新型コロナウイルス一色に染まってしまいそうな2020年も、ドローンやエアモビリティのフィルターを通して眺めると、話題の豊かな1年だったことに驚きます。そこでDroneTribuneは、2020年をおさらいし、2021年を展墓するために「ドローン10大ニュース」を選んでみました。掲載したもの、していないもの、あるいはトホホなものからアハハなものまで、数限りなくある出来事から、「ドローン前提社会の実現につながる」を軸に集めました。リモート忘年会や新年会のネタにもして頂けましたら幸いです。以下、カウントダウンでご紹介します。
ドローンの用途別資格を創設する動きが広がる中、JUIDAも石油化学プラント点検への活用技能を備えていることを証明する専門ライセンス「JUIDAプラント点検スペシャリスト」の授与を2020年12月、開始しました。国内の石化プラントの保守点検は、設備の老朽化、作業員の高齢化の進行で「新設するより難しい」と形容され、ドローン活用の布石となることが期待されます。
ドローンの大規模展示会「Japan Drone 2020」は、開催の是非、可否の検討が繰り返された末に2020年9月末に千葉・幕張メッセで開催された。当初の3月開催から半年の延期で、期間を3日間から2日間に短縮、規模も縮小した。講演などはインターネット回線で配信し、来場せずに参加する方法を模索した。、
株式会社エアロネクストと株式会社自律制御システム研究所(ACSL)が2020年8月31日、エアロネクストの機体が傾いても積み荷が傾かない重心制御技術「4D GRAVITY」などの特許群のライセンス契約を締結したと発表しました。当初からライセンスビジネスを志向していたエアロネクストにとって初のライセンス契約の実績となり、ドローン産業のビジネスの可能性を拓く展望を与えました。
大阪のキタとミナミを貫く御堂筋線などを運行する大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ)が2020年1月31日、株式会社アイ・ロボティクス(東京)と協業したことを発表しました。大阪メトロの駅天井裏や構造物などを手のひらサイズのマイクロドローンで点検する内容。マイクロドローンのインフラ点検への実用時代幕開けを印象付けた。
新型コロナウイルスの感染対策として海水浴場の開設が見送られた神奈川県藤沢市の片瀬西浜で7月から8月の間、ドローンとライフセーバーとが連携して海岸をパトロールして安全を確保する全国初のプロジェクトが展開されました。ドローン研究に力を入れる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムが統括し、地元の藤沢市、神奈川県ライフセービング協会、藤沢市サーフィン協会などと幅広い連携で事故を防ぎました。
2020年5月、DJIが産業用途に向けて「MATRICE 300 RTK」を発表しました。最大飛行時間は55分、6方向の検知と即位が可能なビジョンシステム、条件次第で運用限界高度海抜7000m、3つのペイロードの同時装着、ライブミッション記録、ミッション中に制御権が切り替え可能なデュアル制御などの性能はいずれも圧倒的で、あっという間に利用者の間で「産業機の決定版」「革命的な進化」などの高い評価を獲得しました。
ドローンの動態展示、「富士山UAVデモンストレーション」が2020年11月3日、静岡県殿場市の陸上競技場で10組のデモフライトが行われました。慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアム主催の、いわゆるドローンの航空ショーで、カメラを機体の上に乗せた「ALTA-X」が安定の飛行を見せたほか、徳島大学のチームのダクト機が合体ロボットの足の部分のような見た目で異彩を放っていました。Dアカデミーチームは固定翼機discoの編隊飛行を披露し、最後の1機をチームメンバーがハンドキャッチをしてしめくくり会場の喝さいを浴びました。ドローンは動いている様子を見てこそ真価が分かる、という主催者の強い思いで実現させた展示会で今回が3回目の開催。BODUC、空撮技研、アドエアなども展示組もかなりの力の入りようで見ごたえ充分となり、今後の展示会のあり方に一石を投じそうです。
