全国にドローンスクールのネットワークが拡大し、国土交通省航空局のホ-ムページに「講習団体」として掲載されているだけでも、2019年8月1日現在、543にのぼる。そのスクールの講師はどんなふうに誕生するのか。今回、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の講師養成講座に潜入させてもらう機会を得た。休憩を含め8時間、8本の講座が詰まっていた。
見学したのはJUIDAが毎月1回のペースで、東京で開催している「認定スクール講師養成講座」。全国にあるJUIDA認定スクールで講師を務めるさいに受講する必要がある。JUIDAの「操縦技能証明証」「安全運航管理者証明証」を取得済みで、認定スクールで講師を務める資格の取得を目指す12人が、8月6日、東京・虎ノ門で行われ講座に参加した。講座は午前10時過ぎから午後6時半まで。途中、休憩をはさみながら、45分~60分の講座8本を受ける丸1日のコースだ。
この日行われた8本の講座とこの日の担当者は以下の通りだ。
1、安全運航管理(JUIDA、岩田拡也常務理事)
2、リスクアセスメント演習(有人宇宙システム株式会社、志村譲二氏)
3、バッテリー(マクセル株式会社、岩本章氏、山本善彦氏)
4、気象(日本気象株式会社、平尾正樹氏)
5、電波と無線(一般社団法人日本ドローン無線協会、戸澤洋二氏)
6、目視外飛行の法制度の動向(JUIDA、千田泰弘副理事長)
7、有人機と無人機の飛行の安全について(DRONE CONCIERGE CAPTAIN330、山村寛氏)
8、講師の心構えと効果的なインストラクション(有人宇宙システム株式会社、志村譲二氏)
講座は、参加者が講師となったさいに必要となる考え方、情報、知識、方法論を詰め込んである。
「安全運航管理」は、スクールの受講生に対し、講師が安全運航管理を教える難しさを念頭に、どうすれば教えられるかを伝授する内容だった。この講座を担当したJUIDAの岩田常務理事は、「心構え、知識、手法の順番で伝えて頂ければ、受講生にわかりやすく入っていく」と伝授。心構え、知識、手法のそれぞれについて解説を加えた。講義の中で、JUIDAのライセンスである「安全運航管理者」が必要な理由について「新しいものが社会に出現すると、歓迎されるか、排除されるか、どちらかの道をたどる。ドローンの利便性を多くの人に感じてもらい、社会で市民権を得るには、安全が第一だ。その安全を管理するのが安全運航管理者」などと説明した。
また「安全」を「社会が許容できるレベルにリスクを抑えこんだ状態を保持し続けている状態」などと定義を示し、「航空の安全3原則」などについても言及した。
「リスクアセスメント演習」では、ドローンによる撮影を依頼された場合を想定し、天候、時間帯、人の往来などの「危険源」を列挙し、それが与える危害の深刻度、発生確率などから点数化し、防護策を講じたり、優先順位をつけたりすることの重要性をワークを織り交ぜて説明。担当した有人宇宙システムの志村氏は「みんなで心配事を洗い出し、防護策考えるという作業そのものが大事」と話した。
「バッテリー」では、マクセルの岩本氏、山本氏が、バッテリーの事故は充電のさいに起こるケースが圧倒的に多いことを説明。「適切に管理すれば多くは未然に防げる」と取り扱いの重要性を強調した。この中で、落下して衝撃を受けたバッテリーは使わないこと、バッテリーの使用回数を本体に、たとえば「正」の字を書き足して管理することなどを助言。2つのバッテリーをペアで使うときにはペアごとにで管理し、ひとつだけを交換することがないように助言した。
「気象」では、日本気象の平尾氏が、天気図から強風が起こる可能性を読み取る方法を解説。冬型の気圧配置、日本海低気圧など6つのパターンを伝えた。海と陸の温度差が大きくなるときに発生する海陸風、高層ビル街で起こるビル、ダウンバーストなど予想が難しい風もあることを紹介し注意を促した。天候の急変を招く積乱雲のでき方についても説明し、「天気予報などで、大気の状態が不安定、と言われることがあるが、これは軽く暖かい空気が低いところにあり、冷たく思い空気が高いところにあり対流を起こしやすい状態のこと。この言葉を聞いたら要注意」などを説明した。
「電波」では、日本ドローン無線協会の戸澤氏が、ドローンのフライトに使われている電波の特徴や、課題を解説。フライトでは操縦者の真上が電波の死角になっていることなどを説明し、注意を促した。「目視外飛行の法制度の動向」では、JUIDAの千田副理事長が、航空法の改正が間近に迫っている現状や、2022年の有人地帯での目視外飛行実現に向けて、2019年度中に制度設計の基本方針を策定する必要がある現状を説明。「目視外飛行が認められる世界では、目視内では操縦者個人が追っていた責任から、システム全体の責任になる可能性があり、そのため機体登録の義務化がありうる。このため認証を受けた機体についての知識を持っている必要がある」などと述べた。
