェザー社の風況計測技術はそのような未来を実現する基礎インフラになり得る技術と感じ今回初めて出資をさせて頂きました。新しい未来の実現の一助になればと思い全力で今後も支援させて頂きたいと思います。
■京銀リース・キャピタル株式会社 村田義樹氏
「エアモビリティ―社会」と「安心安全な都市生活」の実現に対し、京都大学発ベンチャーとして非常に高い技術力をもって貢献される当社の取組や姿勢に共感し、今回投資を行いました。京都銀行グループとして、今後の当社の成長と発展を支援してまいります。
■メトロウェザー株式会社 古本淳一代表取締役
この度は既存投資家様をはじめ多くの事業会社様を中心にシリーズAラウンドの資金調達が完了できましたこと皆様に心より御礼申し上げます。弊社のドップラー・ライダーは商用ベースでドローンが安全・安心に飛行するために必要不可欠である3次元の風情報をリアルタイムに提供し、高度なオペレーションが要求されるレベル4運航実現の切り札になるものと考えております。このラウンドを機に事業会社様との連携をさらに深め、 幅広い市場への参入を図るとともに国内はもとより海外展開の礎を構築し、 次のラウンドで本格的な海外展開を果たすことを目指してまいります。
■ メトロウェザー概要 設立 : 2015年5月 代表者 : 代表取締役 古本 淳一 URL : https://www.metroweather.jp 所在地 : 京都府宇治市大久保町西ノ端1-25宇治ベンチャー企業育成工場6号 事業内容 : 弊社は、赤外線を用いて風に舞った大気中の塵や微粒子を散乱体として反射光を受信し、ドップラー効果を利用した解析を実行することで、 風況をリアルタイム・3次元に把握・可視化するドップラー・ライダーの開発・販売及びデータ提供を行っております。京都大学で長年培った大気リモートセンシング技術の開発・解析技術をベースに弊社が開発した小型高性能ドップラー・ライダーは、従来の大型ドップラー・ライダーと同等の性能を維持しつつ、低価格を実現しております。弊社ドップラー・ライダーを活用した社会課題の解決に向け、弊社は国内外で複数の企業様・研究機関様との共同研究や実証を進めており、2021年からはNASAの研究開発プロジェクトにも参画しております。
国土交通省のWEBマガジン「Grasp」が5月18日、ドローンとエアモビリティに関連するスタートアップ向けのベンチャーファンド、DRONE FUNDの創業者、千葉功太郎代表パートナーのインタビューを掲載している。千葉代表パートナーはドローンとの出会いから、DRONE FUNDを創設までの経緯、市場の展望などについて触れている。今回公開されたインタビューは前編で、後編が21日に公開されると予告されている。
「Grasp」は国交省の取り組みを掘り下げるWEBマガジンで、インタビューではさまざまな取り組みを俯瞰して考えるためのキーパーソンが登壇している。千葉氏は、「ロボットの目に映る『物流の未来』」のシリーズの中で、ドローンを活用する専門家として登壇。「ドローンがインフラになる日」のテーマのもと、DRONE FUND創設に至る経緯や、市場の展望、投資先企業の領域などについて多角的に説明している。
この中では株式会社ORSO(東京)の坂本義親代表に紹介されてドローンを初めて飛ばしたドローンとの出会いや、自分で飛ばすにつれて「インフラになる」との感覚を覚えたこと、エンジェル投資家として投資しているうちにドローン関連銘柄が増えてDRONE FUNDの創設に至った経緯などを話している。
また物流利用について、「重要度は非常に高い」と述べ、物流が抱えている課題を「物流業界固有の課題」と「地域特有の課題」に整理し、それぞれをドローンが解決しうるとの展望を述べている。
後編は21日に公開される予定だ。
DRONE FUND(東京)は3月9日、3号ファンド(DRONE FUND 3号投資事業有限責任組合)のLPとして、清水建設株式会社、日本ユニシスのCVCであるキャナルベンチャーズ株式会社を新たにLPに迎えたと発表した。またこれまでに総額約50億円の調達をしたこともあわせて公表した。
清水建設がDRONE FUNDに参画したのは今回が初めて。キャナルベンチャーズは1号、2号に続いてのLP入りとなる。すでにSMBC日興証券株式会社、株式会社NTTドコモ、ソフトバンク株式会社、小橋工業株式会社、国際航業株式会社、株式会社リバネスが公表されていて、ほかに非公表のLPがいる。
3号ファンドは2020年5月、目標調達額を100億円に設定して設立された。ファイナルクローズに向けて今後も資金調達活動と、ドローン・エアモビリティ前提社会の実現に取り組む方針だ。。
