一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は4月25日、「ドローン官民協議会(=小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)」がとりまとめた国家資格化に伴う制度変更の方針について、加盟する認定スクール向けに説明会を開いた。協議会の資料や、JUIDAが独自に整理した資料を示しながら、国家資格である「技能証明」を取得するメリットや、取得方法、JUIDA資格保持者の取り扱い、JUIDAのカリキュラムで捕捉が必要な部分などを説明した。国家資格の講習を提供する登録講習機関に転じるスクールの動きが加速しそうだ。
説明会ではJUIDAの鈴木真二理事長は4月20日のドローン官民協議会で制度変更の方針が示されたことや、引き続き検討すべき点が残っていることなどを説明し「みなさまにも引き続きご協力をお願いします」と参加したスクール関係者に呼びかけた。
また国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の梅澤大輔課長が登壇し、制度の概要を説明した。国家資格は「技能証明」と呼び、レベル4飛行に必用となる「一等」と、それ以外の「二等」とがあり、取得には認定を受けた試験機関で学科試験、実地試験を受けて合格することが必要であること、ただし登録を受けた講習機関の講習を受ければ試験機関で実地試験が免除されることなどが説明された。
梅澤課長は「より多くの講習団体が登録講習機関となって質の高い講習を提供頂き、よい操縦士を輩出して頂きたいと思っています」と期待した。
このほか、機体認証、ライセンス、運航管理について説明。機体認証ではレベル4飛行の機体は機体認証を受ける必要があることや、量産機で型式認証を受ければ設計、製造の検査を省略できることなどが説明された。
JUIDAの田口直樹経営企画室長は、JUIDAのスクールに関わる横目について説明した。「技能証明」の取得が、試験機関での受験と、講習機関を通じて実地試験が免除された状態で受験する方法と2通りあることを紹介し、受講希望者に対する説明に誤りがないよう注意を促した。また技能証明を取得するメリットについて、一等は所持しないとレベル4飛行が認められない、二等は、レベル4飛行は認められないものの、特定飛行のうち上空150m以上の飛行やイベント上空などリスクが高い飛行を除き、DID上空、夜間飛行などの飛行の場合には、許可・承認の取得が不要になることなどを説明した。
既存のJUIDAのカリキュラムは、二等の試験に必用なCRMや地上基地などがカバーできていないため、今後対応を検討することが説明されたほか、スクールが講習機関になる場合に備えるべき要件には設備、講師の両面で整える要件があることも説明された。そのうち設備では空域、機体、建物、教則本などの書籍が該当し、講師にも一定の要件を満たすことが求められるなどの説明が行われた。
このほか、具体的な取り組みや今後の方針なども示された。JUIDAによるスクールへの説明会は4月27日にも開催される。
補助者無し目視外での飛行など、いわゆる「レベル4」でのドローン飛行の実現に向けて整える制度を検討する政府の検討小委員会が3月8日、これまでの議論を整理した「中間とりまとめ」の成案と、それを図案化した「概要」を公表した。レベル4を含むリスクの高い飛行について、機体認証を受けた機体を、操縦ライセンスを持つ操縦者が、許可・承認を受けた場合に飛行ができるなど、これまでの議論を整理した。今後、これを土台にして詳細の検討に入る。
中間とりまとめと概要は、検討小委(「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会」)が2020年5月から続けてきた議論を中間的に整理したもの。レベル4での飛行の重要性と、レベル4の飛行を解禁するにあたり整備が必要な制度の方向が示されている。2021年1月19日には、事務局が示した「中間とりまとめ(案)」を土台に意見を交換し、委員が了承したことを受けて、3月8日に「(案)」をはずした成案を発表した。
レベル4の解禁に向けた制度を検討するにあたり、飛行リスクの大きさごとに3段階に区分けすることや、国が機体の安全性を認証する制度(機体認証)や、国が試験を実施し、操縦者の技能を認証する、いわゆる操縦ライセンスを創設することを盛り込んだ。
中間とりまとめによると、機体認証は「国の登録を受けた民間検査機関」が実施する。操縦ライセンスの試験も、「国の指定を受けた民間試験機関」が担う。また「国の登録を受けた民間講習機関」の講習を受けた場合には、試験の一部、または全部が免除になる。
また操縦ライセンスは「レベル4」を含むリスクの高い「カテゴリーⅢ」に分類された飛行ができる「一等ライセンス」と、カテゴリーⅡまでに対応した「二等ライセンス」とに分けられる。レベル4飛行には、認証を受けた機体を、一等ライセンスを取得した操縦者が、許可承認を受けた場合に認められることになる。