新型コロナウイルス感染対策として非対面、非接触が奨励される中、医師がオンラインで診察し、処方した医薬品をドローンで届け、オンラインで服薬指導をする取り組みが相次ぎました。中でも最初に話題になったのは2020年7月に北海道旭川市で行われた取り組みで、北海道経産局、旭川医科大学、ANAホールディングス株式会社、株式会社アインホールディングスなどが参加し、患者と医師、薬剤師が直接に対面することなく処方薬を受け取りました。
11月には、愛知県の三河湾に浮かぶ離島・篠島と約14キロ離れた本土側の愛知県知多郡美浜町との間での非対面医療に取り組み、株式会社プロドローン、日本調剤株式会社、JA愛知厚生連知多厚生病院が、オンライン診療、オンライン服薬指導、処方薬の配送を成功させました。このほか長崎県五島市などでも行われ、非接触が推奨される中での遠隔医療に展望の持てる成果を生み出しました。なお、愛知県の実験で使われたドローンはプロドローンの「PD6B-Type3」、オンライン服薬指導には、日本調剤の「日本調剤 オンライン薬局サービス」が使われました。
進行方向を自分で判断するAIドローンの米Skydioが2020年秋、日本法人Skydio Japan合同会社を登記し、本格始動しました。関係者の間では2年ほど前から「あのドローンより正確に追尾する」「ぶつからないから近寄れるドローン」として評判で、日本では株式会社NTTドコモ、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)、株式会社FLIGHTSをパートナーに滑動することを表明しています。日本通で日本語も堪能なトム・モスCEOは、「技術で選ばれる会社」を目指していて、当面は自治体や企業、団体向けに営業活動をする方針です。個人向けの機体販売をする予定はありません。
なお同社は産業用の新モデル「Skydio X2」や、機体をスマートに格納するボックス型の専用ドック「Skydio 2 Dock」などを2021年にも日本市場に投入する意欲を見せていて、日本国内のドローン産業に彩を添えそうです。
DRONE FUNDの創業代表パートナー、千葉功太郎さんが、自家用飛行機の操縦士免許を取得したというニュースが2020年に飛び込んで来ました。ドローンの普及を目指す立場から、空域利用に向けた提言に一層、重みを増すことになります。ドローンの普及への取組が技術面、産業面、制度面のそれぞれで加速することも確実です。ドローン産業で活躍しておられる方々の中には、航空機の操縦実績をお持ちの方がいらっしゃいますが、無人機を操っていて有人機を操るひとになった例は極めてレアで、説得力ある取り組みに期待がかかります。
千葉さんがドローンと出合ったのは2015年でした。当時株式会社コロプラに在籍していた千葉さんに、株式会社ORSOの坂本義親代表がドローンを紹介。すぐに可能性を見抜き、自身で操縦をマスターするとともに、普及活動に乗り出すことになります。2017年にはDRONE FUNDを設立し、官民協議会にも参画して提言し、2018年7月にはDRONE FUND2号設立を発表したさいには、自家用機「かなたちゃん号」もお披露目します。その年の末にはHondaJet Eliteの日本1号機も入手しました。このときすでに飛行機を自分で動かすつもりでいたことを後日語っています。ドローンと最初に出合ってから5年後に有人機の免許も取得した千葉さんから、2021年も目が離せません。
上記のほかにもさまざまな出来事がありました。いずれを上位にいれても不思議ではないものもありました。
そのひとつが、<5G・ドローン促進法の施行>です。次世代通信規格5Gや、サイバーセキュリティー対策を講じたドローンの開発、導入などを促進する「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(5G・ドローン促進法)」が8月31日に施行されました。要件を満たして「認定開発供給事業者」、「認定導入事業者」に認定されると、政府指定の金融機関から低利融資を受けられたり、租税特別措置法に基づいて30%の特別償却を受けられるなど、普及促進の後押しを受けられます。