追加調達に関してDRONE FUNDは、次世代通信規格5Gなどの活用を通じフィールド業務の自動化、リモート化を可能とし、ドローン・エアモビリティの社会実装に寄与しうるテクノロジー、ソリューションへの投資を展開すると表明している。
DRONE FUND(東京)は11月30日、オンライン勉強会「ドローン・エアモビリティ2020年の市場状況および2021年の展望について」を開催し、共同創業者の大前創希代表パートナー、最高公共政策責任者の高橋伸太郎パートナーが登壇した。大前氏はこの中で、2020年5月に設立した3号ファンドの投資対象について、ドローンの普及、技術の向上に資する知見や関連する周辺技術を持つ企業も広く対象とする考えを表明した。
大前氏はオンライン勉強会の中で、3号ファンドの投資基準について、安全性、環境性、経済性を重視すると説明。中でも「高度な自律制御、リモートコントロールの実用化」「電動化」「大量生産、サービスの推進」の3領域を重視するとし、それぞれについて対象となりうる技術を「インテグレーション技術」、「エッジコンピューティング」などと例示した。
また、ドローン、エアモビリティに直接、携わっていない企業も「対象になり得る」と述べ、「技術の向上につながる高度な専門性を持っていたり、普及促進を加速させる知見を持っていたりする場合はドローン、エアモビリティ前提社会の実現に力になると考えている」と述べた。
ドローンファンドは1号、2号を通じてドローンやエアモビリティに直接または間接的に携わっている企業への資金拠出を通じて「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現を目指してきた。ただ、2号ファンドでは、X線を活用したカメラ・センサーを開発する静岡大学発ベンチャー、株式会社ANSeeN(静岡県浜松市)に出資した実績がある。ANSeeNの技術はインフラの非破壊検査など従来のカメラやセンサーではできなかった作業を可能にする。ドローンに直接関連する企業ではないが、大前氏は「ドローンの活用が広がる可能性・将来性を高く評価して投資を決めた経緯があります。今後もこうした企業が投資の対象になりえます」と述べた。
一方、高橋氏は、ドローン飛行の環境整備で、2022年度の実現を目指している「有人地帯の目視外飛行」を表す「レベル4」のさらに先となる「レベル5」の検討の必要性について見解を披露。高橋氏は個人的な見解と断ったうえで「①高高度の安全性、②小型機だけでなく中型機、大型機の取り扱い、③ビヨンド5Gに向けた環境整備などのイメージを持っている」と述べた。
ドローン関連特化型のベンチャーキャピタル、DRONE FUND(ドローンファンド、東京都渋谷区)は10月14日、「DRONE FUND 3号投資事業有限責任組合」を設立したと発表した。目標調達額の100億円に向け今後資金調達を進め、来年2021年3月にファイナルクローズを予定している。ドローンやエアモビリティの社会受容性強化や、第5世代移動通信システム(5G)活用高度化などに取り組む。目標を達成すると、1号の15.9億円、2号の52億円とあわせて167.9億円となり、世界最大規模のドローン関連特化型ファンドとしての位置づけの足固めとなるうえ、DRONE FUNDが掲げる「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現をさらに後押しすることになる。また1~3号の活動を通じ、通信大手3社すべての参画を獲得したことになる。
DRONE FUNDの発表によると、3号ファンドの設立は今年(2020年)5月で、9月にファーストクローズを迎えた。すでにSMBC日興証券株式会社、株式会社NTTドコモ、ソフトバンク株式会社、小橋工業株式会社、国際航業株式会社、株式会社リバネスなどの参加が公表されている。
調達した資金は、フィールド業務の自動化やリモート化など、ドローン・エアモビリティの社会実装に寄与するテクノロジーに照準を定めて投資する方針で、「社会実装ファンド」となる方向性を打ち出している。このため連携先としてはドローン・エアモビリティ産業の発展を重視しており、スタートアップ支援に限定しないと表明していることが今回のひとつの特徴だ。
さらに、ドローン、エアモビリティの社会実装を通じて、人口構造、気候変動、インフラ老朽化、広域災害などの社会課題を従来よりも広くとらえ、国連が掲げる「2030年までに達成すべき17の目標」に対応することを掲げた。より強い社会性を打ち出したことで、幅広い層の関心を引き寄せ、参画を促すことが期待される。
この日は、ドローン運用のトータルサポートサービス「docomo sky」を展開するNTTドコモも、3号ファンドに10億円の出資を決定したことを発表。小橋工業も参画決定を発表した。