ライセンスには機体によって限定を付与することや、3年の有効期限があること、更新手続きが必要なことなどについても言及している。
今回の中間とりまとめの公表を受けて、今後は制度を運用するための詳細の検討に入る。機体認証では安全基準、国からの整備命令の方法、不具合情報の周知方法検討など、操縦ライセンスでは、ライセンスの区分ごとに求められる知識などの具体的な内容、試験内容、登録講習機関のカリキュラム、指定試験機関に求められる要件、運航管理での飛行の安全を担保するために必要な措置などが検討される見通しだ。
なお、今回の議論で、ドローンの飛行が国の許可・承認をベースに認められる点について変更を求める議論はない。新制度移行後も「操縦ライセンスがないTドローンを飛ばせない」ということではない。
一方で、中間とりまとめは、既存の民間スクールである「講習団体」や、それぞれの講習団体が提供してきた技能認証、「講習団体」を束ねてきた「管理団体」の新制度移行後の位置づけについては言及していない。国交省は管理団体に対し、「取り扱いは変わらない」と説明をしているが、ドローン行政の中での位置づけは激変することになり、今後議論が高まる可能性がある。
講習団体、管理団体、技能認証は、2017年に国交省航空局がHPで公表をはじめた。その理由を国交省は「無人航空機の操縦者への講習会の受講を促し操縦技能の底上げを図るため」と説明している。講習団体が発行する技能認証を取得した場合、許可・承認の手続きを簡素化することが認められており、現時点ではこの仕組みは今後も維持される見通しだ。この点から国交省は「変わりはない」と説明しているとみられる。
一方、新制度移行後には、新たに国の操縦ライセンスが発行され、「レベル4」での飛行許可を受けられる付加価値を「一等ライセンス」が誕生する。国の操縦ライセンス取得のための講習は「登録講習機関」が担う。既存の講習団体は、経営環境として、強力な競争相手に集客活動をする必要に迫られることになる。「レベル4」での飛行を希望する資格取得希望者には、講習団体は集客が難しくなる。
一部の講習団体からは、レベル4の飛行に関わらない「カテゴリーⅡ」部分に対応する操縦ライセンスの「二等ライセンス」は既存の講習団体が担えるようにできる要望が出ているが、調整は難しいとみられている。
中間とりまとめを土台にした今後の議論は、講習団体、管理団体の今後の経営方針を左右する可能性もある。
【中間とりまとめ】国土交通相の諮問機関、交通政策審議会の航空分科会技術安全部会が、レベル4実現環境を検討するために設けた「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会」が、2020年5月から続けられてきた5回の会合などの結果を中間的にとりまとめた15ページの文書。2021年1月19日の第5回会合で事務局が示した「中間とりまとめ(案)」について、委員の了承を取り付けたことで3月8日に「(案)」をはずした成案として公表した。
国土交通省航空局はホームページ上の「飛行許可を受ける際の申請書類の一部を省略することができる講習団体等」に関する記載内容を2月1日現在の情報に更新した。講習団体は944で、前月(1月1日時点)と比べ総数として17増えた。狭小空間向け小型ドローン開発で知られ株式会社Liberawaare(リベラウェア、千葉市)が今回、講習団体として名を連ねた。なお講習団体を束ねる管理団体は55で先月と変わっておらず、2021年に入り新規参入はないことになる。
944となった講習団体は前月(1月1日時点)が927であったため、全体で17増加した計算だ。一方、2月1日に初掲載となった講習団体を数えると46となり、前月に掲載されていた29の講習団体が姿を消したことになる。
2月1日付で掲載された46の講習団体の中には、狭小空間向けのドローン開発・製造を手掛けているリベラウェアの名前が見られる。リベラを含め16団体が初登場だ。46のうち残る30は、すでに別の技能認証を提供している団体として掲載済みで、2つめ、あるいは3つめの技能認証を提供する団体として掲載された。
たとえば、秀明大学(千葉県八千代市)は、2月1日付けで一般社団法人ドローン技術社会実装コンソーシアムが管理する「農薬散布ドローンオペレーター」の技能認証を提供する団体として掲載された。同大学は昨年(2020年)6月1日付で「無人航空機操縦技能認定」の講習団体として初登場を飾っており、今回の追加掲載“2刀流”となった。
また茨城県高萩市で、平成29(2017)年3月に廃校となった旧君田小・中学校学校の約2万平方メートルの校庭を専用フィールドとして持つ株式会社茨城航空技術研究所(ドローン・エンジニア・ラボラトリ)も2月1日付けで株式会社DJI JAPANの技能認証を提供する団体として掲載された。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の認定スクールとして2019年12月に初登場しており、今回は追加掲載だ。
