DJI JAPAN(東京)とスイスを本拠に農薬や種子などのアグリビジネスを世界で展開するシンジェンタの日本法人、シンジェンタ ジャパン(東京)は6月25日、茨城県龍ヶ崎市で、2機の農薬散布ドローンを自動航行させて粒剤の農薬を散布する様子を公開した。2機は自動で飛行し短時間で散布を終え、生産者が散布機を背負って水田に入ることなく、散布を終えることができることを確認した。散布会場となった水田を保有する有限会社横田農場の横田修一社長は「これを起点に新しい取り組みが始まるのではないかと期待している」と話した。
今回の公開は、DJI JAPAN、シンジェンタ ジャパンが、深刻な労働力不足に陥っている農業の省力化と安全確保をめざす取り組みの一環で、「編隊自動航行による農薬散布実証試験」として実施した。DJIの農業用ドローン「AGRAS MG-1 P RTK」と粒剤の農薬や肥糧を散布したり種子をまいたりするために開発されたタンク「GS110」を使い、この日はシンジェンタの水稲用除草剤「アクシズMX」を散布した。会場となった横田農場のライスセンターには、GPSによる測定で生じる誤差を補正するRTK固定局が設置され、ドローンの飛行位置と、目標とする位置のずれを補正する体制が整えられた。
自動航行による散布は、事前に散布する圃場を測量し、地頭をつくり、散布ルートを設定し、散布する、という流れで行われる。この日は、流れを確認するために、空撮ドローンを使って測量する様子と、それによって得られたデータで地図を作り、ルートを設定する様子、それに従ってドローンが飛行する様子と、一連の流れを最初に実演した。担当者は「10~20ヘクタールの測量は10~20分でできる」と説明した。一連の流れを確認したうえで、2機による散布を公開した。
2機による自動航行の散布では、2機とも「アクシズMX」をつめた粒剤散布装置「GS110」を搭載した。散布予定の水田には、安全のための管理者も配置した体制で行われた。オペレーターの合図とともに、「AGRAS MG-1」が出発すると、圃場の上空2メートルの位置をほぼ同じ速度で滑らかに飛行。粒剤を散布しながらの飛行のため、搭載しているタンクの重さは飛行中に変化してるはずだが、機体にゆれ、ぶれはみられなかった。2機の飛行ルートが異なるため、先に作業を終えた1機が先に帰還し、もう1機ももう一往復して作業を終え帰還した。この間、5分足らずだった。
この日の公開に参加したDJI JAPANの呉韜代表は「つい2週間に前も田植えをしてきました。私は8年以上、田植えをしていて、周辺の農家が高齢化していることを実感しています。1人の人間として農業に貢献したいと思い、5年前に社内で農薬散布ドローンを提案しました。安全で、簡単に、自動にできれば。そんな思いでした。3年間の開発期間を経てAGRAS MG-1をリリースしました。あとは、使える農薬があること、使い方が分かることが大切です。今年の4月にシンジェンタ ジャパンと業務提携をしたことで、知見を持ち寄ることで農業に貢献できると確信しました。今回はその提携後、初のプロジェクトです。2機が飛んで自動で散布をすること。これがあるべき姿ではないかと思っています」と話した。
公開の会場を提供し、全国稲作経営者会議で顧問も務める横田農場の横田修一さんは「水田は高齢化が進み、担い手が減っている。放棄された農地を引き受けるので、地域の担い手の管理する農地は年々増えています。これまでと同じ技術、やりかたではやっていくのは難しくなります。スマート農業の導入はすすんでいて、私も関心を寄せています。とくにドローンには期待しています。自動で、複数機同時で散布できるとなると、これまでの産業用無人ヘリとは違う使い方が期待できるのではないかな、とも思っていますご覧いただいているこの田んぼでは、自動運転田植え機で田植えをしました。自動で植えて、自動で散布できれば未来が見えてきます。あとは、それを実際に応用できるのかどうか。たとえば、50ヘクタールにどう対応するのか。そんなことも関心を持ちながら、期待しています」と期待を表明した。
シンジェンタ ジャパンはこの日、水稲用初の散布適期の長い「一発処理除草剤」に分類される序造材「アクシズMX」を散布に使った。同社はさらにドローンに適した開発を進めていて公開の中では、水にまかれると水面を動いて事故拡散能力のある薬剤「ジャンダルム」も紹介。これを使えば、薬剤の拡散性が期待できるため、ドローンそのものの飛行ルートはさらに短縮化できるという。