また、「レベル4」実現に向けた制度設計の基本方針が3月31日の官民協議会で決定されたことも関係者全員の話題にのぼりました。<「機体認証」「操縦ライセンス」を創設>し、第三者上空などレベル4に該当する飛行については両方を取得し、国交相の許可・承認を受けた場合に可能となると整理されています。民間試験機関が実地試験、学科試験を行うことになる見込みで、今後、試験機関の選定方法などを詰めることになります。
このほか、エアロセンス株式会社が8月6日に<新型VTOL機「AEROBO wing(AS-VT01)=エアロボウイング」を発表>して話題になりました。1kg までの荷物を搭載して垂直離着陸し、最大時速100kmで航続距離は50kmです。
<ソニー株式会社は2020年11月9日、ドローンプロジェクト「Airpeak」の始動>を表明しました。「イメージング&センシング技術、リアリティ、リアルタイム、リモートの『3Rテクノロジー』を活用しドローンのさらなる発展や最高峰の価値創出に貢献する」と話していて、2021年春の事業開始を予定しています。
飛行航路を機体自身が判断するAIドローンの事業を展開するSkydio Japan合同会社(東京)のトム・モスCEOはこのほどドローントリビューンのインタビューに応じ、同社の技術が生かせる領域や、サービスを提供するさいの判断基準、経営目標などについて語った。モスCEOは、活用領域についてマニュアル運用されている領域はすべて対象と明言。特に撮影後にデータ解析する領域と、シチュエーショナル・アウェアネス(現状把握)が求められる領域の2点をあげた。サービスの提供先として歓迎するのは「ノーカスタマイズで使って頂けるところ」で、具体的な提供の可否判断には「より多くの人々を喜ばせられるかどうか」を考慮すると述べた。経営として設定しているゴールは「お金よりも、どこでもいつでも飛ばせる環境を作ることが重要」と強調した。また、パートナーを組む株式会社NTTドコモについて、Skydioが飛行技術開発に集中し、ドコモがそれを可能にする通信環境と取得データ解析などのクラウドサービスを提供する役割分担の関係にあることを説明した。
Skydioが開発したSkyidio2などのAIドローンは、障害物を回避して対象を追尾したり、目的地に向かったりする自律航行技術を特徴としている。現在鉄塔などの送電設備の点検などを中心に実績を積んでいて、関係者の間で「ぶつからないドローン」と評判が高まっている。こうした評判や自律航行技術に、同社には連日、点検以外の事業領域も含む幅広い業種から多くの問い合わせが相次いでいる。
モスCEOは同社のサービスが活用できる領域について「鉄塔や送電線など、マニュアルで点検しているところでは、弊社(Skydio)のドローンを使えばメリットを感じて頂けると思います。点検、パトロール、工事現場の監視などはすべて使えます。Skydioが考えるドローンの活用領域は2つあります。ひとつは、点検や工事現場の監視のように定期的、一時的に撮影して分析する領域。もうひとつが災害や事件が発生した際にリアルタイムで状況を把握するシチュエーショナル・アウェアネスが求められる領域です」と述べた。
現時点で参入を考えていない領域として、重量のあるレーザーを搭載することが求められる測量などの分野をあげた。これは現時点で機体が重量のある搭載を想定していないため。それ以外では「特にこの領域には使えない、ということはありません」と述べた。現在は機体に固定されているカメラについても、将来的には別な取り換え可能になるよう開発していることも明かした。
日本参入後は各方面から問い合わせが相次いでいる。しかしながら「まだ総勢220人の小さなベンチャー企業であるため、提供できる機体の数などに限りがあり、すべての要望には応えきれない」状況だ。こうした中、サービスの提供先の判断基準としては、「まずは今の機体をそのまま、ノー・カスタマイズで使って頂けるところがいいです。いまマニュアルで使われている場所であれば、そこを自律航行に切り替えることで、携わる人が少なくなるメリットを感じてもらえると思います」と話した。
