一般社団法人日本ドローンコンソーシアム(JDC)が開催した「第1回JDCフォーラム」では、ドローンの事業、研究に関わる事業者、研究者、行政担当者らが、点検、安全、防災などテーマごとに意見を交わす分科会的なセッションと、内閣府、総務省、国土交通省、経済産業省のドローンに関わる責任者、担当者が登壇するパネルディスカッションが行われた。
テーマごとのセッションのうち、「安全推進/技能検定」のセッションでは、システム安全の社会啓発に取り組む長岡技術科学大学の木村哲也准教授が、生活支援ロボットのISOに携わる経験などをもとに「持続的発展に必要な国際安全規格から見たドローン安全」でスピーチした。
木村氏は、機械に取り付けられているプロペラの回転が指を切断するリスクについて検証した実験映像を見せながら耐切創性について説明。そのうえで、「安全は基本的人権の一部と言って文句は言われないと思う」と位置づけ、「持続的なビジネスにも必要だ」と強調した。
安全の基準となる安全規格について、木村氏は蒸気機関の誕生、普及に伴い生まれたと説明。具体的には、かつて蒸気船が発明されたとき、火災を起こす危険性の高い、技術の低いボイラーを採用した船の入港を制限しなければならず、そのため入港できる船として認める最低基準を定め、事業者がその基準を守りあった経緯があったという。また技術開発費は、持続的経営の必要性の中で理解され、事業主が吸収してきたと解説した。
認証機関については民間が担うのが世界の大勢であると紹介。「日本では公共的なものは国や行政に担ってもらおうとする空気が強いが、世界的な考え方はそうではない。民間が自由にビジネスをしたいから、自らを律する基準をさだめるという考えがある」と述べた。
一方でドローンについては、「経験のない技術が世の中に出てこようとしているの。このため、蒸気船のように、経験的から安全確保策をつくるのではなく、論理的に組み立てていく必要があるのではないか」と述べた。
さらに、安全規格は「社会をコントロールする重要なツール」と指摘。「価格、性能と異なり安全性、環境対応などユーザーに分かりにくいところ、メーカーが手を抜けるところは、第三者的な規格を作っておく必要がある。クルマでいえば、型式認定を受け、個々に車検制度があり、保険にも入ることになっている」と説明を加えた。そのうえで、「規格をめんどうなもの、やっかいなものと受け止める声も聞かないことはないが、もともとの発想は反対。研究者にとっては、技術開発を自由にやらせてほしいから、規格をつくり、それを守るから、それ以上の指図をしないでほしい、というメッセージだった」と繰り返した。
安全に「絶対」が存在しない状況での規格策定については、どこまで許容範囲かを探る作業になると言及。木村氏は「生活支援ロボットでも町の中で動かす話になると、子供にぶつかったらどうなるのか、とか、“絶対に安全でないと困ります”という発言をされる方がいらる。そこが生活支援ロボットを社会に展開するうえでの課題となっています」と紹介した。
一方で、「追求しすぎるとコストがどんどん上がるのが安全。むやみやたらにコストをかければいいというものでもない。いい塩梅で成り立つ安全を考える必要がある」と、そのバランスの重要性を指摘した。
このほか施設点検セッションでは、三信建材工業株式会社、株式会社日立システムズ、山九株式会社、株式会社ジャストなどの代表者が取り組みを報告。株式会社ジャストの角田賢明取締役は、球体ドローン「ELIOS」を使って構造物調査に取り組んだ事例などを紹介し「安全や効率などで成果があった。今後も改善、向上に向けて取り組みたい」と意気込みを語った。
パネルディスカッションには、内閣官房小型無人機等対策推進室の長崎敏志内閣参事官、総務省総合通信基盤局移動通信課の荻原直彦課長、国土交通省航空局安全企画課の英浩道課長、経産省製造産業局産業機械課の玉井優子課長が登壇。JDC制度設計委員長で慶應義塾大学教授の武田圭史氏がナビゲーターを務め、会員向けのアンケート結果を紹介しつつ、登壇者の意見を促した。
登壇した4人はそれぞれ各賞の計画や取り組みを披露し、「規制でドローンの発展を阻害することはしたくない」など、そろってドローンの利活用推進の立場を表明した。
国交省航空局安全企画課の英課長は「飛行申請は年々増えている。用途をみると、空撮が一番多く、測量、インフラ点検の順番だ。業務上必要なものとして使われているという印象を持っている」と現状を分析した。
総務省の荻原課長は「通信インフラの利活用は地域の活性化などにとって大切であり、ドローンにとっても大切。どう使いやすくするか。そこにいま力をいれているところ。幅広く要望、意見を聞き、取り組みに反映させたい」経産省の玉井課長は「役人にとって“改正する”という業務は珍しくないが、制度をどう設計し、産業をどう育てるかということはあまりない経験することではなく、いまはたのしく仕事をしている」
ただ、社会にはドローンの利活用を歓迎する声ばかりではなく、長崎参事官は「かかってくる電話にはクレームが多くまだまだ賛成ばかりではない。ドローンの利便性をどう伝え、安全性をどう確保し、それをどう理解して頂くか。これからも取り組みを加速させて、当たり前にドローンが飛ぶ世の中になると期待している」と述べた。