ドローンファンドは2017年5月30日に個人投資家の千葉功太郎さんが創設を発表し、翌日の6月1日に、ドローン系スタートアップ特化型ファンドとして正式に発足した。その後、ドローンをめぐる解釈や寄せられる期待、取り巻く環境や社会情勢の変化を柔軟に取り入れ、2号ファンドではエアモビリティを投資先判断に加えるなど、ファンドそのものも質的、量的に成長、進化している。
一方、社会情勢の変化への対応速度が諸外国と比べ見劣りする日本経済の中で、もどかしさを感じる声は年々高まっており、ドローンファンドはこうした声も吸収しながら、社会課題の解決や、希望や夢の成就、実現を引き受けていくことになりそうだ。
DRONE FUNDが発表した3号ファンド設立の背景は以下の通り。
<【3号ファンド設立の背景】今日、労働人口の減少やインフラの老朽化、苛烈さを増す気候変動や自然災害、そして新型感染症の流行など、国内外の様々な社会課題に対し、AIやロボティクス、そして新しいモビリティを活用したイノベーションによる解決とNew Normalな世界の構築が強く期待されています。ドローンファンドは、「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現を目指し、関連スタートアップへの投資を積極的に実行して参りました。15.9億円で組成した1号ファンド、および52億円で組成した2号ファンドを通じて、国内外40社以上のポートフォリオを形成しております。1号ファンドの代表的な投資先としては、2018年12月、ドローン銘柄として初の東証マザーズ上場を果たした株式会社自律制御システム研究所が挙げられます。2号ファンドでは、株式会社SkyDriveなどのエアモビリティの領域、マレーシアのAerodyne Groupに代表される海外の有力なスタートアップ、その他必要不可欠なコアテクノロジーを有するスタートアップなどに投資領域を拡大するなど、「空の産業革命/移動革命」を全方位的に牽引してまいりました。昨年度は「2022年度におけるドローンのレベル4運用の解禁」、そして「2023年度におけるエアモビリティの事業化開始」というチャレンジングな政策目標が閣議決定され、それらの動きに呼応するように地方自治体の活動も活発化しています。これらの機運を追い風に、日本のドローン・エアモビリティ関連のスタートアップにはますますの飛躍が期待されています。>
また、3号ファンドについては、次のように説明している。
<【3号ファンドに関して】ドローンファンドは、「ドローン・エアモビリティ社会実装ファンド ~社会受容性の強化と5Gの徹底活用~」というコンセプトのもと、3号ファンドの活動を展開してまいります。具体的には、次世代通信規格の5Gをはじめとする通信インフラの徹底活用などを通じて、フィールド業務の自動化やリモート化などの産業活動のDX(デジタルトランスフォーメーション)を可能とし、ドローン・エアモビリティの社会実装に寄与するテクノロジーへの投資を実行いたします。また既存のファンドも含めると、ドローンファンドには大手通信事業者3社の皆さまに投資家として参画いただくなど、スタートアップ支援に限らず、ドローン・エアモビリティ産業の発展にあたって理想的な座組みが形成できつつあります。ドローンファンドは、今後3号ファンドにご参画いただける投資家の皆さまとも精力的な連携を行いながら、ドローン・エアモビリティ前提社会の実現にむけた投資を加速してまいります。>
この時点で公表された、3号ファンドに参画した投資家情報(一部)は以下の通り。
・SMBC日興証券株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 雄一郎) ・株式会社NTTドコモ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:吉澤 和弘) ・ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼CEO:宮内 謙) ・小橋工業株式会社(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:小橋 正次郎) ・国際航業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:土方 聡) ・株式会社リバネス(本社:東京都新宿区、代表取締役グループCEO:丸 幸弘)