2月1日付の掲載組では、2刀流としての追加掲載が27と、初登場の16を上回っており、追加掲載が定着する勢いだ。また3刀流としての追加掲載も3あった。追加掲載が一覧表の主流になる流れとなっている。2月1日掲載組を管理団体ごとにみると、一般社団法人全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)が24と最も多かった。
管理団体を、抱える講習団体ごとにみると、JUIDA、一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)、DJI JAPANの上位陣に変動はなかった。
講習団体や管理団体の新規参入の勢いが停滞気味の傾向には、ドローンの人材育成をめぐる国家資格化の影響がのぞく。国家資格化は、都市部を目視外で運用できる「レベル4」飛行を実現する環境整備のひとつで、現在、ドローンの運用技能を国家資格として付与する制度づくりが官民で進められている。
国家資格を得るために合格すべき試験は「民間試験機関」が、講習は「民間講習機関」が、国にかわって提供する方針が公表されている。しかし「民間試験機関」、「民間講習機関」とも概要が公表されておらず、既存の講習団体、管理団体との関係も調整途中だ。
国交省は、「(既存の)講習団体の制度上の扱いは、これまでと何も変わらない」と説明しているが、民間資格をプロダクトとして提供してきた事業者にとって。国家資格が導入されると事業環境は大きく変わる。受講生の獲得も、既存の民間スクール間だけでなく、国家資格を提供する「民間講習機関」とも競う必要が生じる可能性がある。国家資格は取得すれば、民間資格よりも有利になる可能性が高く、受講生獲得に不利になる恐れもぬぐい切れない。
国歌資格化後の身の振り方が定めきれずに頭を抱えるドローンスクールもあり、当面は様子見と情報収集とに明け暮れることになりそうだ。
国土交通省航空局は「飛行許可を受ける際の申請書類の一部を省略することができる講習団体等」についてホームページの記載内容を1月1日現在の情報に更新した。講習団体は1か月前の2020年12月1日の913から927に増えた。講習団体をたばねる管理団体は55で前月から変化はなかった。
改訂に伴い講習団体の一覧表に初めて「令和3年」の表記が登場した。令和3年1月1日の新規記載をされた講習団体は16。総数では前月から14の増加なので、2が姿を消したことになる。
顔ぶれは静岡県沼津市に拠点を構える東部自動車学校の運営する「静岡沼津ドローンスクール」が、既存の一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、一般社団法人全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)に加え、新たにDJI JAPAN株式会社を管理団体とする技能認証の提供を始めることになり“3刀流”となった。井関農機株式会社グループの販売会社、株式会社ヰセキ関西中部(愛知県安城市)も既存技能認証に加え、一般社団法人ドローン技術社会実装コンソーシアムの技能認証の講習を開始し、“2刀流”となる。
そのほかの14団体は今回初めて講習団体に名を連ねた。中にはドローン事業ブランド「SkyFarm(スカイファーム)」を掲げ農薬散布、空撮、点検などで実績を重ね、ドローンスクールの講師実績も豊富な株式会社ワイズ技研(東京都渋谷区)など、実力ある団体の名もみられる。
管理団体を傘下に抱える講習団体の数の多さで並べると、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が177、一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)が164、DJI JAPAN株式会社が140と、上位陣の顔ぶれには変動はなかった。
国交省航空局は9月1日付けでHP上の「管理団体」、「講習団体」といったドローンスクールに関する情報を更新した。「操縦者に対する講習等を実施する団体」である講習団体は前月から49増えて869に、管理団体は前月より2増えて51になった。
講習団体のうち、9月1日の新規掲載は53。前月から4団体が姿を消し、全体で49の増加となった。一般社団法人日本UAV利用促進協会(JUAVAC、東京)を管理団体とする新規掲載が17あり、全体の増加をけん引した。
JUAVACは2017年6月1日付で1団体が講習団体に名を連ねており、今回の2020年9月1日付更新で管理団体にも加わった。系列17を含め18の団体を束ねる管理団体となった。管理団体にはJUAVACのほか、株式会社Flight PILOTの、あわせて2団体が新規掲載となった。
なお、9月1日に新規掲載された講習団体では、管理団体を持たない無党派は1団体のみ。この1年間、講習団体の増加は、管理団体を持たない独自スクールの勢いがリードしてきたが、今年度に入ってからは管理団体による増設が主力となっている。