また、具体的な提供先を検討するにあたっては、問い合わせを受けた企業のほか、パートナー企業などと可能性も検討するという。とくに、ドコモが全国に持つ支社、支店網から要望が寄せられることもあり、重要な検討材料となっているという。
提供先を具体的に決めるさいに重視する点について、モスCEOは「より多くの人々に喜んで頂くこと」と即答。「(検討している中から)一番多くの人々を喜ばせることができるのはどれかを考えます。要望がいろいろと寄せられますが、その共通点が何かを探り、その技術を提供していきたいと考えています」と述べた。
Skydio Japanは米Skydio.Inkにとって初の海外現地法人となる。日本市場での目指すゴールについて、モスCEOは「経済的なゴールはありません。それよりもどこでもいつでもドローンを飛ばせる環境を作りたい。それによって多くの人に喜んで頂きたい。お金よりヴィジョンが大切です。2、3年後には『Skydio2 Dock』(=機体の離発着ポートとなるボックス型のSkydio2の専用ドック)が日本中に、たとえば10万台とか100万代とか、どこにでも設置されていて、いつでもドローンがパトロールに出動できて、点検のために稼働できて、災害調査に出動できるようになっていたらいいな、と思っています。ビジネスだから儲からないといけないし、ファンドレイジングもしたいと考えています。しかし、売上よりも環境がゴールなのです」と説明した。
そのうえで米Skydioの本拠地であるシリコンバレーの考え方について「シリコンバレーでは、技術やソリューションを提供することそのものが経営の一番の理由になっています。われわれは、この技術は絶対にないといけないと信じ、提供したいと考えています。もうかるために製品を作っているわけではありません。もうからないと開発ができないので、提供ができるようになれば、もうかるシステムにしないといけませんが、順番は提供することが先です」と述べた。
さらに、パートナーのドコモに触れて、「ドコモはドローンが飛行するのに不可欠な通信環境を提供していて大容量、低遅延の5Gも提供しています。自律航行にぴったりの技術です。ドコモはかつて、i-mode(=アイモード、携帯電話でウェブページの閲覧やキャリアメールの送受信を可能にした世界初の携帯電話IP接続サービス)でもうけていたときに、まだ売れ筋でなかったスマホに“新しい風”を見出してアンドロイドの活用に乗り出した企業。そのドコモと協力して、世界中でトレンドとなる技術を日本に提供し、広めたい」とドコモへの信頼も語った。
ドコモのドローン事業は2016年に発表した中期戦略に正式に盛り込まれた。モバイル通信事業に実績があり、目視外飛行にこの技術が生かせる。上空での通信や、正しい電波の使い方などにも知見がある。ドローンの飛行を支援しAI解析も行うクラウドサービス「docomo sky」も提供している。すでに、離島向けの宅配や、台風で孤立した住民に救援物資を届けるなどの取り組みを実施するなど、ドローンを事業のひとつの柱として位置付けてきた。自社の基地局の点検にも2017年からドローンを活用、docomo skyで自動化、データ蓄積、サビなどの検知をしている。すでに社内に350人を超えるパイロットを抱え、年間延べ1000機の飛行実績もある。
ドコモ5G・IoTビジネス部の牧田俊樹氏は「社内で実践をしていることがドローンのサービスについて、自信をもってお客様におすすめする後ろ盾となっている」と話す。
Skydioとは今年1月に協業検討を発表し、7月に100%子会社である株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(東京)が、同社が運用するファンドを通じて出資。11月に、ドコモとしてSkydio 2や、産業機Skydio X2、ボックス型格納ドック、Skydio Dockの順次提供開始を発表するなど、連携を強めている。
AIドローンを手がけるSkydio Japan合同会社(東京)は11月16日、東京オフィス設立を報告する説明会を都内で開催した。米Skydioにとって初の海外現地法人で日本での営業、マーケティングなどを担う。説明会では2021年度中に、産業用の新モデル「Skydio X2」や、機体をスマートに格納するボックス型の専用ドック「Skydio 2 Dock」、新開発の自動点検ソフトウェアを投入する計画を明らかにした。当面は企業、自治体、政府など法人向けに特化し、個人向けの機体販売などは行わない。トム・モスCEOは「技術で選ばれる会社になりお役に立ちたい」と抱負を述べた。