「有人機と無人機」では、山村氏が航空機パイロットの経験をふまえ、「航空機から有人機は見えない。ぶつかったら命にかかわる。航空機とドローンの事故を防ぐには、ドローン側が気を付けないといけない。プロポを持つ指先は命を預かっていると認識しないといけない」と説明した。またドクターヘリ、防災ヘリ、軍用ヘリは、上空150メートルと定められている「最低安全高度」の適用除外指定を受けているため、「ドローンを150メートルより低い空域で飛ばしていても、こうしたヘリが現れることがあるので油断は大敵」と注意を促した。
「インストラクション」では、有人宇宙システムの志村氏が、今後、講師として活躍するにあたっての心構えや、効果的なインストラクション技術、伝え方、進行手順などを、途中に自身の経験もまじえて伝授した。最後に申請の方法などの案内があり、講師養成講座は終了した。
組まれた講座は多彩で、それぞれ独立して深く掘り下げることができる印象だ。実際に講座によっては、それぞれの講師が何時間、何日間にわたって提供しているセミナーの導入部であることもある。今回の講座参加者は、第一線の講師の講義に触れたことで、自身が講師として登壇するさいの判断材料になるだろうし、その後の自己研鑽にもつながる可能性もある。
担当者によると、講師養成講座の内容は随時更新されていて、カリキュラムの数は増加傾向にあるという。たとえば「有人機と無人機」は2019年に追加された新設講座だ。幅広い情報に、第一線の講師から直接触れる機会を得た講師が、日本のドローンの普及や、ドローン前提社会の実現を引き寄せることを期待したい。
株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)が、音楽ユニットYOASOBIのライブ会場で、メンバーから参加者けメッセージをドローンショーで夜空に投影した。8月5日に兼六園に近い「本多の森北電ホール」(金沢市)で行われたライブ終了後、ホールから出て帰路につく来場者の頭上に、「ありがとう I♡石川 いくら」「石川ありがとう YOASOBI あやせ」のメッセージが浮かび上がらせ、来場者に感動の余韻を残した。
ドローンによるメッセージが投影されたのは、7月に熊本でスタートした全国ツアー『YOASOBI HALL TOUR 2025 WANDARA』のうち、8月5日に「本多の森北電ホール」で4日間にわたって開催されたの金沢市でのライブの初日。ライブの終了後に会場を後にしようとした参加者の頭上に、このツアーのキービジュアルである犬のキャラクターのモチーフや、メンバー2人から来場者への感謝を伝える直筆のメッセージを再現した映像が投影され、来場者へのサプライズとなった。
メッセージの投影はドローンショー・ジャパンの特別協力で行われ、同社が開発した専用機「DSJ MODEL-X」500機が使われた。
YOASOBIは新型コロナ感染症拡大期の2021年7月に開催し配信ライブ『SING YOUR WORLD』でもFPVドローンを駆使した映像をまじえるなど、ドローンの活用に前向きなことで知られる。
またドローンショー・ジャパンは7月26日、27日に開催されたMrs.GREEN APPLEの野外ライブでバンドロゴを浮かび上がらせるなどライブでの演出活動が話題になっている。(参考記事はこちら)
ドローンショーの企画・運営を手がける株式会社レッドクリフ(東京)は、秋田県大仙市で8月30日(土)に開催される開催の第97回全国花火競技大会「大曲の花火」をドローンショーで盛り上げる。約1300機のドローンで夜空にシンガーソングライター、KANさんの代表曲『愛は勝つ』の歌詞を投影し、来場者が合唱する。この取り組みは大塚製薬株式会社(東京)の炭酸栄養ドリンク「オロナミンCドリンク」発売60周年記念特別プロジェクト「元気ハツラツ!大空大合唱」の一環で、ドローンショーではたて225m、横65mのオロナミンCボトルも登場する。
「大曲の花火」は、JR大曲駅から直線距離で約1.5㎞での雄物側河川敷で開催される。レッドクリフがドローンショーを手がける大塚製薬の特別プロジェクト「元気ハツラツ!大空大合唱」は8月30日午後6時半ごろからの開催が見込まれる。大会の主役である花火は午後6時50分ごろから打ち上げが始まる予定だ。観覧席はいくつもの種類があるが完売している席が多い。