一連の作業を視察したシンジェンタ ジャパンの的場稔社長は「2機による自動航行はインパクトがあり、カッコいいな、と思いました。農作業がカッコよくなり、魅力的になれば、農業全体の雰囲気がよくなると思っています。その意味からも、ドローンの革新をわたしたちも支えたいと思います。この取り組みはまだ始まったなかりです。みんなで研究していければいいなと思います」と抱負を述べた。
DJI JAPAN:https://www.dji.com/jp
シンジェンタ ジャパン:http://www.syngenta.co.jp/
全国稲作経営者会議:http://inakeikaigi.jp/group/
横田農場:https://www.yokotanojo.co.jp/
ドローン機体構造技術の株式会社エアロネクスト(東京都渋谷区、田路圭輔代表取締役社長・グループCEO)は、独自の特許取得済み重心制御技術「4D GRAVITY®」を搭載した物流専用ドローン「PD4B-M-AN」を、株式会社プロドローン(愛知県名古屋市、戸谷俊介代表取締役社長)と共同開発し、名古屋市で開催された第4回ドローンサミットで発表した。
物流専用ドローンPD4B-M-ANは4つのローターを持つマルチコプターで、バッテリーを含む機体重量は20㎏。最大3㎏までの荷物を運べる。4D GRAVITYの技術を取り入れた荷室を、機体の本体と分けたうえで結合していて、飛行中にドローンが進行方向に前傾しても荷室は前傾せず、荷物が傾かない構造になっていることが特徴だ。これにより飛行性能、機動性の向上も図れる。
エアロネクストとプロドローンは2024年2月に4D GRAVITYテクノロジーライセンス契約を締結していて、プロドローンの汎用機体「PD4B-M」に4DGRAVITYを取り入れた。
エアロネクストの子会社、株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)が受託した「あいちモビリティイノベーションプロジェクト空と道がつながる愛知モデル2030」の物流ドローン社会実装モデル推進事業として近く、現場で飛行する予定だ。
千葉・幕張メッセで開催中の農業技術関連展示会「農業WEEK」で、株式会社NTT e-Drone Technology(NTTイードローン、朝霞市<埼玉県>)が発表した鳥獣害対策専用ドローン「BB102」の展示に来場者が集まっている。ブースでは担当者からこれまでの実験の様子や今後の展開などに聞くこともでき、来場者から「発表されていない現場での実験の様子なども聞くことができ、期待が高まった」などの声が聞かれた。農業WEEKでは株式会社石川エナジーリサーチ(太田市<群馬県>)や中国・上海のポジショニング技術のCHC Navigation(CHCNAV)などそのほかのドローン関連技術や自動操舵技術も展示されている。開催は10月3日まで。
NTTイードローンの鳥獣害対策専用ドローン「BB102」は農業WEEKの「NTTグループ」ブースで出展されている。取り回しのよさなどで農業関係者から評価の高い散布ドローン「AC102」を見にきた来場者が、その隣に展示してある「BB102」を見つけ、足をとめて説明に聞き入り、ひとだかりができていた。
展示ブースではBB102が黒い布に赤色と緑色をランダムに照射する様子が実演されていて、担当者から緑の色が鳥獣の痛点を刺激することや、赤い色がエサのようにみえることなどが説明された。
イードローンが9月30日に発表したプレスリリースには、効果が確認された鳥獣として、カラス、ハト、イノシシ、シカ、カワウ、サギ、ハクビシンなどが示されていたが、ほかにも効果的な鳥獣があるなどの話を聞くこともできる。担当者に聞くと、全国で被害が広がっているクマも、このレーザー照射にいやがる様子を見せたと話していて、今後の検証次第ではさらなる効果が期待できそうだ。その場合、クマの出没現場にどのようにドローンを飛ばすか、など具体的な対応法も論点になる可能性がある。
このほか、ある湖で実験したらはっきりと鳥獣がいやがる様子を見せたことなどの実験現場の話も聞くことができる。
農業WEEKではイードローンのほかにも、石川エナジーリサーチの農業用ドローン、CHCNAVのリモートセンシング技術、自動操舵技術などが展示されている。