Skydio Japanは、米Skydioが開発した機体などのプロダクトについて、日本国内での普及を担う。港区内にオフィスを構え、株式会社NTTドコモ、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)、株式会社FLIGHTSをパートナーに、市場を開拓する。日本法人としての体制強化も進める。日本国内の有望市場などについては米本社に報告し、新モデルの開発に役立てる。日本市場での提供方法については、JIWなどと検討していく。
モスCEOはアジア太平洋地域全体の統括も務める。Skydio製品は世界で需要が拡大しており、アジア太平洋地域での事業拡大も視野に入れる。
Skydioは2014年にシリコンバレーで発足したAI搭載ドローンのメーカーだ。機体周囲を3Dでリアルタイムに認識し、環境変化を予測して判断することができる「Skydio Autonomy」と呼ぶ技術を搭載していることが特徴で、ドローンは航路を探して自律航行する。
Skydioの最初の機体は、林の中をかける自転車を障害物避けながら追尾する映像で愛好家の間であっという間に話題となり、「熟練パイロット並の動きを自動で実現する」と世界中に拡散された。
2代目のSkydio2は、障害物を避けるために搭載したカメラの個数が12個から6個に半減するなど、小型化、軽量化、低価格化を実現した。日本でも点検現場向けにカスタマイズされ「ぶつからないドローン」として投入されている。
新モデル「X2」はSkydio2の性能を引き継いだうえで、自律ソフトウェア、赤外線カメラを搭載し、折り畳んで持ち運びが可能な手軽さを備え、航続時間を最大35分間にまで拡大させた、点検などの産業用途に特化した機体だ。カメラから得られる情報を頼りに飛行するが、暗い場所での飛行が可能になる。2020年度中に市場投入され、日本には2021年度中の投入を目指す。
Skydio JapanのモスCEOは説明会の中で、「統計によると、企業がドローンを導入するさいに最も心配している事はクラッシュです。クラッシュは操作ミスで起こります。しかしSkydioのドローンは操作が不要で障害物を避けて飛行します。ドローンの導入が進み、より安全で生産性の高い社会のためのお手伝いをしたいと思っています」と話した。
さらにモスCEOは経済性についても言及。「産業の現場ではドローンはほぼマニュアルで運用されています。運用には、パイロットと補助者の2人で行われることが多く、そのため、ドローン導入料金の8割は人件費です。Skydioのドローンは、自律航行をするのでマニュアル操作の必要がなくその分コストを抑制できます。費用が抑制できれば、別の現場にドローンを導入することにもつながります」と、自律航行が人件費抑制にも効果的だと説明した。説明の中で取引先の言葉として、「ある会社は、ドローンの運用を拡大するため今年は100人のパイロットを育成し、来年は200年育成する。でもその次の年はゼロだ、と言っていました」と紹介した。
説明会ではパートナーであるNTTドコモ執行役員の坪谷寿一5G・IoTビジネス部長が、同社が提供しているドローンプラットフォーム「docomo sky」や、奥多摩などでの災害対応運用などを紹介。「2016年に中期戦略を発表して以来、常にドローンを意識してきました。通信環境、AI、運航管理などでともに取り組んでいきたいと考えています」とあいさつした。
説明会ではSkydio2のデモ飛行も実施した。コントローラーのタップで、画面で設定した「A地点」「B地点」に向かったり、目的地までのルートを、邪魔するようについたてを立てても、機体が迂回して目的地を目指したりする様子を披露した。途中、ついたてがわりにモスCEOが立ちはだかって、ドローンがモスCEOを避けて飛ぶ様子も見せた。