「元気ハツラツ!大空大合唱」では、光を放つドローンがオロナミンCのボトルを音符に見立てた『愛は勝つ』の楽譜や、歌詞を投影する。会場では『愛は勝つ』を流し、参加者、来場者、関係者らで合唱する。合唱中はドローンがカラオケのテロップのように、歌うべき歌詞を光らせて参加者を歌いやすいように導く。プロジェクトを主導する大塚製薬の主力製品、オロナミンCの巨大ボトルも浮かび上がらせる。
レッドクリフのドローンショーは「元気ハツラツ!大空大合唱」の一環で実施される。7月27日に開催された北海道小樽市の小樽港第3号ふ頭基部で開催された「第59回おたる潮まつり大花火大会」で実施したときの動画はオロナミンCドリンク公式SNSで8月4日時点で、総再生数が1350万回超を記録するなど大きな反響を呼んだ。大曲の花火は約75万人の来場実績があり、今回も大合唱が期待される。
「元気ハツラツ!大空大合唱」は小樽、大曲に続き、10月18日には八代市<熊本県>の球磨川河川緑地で開催される「第38回やつしろ全国花火競技大会」でも開催される計画だ。実は7月の「第72回安倍川花火大会」(静岡県)でも開催の計画があったが荒天により河川が増水した影響で花火大会とともに中止になっていた。
またレッドクリフは、日本三大花火大会のうち今回の「大曲の花火」と「長岡花火大会」でドローンショーを実施した実績があるほか、全国各地の花火大会をドローンで盛り上げている。大阪・夢洲で開催中の大阪・関西万博でも連日、ドローンショーを開催し来場者を楽しませ、ギネス世界記録の達成への挑戦も続けている。
株式会社エアロネクスト(東京)は8月15日、ドローンでフードデリバリーの試験飛行を 実施したと発表した。6品、約2.5㎏を有人地帯での補助者なし目視外飛行(日本ではレベル4に該当)で、地元モンゴルの有力企業と連携して実施した。
エアロネクストのモンゴル国でのフードデリバリは7月25日に行われた。同社の「モンゴル展開パートナー」である モンゴルを代表する投資会社Newcom Group(ウランバートル市)、同社の子会社、Mongolian Smart Drone Delivery LLC(ウランバートル市)、モンゴル国フードデリバリー最大手、Tok Tok LLC(ウランバートル市)と組んで実施した。エアロネクストの調べでは、7月時点でモンゴル国内では初めての取り組みという。
試験飛行では、アプリ「TOK TOK」を通じて注文を受けたレストラン KIBO の料理6品、2,420gを、ウランバートル市内からウランバートル郊外の研修・保養施設まで片道約 16.5km、株式会社ACSL(東京)製の「PF4」で運んだ。動画にはTOK TOKのロゴの入ったデリバリボックスをPF-4が運ぶ様子や、都心部を飛行する様子、受け渡しの様子がおさめられている。
エアロネクストはすでにウランバートル市内で定常運航として血液製剤の配送を実施しており、6月には郵便輸送も実施している。フードデリバリは第3のユースケースとなる。
(モンゴル郵便とのドローン配送試験運航の実績についてはこちら
株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市<石川県>)は、8月16日、奥能登のやなぎだ植物公園(能登町柳田植物公園、能登町上町)で、能登半島地震からの復興を応援するドローンショー「Charge & Go!能登復興応援スペシャルバージョン」を開催する。2011年に男女混合のパフォーマンスグループAAA (トリプル・エー) の楽曲としてリリースされた『Charge & Go!』の特別バージョンをモチーフにした光のショーで、この曲の作詞を担当したKenn Kato氏とのコラボレーションで実現することになった。作品は三部作で8月16日はその第1回となる。
8月16日のドローンショーは、やなぎだ植物公園で開かれる「2025年 ござれ祭り」の目玉行事のひとつとして午後8時から行われる。ドローンショー・ジャパンが主催し、同社が開発したドローンショー専用機体「DSJ MODEL-X」500機を使う。作詞家Kenn Kato氏が代表を務めるドローンショービジネスのアゲハライド株式会社(東京)が企画協力し、ドローンショー企画などを手掛けるルーカスドローン株式会社(うるま市<沖縄県>)が制作協力する。
今回は「Charge & Go!能登復興応援スペシャルバージョン」全3部作の第1回で、第2回で、その後第2回を9月7日(日)、 宇出津港いやさか広場(能登町)、第3回を10月25日にやなぎだ植物公園で開催する予定だ。各回で演出と表現が異なり、復興への願いを段階的に描くという。