【3号ファンド代表のプロフィール】 ■千葉 功太郎 (創業者/代表パートナー) 1997年、慶應義塾大学環境情報学部を卒業し、リクルートに入社。サイバード、KLabを経て、2009~16年、株式会社コロプラに参画(副社長)。エンジェル投資家(60以上のスタートアップ、40以上のVCに個人投資)であり、2017年にDRONE FUND、2019年には千葉道場ファンドを創業。慶應義塾大学SFC招聘教授。ホンダジェットの国内顧客第1号で、航空パイロット(自家用操縦士)でもある。 ■大前 創希 (共同創業者/代表パートナー) 2002年、Web/ITコンサルティングの(株)クリエイティブホープを創業(現会長)。2014年よりドローングラファとして活動(2016年3月ドローンムービーコンテスト2016 準グランプリを受賞。2018年3月~8月に放送された読売テレビ・ドローン絶景紀行の総合監修を担当)し、ビジネス・ブレークスルー大学/大学院の教授職(専門はデジタルマーケティング)も兼任。 【3号ファンド概要】 ドローンファンドは、「ドローン・エアモビリティ前提社会」を目指し、ドローン・エアモビリティ関連のスタートアップに特化したベンチャーキャピタルです。1号および2号ファンドを通じて、国内外の合計40社以上のポートフォリオを形成しています。3号ファンドでは、ドローン・エアモビリティおよびその社会実装に資するテクノロジーへの投資活動を幅広く展開してまいります。 ・ 正式名称: DRONE FUND 3号投資事業有限責任組合 ・ 運営会社: DRONE FUND株式会社 ・ 代表パートナー: 千葉 功太郎、大前 創希
2020年9月16日、日本では安倍政権が退陣し、菅内閣が発足した。日本では、20世紀の段階から、農薬散布を目的とした、産業用無人ヘリコプターの開発や実装が行われてきた。しかし、無人航空機が政策分野として本格的に立ち上がったのは、安倍政権になってからである。そのため、今回は、新しい政権が発足する節目のタイミングで、産業用ドローンの社会実装戦略について記事を寄稿する。
現在、日本では、人口構造の変化(人口減少・高齢化)や、インフラ老朽化、大規模災害、新型感染症のリスクに直面している。こうした課題を解決するためには、新しいテクノロジーの実装や、社会システムの再構築が必要である。
ドローン(無人航空機)を活用した場合、空からの産業活動が可能となるメリットがある。具体的には、インフラ点検や、建設・土木、測量、警備、環境調査、農業、森林管理、漁業・水産資源管理、環境調査、災害対応、保険調査などの分野で、社会実装が始まっている。
産業分野において、ドローンには三つの役割があると考えられる。一つ目は、カメラ・センサーとしての役割である。情報収集・意思決定のサポートを行う。二つ目は、ロボットとしての役割である。作業のサポートを行う。三つ目は、モビリティとしての役割である。移動のサポートを行う。これら三つの役割を通じて、フィールド業務の自動化・リモート化への貢献が期待されている。
日本では、ドローンといえば、小型民生用マルチコプターを思い浮かべることが多いが、産業目的で使う場合、用途に応じて、機体の種類を使い分けていく必要がある。機体の構造・飛行方法などで分類した場合、回転翼機(シングルローター、マルチコプター)、固定翼機、VTOL機、飛行船・気球型などが存在する。
市場環境でみた場合、日本では市場規模の拡大や制度設計が進み始めている。インプレスの調査では、2019年度の日本国内のドローン産業の市場規模は1,409億円である。2018年度の931億円から478億円(前年度比51%増)増加している。制度設計については、2022年度のレベル4(有人地帯の目視外飛行)の実装に向けて、官民協議会などで制度設計に向けた議論が進められている。
しかし、今後、産業として成長を加速させるためには、社会実装戦略について再構築する必要がある。実証実験のフェーズから、実装段階のフェーズに移行させるためには、業務プロセスの一部を置き換えるのではなく、フィールド業務の自動化やリモート化を前提に、プロセス全体の再構築を進めることが求められる。
制度設計についても、空全体の産業戦略の視点で、ルール形成を行っていくことが不可欠である。現在、空の産業革命に向けたロードマップは、小型無人機の低高度における利用を想定し、四つのレベルで設計されている。しかし、小型無人機だけでなく、エアモビリティ やHAPS(成層圏プラットフォーム)などの実装を行うためには、低高度から高高度までを含めた空の利活用について再設計を進めていくことが求められる。統合的な空のプラットフォームとして、新しいレベル(レベル5)のコンセプトを提案する方法も考えられる。
現在、ドローン産業は、重要なターニングポイントを迎えている。社会的な課題の解決に貢献し、産業として成長するためには、新たな進化が必要な時期にきている。新型感染症の拡大を背景に、新しい社会を求める動きも出てきている。こうした変化に対応していくためには、自らコンセプトを提示し、行動していくことが重要である。(寄稿)