日本では海外で開発された機体も含め、多くのドローンが活躍を模索している。モスCEOは、「どこの国の会社であるかなど、選択基準はいろいろあると思いますが、われわれは技術で選ばれる会社でありたいと思っています」と話した。
人が操縦せずに自動で障害物を避けながらターゲットを追尾できるAIドローンを開発した米Skydio社のトム・モス(Tom Moss)COOが12月20日、大分市で開幕したOITAドローンフェスタに登壇し、AIドローンの登場でドローンが新時代に入ったと述べた。モス氏はAIドローンを「スマートドローン」と呼び、スマホで指示をすればドローンが人の代わりに作業をしてくれるようになると説明した。
トム・モス氏はグーグル社で、スマートフォンやタブレットなどのモバイルオペレーティングシステム「アンドロイド」の開発や普及に関与してきた。日本初のアンドロイドスマホ「HT-03A」の発売にこぎつけた経験も持つ。日本滞在経験があるため講演も日本語で行われた。スマホで携帯電話の新時代を切り開いた経験を持つモス氏は、SkydioのAIドローンも、「携帯電話がスマホに移り変わったように、ドローンもスマートドローンに」変化をもたらしつつあると指摘した。
森林の中を疾走する自転車を頭上から設営した映像を見せて「この動画、パイロットはいません。AIとマシンラーニングで自動飛行をします」と説明を始めた。ドローンがぶつからずに自動飛行ができるために、まず、自分のまわりの世界を360度、映像として把握している。「周囲を360度、映像でとらえています。また、ひとつの方向を複数のカメラでとらえ、自分と周囲との距離を、リアルタイムで理解します。このドローンのおもしろいところはリアルタイムで距離情報を理解し、自分がどこにいて、ターゲットがどこにいるかをドローン自身が判断して動けることです」
ただし、自動追尾にはまだ足りないものがある。「ターゲットが動くので、ドローが自分のフライトパスを割り出すには、プラスアルファでしないといけないことがあります。それは、将来を予想すること。数秒後にターゲットがどこにいるか。それができて、そのターゲットを追うために、適切な場所に移動できます」
続けて投影した動画では、人物の軌道を青い線で表現しつつ、もう一本、赤い線が生まれる様子が映った。「この赤い線は、この人物が次にどう動くかという予想です。これは、この人物の姿勢や、それまでの動きから判断しています」(モス氏)。動画では動き回る人物をとらえ続ける様子が映し出され、モス氏が「ごらんのとおり、逃げられません」と言うと、会場から笑いが上がった。
モス氏は、「携帯電話がフィーチャーフォンからスマホになったように、ドローンにも変化が起きています」と説明する。「これまでのマニュアルドローンでは、少なくとも1人のドローンがついていないといけない状況がありました。これからは、人が必要でなくなるスマートドローンになります」
また、スマホはアプリを使って具体的な作業ができるようになることについても言及。「スマホと同じように、スマートドローンも自動飛行をするだけでは意味がなくて、実際に役立つためにはアプリが大切です。スマホは掌にのるコンピューターですが、スマートドローンもコンピューターが空を飛ぶもの。空飛ぶロボットです。ホビーや遊びだけでなく、現場の業務にも役立ちます。ただしそれを役立たせるようにするために大切なのは、ベースのドローンに加えて、人手に頼っている作業をドローンにしてもらうためのミッションをアプリとして開発することになります」と指摘した。
そのうえでスマートドローンの特徴を「より安全、より速い、より安い、よりスケーラブル」と整理。
「より安全」については、「人が行うとあぶない作業をドローンでしてもらえることにより人の安全が確保されます。アメリカでは屋根点検のアプリを出します。これで人が屋根から落ちることはありません。われわれのパートナーには米国の警察もあります。彼らは危険がありそうな場所について、入る前にドローンで安全性を確認できます」と説明した。
「より速い」についても警察のケースを紹介。「アメリカの治安が悪い地域では、音を拾うマイクを設置して警察でモニターしています。銃声が聞こえたら警察官が駆け付けるのですが、時間がかかるし、道路が渋滞しているかもしれない。かけつけたところでそこに立ち入って大丈夫かどうかという不安もあります。ドローンで早く駆け付けることができ、安全かどうか確認できます」