コラボレーションの相手となったKenn Kato氏は、AAAのほか青山テルマ、EXILE、三代目J Soul Brothers、東方神起ら多くの著名アーティストに楽曲を提供しているクリエイターとして知られる。また8月16日のショーが開催されるやなぎだ植物公園の「ござれ祭り」には、キャンドルアーティストCANDLE JUNE氏がキャンドルアートで、歌手の渡辺真知子さんがステージで参加し会場を盛り上げる。入場は無料。
ドローンショー・ジャパンは「ドローンが夜空に描く幻想的な光景が、見上げる人々の心に少しでも勇気と感動をもたらすことができれば幸いです。このドローンショーが単なるエンターテイメントの枠に留まらず、能登の復興を全国に発信するきっかけとなり、被災地の皆様の心の支えとなることを心より願っております」「本ドローンショーを通じて、被災された皆様に少しでも癒しと勇気を感じていただけることを願っています。14年の時を経て楽曲『Charge&Go!』が光のダンスとして蘇り、復興への新たな歩みを力強く踏み出すきっかけとなれば幸いです」とコメントしている。
会場への公共交通機関としては北陸鉄道バス「立ケ谷内」が最寄り。北陸鉄道バス路線図はこちら
東日本旅客鉄道株式会社(東京、JR東日本)は、高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)一体型の都市開発エリア、TAKANAWA GATEWAY CITYで8月23日、300機のドローンを使った「ドローンショー in Summer」を開催する。人が多く空港に近いうえ電波干渉対策も要するなど、都心開催につきまとう条件をひとつひとつクリアし、今回の実現にこぎつけた。観覧できるのは先着200人で、JR東日本が観覧希望者をTAKANAWA GATEWAY CITYアプリで受け付けすぐに満席となった。現在は予約の受付は修了している。
ドローンショーは、TAKANAWA GATEWAY CITYが目指す姿を周知する目的で開催される。ショーは午後7時、午後8時半の2回、行われる計画で、TAKANAWA GATEWAY CITY内のTHE LINKPILLAR 1 SOUTHに「特別観覧エリア」を設け、予約した200人を招待する。開始前には屋内ドローンショーも予定している。天候要因などにより中止になりうることを説明している。
JR東日本は、グループ経営方針「勇翔 2034」でエアモビリティを活用したビジネスの創造を掲げていて、TAKANAWA GATEWAY CITY ではその方針に基づき新たな移動・物流・エンターテインメントの可能性を探っている。すでに米ASKA社のAAMのモックアップ展示や、点検用ドローンを使ったドローンレースの開催などを進めていて、ドローンショーの実施もその一環としての取り組みだ。
JR東日本は「今後も新たなドローンの活用方法を模索してまいります」とコメントし、「ドローンが当たり前に飛ぶ未来」の創造を目指す。
施設に不正にもぐりこみ置いてある端末からネットワークに侵入するリスクが高まる中、施設への実際の物理的な侵入とサイバー攻撃の両方のリスクを確認する診断サービスを、サイバーセキュリティ事業者と警備大手が手を組んで実施する。実施するのはドローンとつながりの深いGMOサイバーセキュリティbyイエラエ株式会社(東京)とALSOK株式会社(東京)。すでに重要インフラ企業、防衛産業などに提案活動を進めており、9月にサービスを開始する計画だ。
GMOインターネットグループでサイバー攻撃対策事業を展開するGMOサイバーセキュリティbyイエラエとALSOKは7月29日、物理空間からサイバー空間まで一気通貫で不正侵入リスクを可視化するセキュリティ診断サービス「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」を開発したと発表した。発表時には東京・用賀のGMOインターネットTOWERに関係者が集まり報道陣向けに説明会を開いた。
「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」は、巧妙化、複雑化するサイバー攻撃への備えのためのサービス。サイバー攻撃では攻撃者が企業や組織などの外からメールなどを通じてネットワークに侵入して重要データの漏洩などを仕掛けるが、サイバー攻撃への防御が進むにつれ、施設そのものに攻撃者が侵入し、施設内の端末を使ってネットワークに侵入する手口が増え始め、金融庁などが警鐘を鳴らしている。このため、物理的に施設に入り込まれるリスクがどの程度あるか、そのうえでサイバー攻撃がしかけられるリスクがどの程度あるか、を同時に診断するサービスを開発した。