農業WEEKはRX Japan株式会社が主催し、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、日本農業法人協会農業が後援する、「国際スマート農業EXPO」「次世代農業経営EXPO」など5つの農業関連展示会をまとめたイベントの総称で東京会場(幕張メッセでの開催)は今回が15回目。主催者は「J-AGRI(ジェイアグリ)」の呼び方の定着を目指している。九州でも同じ趣旨の展示会を開催していて、第4回九州農業WEEKが2026年5月27日から29日まで益城町<熊本県>の展示会場、グランメッセ熊本で開催される予定だ。
参考:イードローンが鳥獣害対策機BB102発表
AI、ロボティクスの社会実装推進事業を手掛けるGMO AI&ロボティクス商事株式会社(GMO AIR、内田朋宏代表取締役社長)は9月30日、「ロボット人材派遣型サービス」に中国・深圳のロボットスタートアップEngine AI社製のヒューマノイドロボット「PM01」をラインナップに加え、2026年1月から派遣を始めると発表した。
「PM01」は世界で初めて前方宙返りを達成した高い身体機能で話題になったヒューマノイド。イベント、研究など幅広い分野での活用が期待できる。GMO AIRは「ロボット人材派遣型サービス」として技術指導、ソフトウェア開発サポートも支援する。「PM01」を開発したEngine AIは、自動車と空クルを融合させた「Land Aircraft Carrier」を開発したシャオペンエアロ(XPENG AEROHT)のシャオペン系のテクノロジー企業グループの一員で、高い技術力で知られる。
GMO AIRは「PM01」について、ダイナミックな身体能力、柔軟なカスタマイズ性、アイアンマンに着想を得た洗練されたデザインの3点を主な特徴にあげ、「イベントや展示会で圧倒的な演出力を実現する」と説明している。
GMO AIRは、2025年4月から「ロボット人材派遣型サービス」を展開。4足歩行ロボット、ヒューマノイドロボットの中国・Unitree社(宇樹科技)のヒューマノイド「G1」を中心にエンターテインメント、研究機関、実証実験などの現場に派遣している。2026年2月にはAIとヒューマノイドロボットを手がける中国・UBTECH Robotics社(優必選科技)の「Walker E」の派遣も予定している。「PM01」が追加することでラインナップが充実する。
■サービスURL:https://ai-robotics.gmo/lp/robot-haken/
■GMO AIRについて:https://ai-robotics.gmo/
■GMOインターネットグループ株式会社について:https://group.gmo/
株式会社NTT e-Drone Technology(NTTイードローン、埼玉県朝霞市)は9月30日、鳥獣害対策専用ドローン「BB102」を発表した。搭載したレーザーで赤色と緑色をランダムに照射して鳥獣に強い違和感を与え退避行動を促す。カラス、ハト、イノシシ、ハクビシンなど幅広い鳥獣への効果が確認されたという。イードローンは「BB102」を2025年10月1日に提供を始める。10月1日に千葉・幕張メッセで開幕する展示会「農業WEEK」では、NTTグループブースで公開する。価格は「オープン価格」としている。
鳥獣害対策専用ドローン「BB102」はレーザーを搭載していることが特徴で、一般社団法人地域総研(東京)が2018年1月に実用新案登録証と商標登録証を取得した「クルナレーザー」をドローンに活用した。ドローンは自動航行機能も備える。レーザーを搭載した鳥獣害対策専用ドローンは例がないとみられる。
仕組みは赤色と緑色のレーザーをランダムに照射するもので、これが鳥獣に強い違和感を与え退避を促すという。鳥獣が慣れてしまうことへの対策としてスペックルノイズ(ちらつき)を生じさせ、忌避効果を持続させる工夫もこらした。
農林水産省によるとイノシシ、シカ、カラスなどによる農作物被害は年間約200億円規模にのぼるうえ、鳥インフルエンザ、豚熱など畜産業での防疫対策も深刻で、「BB102」で農作物被害抑制と鳥獣害対策業務の負担軽減との両立を目指す。カラス、ハト、イノシシ、シカ、カワウ、サギ、ハクビシンなど多くの鳥獣への効果が確認されていて、実験では水田、果樹園、山林、湖などさまざまな環境での有効性を示した。
イードローンによる発表は以下の通り。
株式会社NTT e-Drone Technologyは、全国的に深刻化する鳥獣害問題に対応するため開発・製造した、鳥獣害対策専用ドローン「BB102」の提供を2025年10月1日(水)より開始いたします。レーザー搭載の鳥獣害対策ドローン(国内初)による高い忌避効果と自動航行機能により、農作物被害の抑制と鳥獣害対策業務の負担軽減を両立します。