最後にJDCの野波健蔵会長は、「2016年が産業用ドローン元年といわれ、昨年2018年は物流ドローン元年といわれた。2022年には第三者上空飛行元年になり、2020年代後半にはわれわれが想像しているような、どこでもドローンが飛ぶ社会になると展望している」としめくくった。
AAM(アドヴァンスト・エア・モビリティ)運航事業を手掛け、大阪・関西万博の運航事業者にも名を連ねる株式会社Soracle(ソラクル、東京)が、2027年中にも大阪・関西エリアで旅客運航を目指す計画を明らかにした。9月10日に大阪府、大阪市と連携協定を結んでおり、その席で計画を明らかにした。米Archer Aviation(アーチャー・アヴィエーション)のパイロット1人を含めた5人乗りのeVTOL型AAM、Midnight(ミッドナイト)を使うことを想定しているという。
Soracleは2026年にも大阪府内で実証飛行を実施し、必要な審査をふまえ27年にも大阪ベイエリアでの遊覧飛行などを始める。周回して出発点に戻る運航のほか、離陸地点から別の場所に移動する二地点間飛行も想定する。
大阪府と大阪市との連携協定は、ソラクルの事業環境を整えることや、運航網整備に必要なインフラ整備に向けた調査、制度の整備、関連ビジネスの展開支援などの事業環境整備に向けた取り組みを進める。締結式では太田幸宏CEOが、大阪に来れば全国に先駆けて空飛ぶクルマに乗ることができる未来を実現し、中長期的には関西・瀬戸内海地点を結ぶ観光体験を創ると抱負を述べた。
吉村洋文知事は「さまざまな課題はあろうかと思いますが、Soracleさんと協力し、大阪府・市も全面的に当事者として取り組むことで、2027年に商用運航を、そして大阪に来れば空飛ぶクルマに乗ることができるということをめざしていきたいと思います。大阪・関西から、空の移動革命を実現していきましょう」と述べた。
Soracleの公式発表はこちらにあります
スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
参考:GMO熊谷氏、HEXA搭乗し飛行を公開
参考:GMO熊谷氏にHEXA公開搭乗の理由を聞く
参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始
ドローンショーの株式会社レッドクリフ(東京)が、フィンテックのフリー株式会社(freee株式会社)の活用事例に登場した。レッドクリフが搭乗したのはfreeeが提供しているプロダクト「freee販売」の活用事例で、ビジネスの急拡大に伴う業務管理の効率化に役立てていることが紹介されている。取引先の業務効率化をアピールすることが多いドローン事業者にとって、freeeの活用事例はモデルになりそうだ。またドローン事業者が他の事業者の活用事例に取り上げられることも今後、増えそうだ。
フリーが公表したレッドクリフの活用事例はこちらからみられる。
それによると、事業の急拡大で案件別の収支管理や、全体の把握、属人依存の管理に限界が見えてきた中で、それまでスプレッドシートに頼ってきた業務フローを見直しに着手した。freee販売の導入で、受発注データと原価情報を集約し案件ごとの収支把握が容易になり、部門を越えたデータ共有や、各部門がそれぞれの業務に集中できる態勢が整ったという。チェック漏れリスクの軽減と業務負担の軽減が同時に果たせ、人件費、立替経費、ドローンの減価償却費を案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が実現し、経営判断の精度向上にも繋がっている。
結果として、IPO準備に不可欠な「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」をデータに基づいて説明できる環境ができたという。
ドローンの事業者も、取引先の効率化をソリューションとしてアピールする事例が多く、活用事例でも導入先の作業の時間短縮効果などが掲載されることが多い。一方で、導入先にとっては、その事例が解決したい課題の一部にすぎないことや、導入による新たな負担などが発生するケースもあり、活用事例のアピールの方法について、各者が試行錯誤している。
freee販売の活用事例では、汎用性の高い困りごとを取り上げていて、freee販売の商品性のアピールになるとともに、多くの企業にそのアピールの手法そのものが参考になりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンによるマンション外壁点検の仕事を請け負うための力を養う講座「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」の内容を解説する「講座ご案内ウェビナー」をJUIDAの公式ページ上で公開した。ウェビナーは7月に視聴者を募って行われ、講座は8月に開講した。現在も受講生を募集している。
「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」は、JUIDA、マンション管理など不動産管理大手の株式会社東急コミュニティー、ドローンスクール運営の株式会社ハミングバードの3者が作った講座で、5月に公表し、6月に開催された展示会「JapanDrone」で3者そろって発表会に臨んでいた。3者は新たな講座のマンション外壁点検の現場で求められる実務を盛り込んだことと位置付けている。