テストでは、企業や団体などの依頼に応じて、指定された拠点に侵入するための方法を攻撃者の視点で検討する。拠点には許可された人が開錠したさいに続けて入り込む共連れやICカードの偽装して侵入を試み、侵入に成功したら、不正端末の接続などサイバー攻撃の足掛かりを探索し、ネットワークに入り込んで情報搾取を試みる。攻撃者の視点でテストすることで、防御の脆弱な個所を浮き彫りにする。侵入後には脆弱性や改善策をまとめたレポートを依頼主に提出することで、攻撃への備えに役立てる。
このテストでは、拠点への物理的な侵入の部分をALSOKが担い、サイバー攻撃部分をGMOイエラエが担った。ALSOKは新サービス開発にあたり、物理侵入を足掛かりとしたサイバー攻撃に焦点を当てた、新たなセキュリティ診断サービス「ALSOK物理ペネトレーションテスト」を開発し、GMOの診断と連結させサイバー空間まで一気通貫で不正侵入リスクを可視化する「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」を仕上げた。なお物理ペネトレーションテストの専門ベンダーBarrierCrack合同会社(東京)も開発に参画し技術提供を受けた。
GMOインターネットグループ株式会社の西山裕之取締役グループ副社長執行役員は「GMOグループは創業以来『すべての人にインターネット』のキャッチフレーズをかかげインターネット社会の発展に邁進し、現在1700万件以上のご活用を頂いています。しかしながら昨今、インターネットを悪用した犯罪が蔓延しており、その手法がますます高度化、頻発化しています。このため今年度より『ネットのセキュリティもGMO』をかかげ、さまざまな施策を進めすことにしました。インターネット社会の発展のために、サイバーセキュリティの課題に真摯に取り組んでいきたい。いまやリアルとネットは切り離せません。交通、物流、金融、医療、行政、あらゆるインフラはネットワークが前提です。ALSOKさまとの取り組みを通じて、リアルとネットの両面で安全、安心の社会の実現に貢献したいと願っています」と述べた。
ALSOKの佐藤将史執行役員は、2025年7月16日に創立60周年を迎えた機会に社名を綜合警備保障株式会社からALSOK株式会社に変更し、ブランドスローガンとして「ALwayS OK」を掲げたことを紹介し「警報を受信したら現場に駆け付けるインフラを使いひと、もの、かねを軸にセキュリティを提供し、2000年初頭の法改正以降、情報も含め物理的側面から守ることを続けてきました。今後は確かな現場対応力を武器にサイバー領域の業容を拡大したい。そこでGMOさんとタッグを組んで開発した商材が『ALSOK & GMOサイバー物理ペネトレーションテスト』です。われわれの60年の守りのノウハウを攻撃者の視点に活用することで物理侵入を足掛かりにしたサイバーセキュリティにフォーカスした新しいチャレンジです」と述べた。
GMOサイバーセキュリティbyイエラエの牧田誠代表取締役CEOは、「われわれはサイバーセキュリティの会社で、ホワイトハッカーが日本で一番多く所属していることが特徴です。ハッキングコンテストでも優勝、世界一などを受賞しています。そんなわれわれがしていることは脆弱性診断、侵入テスト、ペネトレーションテストです。1万2600件ほど実施しています。ゼロデイも研究していて、年間100件ぐらい見つけ報告しています。これは研究なので商売ではなく見つけたらボランティアで報告しています。ペネトレーションテストをするときには、攻撃者の視点を模します。WEBサイトがあれば、脆弱性を試します。スマホアプリならそこからの侵入ができないか探します。攻撃者は弱いところを狙います。資産を持つ側はインターネットでアクセスできないところに大事な資産をおこうということが進み、どんどん堅牢になっています。そうすると、攻撃者は次に弱いところを狙います。証券会社が侵入されて株価操縦されたという話は、銀行がセキュアになったことで次の標的になったとみられています。そちらがセキュアになると次にどうなるか。次の課題が物理の侵入です。日本は遅れている状況がありますので、そこが狙われるのではないかという懸念があります。ここをALSOKさまといっしょにテストをしてまいりたい。GMOでも物理セキュリティが大事ということで試してみたところ、3年前の実験では熊谷正寿グループ代表の部屋にカードキーを複製して侵入できてしまったことがあります。物理もサイバーも一気通貫で試すことが大事だと考えており、今回のサービスはそこに意義があると考えています」と述べた。