また、51の管理団体を所在地のある都道府県別でみると、東京都所在の管理団体が21と他を引き離している。次いで大阪府、京都府の3、愛知県、福岡県、岡山県、長崎県が2となっている。
国交省航空局は8月1日付けでHPに掲載する「管理団体」、「講習団体」の情報を更新した。管理団体は先月(8月)と変わらず49、講習団体は先月から20増えて820となった。講習団体では24件が新規掲載となった一方、4件が姿を消した。講習団体は、「操縦者に対する講習等を実施する団体」だが、一つの事業所が、複数の技能認証を別名義で提供することで、ひとつの事業所が複数の団体として“重複カウント”されるケースが急増している。講習「団体」数は事業所数とはもとより一致しないが、このところの増加が目立ち、実質的には、スクールとして掲げられている看板の枚数(件数、本数)になりつつあることに留意が必要だ。
数字を機械的に整理すると、49ある管理団体のうち、傘下に抱える講習団体が10以上ある管理団体は14だ。このうち一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が169と最も多い。これに一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)が156、DJI JAPAN株式会社が119、一般社団法人農林水産航空協会が78、一般社団法人無人航空機操縦士養成協会が34で追う。
ただ、この「団体」の数は、法人や事業所の数と必ずしも一致しない。複数の技能認証を、複数のスクール名(講習団体名)を掲げて運営すれば、ひとつの事業所でも個別に「団体」としてカカウントされる。ひとつの事業者が別の顔でも1団体とカウントされることになり、たとえて言えば、プロデューサー、古坂大魔王とアーティスト、ピコ太郎を、2人と数えたり、歌手、加山雄三と作曲家、弾厚作を2人と数えたりする状況に似る。
最多のJUIDAは、認定スクールの重複カウントがみられず、事業所の数とほぼ一致する。しかし管理団体の中には、複数の技能認証を発行し、所属事業所が別のスクールとして運営しているところがある。所属団体数を管理団体の規模の目安にすることへの限界はかねて存在したが、その傾向が顕著になってきた。所属団体の数で管理団体の規模を比較する意味は希薄になってきている。そもそも管理団体の規模の比較を目的として公表されているものでもない。
8月1日に新規に掲載された24の講習団体をみると、管理団体に所属していない団体が5つ掲載されており、管理団体に頼らない講習団体が増えている。DPCAに所属する講習団体として6つが新規掲載されているが、同一事業所がふたつの技能認証を別名義で提供しており、実施的に事業所としては3つだ。
一方で、ひとつの事業所が、同一名義で複数の技能認証を提供するケースもある。ホームページでは、ひとつの事業所が、複数の技能認証を提供していることを明示しているが、「講習団体」の数としては、技能認証ごとにカウントされるため、1事業所が複数団体とカウントされる。DroneTribuneでは、ひとつの事業者が2つの技能認証を提供している場合に「2刀流」、3つの技能認証を提供している場合に「3刀流」として紹介している。
こうしたことから、8月1日時点で820ある「講習団体」は、事業所の数ではなく、重複カウントを含め、どれだけの看板が掲げられているかを示す数字となっている。
現在、ひとつの事業所で提供する技能認証の数としては、株式会社ピットモーターズジャパン(茨城県筑西市)、一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会(岡山市)、株式会社スペースワン(福島県郡山市)の4本が最多で、それぞれ「4刀流」として活躍している。事業所の意図とは無関係に、4団体とカウントされることになってる。
8月1日付で新規掲載された24の講習団体のうち1団体は、すでに2団体を運営している事業所で、今回の掲載で「3刀流」の事業所となった。また2事業所が「2刀流」になった。
なお、「管理団体」、「講習団体」については、今後の環境変化への対応も議論の対象だ。2022年度を目安に「レベル4」の飛行を解禁とする準備が進むと、2017年に「操縦の底上げ」を目的にはじまった「講習団体」「管理団体」のありかたも論点になる。
現在は、航空局ホームページの「無人航空機の講習団体及び管理団体一覧」に記載された講習団体等の講習修了者は、「飛行許可を受ける際に当該講習団体等が航空局HPに掲載された日以降に発行した技能証明書等の写しを提出することで申請書様式3及び無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性の提出が不要となる」と定められている。「レベル4」解禁に向けた議論が本格化する中では、この規定の適否や改変が議論の対象となる。
すでにスクールごとに、指導の巧拙、内容、密度、方針に大きな開きがあることも指摘されており、レベル4時代に向けた議論は、これまで国内のドローンの普及に一定の貢献してきたスクールに、新たな方針の策定や戦略の構築を促す局面がありそうだ。