1.背景と目的
イノシシやシカ、カラスなどによる農作物被害は年間約200億円規模(※1)にのぼり、深刻な社会課題となっています。さらに、鳥インフルエンザや豚熱など畜産業における防疫対策も喫緊の課題です。
当社はこれまで農業用ドローン等の提供を通じて農業分野における省力化・効率化を支援してきましたが、今回新たに提供する「BB102」はこれまでの技術を応用し、鳥獣害対策に特化して開発した国産ドローンです。農作物の被害減少に加え、鳥獣害対策に要する人的・時間的負担の軽減を図ることで、第一次産業全体の持続可能性向上に寄与します。
※1:数値データは、農林水産省HPより出典
2.製品概要と特長
「BB102」は、上空から広範囲にレーザー照射を行えるため、地上設置型では難しかった屋上や高所を含む鳥害対策を実現します。
<特長1>「クルナレーザー(※2)」による忌避効果
赤色と緑色のレーザーをランダムに照射し、鳥獣へ強い違和感を与え退避を促進させます。また、慣れへの対策としてスペックルノイズ(ちらつき)を生じさせ、忌避効果の持続性を高めています。
※2:一般社団法人地域総研の登録商標
<特長2>自動航行機能
送信機の画面で飛行範囲を設定するだけで自動航行が可能です。養鶏場や牛舎など、広範囲のエリアを効率的に対策できます。
<特長3>FPVカメラ搭載
送信機の画面上で屋根や高所の確認が可能です。鳥獣害対策に加え、点検用途にも活用できます(目視外飛行不可)
<特長4>幅広い鳥獣への効果
カラス、ハトなどの鳥類、イノシシやシカ、さらにカワウ・サギ・ハクビシンなど、多様な鳥獣に対する忌避効果が確認されています。水田、果樹園、山林、湖など様々な環境での実証実験でも高い有効性を示しました。
4.受付開始日
2025年10月1日より開始
※デモ会、説明会、意見交換会等のご要望にも対応します。
5.価格
オープン価格
<参考>展示情報
第15回農業WEEK(会期:10月1~3日、会場:幕張メッセ)NTTグループブースにて「BB102」を展示します。
ドローンの普及促進を目指す第4回ドローンサミットが9月24日、名古屋市の大規模展示会場、ポートメッセ名古屋第1展示館C・Dホール(名古屋市港区)で開幕した。ドローンサミットの開催は、神戸、長崎、福岡につぐ4回目。開会式で愛知県の大村秀章知事は「過去最大の135の企業、団体が出展することになった」と述べた。NTT e-Drone Technologyは仏パロットのANAFI UKRを初公開し、株式会社Tech Drone(東京)はこの日公開したばかりの空撮を支援するアプリを説明するなど、各社、団体が工夫をこらした技術を披露している。サミットは25日まで。
第4回ドローンサミットは、愛知県、経済産業省、国土交通省が主催し、9月24日、25日の9:45~17:00にポートメッセなごや第1展示館C・Dホール(愛知県名古屋市港区金城ふ頭二丁目2番地)で開催される。フランスのadvanced business events(BCIエアロスペース)が主催する航空宇宙分野のビジネスマッチングの商談イベント「エアロマート名古屋2025」と同時開催で、エアロマートは同じポートメッセなごや第1展示館のA・Bホールで9月24日から26日まで開催される。
初日の開会式では愛知県の大村知事のほか、竹内真二経済産業大臣政務官、吉井章国土交通大臣政務官が主催者を代表してあいさつしたほか、自民党の田中和則無人航空機普及・利用促進議員連盟(ドローン議連)会長・元復興相、鶴保庸介ドローン議連幹事長が来賓としてあいさつした。愛知県の大村知事は「ドローンや空飛ぶクルマの実現のはずみとなることを期待しています」などとあいさつした。
展示会場では三菱重工業が、200㎏の重量の荷物を運べる大型ハイブリッドドローンがひときわ目立っている。25日には同型のハイブリッドではないドローンで150㎏の荷物を吊り下げて飛行する模擬飛行に挑む。
このほか有限会社森山環境科学研究所は、空中のウイルスを補修するためのドローンや、人が立ち入れない汚染空間にもぐりこむウイルス補修クローラーを展示。水中ドローンの普及に尽力している株好き会社スペースワンは、管路点検クローラーロボット「PIPETREKKER」や、水中ドローン「CHASING」「DeepTrekker」シリーズを展示している。
シンポジウム会場では、対談、パネルディスカッションなどに第一線で活躍中のキーマンが登壇している。シンポジウム会場では登壇者の発言中に、すぐ隣に配置された屋内デモフライトゾーンでの飛行音が響くこともあった。