ALSOK商品サービス戦略部情報セキュリティサービス推進室長の小野浩司氏は、「国内における営業秘密の情報漏洩におけるダントツの1位は中途退職者によるものだそうです。金銭目的でUSBなどにより情報を持ち出して転職先や競合会社に提供するといったことです。サイバーセキュリティについては金融庁のガイドラインや、それを反映した金融情報システムセンターのリスクのコンピューターシステムの安全対策基準に物理セキュリティの言及がなされたこともあり、われわれも人材、管理意識、鍵を渡す人への信頼などを含めた「ALSOK物理ペネトレーションテスト」を開発しました。ビジネス拠点の物理 進入のリスク、侵入後に拠点内部からを行われるサイバー攻撃のリスクを探索し、その結果と解決策を提出するサービスです。ダークウェブでお客様のアカウント情報が漏れていないか、現地で外から入れそうなところはないかも調査します。拠点への進入経路や手段を調査し、建物に入ったら共連れで中に入れないか、清掃業者になりすまして内部に入れないか、ICカード偽装、社員証偽造、スキミングにより入れないかなどを調査します。さらにサイバー攻撃の足掛かりとして侵入後のサイバー攻撃の経路と手段の調査としてWi-Fiを通じた社内無線LAN無線へのアクセス、LANケーブルへの不正な端末の接続も試みたりします。調査内容は事前に主催者と調整しますが、攻撃活動を交えることでリスク対応を強化してまいります。物理の方はネットワークに侵入するまで、サイバーの方は侵入した後のリスクを評価します。実施後は施報告書を提出し 多面的な評価と効果的な改善提案をします。報告書の内容はエグゼクティブサマリー、実施概要、テスト実施結果 リスクと対策。これらを示し実効性の高い資料として対策の検討にご活用いただきたい。セキュリティレベルをさらに強化のため高度なセキュリティテストを継続的にご活用頂きたいと考えております」
さらに、先行的に6月に診断サービスをうけた株式会社あおぞら銀行の萩尾崇執行役員は「たくさんの気づきがありました。親切のつもりで行っていることが侵入者にとって重要な情報になることにも気づきました。不審物を仕掛けられて気づかないこともありました。整理整頓ができていない場所ではそういうことがある、ということも気づきでした。われわれは、社内に知らない人がいたときの声掛けを徹底していますが、さらに浸透させる必要性を感じました。また、(得意先に)ストラップ、名札、シャツなどの『あおぞらグッズ』を配っていましたが、こうしたものを身に付けている人を社員と誤認するリスクもあるので、配布の制限も検討することになり意識がかわりました」と経験談を話した。
GMOサイバーセキュリティbyイエラエの村田学ディフェンシブセキュリティ部副部長は、「一般的なサイバー攻撃でサイバーだけで完結するものはオフィスの外側に攻撃者がいます。データは中にあります。データが欲しい場合は、たとえば攻撃者はインターネット経由でユーザーの方にメールを送り、言葉巧みにマルウェアを開かせます。この場合はPCを中継地点として攻撃を仕掛けデータを取るという流れになると思います。標的型攻撃というところです。それ以外にもVPNの脆弱性、Wi-Fiの脆弱性を狙うこともあります。 wi-fi のアカウントを取って攻撃する形です。ポイントはどうやって中に入るかです。攻撃者が中にいたらどうなるか。ネットワーク内のどこかからコンピューティングリソースにたどり着ければ侵入目標は達成できてしまいます。ネットワークさえつながっていれば本社とは別の事業所でも全く同じ効果が得られます。つまり内部にいれば攻撃者にとっては、一気にショートカットできるのです。LANを構成するプロトコルは古く暗号化や相互認証が基本機能として備わっていません。また内部からの通信は信用しても大丈夫だろうという認証の省略も危険です。インターネットのセキュリティをしっかりやっていても 物理的な接触にはかなり弱い面が存在ありますので、今回の取り組みが活動の一助になればと思っております」などと述べた。
<リリース>
https://group.gmo/news/article/9608/
<参考>
■ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト
https://www.digitalsales.alsok.co.jp/service/cyber-physical-penetration-testing/
■ALSOK 物理ペネトレーションテスト
https://www.digitalsales.alsok.co.jp/service/physical-penetration-testing/
■GMOサイバーセキュリティ byイエラエ