「より安い」は、点検を引き合いにだし、「橋の点検は、人が作業をすると5,6人がかりで、終わるまでに1週間かかりますが、ドローンなら1回ですみ安上がりです」と説明した。
「よりスケーラブル」では、これらの特徴から普及しやすくなると説明したうえで「ドローンが完全に自動飛行して、より安全、より速く、より安く、を実現させるためには、100%自動である必要があります。そのためには、もうひとつ必要なものがあります。それはドローンが待機するためのネストです。ネストです。充電もできて、必要なときには人はネストまでいくことなく、スマホから指示を出せば、ドローンが自動的に出動し、作業をして、帰ってきます。たとえば、『毎朝、午後4時にここの写真を撮るように』と指示を出せば、それができます。たとえば建設現場の進捗をこれで確認できます」と説明。ネストの動画はすでに公開されていて、会場でも動画を投影したうえで、モス氏は「現在、最終の準備をしていて、来年3月ぐらいに発売する予定です」と述べた。
モス氏は講演のしめくくりとして、持参した実機のフライトをステージ上で披露。「興味があると思いますので、これから実際に飛ばしてみます」と切り出すと、会場から歓声があがった。スマホで操作すると、手のひらサイズのドローンがモーター音とともに浮き上がり、カメラで会場を見渡すようにとらえた。モス氏が「こんにちはー、手をふってください」とよびかけると、来場者がカメラに向かって手を振った。フライトの途中、「ここで、進め、と指示をしても、ドローンがぶつかる、と判断したら進みません」と解説。ステージを見渡したドローンが、モス氏の手に着陸すると、大きな拍手が上がった。
Skydioの機体は21日も、会場で展示される。
ドローンをはじめモビリティの最新事情が体感できる「OITA ドローンフェスタ2019」が12月20日、大分市の大分県立美術館OPAM とiichiko 総合文化センターで開催される。障害物に遮られても高い精度でターゲットを追尾するAIドローンを開発した米Skydio社のTom MossCOOが登壇し、開発や最新事情について基調講演をするほか、製品やサービスの展示、代表者、専門家の講演、デモンストレーションなどが行われる。
「OITA ドローンフェスタ2019」は大分県が主催し、ブルーイノベーション株式会社が企画、運営を、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が監修を担う。ドローン、ロボット、モビリティや関連するサービス、プロダクト、活動成果などを展示、セミナー、講演、パネルディスカッション、ワークショップ、体験会などで満喫できる。
注目されているのは米Skydio社のTom Moss氏の基調講演。同社は今年の夏、森林コースの中を疾走する自転車を、障害物を避けながら正確に自動で追い続けるドローンの動画を公開して、愛好家の間で話題になり、10月に「Skydio2」として発売すると、即日完売したほど大きな話題をさらった。講演は「自動追尾システムなど最先端のドローン技術の紹介」の演題が予定され、シリコンバレーでの開発事情などが話題になるとみられている。
また、東大大学院工学系研究科非常勤講師を務めている株式会社ORSOの坂本義親代表取締役CEOは「いまなら間に合う!ドローンの法律&ビジネスモデル」の演題で登壇するほか、JUIDA、ブルーイノベーション、株式会社NTTドコモ、楽天株式会社、IHI運搬機械株式会社、株式会社オプティム、株式会社トルビズオンなどが講演する。
見本市では株式会社フルテックが災害時に天候の完全回復を待たずに強風下で被害状況を把握する現地調査ドローンを展示するほか、GROOVE X株式会社が、ペットのようなかわいらしさで知られるコミュニケーションロボット「LOVOT」、株式会社翔和が、2018年7月の西日本豪雨時に佐賀県多久市の要請を受けて林道の崩落個所などを空撮したときなどの活用事例を紹介。炬星科技 (シリウスロボティクス)も倉庫内で自動運搬ロボットなどを公開する。
セミナー、講演、体験会、ワークショップでは要予約(HPはこちら)。