マンション外壁点検でのドローン導入期待は高いものの、外壁点検の現場や実務を知るドローン事業者は多くない。マンションの管理組合などから点検業務を請け負うマンション管理事業者側にとっては、現場知識の乏しいドローン事業者にドローンでの点検を依頼すると、ドローン事業者が担うべき実務を一から伝えなければならず、手間、時間、コストの負担が大きい。これがドローンの導入を阻む要因になっていると言われている。このため講座を通じてマンション外壁点検に求められる実務の知識を習得することで、マンションの外壁点検現場へのドローン導入を後押ししようとする狙いがある。
公開された動画は、全体で50分弱。事務局のあいさつ、カリキュラム概要、受講料、受講会場など講座に関わる説明が27分ごろまで行われる。この中では、点検作業後に作成し、依頼主に納める報告書の重要性が強調されている。ドローン作業者には、報告書の重要性や、報告書に掲載するための画像の要件が講座で解説されることなどが伝えられている。
その後、事務局が設定した想定質問に、担当者が回答する一問一答が行われる。一問一答の中では、講座の修了生には必ず外壁点検の仕事があっせんされるのか、タワーマンションにも対応可能なのか、など受講判断に関わりそうな質問がいくつも盛り込まれていて、担当者の回答は、受講を検討者の参考になりそうだ。
高校生FPVドローンレーサー・山本悠貴選手が、9月13日にドイツで開幕する国際レース出場に向けてクラウドファンディングを実施中だ。山本選手をスポンサーとして応援している株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)がプレスリリースで山本選手の活躍を紹介している。
山本選手は今年7月12日~13日にイタリア・アルビッツァーテで開催された「World Drone Cup Italy 2025」で予選を総合3位で通過してジュニア部門の決勝に進出した。山本選手としては初の決勝進出で、決勝でも4位入賞に食い込む活躍を見せた。なお、ジュニア部門ではすでに数々の大会で優勝経験を持つ日本の橋本勇希選手が優勝している。
山本選手は、2024年10月30日から11月3日まで中国杭州市のShangcheng Sports Centre Stadiumで開催されたドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(WDRC)」で、橋本選手とともに日本からの5人の選手の一人として出場し、各選手の成績を集計した国別順位で日本代表チームが3位に導く立役者の一人となっている。 なお、イタリア大会で優勝した橋本選手は、中国杭州市の大会でも個人総合、ジュニア部門の2部門で優勝している。
ドローンショー・ジャパンのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000080729.html?fbclid
イタリア大会結果詳細: https://fpvscores.com/events/0DNj73gpMX/results
山本選手の動画:https://youtu.be/1auUXebjYTc
<参考>中国大会で日本総合3位、橋本選手は個人総合、ジュニア部門の二冠:https://dronetribune.jp/articles/24276/
山本選手のクラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/876711/view?utm_campaign=cp_share_c_msg_projects_show
ブルーイノベーション株式会社は9月3日、沿岸防災ドローンとして注目されている「BEPポート|防災システム」の解説動画を公開した。仙台市と千葉・一宮町に配備されたシステムは津波警報のさいに初出動したことをきっかけに、自治体からの注目度がさらに高まっている。
動画は7分弱。「BEPポート|防災システム」について、「災害発生時の初動を支援する次世代型ソリューション」と説明していて、主に自治体の防災担当者や関係者、協力事業者らを対象としているとみられる。
開発したブルーイノベーションの紹介、災害時の初動対応に求められる3要素などの説明があり、それらの説明をうけて、2分50秒ごろから具体的な説明に入る。Jアラートを受けてBEPポートが自動的にドローンに離陸を指示する仕組みなどが説明されている。
また終盤の5分ごろからは、7月30日の津波注意報、津波警報を受けて一宮町<千葉県>のシステムが初出動した模様を紹介している。
システムは一宮町と仙台市<宮城県>に設置していて、7月30日の津波注意報、津波警報を受けてそれぞれ出動した。
なおブルーイノベーションは、東京都立産業技術研究センターの「クラウドと連携した5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業 公募型共同研究」に、同社が「BEPポート|防災システム」の活用を前提に提案した「自動離発着型ドローン多目的災害支援システムの研究開発」が採択されたことを9月1日付で発表している。孤立地域の状況調査、倒壊家屋の監視など災害現場で求められる機能を新規開発する計画だという。