サミットは25日まで。入場は無料で、原則、事前登録が必要だ。
DJIは9月17日(日本時間)、小型ドローン「DJI Mini 5 Pro」を発表した。これに伴い日本国内でもセキド、システムファイブなどの代理店が発売を発表した。Miniシリーズで初めて1インチセンサーを搭載したほか、LiDARを活用した夜間・低照度環境での全方向障害物検知、225度のジンバル回転機構などの性能を備え愛好家の間でプロフェッショナル向けの映像制作機としても通用すると話題になっている。
DJI Mini 5 Pro最大の特徴は、1インチCMOSセンサーを採用した点だ。前モデルのMini 4 Proが1/1.3インチセンサーを搭載しており、新モデルで大幅にセンサーサイズを拡大したことになる。これにより暗所撮影や夜景撮影でのノイズ耐性が向上し、低照度環境下でもよりクリアな映像が撮影できる。有効画素数は50MPで、静止画撮影でより高精細な記録が可能となり、絞り値はf/1.8と明るくなった。
動画性能も強化された。4K/60fps HDRのほか、スローモーション撮影では4K/120fps、色表現では10ビット記録(H.265)、D-Log MやHLG撮影に対応する。しダイナミックレンジは最大14ストップで、映画のような映像表現の可能性が高まった。
LiDAR搭載の全方向障害物検知
またLiDARセンサーも備えた。小型機としては異例な装備だ。周囲を検知するために備えてあるビジョンセンサーの強力な援軍となり、暗所での障害物回避性能も大幅に高まった。特に夜景撮影時や屋内飛行などの低照度環境下での安全性が大幅に向上したといえる。
「Non-GNSS RTH(リターントゥホーム)」機能が備わり、GPS信号が不安定な環境でもカメラとセンサー情報を活用して離陸地点へ帰還できる。
ジンバルと撮影自由度の進化
ジンバルは従来の3軸に加えて最大225度のロール回転が可能となり、縦構図撮影を含む多彩なカメラワークが可能となった。SNSやショート動画で重視される縦動画を、クロップなしのフル解像度で撮影できる点はクリエイターにとって大きなメリットである。
さらに、ジンバルの回転機構を活かした新しいダイナミックショットモードも搭載されており、従来のMiniシリーズでは得られなかったユニークな映像表現を可能にしている。
飛行性能とバッテリーライフ
Mini 5 Proの飛行時間は標準バッテリーで最大36分、オプションの「インテリジェント フライトバッテリー Plus」を使用すると最大52分に伸びる。長時間の空撮が可能となり、フィールドでのバッテリー交換回数を減らせることにつながる。
耐風性能も強化され、最大風速約12m/sに対応する。海岸線や高原などの風の強い環境下での飛行の可能性を広げそうだ。
内蔵ストレージと伝送システム
本体には42GBの内蔵ストレージを備えている。このためmicroSDカードを挿入し忘れても一定量のデータを確実に記録できる。さらに新しいO4+伝送システムにより、最大20kmの映像伝送に対応する。電波干渉の多い都市部でもライブ映像が安定して届くことにつながり、操縦者の安心感を高めそうだ。
Mini 4 ProやAir 3Sとの比較
Mini 4 Proとの比較では、センサーサイズの拡大が最大の進化点である。Mini 4 Proも48MPの高画質を誇っていたが、Mini 5 Proは1インチセンサーにより低照度性能で明確な優位性を持つ。また、LiDARによる夜間障害物検知はMini 4 Proにはない新機能であり、安全性の面でも大きな差をつけた。
Air 3Sとの比較では、Air 3Sが二眼カメラ(広角・中望遠)を搭載するのに対し、Mini 5 Proは単眼ながらセンサーサイズで優位に立つ。重量規制の異なる国や地域での運用において、249g未満クラスを維持しながらハイエンド性能を実現している点はMini 5 Proの独自性だ。プロフェッショナル用途でも「軽量かつ高性能」という唯一無二のポジションを確立したといえる。
国内販売と価格
国内でもセキド、システムファイブが販売を発表した。希望小売価格は106,700円(税込)からで、付属コントローラーやバッテリー構成によって128,700円、150,480円、158,180円などのバリエーションが展開されている。すでに公式オンラインショップや代理店サイトで予約受付が始まっており、プロからホビーユーザーまで幅広い層の関心を集めている。